「はい、氷川霊能事務所。」
今日も今日とて暇な中、珍しくも電話が来た。あ、氷川霊能事務所は俺の事務所だからね。
『もしもし、私メリーさん。今あなたの一番近くの駅に居るの。』
ツーツー、と電話が切れた。
「……面倒な事になったぞ。」
都市伝説メリーさん。電話をした相手の近くに来て時間が経つとまた電話が来てさっきより近くに寄って来て、最終的には背後に来て殺される。厄介なやつだ。
『もしもし、私はメリーさん、今あなたの家の近くのコンビニに居るの。』
また来た、これ対処どうしよう。またバトルとか嫌なんだけど。こいつら対策の結界みたいなの作らなきゃダメかもな。
お、またきた。
「氷川です、現在電話にに出る事が出来ません。ピーッと鳴ったらご要件をお願いします。ピーッ。」
『あっ、あの、私メリーさんです。今氷川響也さん宅のアパートの前まで来てます。』
あら可愛い。おどおどしちゃってる。ちょっと楽しくなってきた。よーし。
『もしもし、私メリーさん。』
「おや、メリーちゃんどうしたの?そろそろ昼ご飯の時間だぞ。早く帰って来なさい。」
『あっ、や、お父さん!?あれ?でも、おかしいなぁ……。うん、この人殺したら帰るね!』
メリーさんって父さんいたんだ……。え?都市伝説だよね?つーか騙されやすいな。
「もしもし。」
『もしもし、私はメリーさん。今、あなたの後ろに居るのぉ……!』
「後ろは壁に何だが。
うおあぁぁ!?壁からナイフ出てきたぁ!?」
またバトル展開なんて最低!今日は用事もあるんだ!
そう思い、ナイフを持った腕を掴んで窓を開ける。
「そーれ!もう来るんじゃねぇぞ!」
「きゃああああぁぁぁ!!」
何回か回って遠心力を利用して外へと全力で投げた。なかなか悪くない距離飛んだな。よし、霊媒師(物理)要素!
「さてと、昼飯は面倒だし、カップラーメンで済ませるか。」
ちゃちゃっと食べてしまおう。
お湯を注いでたったの数分。程々に美味い。流石に美味い店程じゃあないけどね。
「おにーちゃん来たよー。」
「むぉ?いらっふぁーい。」
ずるずると啜りながら返事をする。行儀悪いけど家族だしね?
「この子拾ったんだけどおにーちゃんの知り合い?」
「こ、こんにちは。」
……?確か美咲ちゃんだよね、覚えてる。
「んむぐ……や、久し振り。元気してたかい?」
「はい、お陰で。」
「そっか、なら良かった。」
あれから見てなかったから、ちょっと心配だったんだよ。
「あー!またカップラーメン?」
うえっ、面倒な事になった。
「いや、またってちゃんと自分で料理するぞ?」
「あたしが来る時いっつもらーめんだよ!」
「そりゃたまたまでだな……。」
「それじゃあまだ少ないから、あたしが作る!」
「マジか!?つーか日菜は料理出来たっけ?」
「ひっどーい!おねーちゃんと一緒におかーさんの手伝いとかして練習してるんだからね!!」
「あの、私も手伝いますよ?」
「美咲ちゃんはおにーちゃんと話してて〜。探してたんでしょ?」
むんっ、気合を入れて料理を始める。
……日菜が、日菜が俺に料理を……!!ちょっと感動したぞ!!頑張れよ、日菜!
「んん、それで美咲ちゃん、俺を探してたって?」
「あ、はい。氷川さんにもう一度会って話しがしたくて。」
「待った待った、名前で良いよ。日菜と被るし。」
「じゃ、じゃあ、きょ……響也、さん。」
「お、おお。」
ん〜……可愛いじゃないか。いや、違う違う、ちゃんと聞こう。
「あの、悪霊とか、霊について聞きたくて。」
「……それは、ただの興味?誰かに自慢したいとか?」
「興味は間違いないですけど、どうしてあの人は悪霊になっちゃったのかなって思って……。」
ふーむ、この子なら大丈夫かな。
「分かったよ、話そう。俺もまたまだ勉強中だけどね。」
「あ、ありがとうございます!」
「んじゃ、早速だが、霊とは基本的に未練や場所との結びによって生まれるものだ。未練が無くとも場所に縛り付けられる形で霊になる場合もある。
その中でも善性、悪性はあってな。その性質は最後に最も深く残った記憶によって左右される。死んだ霊で善性を持った霊は生前の記憶を持った状態で霊となるパターンが多い、例外はあるけれどね。対して悪霊は最後に残った記憶が憎しみや怒り、悲哀であるとそれが他の記憶を侵食する。これが悪霊がカタコトで話してた理由と言われているね。
でだ、現世の霊は普通は善性を持ってると言っても良い。何故か、それは死神に狩られるからだ。死ぬと悪霊を除いた霊は自らの意思で一度天国か地獄の裁判にかけられる。そこで判決が降されるんだが、その判決が決まっても行くか行かないかは自分で決められるんだ。大体はとっとと向かうらしいけどね。んで、残った霊はそれで良し。
悪霊はその裁判を受けようとしない。勝手に現世に居座って誰彼構わず自分に共感してほしい、あいつの幸せ壊してやる。まあ、理由はそれぞれだ。それを死神が狩ってるんだが……どうにも数が多くてね。死神が過労で倒れてしまいそうになってるらしい。手が足りないんだ。霊媒師の居る地域は死神に変わって霊媒師が仕事したりするんだがね。俺はあっちから寄ってくるからまだマシだけど、他の霊媒師は街をぶらぶら歩いたり探す方法を見つけるのが大変なんだとさ。
