バンド姉妹の兄ちゃんは霊媒師(物理)   作:黒色エンピツ

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今回は満を持して出した時間経過の間の海外依頼なのでヒロイン出ません……。

本当に申し訳ない。






霊よりも人間のが恐ろしい

「早速来ました。アメリカーーーー!!」

 

二日目だけどね!いやー!でかい!何がって国も食べ物も人も建物もでかい!

やば、テンションが振り切りそう。それと前世で英語勉強してて良かった〜。ほんと大事。言語、必須。

でも日本に連絡出来ないのは寂しいな、スマホ取り上げられたし。

重要な依頼なのは分かるけどそれくらいはさせてくれてもいいだろうに。

 

「さて、メールではかーなーり田舎の方みたいだけど……。」

 

車借りた方が良いな。協会が特例で発行してくれて助かった。……日本に居た時もそうだったが16歳に車の免許持たせるって大丈夫なんだろうか。

マップアプリを開いてレンタカーが借りれる所を探し始めた。

 

 

 

 

「到着。」

 

まさか一日で着かなくて車中泊する事になるとはな……。

 

「それにしても……アメリカでの最初の仕事がスレンダーマンの調査とはな。」

 

前世からあった都市伝説だけど、本当に居るのかね?信じ難いな。

 

「さて、夜になれば出てくるらしいけど。」

 

このスレンダーマンは無差別らしい。また、被害もなかなか大きいそうだ。

 

「これで質の悪い噂とかなら無駄足だぞ。」

 

ぶらぶらと歩く。出るなら早く出てくれ。時間がかかるのは好きじゃない。

バキッという音と共に大男が飛び出して来た。

 

「なんだ……ただの快楽殺人か。」

 

呪いとか、怨嗟とか、そんなんが一切無く、ただ殺したいから殺すだけのやつか。

 

「お前、つまんねぇやつだな。」

 

右足を鞭の様にしならせて男の顎を蹴り穿つ。

ゴキリ、嫌な音と感触が足に伝わる。あぁ、やだやだ。俺はただの霊媒師なのにどうして人間の相手をしないといけないのか。

 

「やっぱり、食べるとかそう言う理由も無しに殺せるんだから、霊よりも人間の方が恐ろしいよな。」

 

大男が立ち上がる。しぶといよな。やっぱり日本人とは体格が違うから面倒だ。

その辺の少し太い木の棒で鳩尾を突く。膝を着いた相手の鼻っ柱に膝を入れる。

 

「はぁー、昔を思い出すな。」

 

俺が引き取られる前の話だ。今でこそマシになったが俺を女だと勘違いした変態……女も居たが、襲われた事があった。最初は運良く何とか逃げる事が出来たがそれが数回もあるともしもがあったらどうしようもない。だから喧嘩風な戦い方を覚えた。型とか覚えられないだろうからこれで正解だったんだろう。身体能力も良かったからか、油断させて急所を狙えば大人でも倒せるようになった。

髪を切れ?昔は母さんが、今は家族、特に日菜と紗夜が髪が綺麗って言ってくれるから嫌だね。

 

「イヤァァァ!!変態死すべし、慈悲は無い!……ん?殺したらまずいか。」

 

スマホを開いて協会のアメリカ支部に連絡をして今回の依頼は終わり。ふぃ〜、疲れた疲れた。

 

 

 

 

アメリカを旅していた途中で出会ったシャーマンと仲良くなって居候させてもらって一年、久し振りに遠方に行く依頼が来た。

 

「ふーん、アメリカ北部のインディアンの集落跡地の墓で亡霊ね。」

 

複数の霊なのか、集合体なのか。まあ、さらっと終わらせよう。北部なら防寒着も必要かな。

 

「よぉ、キョウヤ。そろそろ行っちまうのかい?」

 

「ああ、世話になったな。良い時間だった。」

 

「こっちこそ。今度は俺がニッポンに行ってやるよ。」

 

「本当か?ならその時は連絡してくれ。俺の家族を紹介しよう。」

 

「ハハハッ!そいつは楽しみだな!お前が良く口に出す妹ってのもかなりの美人になってるんだろ?なんたってお前は無駄に顔が良いからな。」

 

「ふんっ、当たり前だろ?でも手を出すって言うなら……。」

 

