バンド姉妹の兄ちゃんは霊媒師(物理)   作:黒色エンピツ

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18話:可愛いクマちゃんこんばんは

 

 

「ねぇ、知ってる?『ひとりかくれんぼ』って。」

 

私のクラスでは最近妙な噂が立っている。『ひとりかくれんぼ』と言うこっくりさんみたいな降霊術?らしい。

 

「知ってる知ってる。でも、あれって嘘らしいよ?私の友達がやったけど何も起こらなかったって聞いたよ?」

 

「えー?あたしの友達はガタガタ物音がしたって言ってたのにー。」

 

一度響也さんに聞いてみた方が良いと思うけれど、少しだけ興味がある。

 

「ちょっと、ほんのちょっとだけやってみようかしら……?」

 

「千聖ちゃーん!帰ろー!」

 

「彩ちゃん。ええ、そうね。」

 

少しだけやって何も起こらなければ、大丈夫よね?

 

 

 

 

数日後、運良く私以外の家族が家から出ている時にひとりかくれんぼをスマホを調べつつ始めた。

 

「えっと……人型のぬいぐるみか人形の綿を取ってそこにお米と爪を詰めて……そうね、あなたはカナよ。」

 

そのまま「最初の鬼は千聖だから」と三回言い、水を入れた洗面器にクマのぬいぐるみを入れる。

そして、家中の電気を消す。

 

「テレビは……砂嵐が出ないから消してて良いわよね?」

 

十数えてお風呂へ行き、「カナ見つけた」と言ってぬいぐるみを包丁で刺す。

 

「……次は、カナが鬼。」

 

そう言って塩水を持って、自室のクローゼットに入り、スマホを弄りながら待って二十分が経過した。

 

「何も、起きないわよね。」

 

ふう、とため息を吐いてクローゼットから出ようとするとカタリ、と自分以外の慣らした音が聞こえた。

 

「っ……。」

 

立ち上がりかけた腰をその場に降ろし息を潜める。

音は大きくなっていき、テレビからは砂嵐が聞こえる。

 

「な、なんで……。」

 

調べた限りだとアナログ電波が停止したから砂嵐は流れないはずなのに。

どうしようもない不安が心を蝕む。

このまま隠れていても良いけれど、『ひとりかくれんぼ』は二時間以内に終わらせなければならないらしい。

私は、好奇心でやってはいけない事をしてしまった。

 

 

 

 

「……ん?なんだ、この気配。妙だな、何かが混ざってる……。って事は人の体の一部を使ったのか?だったらまた丑の刻参りかもしれないけど、霊の気配が妙に強く感じるな。」

 

自宅でテレビを見ていると気配を感じた。嫌な予感がするけど、方向は分かっても正確な位置が分からない。

 

「面倒だけど、気配がする方向に円を描いで近付いて行くか。」

 

ちょっと迷惑だけど、屋根の上を走っていこう。

軽く準備をして窓を開けて靴を履き、走り出す。何が起こっているんだ。

 

 

 

 

「はっ……はっ……はっ…………。」

 

息を切らしながら家の中を走る。後ろからはクマのぬいぐるみが包丁片手に追いかけて来る。

クローゼットに隠れていたけれど、外を覗いた時にぬいぐるみと目が合い。咄嗟にクローゼットから出て逃げた。窓や玄関は何故か開かなかった。

 

「スマホは……圏外……!?」

 

家族が帰って来るのは明日の夜。それまで時間を稼ぐなんて不可能。物音を出したりして誰かが気付いてくれるのを待ちながら逃げるしかないわ。

 

 

 

 

「こっち……次はこっち、んでこっち。結構絞れてきたな。っと、この家か。」

 

急いでいるが一応表札を確認する。

 

「白鷺?まさか……。」

 

玄関のドアを握るとバチィッ!と音がして弾かれた。

 

「チッ、頭が働くやつか。」

 

まずは家の浄化をしようと両手を二度鳴らす。

 

「んっ……んなろっ!」

 

土地にも縁を繋ぎやがったのか。複雑に絡み合ってる。

 

「こういう細かいのは苦手なんだよ……!」

 

手を広げて糸を解くように動かす。

家の中から物が壊れる音が多く聞こえる。

 

「だー!もうめんどくせぇ!」

 

イライラして足を地面に叩き着けるとそのまま霊力が地面を通じて浸透し、糸を壊して結界を強引に剥がす。

 

「……後で直しとかないとなぁ。」

 

土地同士の繋がりが崩れてしまう。

 

「誰かいるか!」

 

ドアには幸い鍵が掛かっていなかったためそのまま家に入ると、中からは生温い風が流れてきた。

 

「無事でいてくれよ。」

 

悪いが土足で家の中に入り、置いてあったガムテープを手に取ってから部屋を一つ一つ調べていくと二階から悲鳴が聞こえて走って向かうと、千聖ちゃんがクマのぬいぐるみに刺されかけていた。

 

「イヤッ……!」

 

ぬいぐるみの持っている包丁の刃を握って止める。

 

「はぁ……間に合ったか。」

 

「きょ、響也さん……?」

 

「なるほど、ひとりかくれんぼか。爪が入ってるから混ざっているように感じたのか。」

 

包丁を握ってる手とは反対の手でぬいぐるみにデコピンをして壁に吹き飛ばして動かなくなった所をガムテープで巻く。

 

「イテテ……。」

 

「あ、あの、私……。」

 

震えながら声を出す千聖ちゃんの前にしゃがんで目線を合わせる。

 

「無事で良かった。理由は後で聞くから、先に終わらせよう。」

 

しかし、通常のやり方では終わらせられないだろうな。だって、ひとりかくれんぼは『ひとり』が重要な降霊術だ。それに第三者である俺が関わった事でどんな影響があるか分からない。

