日本国召喚補遺の伝 -離島強襲作戦ー   作:kotomari

1 / 13
普通哨戒任務は2機以上の編隊でやるそうですが描写力(謎)がないので許してください。


沖縄諸島沖

 ゴォー、と4発のプロペラ機であるのにまるでジェットエンジンの様なシンフォニーを奏でながら一機の航空機が哨戒飛行(LOITER)をしていた。

 それは尾部に張り出し棒(MADブーム)が伸び、主翼と胴部の中ほどに赤い太陽の印が象られていて、新世界において一番最初に陸地を発見した航空機であるP-3Cだ。

 その余裕のあるターボフロップエンジンは機体を飛ばすだけであれば2発でも十分な推力が生まれる。長時間空にいることを求められる哨戒飛行では燃料消費を抑えるため1発を停止させ、正に道草を食うか(LOITER)のように任務を行う。

 

「ESM探知(コンタクト)。方位1-8-4」

「レーダー員、何かおかしいことでもあるのか」

「捉えた周波数帯が超短波(VHF)です。更に通信用途に用いるにしては間隔が規則正しすぎます。まるで2次元レーダーのような…」

 

 非音響員(SS-3)が挙げた報告に機長である戦術航空士(TACCO)が問うた。普通航空機の機長は操縦士がやるものだが哨戒機は機雷の散布や魚雷の発射など戦術的な判断が必要とされるためTACCOがベテランである場合機長をやることは珍しい事ではない。

 今日、VHFが用いられる用途とは航空機の離発着に用いる電波標識や防災無線などでありレーダー波といった用途には用いられない。

 そのためTACCOも不自然であると感じ、ソレに向かう事を決めた。

 

「そうか。とりあえずレーダーで探知できるまで探知した方角を辿ろうか。指揮操縦士(PIC)針路変更を」

「了解。針路1-8-4、速力328kts(607.5km/h)

「了解」

 

 ECMは方位など断片的な情報しか判らない。なので捉えるには自機レーダーで捕捉可能な距離まで移動しなければならない。機内無線である程度察していたPICはコックピットの進路情報を打ち込み、指示があったのち副操縦士も続いて応答する。

 休ませていた4基目のエンジンを発動させ、機体を急行させる。那覇航空基地第五航空軍第52飛行隊所属のP-3Cは他の乗組員へ改めて現状の通達、そして目標を見つけた場合の対応を打ち合わせを行った後、司令部へ連絡し状況説明を行った。

 

―――

 

「レーダー探知。方位1-5-5距離105nm(195km)自動船舶識別装置(AIS)に当該船舶の位置にあたる船舶情報ありません」

「船足と進行方向はわかるか?」

「おそらく15kts(27.8km/h)で南東に移動しています」

 

 針路変更をしてから数十分後、レーダーが捉えた。距離的にレーダーの探知距離の外にいたらしいことがわかる。

通常東経と緯度で目標の位置情報を報告するがGPSが使えなくなっているので"何か"を探知した場合方位と距離を伝える方法に代わっていた。

 

「見つかったか。レーダー員、それ以外に分かるようなことはあるか?」

「ISARがまだ覆域外なので正確な判断とは言えませんが…船体が金属でできているかと」

「いよいよ事案じみてきやがったな…。そういえば不審船に我が機が探知されたかわかるか?所感でいい」

「受信機の程度によりますが探知できていないと思います」

 

 この場合の程度とは電波出力や輻射源(レーダー)の高度のことを言う。SS-3の報告をまとめてみれば、日本ではレーダーとしては使用されない周波数帯をレーダーとして使用する金属製の船体を持つ不審船。それにAISにも登録されていない。となり、情報を収集するほど不審船、工作船という可能性が高まっていく。

 事が武器使用に関わるかもしれないと感じたTACOは不審船の詳細の報告も兼ねて司令部への回線を再度開いた。

 

「こちら哨戒中第52飛行隊178号機から那覇第五航空群司令部へ、不審船の情報を伝達します」

『こちら司令室、続けてどうぞ』

 

先ほど連絡した当直通信司令士と同じ者が通信に出た。

 

「どうやらやはり電子機器を装備しておりAISに該当する航跡情報はなく、我が方と105nmの距離を保ち現在15ktsで南東に移動中」

『了解。ではその距離を保ち待機を。護衛艦が周辺海域に存在しない為空自に出動を要請します』

「こちらが目視確認はせずでよろしいですか」

『万が一にも交戦等は許可できない。貴機は追尾と動きがあれば都度報告をお願いする』

 

相手が不審船や工作船に留まらず、軍艦だった場合の当然の対応である。対空ミサイル用のフレアといえど目視距離で撃たれればP-3C程の大型機はエンジン停止をしてフレアを放出しても絶好の標的となる。

 

「司令室への今後の通信は変えますか」

「空自との連絡用無線を使ってください。こちらは傍受する」

「了解」

 