「お前ってやつは本当にシスコンだなぁ……。」

 

「余り俺を褒めるなよ。良い人生を。」

 

「褒めてないんだがな……元気でな。」

 

近くの駅まで一時間程かかるかと思い、一度振り返って手を振ってから歩く。

 

 

 

 

「おーおー、憎悪が凄いね、滾ってるねぇ。」

 

ぶつぶつ呟いてるけど何言ってるか分かんないんだよね。

 

「とりあえず準備として集落を覆う結界を作って……。」

 

テキトーに集落の周りを歩きながら札を張る。距離?間隔?形状?知らん、俺の専門外だ。…………やっぱ多少は勉強すべきだったかなぁ。

 

「さって、準備完了!たまには霊媒師らしくやってみるか。」

 

結界の中に入り札を拳に張る。昔のある退魔師、霊媒師は拳で霊魂を鎮めていた。と聞いた事がある。ピッタリのやり方だ。霊媒師っぽいな!

 

「いきなり余所者が来てこんな事をするのは悪いし、恨んでもいい、祓わせてもらうね。」

 

複数の霊か。楽といえば楽だけど時間がかかるな。

あまり力を入れずにペシペシ祓っていく。あれ、札要らなかったかも。素手で良かったんじゃないかな?武器も最近使わないし。

 

「人の心や想いを祓うのが流れ作業になるのって嫌だなぁ……。」

 

ため息を一つ、しかしこれが一番手っ取り早い。広範囲の術式とか知らないし。

結局、この霊達を祓うのに二時間はかかった。

 

 

 

 

また一年過ぎた。髪がどんどん伸びている。そろそろ少しは切らないとだが、面倒でいつも毛先を整える程度にしてしまう。

今度は街中でアパートを借りて一人で生活をしている。前回は田舎だったから少し新鮮な気分だ。ああ、そろそろ妹達の声が聞きたい。ホームシックかな?

また依頼だ。今度はイギリス周辺。別にイギリスだけじゃないらしい。対象は吸血鬼一人。銀の十字架に聖水、木の杭くらいか。全く、俺は霊媒師だって言ってるのに。

 

「ああ、面倒だなぁ。」

 

そろそろ疲れてきたんだけど。

 

 

 

 

「さて、と。どこを探せば良いのやら。夜の街でも歩けば良いのか?」

 

ふらふらと目的もなく歩く。時々女性から誘われるが興味がイマイチ無い。欠伸を噛み締める。これを何日かするならば寝る時間をずらす事にしよう。

 

 

 

 

一月は経ったはず。カレンダーなんていちいち買うのもめんど面倒だし、時間合わせるのも手間だ。

 

「そこの貴方。よろしいですか?」

 

「はい?」

 

振り向くと女性が居た。妙に惹かれる、という事は間違いなく吸血鬼である。様子は見るけどね。

 

「こちらの方へ……。」

 

手招きをされてふらふらと着いていくと薄暗い路地に来た。

 

「麗しいご婦人、どうかされましたか?」

 

「少々、手助けして欲しいのです。私の栄養となりなさいぃ!」

 

やはり吸血鬼か。銀の十字架をポケットから取り出し目に突っ込む。

 

「ぎぃいい!?貴様、ハンターか!?」

 

「霊媒師だっての。みんなして何なの?俺を超常現象、霊的現象とかならなんでも引き受けるやつに見られてんの?」

 

イラッときて蹴り飛ばし、胸に杭を突き刺して地面に縫い付ける。そしたら顔面に聖水を振り掛けて頭を潰して終わり。

 

「ああ……イライラする。」

 

頭を掻く、つまらない。ほんの二年前はしっかりと人の心や想いを大事にしていたし、日常生活が楽しかったはずなのに。今はポッカリと穴が空いた様で、たまに大事にしていた物を忘れてしまう。

 

「帰りたいな。」

 

 

 

 

つまらない一年がすぎた、紅茶は美味いし、料理も美味いんだなと感心したがつまらない。共有出来る誰かが欲しいな。

 

「ん?ここは……。」

 

目を覚ますと電車、古びた広告から見て日本だ。

 

「……遂に夢の中でもか。」

 

予想、いや確信を持って言うと猿夢。まずいな。俺の他の乗客は実際に生きているのか、それともただの演出なのか。現実で生きているなら助けないとな。つー事で助ける。

 

「あれ、俺以外に居ないのか?」

 

なるほど、あれはただの一例なだけだったのか。

ならあの猿みたいなやつらは全力で俺を殺しに来る訳だ。

 

「行こうか。」

 

金縛りを軽く粉砕して立ち上がる。いつもより調子が良いな。電車内が日本の雰囲気だからかな?

