あっっっっぶねぇぇぇ!!!この悪霊弱い部類の癖して隠すことが出来るとか思ってなかったよ!ほんと!
「あらよっと。」
落ちかけた女の子をひょいと持ち上げる。
「うわっぷ。」
女の子が持ち上がった勢いで抱き留める。よしよし、怪我とか無さそうで良かった。
「あ、あのっ」
「ちょっと待っててな。こいつなんとかするから。」
うむ、改めて見るとこいつは靄のせいでイマイチよく見えない。
まあ、それでもなんとかなるんだけどさ。
するとゆらゆらとこちらに近付いてきて、また女の子に手の様なものを伸ばす。
「だーから、させないって。つか、捕まえた。」
伸ばしたものを掴み取り、そのまま顔のあるだろう部分を掴んで握り潰す。
『オ、オオ……ナんデ。』
「なんでって……悪霊になった自分を恨んでほしいな。良い来世を。」
そのまま靄は天に昇り消えていった。
「これでよし。
大丈夫だったかい?」
「あ、あの、ありがとうございます。」
うん、この子か。さっき風船あげた時に嫌な予感がしてたんだよね。
「な、なんで見ず知らずの私を助けてくれたんですか?」
「見ず知らず?ふっふっふ……やぁ、マイケルだよ?」
「あっ!!」
「ねー?見ず知らずじゃないでしょ?さて、一件落着したし、家族の所に戻りなさい。」
「えっと、さっきのは?」
「ただの悪霊。気にしなくていいよ。
ああ、そうだ、これあげる。」
空いた時間でコツコツ作った狐を象った首飾りをを取り出して渡す。簡単に壊れないように工夫したし、力も込めたから大丈夫なはず。見た目はちょっとした気遣い。
「それ、大事にしてよ?そんなんでも普通に買おうと思うと結構高くつくんだぜ?」
「可愛い……。」
「じゃあね、気を付けなよ。」
「あ、あのっ、名前は!」
「氷川響也、君は?」
「奥沢美咲です!」
「美咲ちゃんね。じゃあね、良い人生を。」
軽く手を振ると美咲ちゃんも控えめに振り返してくれた。
……名前で呼ぶのは失礼だったかな?
「でも、手が届いて良かった……。」
伸ばせば届くんだ。
「ただいまー……誰も居ないけど。」
訳あって管理しているアパートの自室に帰ってきた。まあ、幽霊物件だったんだけどさ。管理出来ないから人も入らないってんで譲られちゃった。結局霊は払ったけど俺しか住んでないけど。
別に霊と言っても悪霊だけじゃなくて妖怪とか精霊みたいなんもいるんだ。まあ、善し悪しはあるけど。
「飯にするか……材料買い忘れた。
あそこで食べるか。」
「いらっしゃいませー!」
羽沢珈琲店、ここら辺で喫茶店と言えばここだと言える場所だ。
「や、つぐちゃん、こんばんは。」
「あっ、響也さんだ!こんばんは!」
これでも常連だからね。覚えられているのさ!
「おぉい、響也くん。」
「ん?なんですか、巧さん。」
巧さんはつぐみの父親でコーヒーがとんでもなく美味い。
「今度、つぐみの参観日出てくれないかい?俺も妻も都合が合わなくなっちゃってさ。」
「もう!その話は終わったでしょ!」
「だって、つぐみが1人で寂しくないかって心配で心配で……。」
「だからって響也さんに頼まなくても……。」
う〜ん、そう言いながらもチラチラとこちらを見るつぐちゃん。うちの妹までとは言わないがなかなかの妹力!
「良いですよ。いつも美味い飯食わせてもらってますし。」
「本当か!いやぁ、ダメ元で頼んで良かった。今日は俺の奢りだからな!
つぐみ、行けないけどお弁当はバッチリ作るから楽しみにしててくれ!」
「もう、しょうがないなぁ。」
話が終わったんなら、悪いけど注文させてくれないかなぁ。
やってきました参観日。やっぱり周りと比べて俺だけ若いな。
「この問題が分かる人〜。」
「「「はい!!!」」」
元気良く子供達が手を上げる。上げてない子もいるが目立ちたく無いんだろう。
「じゃあ、羽沢さん、お願いね。」
「はい!」
つぐちゃんが当てられた。早速カメラを取り出して構える。巧さんに頼まれたのだ。後は趣味みたいのもん。
「えっと……で……だから……です!」
「正解!」
先生がそう言うとつぐちゃんは照れたようにこっちを向く。
「いいよー!つぐちゃん、ピースしてみようか、にっこり笑ってー、いいよいいよ!」
野球選手も驚く程のスライディングで近付き色んな角度から写真を撮る。やー、映えるね。
すると後頭部を掴まれた。
「響也くーん?写真を撮るのは良いけど大人しくしてようねー?」
「……はい。」
なんで名前を知ってるかって?卒業生だからさ!