ブツリ、と回線が切れPICに指示を飛ばす。この後来る空自機も当然GPSが使えないのでこの機体が誘導するしかない。正確に誘導できるようTACCOは距離、方位を頭に入れた。

 

―――

 

「沖縄諸島沖に不審船舶発見。捕捉、対処の為第8飛行隊は応急出動用意。当直FIは司令室に出頭を」

「スクランブル――ッ!」

 

 航空自衛隊築城基地、応急出動パイロット待機室のスピーカーに呼び出しの声が上がる。当直パイロットは雑談や読書などを直ちに止め、椅子を蹴り出す勢いで立ち上がり小走りで部屋を出て司令室に入った。

 

「青木一尉、水城二尉入ります!」

「ご苦労。」

 

司令室に入室するとそこに隊司令などの顔ぶれが揃っており、青木と水城両名の顔が引き締まった。

 

「待機室で聞いたと思うが再度状況を説明する。一一〇〇に海自哨戒機が定時任務中にレーダー波を探知したのち不審船を発見した。護衛艦が近くに遊弋しておらず偵察を主として我が航空隊に出動を要請してきた。貴隊らは不審船に近づき、情報収集にあたってもらいたい」

「距離がF-2の戦闘行動半径を越えませんか?」

「今回は偵察が主だ。故に武装は警戒待機(ALERT)時の形態となるから十分だろう」

「詳しい位置情報はどうやって把握しますか?」

「まあある程度近づけば自機レーダーで判るだろうが、離陸して暫く後に南空SOCにハンドオーバーすることになり、誘導はそちらが受け持つこととなる」

「「了解」」

 

エプロン(飛行場)では整備員や他のパイロットが武器の搭載やエンジン始動を終えておりF-2のF110-GE-129ターボファンエンジンが既に掩体から出され唸りを上げていた。

 武装は警戒待機時用の短距離空対空誘導弾(AIM-9L)2基に600ガロン増槽が2槽、偵察機材を載せていた。

 2名が機体に駆け込みフラップとスラットの動作確認、HUDの起動テストを行った。既に機体は離陸するのみだ。

 

Runway A01 line up and wait(A01滑走路上にて待機)

Runway A01 arrivel(そちらに到着した)

Ok,Unit01 cleared for take off Runway.Good lock(よし、1号機離陸せよ。無事を祈る)

 

 初めてのスクランブルという訳ではない。だが何かも解からないものと相対すのは絶対に慣れるものではないのだ。二番機の水城は操縦桿(ジョイスティック)を握りこんだ手を力めたり緩めたりしつつ思考を切り替えた。

 F-2戦闘機が滑走路(ランウェイ)へ進入する。後ろのターボファンエンジンが火を噴き34.84m²の翼と14.6tの重量が全て加速を終え、機首を空へ向けて洋上迷彩が描かれた矢じりにも似た機体が轟音と共に離陸する。続いて数分後には2番機も飛び立った。海自の通報から20数分後の事である。

 

―――

 

「しかし、何故那覇第9のF-15Jでなくて我々なんでしょうかね。93式どころか誘導爆弾も抱えない偵察任務ならあっちの方がよっぽど…」

「低空低速の速度域ならばF-2の十八番だからな。それにこのフライトだけじゃ任務は終わらんだろう」

「というと?」

()()()()()()()()()、空爆か対艦攻撃か、お楽しみだ」

 

 6、70分前に離陸したF-2は540kts(1000km/h)の遷音速で巡航していた。2機は九州を既に抜け、周波数帯を変更し、管制元が移管(ハンドオーバー)された。

 

Southern SOC,This is Squad kingfishers.(南方soc、こちらキングフィッシャー隊。)Now,maintaining angel 50.over(現在、高度5000。送れ)

This is SADF.You are under my control.(こちら南西航空方面隊、誘導を開始します。)Steer 128,maintain present angel(同高度にて方位128へ)

Roger.…How done taget contact?(了解…どのように探知すれば?)

Coordinate with the leading P-3C(先行した海自機と連携せよ)

Roger(了解)

 

P-3CはF-2と比べ指揮能力や多彩な情報収集活動が出来るので長機になった。機長がこの場で一番階級が高いのも要因である。事前に指揮権の話は滞りなく終わった。

 

「あ、あー、こちら第8飛行隊所属キングフィッシャー隊。現場空域待機中のP-3Cで宜しいか?」

「合っている。目標の電子機器について伝える。恐らく対空2次元の監視レーダーだと思われ、現在南大東島東部沖に進出中」

「了解。では低空で進出した後目つぶしを喰らわす。貴機はまだこの場にいるのか?」

「いや、ビンゴが怪しい。後続が来次第お暇する。目くらましには付き合おう」

「了解。お気を付けを」

 

 F-2が2機とP-3Cが揃って機首をモニターの輝点(プリッブ)のある方角に向けた。先程まで軽口を叩いていた隊長の姿はもうなく、その眼は戦いを挑む兵士になっていた。