 

『次は〜肉叩き〜肉叩き〜』

 

窓から猿が入って来て肉叩き用のハンマーを持ってきた。

 

「それくらいなら問題無いな。」

 

テキトーに潰していく。面白味もない。

とっとと祓って次の列車へ向かう。

 

『次は〜三枚おろし〜三枚おろし〜』

 

今度はのこぎり。動いてる人間にのこぎりってかなり微妙だと思うんだけど。

着ていた上着をのこぎりに噛ませて動きを止める。単調だな。これはさっさとやれるんじゃないか?

 

『次は〜おろし金ーおろし金〜』

 

これは厄介だ。先手必勝じゃないとジリ貧になってしまう。

なるべく射程外からの蹴りで倒していく。

 

「さて、思ったより短かったが、こいつが運転席だ。」

 

ドアをこじ開けると猿が密集していて、俺が入ろうとすると飛び付いて来た。

 

『次は〜終点〜激突〜激突〜。ご乗車〜ありがとうございます〜。』

 

死なば諸共かよ。右手に力を込めて振り抜くと右腕周辺と通り過ぎた所の猿が消え去り、ブレーキを引っ掴んで全力でブレーキをかけた。金属の擦れる嫌な音が響き、目の前に岩が迫り終わりかと思ったが、何とか止まってくれたらしい。

 

「日本の雰囲気だけでもを思い出させてくれてありがとう。良い来世を。」

 

少しだけ気分転換になったかな。

 

 

 

 

「えっ。」

 

今度の依頼はエジプト。呪いの解呪らしい。本当に専門外なんだけど、何すればいいのか分からないんだけど?

国際電話でババァに電話をかける。

 

『なんじゃ。』

 

「おいババァ。俺解呪とか専門外なんだけど?」

 

『お前ならええ感じにやれるじゃろ。バーンッと。』

 

「古いテレビじゃあ無いんだぞ!?」

 

『分かっとるわ。お前なら出来る内容だから頼んどるんじゃろう。』

 

「はー……分かった。やりゃ良いんだろ?」

 

『さっさとそう言えばいいんじゃ。ではの。』

 

 

 

 

現地に着いて軽く話をしたら早速とばかりに呪いにかけられた男に上を脱がせ背中を向けて座らせる。

 

「よっしゃぁ!気合い入れろよ!?フゥン!!」

 

返事を待たないまま背中をぶっ叩く。覚悟が出来るまで待つなんて無駄だ。

スパァァン!!と我ながら良い音が出ると男の口から多分呪い……かな?んん、呪いが出てきて、握り潰した。

 

「Ohhhhhhh!!!!」

 

「よっし、じゃあな!」

 

男のが悶えているのを無視してとんずらする。余計な手間が増えそうだし。

 

 

 

 

ある日、ババァから連絡が来た。

 

『お前の仕事もこれで最後じゃ。』

 

「やっとか、長かったな。」

 

4,5年って所か。ようやく帰れる。

 

「それで。次はどこだ?」

 

『日本じゃ。コトリバコが見つかった。』

 

「……いくつだ?」

 

『ハッカイじゃ。』

 

「ババァ……遂に俺を殺すつもりか?」

 

『ふん、儂だけで決められたら苦労せんわ。確実に鎮められる方法を選ぶ。この決定は他の者が決めよった、と言うよりも既に一度勝手に実行して失敗した事により状況が悪化しよった。』

 

「チッ……ババァ、他の霊媒師だってコトリバコの基本の鎮め方くらいなら知ってるはずだろ?」

 

『もちろん、霊媒師、退魔師、とにかく協会に所属する人間は有名な霊、都市伝説、怪異については必ず知る。今回のコトリバコも昔から注意せよと言われて来た。

ただ、焦ったのだろう。ハッカイなど、あるはずが無いと思っておった物だしの。

……尻拭いさせる様ですまないの。儂がまだ現役であれば何とか出来た物を。』

 