まあ、サラっと説明するとこんなもんか。」
随分長ったらしく話してしまったな。ラーメンのスープを飲もう。
「……やっぱり、あの人のそういう思いがあったのかな。」
「あちっ、まあ、そうだろうよ。何を思ってたかは俺にも分からないし、人の心が分かっても嫌だしな。」
「おにーちゃん出来たよー!美咲ちゃんも食べよー。」
「いや、私は……。」
「もう作っちゃったも〜ん、食べてね?」
「……分かったよ。」
「日菜ちゃん特製オムライスだよ!召し上がれ!」
「いただきます。」
「い、いただきます。」
うん、美味い。シンプルだけどそれが良い。
「はっはっは、日菜は良いお嫁さんになれるなー。」
昔もこんなのあったなー、お袋の料理の手伝いをしてこう褒めたら『おにーちゃんのお嫁さんになる〜』って言ってくれたの。やー、嬉しかった。
「ほんとっ!おにーちゃんと結婚しておねーちゃんも一緒に住むから料理は出来た方が良いかな〜って。」
……うん?勢い余って喉にスプーンが詰まる。
「ごふっ、げほっ!おまっ、何言ってんだよ!?」
「日菜さん、兄妹は結婚出来ませんよ?」
「おにーちゃんは従兄弟だよ?セーフだよ、セーフ!!」
「アウトだよこの天才ポンコツ娘め!」
スパンッと叩く、叩くといっても撫でるみたいにだけど。
「一緒に住むのは良い!けど結婚まで行くのはお兄ちゃん許さんぞ!!」
「え〜、でも昔は『はっはっはー、もう結婚しちゃうかー!』って言ってたのにー。」
「昔ってお前、子供が父親に言うあれだろ!?」
「でもOKしてくれたよね?」
「はっ、ノーカン。」
「あー!ずるい!」
日菜が背中に飛び乗ってポカポカ叩いてくる。ふはは、効かんよ。……うん?君何してるの?
「スー……」
「待って待って待って待って!?何で人の匂い嗅いでんの!?ほら、美咲ちゃん見てるから!」
「…………。」
ほら、顔真っ赤にしちゃってるじゃん可愛い。
「……日菜ちゃーん、何してんのー?」
「ん〜……ちゅっ。」
「今ちゅって聞こえたよ!?何したの!?日菜ちょっと今何したの!?」
「えっへへー、キスマーク!るんっ♪て来るね。」
「それどこでしったの!?」
よくエロ同人とかで見る消えないやつじゃん!!
「おとーさんの隠してた本!」
「親父ィ……。」
あれほど今はネットの時代だと言ったのに……。
「あーもー、首元隠せる服にしないとな……。」
「えぇ〜、見せつけちゃおー?」
「バカ、恥ずかしいわ。
おい、美咲ちゃん。」
フリーズした美咲ちゃんの頭を撫でる。おっ、再起動した。
「ひ、ひひひ日菜さん!そ、そういうのは好き人とじゃないとしたらいけないんだよ!?」
「え〜、でもあたしおにーちゃんがだ〜い好きもーん。」
「う、うぅ……。」
「あーもー、この話は終わりな。日菜は後でお話だ。美咲ちゃんは顔洗って来なさい。」
「は〜い。」
「わ、わかりました。」
はー……疲れた。
「で、日菜は結局なんの用事だったんだ?」
「用事が無いと来ちゃダメ?」
「いや……ああ、いい。で、なんだ。」
「運動会あるから来てね!」
「お、もうそんな時期だったか、行くとも。」
「保護者の競技はおにーちゃんが出てね!おとーさんは出れなくなっちゃった。」
「あー、うん。了解。」
どっか痛めたかな。
「いつなんだ?」
にこーっと日菜が笑う。あら可愛い。
「明日!!」
「はぁー……。」
絆創膏かな、とりあえず。
「まあ、そろそろ良い時間だから帰りな。」
日がもう沈みかけている。今日は送ってくか。
「あたし今日は泊まるー!」
「泊まるって、親父とお袋は?」
「迷惑かけないようにって言われたー。」
「は〜……分かった。
美咲ちゃん、家まで送るよ。」
「一人で帰れますから。」
「危ないからダメ。気を遣わなくても良いから。行くよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
さて、行くか。
帰した時に美咲ちゃんの両親にあった。なんか、この世界では珍しい普通の家族って感じだった。見た目が。
んで、飯を日菜と食って日菜と風呂に入っている。日菜と!好かれてるのは分かるけどさ、妹と風呂ってなんか良いでしょ!?流石に恥ずかしがるかなーって思ったけど普通だったのは残念。
「いーい湯だなーっと。」
「ぶー……。」
「どうしたよ?兄ちゃんと入るのは不満か?」
「だってー、全然照れてないし興奮してないじゃーん。」
「アホ、小学生に興奮するかよ。少なくとも今の俺と同じ16くらいになって出直せ。」
「言ったね?ぜっっったいに興奮させてあげるからね!」
……こいつ成長したら確実に美人になるよなぁ。そう思いながらへらへらと笑った。
寝る時?普通に一緒に寝たけど、これが普通だって日菜が言ってた。
いやー、美咲ちゃん家は意外と近かったですね……。
とりあえずなんだかんだで運動会当日。
「うぉっしゃあぁ!やるぞオラァァ!!」
何でこんなにテンションが高いかだって?