「それと妹さん達にも顔を出してあげなさい。聞いたよー、中学卒業したらフラフラしてるんだってねー?帰るのも正月とかお盆くらいだって言ってたし、ちゃんと生活出来てるか心配してたよー。ご飯とかバランス良く食べてるの?洗濯とかも大変だろうし。」
「いや、あの、授業中……。」
「あ、ごめんなさいね。続きをしましょうか。」
後ろの保護者の所に戻ると周りの保護者からの視線がやばかった。
ちゃんと働いてるよ!
視線は授業が終わるまで続いていた。
所変わって屋上。小学校で屋上解放してるなんて珍しいよな。
「響也さん、ここで食べよ?」
「はいはい、それにしても巧さんは気合入れ過ぎでしょ。」
重箱じゃん。小学生にこれは食べきれないよ。
するとバァン!という音と共に屋上の扉が開けられた。
「お兄ちゃん……みぃ〜つけたぁ!」
「……兄さん。」
「ひ、日菜、紗夜……。」
「確保ー!」
前から日菜と紗夜が飛び込んできた。ちょっと、それ着地考えてないでしょ。
「ぬう……!」
「捕まえたー!」
「逃がしません!」
「いや、あの、逃げないから。」
愛しい妹達から逃げる訳ないだろ!
後何気にうしろからシャツの端をちょんとつまんでるつぐちゃんも可愛いねぇ。
「だって、半年に1度しか帰って来ないんだもん!」
「あー、悪かったなぁ。」
へらへらと笑っているが俺はそれ所じゃあない。紗夜が、あの紗夜が力いっぱい抱き着いてくるのだよ。いつもはクールに装ってるのになぁ。やだ、俺の妹可愛すぎ?
「……空気読めよ。」
袖口から札を1枚出して遠目にこっちを見つめる悪霊に投げると四散した。
いいでしょこれ。波紋みたいにやってみた。札にはテキトーにそれっぽい言葉書いたよ!
「ところで兄ちゃんな、昼飯まだ食ってないんだけど……。」
ごめんね、つぐちゃん。お腹空いたよね!
「あ、あの、私は大丈夫だから……。」
「う〜ん。じゃあ、みんなで食べよっか?日菜、紗夜、この子羽沢つぐみちゃんってんだ。俺が良く行く喫茶店の娘さん。」
「あたしは氷川日菜!お兄ちゃんの妹の座は渡さないよ!」
「氷川紗夜よ、よろしくね。」
「あ、羽沢つぐみ……です。」
「んじゃ、食べようぜ。」
「あ、響也さん。私の友達も呼んだけど大丈夫だった?」
「んー?もちろん。」
なるほど、だから重箱か。
すると扉が開いて女の子達がやってきた。
……男一人とか、肩身が狭いなぁ。
一通り自己紹介を終えた。
蘭ちゃん、モカちゃん、巴ちゃん、ひまりちゃんね。
弁当も美味かったし、さてと。
「ね、蘭ちゃん。ちょっと良いかな?」
「あ、なんですか?」
「最近さ、肩がダルかったりしない?」
「きょーやさん、蘭がどうかしたの〜?」
「いや、ちょっと気になってね。どうだい?」
「えっと……少し、そうかも。うん、ダルく感じる。」
なるほどなるほど、やっぱりか。
「なぁ、モカちゃん?蘭ちゃんって結構な寂しがり屋だったりするのかい?」
「なっ!?そ、そんなこと!」
「そー、だいせいか〜い。なんで分かったの〜?」
「仕事柄ね。さて、お仕事だ。
蘭ちゃん、今日君の家に行くぞ。手遅れになる前に。」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!?なんで急にそんな事……。」
巴ちゃんがそう言う。まあ、初対面だし。親友がそうなったら分かるけどさぁ。
「これでも霊媒師でね。君達は……幽霊は信じてるかい?」
「いくらモカちゃんでもー、そんなの信じられませ〜ん。」
「私も、そんな簡単な嘘には騙されません!」
困ったな。本当に急だったから信じられないか。
ん、また悪霊か。今日は良く出るな。丁度良いけど。
日菜か紗夜にやってもあれだし……。
「つぐちゃん、ちょっとおいで。」
胡座を組んだ足をぽんと叩く。
「え?ええぇ!?」
「いいからいいから。」
優しく手を引き胡座の間に座らせる。