 

「強引だが、まずは千聖ちゃんと霊の縁をぶっちぎってから払う事になる。今すぐ始めるけど。気分が悪くなったら言ってくれ。」

 

こくりと頷く。

 

「座ったままで良いから、リラックスして。深呼吸するんだ。」

 

指示をしつつ千聖ちゃんの対面にぬいぐるみを置く。

ジッと千聖ちゃんとぬいぐるみの真ん中を凝視すると赤黒い糸が見えた。そして、手に霊力を纏わせた手刀で糸を切る。

 

「よし、次にこれを綱引きの要領で引っ張ってぬいぐるみから霊を引っこ抜く。」

 

あれだ、NARUTOの尾獣綱引きみたいな。まあ、あれよりは簡単なんだろうけど。

 

「よっと。」

 

糸を摘んでピッと抜く。少し抵抗感はあったが、力は弱いみたいだ。

 

「んで次は繋ぎ直しだ。」

 

パンパンッ、と手を慣らすとバラバラに千切れた複数の糸が現れる。

 

「うわぁ……こりゃちょっと時間かかるかもな。」

 

糸を交わらないようにまっすぐ結ぶ、間違えたら面倒な事になる。

 

「チッ、めんどくせぇ。」

 

眠いし、さっきの結界破壊の地味な疲れが残ってるせいか口調が崩れてきた。

 

「あの……これはこっちだと思います。」

 

「おお、確かにそうだな。って、千聖ちゃん?」

 

「これは、こっちで……今度はこっち、で合ってますか?」

 

「あ、ああ。」

 

……意外な才能だな。これは伸ばしたらもしかしたら……ってダメだろ。

 

「はー……頭痛がするな。」

 

どこも人員不足には変わりないって事かなぁ。

 

「頭痛薬、いります?」

 

「ごめんごめん、これはちょっと違うから大丈夫。」

 

これでこうしてうりうりして……っと。

 

「ほい、結べた。

さてと、次はぬいぐるみ焼くか。油持ってきてくれる?」

 

「はい……。」

 

それにしても、ぬいぐるみに入った程度の怪異が人に手を出すか?

ひとりかくれんぼなんて大体は失敗するか、いたずら好きの霊が物音を出す程度のはずなんだけどな。

 

「まあ、いいや。」

 

「持ってきました。」

 

「ありがと。それとこれ、俺の連絡先。また何かあったら絶対に言ってほしい。」

 

「え、でも……。」

 

「いいのいいの。これが俺の仕事なんだから。」

 

ははは、と笑いながら庭に出て鉄板の上にぬいぐるみを置き、油をぶっかけて火を着ける。

 

「よし、終わりだ。じゃあ、日菜によろしく。」

 

「あ、あの……もうちょっとだけ、居てくれますか?」

 

「……良いよ。」

 

本音を言えば帰って寝たいけど、流石にさっきの今だと怖いんだろう。

とりあえず、朝になるまでは一緒にいてあげよう。

 

「おやすみなさい。」

 

「ああ、おやすみ。」

 

俺も一度寝よう。そしたら白鷺家についてちょっと調べてみよう。

 

 

 

 

「ん……。」

 

目を覚ますとまだ外が暗いな。……もしかしてずっと寝てた?

 

「……千聖ちゃんは?」

 

ふらり立ってとドアを開け、リビングらしき所に向かうと多分白鷺一家がいた。

……夫婦の方は見た事あるような。

 

「ああ、起きましたか。」

 

「あ、どうも。こんな時間まで寝てて、すみませんね。」

 

とりあえず謝っておく。

 

「そんな、娘の命の恩人ですから。

それと、お久しぶりです。」

 

「……やっぱり、どこかで?」

 

「コトリバコの時に、妻と身の回りのお世話をしていました。」

 

「あー……そりゃあ、覚えてないと思います。」

 

あの時はコトリバコに常時集中してたから誰と何をしたとかは全く覚えていない。

 

「じゃあ、今回の件は千聖ちゃんにも才能があって、その影響って事ですか……。」

 

引き寄せたのか、昔の俺みたいだ。

 

「千聖ちゃんにそれを知らせたり、対抗術を教えたりは?」

 

「あまり関わらせたくなかったもので、全く。」

 

親心みたいな感じかな。俺も昔紗夜と日菜に怒ったっけ。

 

「今回の事で対抗術を覚えさせようと思いましたが、2人ともそこまで得意ではないんです。 どちらかといえば補助でして。

それで、もし良かったら娘に教えてもらえませんか?」

 

「えっと、俺が?」

 

「氷川さんよりも適任な人なんて、世界を見てもそういませんよ。」

 

「いやでも、教えるのは……。」

 

「どうか、お願いします。」

 

そういって頭を下げられる。

 

「は、ははは……わかりましたぁ……。」

 

困った、教え方が分からない。

 

 

 

それから少し経って帰る。

 

「どうしよう。多分千聖ちゃんは俺と違って細かいのが得意だと予想してるんだよなぁ。」

 

逆に俺は細かいのが苦手だから教えるのが大変だ。

 

「式神とかが良いかもな。」

 

懐から札を取り出して霊力を込めると狐が現れる。

 

「う〜ん、俺だと動物が限界だな。後は自分の見た目くらいか。」

 

千聖ちゃんが上手くなれば人型とかも出来そうだな。

 

「弟子、弟子かぁ……。」

 

俺は無意識に軽い足取りで家に帰って行った。

 

 





難産でした、三回くらい書き直しましたよ。

ちなみにこれを書いていた四ヶ月くらい前に怪異症候群の動画を見ていたので影響されてます。
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