「急に謝るなよ……調子狂うな。分かったよ。やってやるよ。」

 

ああ、これは長くなりそうだ。まあ、一年は祓い続ける事になりそうだ。

 

「せめて、美味い飯を食べれる様にしてくれよ。後、寝床も。」

 

『それくらいなら任せておけ。良い物を用意しておこう。』

 

「んじゃ、決定な。」

 

…………流石に、不安だな。ハッカイなんて幻だと思ってた。俺に出来るか……?

 

 

 

 

現場に到着すると複数の霊媒師や退魔師が周囲を囲って結界を張っていた。

 

「これが、ハッカイか……。」

 

中に入ると中央に箱があり、怨念、恨み、殺意、全てを混ぜて地獄に突っ込んだ様なものを感じた。

まずは体を清めて、清潔な服装をし、食事に睡眠をしっかりと取り、ハッカイの前で胡座をかく。

 

「さあ、始めようか。」

 

目を瞑って自分の力をゆっくりと引き出していく。力に方向を付けてハッカイに向ける。

現状、何重にも掛けられた結界のお陰で外に被害は無いが、内部に居る俺への被害は分からない。

 

「俺とお前の我慢比べだ。」

 

あ、定期的に食事と睡眠、風呂は取ります。

 

 

 

 

「つぅっ……。」

 

あれから半年くらいか、胡座をかいて清め続けて効果は出ているみたいだが俺の体も生傷が絶えない。体を裂かれた様な痛みとそれとは別に体を鋭い刃物で斬られた様にスパッと傷が付き血が流れる。時折血を吐く事もある。

呪いの影響が全て俺に来ているみたいだが生来の抵抗力のお陰で死ぬまではいってない。

 

「ごふっごふっ……」

 

びちゃっと血が吹き出る。あーあ、これは傷を治さないと家族には会えないなぁ。

 

「おおっとと……。」

 

ふらりと倒れそうになる。懐から増血剤を取り出して飲む。即効性は無いが多少は効くだろう。

 

「そろそろ諦めて祓われてほしいんだけどねぇ……。」

 

へらりと笑うがハッカイの気配は薄まらない。

いっその事叩き割ってやろうかこいつ……。

 

 

 

 

「さーてと……こいつでようやっと終わりだ。」

 

遂に一年経ってハッカイが弱くなった。後はこの箱をぶっ壊すだけだ。この野郎、てめぇの呪いで一部の傷が残っちまったよ。

箱を掴み上げて握り潰す。最後に黒い瘴気が空に上がって消えた。

 

「あー!つーかーれーたー!!!」

 

その場で大の字に転がると周りから拍手と賞賛、感謝の声が聞こえる。

ん〜……いいね、心地良いし、気持ちが良い。面倒だったけど、やって良かった〜!

 

「お疲れ。」

 

「よう、ババァ。やってやったぞ。どうだ。」

 

「ふん……良くやった。ありがとう。」

 

おいおい、あのババァが感謝の言葉を言ったぞ?

 

「なんじゃ、その目は儂だって感謝くらいするわ!」

 

「わ、悪かった悪かったよ。」

 

「やれやれ……さて、約6年の務めご苦労であった。これからはこの様な依頼が無いと約束しよう。」

 

「そうしてくれ。あ、でも今回みたいなのは流石に呼んでくれ。危ない。」

 

「分かっとるわ。……お前の家族も心配しておる。帰ってあげなさい。」

 

「言われなくても。」

 

ちゃちゃっと帰る支度をして飛行機の予約を取る。これのが速い。

 

 

 

 

「ふんっふっふふんふんふんっふんっふーん。」

 

サプライズをしようとなるべく音が鳴らない様に鍵を開ける。

……?こんなに靴あったかな。オシャレにでも目覚めたかな?高校生だろうし。

リビングから声が聞こえる。ふふふ、驚かせてやろう。

バーンッとドアを開ける。

 

「たっだいまー!!愛しのお兄ちゃんが帰って来たぜー!!」

 

 

 

 




これいる?

いる。(ハイパームテキ)
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