「あー……もうこんな時期かぁ。」
バレンタインデー。ある人は喜びある人はキレる、そんな日。
いつも賑やかな商店街にいつもと違った賑わい、匂いが漂う。
「あ、響也さーん!」
「お、沙綾ちゃん。」
少し離れていても漂ってくる香ばしいパンの香りだが今日はチョコレートの香りがする。
「良い匂いだね。沙綾ちゃんも誰かにチョコレートを送るのかい?」
「友チョコとかがメインですけどね。もちろん、響也さんにも用意してありますよ。はい!」
手渡された包みは綺麗な包装がされていた。
「いつもご利用ありがとうございまーす!」
「ははは、また買いに行かせてもらうよ。」
ばいばーい、と手を振りながら歩く。さてさて、沙綾ちゃんのチョコはどんなのかな?
「ワオ、チョコまでパン型か。」
チョココロネにメロンパン、コッペパンやフランスパン。結構バラエティに富んでるね。……型から作ったのかな?
「まさかね……。」
口に入れて噛むとパキリと良い音がして割れる、それと同時に仄かな甘さと苦味がやってきた。へぇ、ビターチョコか、意外かも。
「響也さーん!」
遠くから声が掛けられたこの声はつぐちゃんかな?
「つぐちゃーん。」
ぶんぶんと手を振る。羽沢珈琲店でも何かあるのかな?
「こんにちは、ハッピーバレンタイン!」
「おー、ありがと。」
妹分に貰えてお兄ちゃんちょっと感激。
「今日はどうします?うちの店はチョコレートドリンクをやってますけど……。」
ほう、チョコレートドリンク。気になるね。
「じゃあ、寄らせてもらおうかな。」
「はーい!いらっしゃいませ!」
たっぷり二時間程滞在させてもらいました。それにしても今日はやけに絡まれるな。普段は会っても一人でくらいなのに。
その後もこんな事が続いて
「響也さーん、チョコだけじゃなくてコロッケもどうですかー!」
「あ、ああ、頂こうかな。」
何故かチョコじゃなくてコロッケを貰ったり。
「あ、響也さんじゃん、友希那、丁度良いからチョコ渡しちゃおっか!」
「……そうね。ところでクロちゃんはどこかしら?」
リサちゃんと友希那ちゃんに絡まれてホワイトデーの話を聞かされたり。
「響也さん、これ、どうぞ。」
「あたしと美咲で頑張って作ったの!」
「あ、あはは……随分大きいね……。」
「……ちなみに、あたしもこころも本命ですから。……逃がしませんよ。」
「……うぃっす。」
美咲ちゃんとこころちゃんから両手に収まらない大きさのチョコを貰って釘を刺されたり。
「お〜、きょーやさんおっきなハートチョコだねぇ、モテる男はつらいですな〜。
そんなきょーやさんにモカちゃんからもおすそ分け〜、お返しはパンで良いですよ〜。」
「あ、あたしも、みんなに作ったから、あげる。」
「はははっ!蘭も素直じゃないよなぁ。」
「響也さん、響也さん、それ、蘭が気合い入れて作ってましたよ。」
「う、うん、分かった。ありがと……。」
これ、食べ切れるかな……?つか、色んな人に外から埋められてる気がするんだけど……。
「お兄さん……何があったんですか!?」
「い、いやぁ、みんなに好かれて嬉しいなぁって……ははは。」
「え、えー、じゃあ私は渡すの止めます……。」
「いやいや、それは大事に貰うよ。ありがとね。」
「は、はぁ……。」
彩ちゃんに心配されながら家に向かった。
今の俺の装備は両手いっぱいにチョコレートの入った袋と背中に括り付けた美咲ちゃんとこころちゃん特性ハートチョコレートが装備されている。
「よ、よぉし、帰って来たぁ……。」
家のドアを開けてチョコレートを降ろす。やっと一息着けた……。
「おにーちゃーーん!!」
「ひ、日菜!その格好で行くのはやめなさい!」
「えっ」
日菜ちゃんが飛び出して来た。それだけならいつも通りだが、服装が水着で体中にチョコを塗ったまま来た。
「うそぉぉおお!?」
「おにーちゃーん!ハッピーバレンタイーン!!!」
「ぬわぁぁぁ!?」
いっだい後頭部打ったぁぁ!?
「バレンタインはあたしだよ!」
「は、ははは……せめて普通のチョコにしてくれ……。」
「日菜、全帯チョコは用意してたんだから、それを渡しなさい。」
「えへへー、ごめんなさーい。」
後ろから紗夜が出てきて頭の横にチョコを二つ置く。
「私からもチョコよ。」
「ああ、ありがとね。日菜も、ちょっとやり過ぎだけどありがとう。」
「今日はご飯も私たちが作ったから、兄さんは手を洗って来て。」
「おっ、そうなのか。サンキュ。」
よし、じゃあ今日は飯を食って!……チョコレートも大事に食べないとなぁ……鼻血に気を付けよう。