 

「ECMをアクティブからパッシブに、ジャミング照射―――。」

 

 カチリと、ECM変換の操作をする。今日のジャミングの手段は周波数掃引妨害と呼ばれるものが広く使われる。これは相手の周波数に合わせてジャミングを照射する。そして敵が周波数を変調しても同調するのだ。故に敵の全周波数に広く妨害を掛けるバラージとは違い、強力な照射が行える。

 不審船に合わせたジャミングが、見えない嵐となって飛んで行った。

 

「では、我が隊は突っ込んでくる。堕ちないよう祈っててくれ。」

Good Luck(幸運を)。頑張ってくれ、我々も鉄屑と黒い箱(FDR)回収任務(サルベージ)なんてしたくない。」

「了解、できるだけ原型を残すよう頑張るよ。」

 

お互いのダブルミーニングの皮肉り合いも終わり、それぞれが任務を遂行すべくやるべきことを十全にさせた。

 

―――

 

「レーダー機能に異常発生、北面全体に砂嵐が掛かっています」

「故障か?太陽嵐か?周波数も変えてみろ。」

「故障にしては、こんな風には…それとも首振り機に異常が出たかもしれません」

「では艦体を逆向きにするぞ。転舵、面舵180」

「ヨーソロー」

 

 秘密基地から200kmの位置、沖縄諸島の南東300kmの位置にそれはいた。グラ・バルカス帝国軍の潜水艦である。日本の通商破壊と、どこまでも自国の攻撃の射程距離内だと世界に知らしめるために彼らは来ていた。

 基地に集積物を積み終わり、陣地構築までに数日ほど経ち、この潜水艦も哨戒と付近を通りがかる日本軍の軍艦、商船の行動把握のために紹介をしていた。

 

「どうだ、やはり故障か?」

「い、いえ…依然砂嵐は北面にかかっています。何らかの攻撃かもしれません!」

「艦長!対空戦の準備を致しますか!?」

「いや、いい。潜るぞ。本当にいるどうかもわからんが目視圏内に入られたら流石に危険だ。」

 

この潜水艦の武装は魚雷発射管前後合わせて6門、7.7mm機銃と13mm機銃が一挺ずつ、10cm単装高角砲1門である。これでは複数機で来られたら流石にまずい。

 

「急速潜行。手の空いてるものは艦首に行ってトリムを稼げ。」

 

機関士や水雷員、電測員、司令官以外の者が艦首に走る。重心が変わったことによりただ潜るより早く沈降した。

 

「潜望鏡深度につけて、様子を見る」

 

―――

 

「…!不審船の反応が小さくなっていきます」

「沈没か?」

「詳しくは判りません。ですが沈む速さがただの沈没より著しく早いです。」

「…。救難支援に行くぞ。あと機上武器整備員(ORD)、ソノブイを投射だ。」

「ソノブイを投射ですか?」

「詳しい位置情報と爆沈かどうか見極める必要がある」

「は!」

 

 電子戦を仕掛けたことにより、分解能が極めて高いISAR(逆合成開口レーダー)が届く距離まで近づいたP-3C。 そして近づくという判断が奏し、捜索用レーダー(APS)ではわからない目標の更に詳しい状態把握を行っていた非音響員が、いち早く気付く。

 そしてポン、と火薬によってソノブイが機外へ放出された。ソナー員である機上対潜音響員(SS-2)がモニターとヘッドホンに神経を集中させる。

 F-2が接近して少し後、事態が急変し、緊張感が高まる。眼で見ようとしていたモノが、突如沈み始めたのだ。TACOは救難支援へ動こうと変針する指示を飛ばそうとする。だがその前にF-2パイロットに伝えるべき事があると無線を掛けようとした時、相手側から無線がかかってきた。

 

「こちらキングフィッシャー隊、どうかしたのか」

「恐らく沈没の可能性が高い。当機は救難支援用のキットを持っているので急ぎ現場に向かう。海の下からも現状を確認しつつ向かうから貴隊はそのままレーダーが反応するまでに現場に向かってくれ。そしてジャミングの解除を」

「了解―――」

「待ってください」

 

 水城がジャミングを切りかけた瞬間、ソナー員が待ったをかけた。深刻な声にどうしたと搭乗員が耳を傾ける。

 

「ソナー員どうした。爆沈ではなかったのか?」

「不審船は深度5m(潜望鏡深度)を維持したままです。そしてキャビテーションノイズ、1。潜水艦です」

 

 

 

 




数字などは軽く計算したり調べたりしてますがかなり適当なのでご了承ください。もし酷かったらご指摘ください。


次話は横浜駅の改修が終わったら投稿します。

どんな環境で本作をご覧になられてますか?

  • スマホでスマホ用ページを見ている
  • PCでPC用ページを見ている
  • スマホでPC用ページを見ている
  • PCでスマホ用ページを見ている
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。