日菜と紗夜が応援してくれてるんだよ!やるしかねぇ……!
「それにしても、悪霊が多い事。」
人が多いから仕方ないか。
こっそり祓っとこ。
歩きながらさり気なく悪霊を祓っていく。結構疲れるんだよ。
『ただいまよりー、保護者による100m走を、開始します。保護者の方は、所定の位置までお願いします。』
おっ、順番が来たか。気合入れるぞー!
「おにーちゃーん!頑張れー!」
「が、頑張ってー!」
「日菜ー!紗夜ー!頑張るよー!」
児童の待機席から手を振ってくれた妹達にぶんぶんと手を振り返す。これは勝ったな、風呂入ってくる。
お、隣につぐちゃん達も居るじゃん。
お、順番だ。
『位置について、よーい』
パンッ!と軽快になった瞬間スタートする。
今まで鍛えてきた筋肉の見せ所だ!……筋肉が外に余り出ないけど。
「しゃあ!一位だ!
みんなー!やったぞぉぉおおおおお!!!」
『他の方の邪魔になるので暴れないでくださーい。』
「あっ、はーい……。」
すみません……。
その後リレーもトリでゴールを飾った。
メダルとか貰っちゃったよ。
「父さん、母さん。久し振り。
ちょっと見せたいもんがあってね。」
俺を産んでくれた両親の墓の前に立って独白する。あ、掃除もしとこうか。
「これ見てくれよ。昨日さ、引き取られた所の子、今じゃ本当に妹みたいに思ってるんだけどさ。その子達の運動会で保護者の競技で最優秀賞ってのでメダル貰ったんだ。なかなか凝った作りだろ?昔はこんなの取った事無かったからさ、見せたくて。
だから、だからさ……。
いい加減墓の上でイチャつくのやめろよ新婚夫婦か!?」
「何よー、お母さんがお父さんとイチャイチャして何が悪いってのよー。」
「うるせー、死んでも成仏せずに永遠とこんな所で騒ぎやがって。」
「僕達はこの前海外に行ってきたよ?」
「嘘ぉ!?えっ、父さん達そんな大移動出来んの!?」
「なんか、出来ちゃった。」
出来ちゃったじゃねぇよ、力つよ!?
「響也こそ、良い娘でも見つからないのかしら?お父さんに似て顔が良いんだからモテるでしょ?髪だって私に似て綺麗だし?」
「イケメンフェイスに産んでくれたのは嬉しいけど誰も寄って来なかったよ!」
「あ、そう言えばお父さんもミステリアスで声のかけづらい人だったわねぇ。」
勇気を出して声をかけて良かったわー、と朗らかに笑う。
「俺は、良いんだよ!将来有望な女の子達がいるから!」
「響也、それは結婚出来ない考えだよ。僕も母さんが居なかったらと思うとゾッとする。」
……マジで?
「しかも子供でしょ?ロリコンかしら……あなた、私達は育て方を間違えたのかしら……。」
ヨヨヨ、と泣き真似をする母さん。地味に上手いのが腹立つな。
「良いわね?何が何でも捕まえるのよ?なんなら引き取ってくれた所の娘でも良いのよ?」
「うっせぇ!バーカバーカ!
クソッ!お盆にまた来るからなー!」
このままだとタラタラと長い話を聞かされると思い、そのまま走って帰った。
「ね、あなた。響也は立派に育ったわねぇ。」
「そうだねぇ、仕事は心配だけど、響也ならしっかりやってくれるさ。」
「……所で誰が本命だと思う!?私はこころちゃんだと思うのよね!ちゅーしたのよ!ちゅー!」
「僕は美咲ちゃんかつぐみちゃんかなぁ。なんか家庭的な所が響也に刺さりそうだし。」
「えー!じゃあ日菜ちゃんは?あの子も料理上手だったじゃない。」
「あの子は家庭的よりも自由奔放じゃないかなぁ。」
墓地ではそんな会話が続いたそうな。
今回ちょっと微妙かなぁって思ってしまった。次は良くなるようにします。
それとランキング35位になりました、ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!