「目を開いてて。」
後ろから両手で目を覆う。それから十秒経ったくらいで手を離す。
「一時的に見えるようにした、あっちを見てみな。」
「え……?ひっ!」
「つぐみさん、どうかしたの?」
「あ、あれって……。」
「次は蘭ちゃんを見て。」
「あたし……?」
「ら、蘭ちゃん……それ、何……?」
俺とつぐちゃんにしか見えてないけど肩にベッタリと霊障が見える。
「あれは悪霊、それで蘭ちゃんに付いてるのが霊障、幽霊が触った跡だ。しかもかなりヤバい。」
「あ、あたしの肩に……?」
「そうだ、近日中になんとかしなければ肩、いや腕が動かなくなる。」
「そ……んな。」
「さっきも言わせてもらったけど、今日だ。良いかい?」
蘭ちゃんは無言で頷いた。それにモカちゃんの同行を許可して3人で向かう。
余談だが、日菜と紗夜が後日質問責めに来ます。
後家バレしました。
なんだかんだでお祓い(物理)。
家主の厳さんにはちゃんと許可は貰った。
この世界、嘘っぱちの霊媒師もいるけどマジもんもいたりする。まあ、タイミングが合わなかったから俺だけだ。
「ここが蘭ちゃんの部屋か。
うん、嫌な匂いだし、随分と酷い見た目になっちゃって。でも、これだったら……。」
魚みたいな見た目をして腕が生えてるとか、見た目はやべぇな。まだマシな方だけど
「あたしは……どうしたら良いんですか?」
「蘭のためだったらモカちゃんも手伝うよ〜。」
「ん〜、そうだな。今回はモカちゃんの出番は多分無い。」
そう言うと目に見えて落ち込む。いやいや、専門家に任せてって。
「蘭ちゃん、君はこの霊をどうしたい?」
「え……?」
「俺が消滅させるか、それとも蘭ちゃんが送ってあげるか。好きな方を選ぶと良い。」
「そんな事言われてもどうすれば……。」
「あいつは話せば何とかなる部類の霊だ。多分ね。まあ、ダメでも守ってみせるけど、どうする?」
「あ、あたしは……。」
「蘭……。」
モカちゃんが蘭ちゃんの手を握る。
チッ、霊が動きだしたか。
「あたし、話してみる!」
「ん!よく言った!早速始めよう。
失礼するよ、目を開いて。」
蘭ちゃんの目を両手で覆う。
「ここからは君の戦いだ。心で負けちゃあダメだよ。」
「……分かった。」
返事を聞いて手を離す。さあ、どうなるかな。
「う、あ……あぁ。」
「気をしっかり持て。ほら、モカちゃんも応援したげな。」
「ら〜ん〜、頑張れー!」
蘭ちゃんの目に力が入る。やっぱり幼馴染の言葉は心強いね。
「蘭ちゃん簡単に説明する。そいつは君が家で寂しそうにしているからこんな事をしたんだ。つまり、心配だから障られた。君が安心させてあげなさい。」
蘭ちゃんが無言で頷く。
それにしても、家で自分の部屋にいて部屋にいるのに寂しいとはな。可愛らしいと思うが、霊からしたら美味しいエサとも言えるだろうな。
「あ、あたしは、寂しがり屋なんだと、思う。
幼馴染と離れたらなんだか一人ぼっちになった気がして……。
でも、あたしはこの寂しさを大事にしたいんだ。だって、離れたら寂しいって思える様な、大切な仲間がいるから。
けど、ありがとう。やり方はちょっと、変かなって思うけど、あたしが寂しくないように見守ってくれてたんだよね。
本当に、ありがとう。だから、あなたも安心して。」
子供らしい素直な言葉。霊にそれが分かるかどうかは分からないがそれでも伝わったはずだろう。
ゆらゆらと揺らめいて天に登って行く。きっと安心したんだろうな。
「どうだい、気分は。」
「うん、もう大丈夫。響也さんも、ありがとう。」
「おう、どういたしまして。」
これにて一件落着!
かと思ったが後日には人魚の精霊となって蘭ちゃんを守護するようになっていた。
心配症にも程があるだろう……。
じっと見ていると人魚なは俺を見て嬉しそうに微笑んでいた。
一人称とか喋り方に不安があるけど、大丈夫だよな!