ゴォー、と4発のプロペラ機であるのにまるでジェットエンジンの様なシンフォニーを奏でながら一機の航空機が
それは尾部に
その余裕のあるターボフロップエンジンは機体を飛ばすだけであれば2発でも十分な推力が生まれる。長時間空にいることを求められる哨戒飛行では燃料消費を抑えるため1発を停止させ、正に
「ESM
「レーダー員、何かおかしいことでもあるのか」
「捉えた周波数帯が
今日、VHFが用いられる用途とは航空機の離発着に用いる電波標識や防災無線などでありレーダー波といった用途には用いられない。
そのためTACCOも不自然であると感じ、ソレに向かう事を決めた。
「そうか。とりあえずレーダーで探知できるまで探知した方角を辿ろうか。
「了解。針路1-8-4、速力
「了解」
ECMは方位など断片的な情報しか判らない。なので捉えるには自機レーダーで捕捉可能な距離まで移動しなければならない。機内無線である程度察していたPICはコックピットの進路情報を打ち込み、指示があったのち副操縦士も続いて応答する。
休ませていた4基目のエンジンを発動させ、機体を急行させる。那覇航空基地第五航空軍第52飛行隊所属のP-3Cは他の乗組員へ改めて現状の通達、そして目標を見つけた場合の対応を打ち合わせを行った後、司令部へ連絡し状況説明を行った。
―――
「レーダー探知。方位1-5-5距離
「船足と進行方向はわかるか?」
「おそらく
針路変更をしてから数十分後、レーダーが捉えた。距離的にレーダーの探知距離の外にいたらしいことがわかる。
通常東経と緯度で目標の位置情報を報告するがGPSが使えなくなっているので"何か"を探知した場合方位と距離を伝える方法に代わっていた。
「見つかったか。レーダー員、それ以外に分かるようなことはあるか?」
「ISARがまだ覆域外なので正確な判断とは言えませんが…船体が金属でできているかと」
「いよいよ事案じみてきやがったな…。そういえば不審船に我が機が探知されたかわかるか?所感でいい」
「受信機の程度によりますが探知できていないと思います」
この場合の程度とは電波出力や
事が武器使用に関わるかもしれないと感じたTACOは不審船の詳細の報告も兼ねて司令部への回線を再度開いた。
「こちら哨戒中第52飛行隊178号機から那覇第五航空群司令部へ、不審船の情報を伝達します」
『こちら司令室、続けてどうぞ』
先ほど連絡した当直通信司令士と同じ者が通信に出た。
「どうやらやはり電子機器を装備しておりAISに該当する航跡情報はなく、我が方と105nmの距離を保ち現在15ktsで南東に移動中」
『了解。ではその距離を保ち待機を。護衛艦が周辺海域に存在しない為空自に出動を要請します』
「こちらが目視確認はせずでよろしいですか」
『万が一にも交戦等は許可できない。貴機は追尾と動きがあれば都度報告をお願いする』
相手が不審船や工作船に留まらず、軍艦だった場合の当然の対応である。対空ミサイル用のフレアといえど目視距離で撃たれればP-3C程の大型機はエンジン停止をしてフレアを放出しても絶好の標的となる。
「司令室への今後の通信は変えますか」
「空自との連絡用無線を使ってください。こちらは傍受する」
「了解」
ブツリ、と回線が切れPICに指示を飛ばす。この後来る空自機も当然GPSが使えないのでこの機体が誘導するしかない。正確に誘導できるようTACCOは距離、方位を頭に入れた。
―――
「沖縄諸島沖に不審船舶発見。捕捉、対処の為第8飛行隊は応急出動用意。当直FIは司令室に出頭を」
「スクランブル――ッ!」
航空自衛隊築城基地、応急出動パイロット待機室のスピーカーに呼び出しの声が上がる。当直パイロットは雑談や読書などを直ちに止め、椅子を蹴り出す勢いで立ち上がり小走りで部屋を出て司令室に入った。
「青木一尉、水城二尉入ります!」
「ご苦労。」
司令室に入室するとそこに隊司令などの顔ぶれが揃っており、青木と水城両名の顔が引き締まった。
「待機室で聞いたと思うが再度状況を説明する。一一〇〇に海自哨戒機が定時任務中にレーダー波を探知したのち不審船を発見した。護衛艦が近くに遊弋しておらず偵察を主として我が航空隊に出動を要請してきた。貴隊らは不審船に近づき、情報収集にあたってもらいたい」
「距離がF-2の戦闘行動半径を越えませんか?」
「今回は偵察が主だ。故に武装は
「詳しい位置情報はどうやって把握しますか?」
「まあある程度近づけば自機レーダーで判るだろうが、離陸して暫く後に南空SOCにハンドオーバーすることになり、誘導はそちらが受け持つこととなる」
「「了解」」
武装は警戒待機時用の
2名が機体に駆け込みフラップとスラットの動作確認、HUDの起動テストを行った。既に機体は離陸するのみだ。
『
「
『
初めてのスクランブルという訳ではない。だが何かも解からないものと相対すのは絶対に慣れるものではないのだ。二番機の水城は
F-2戦闘機が
―――
「しかし、何故那覇第9のF-15Jでなくて我々なんでしょうかね。93式どころか誘導爆弾も抱えない偵察任務ならあっちの方がよっぽど…」
「低空低速の速度域ならばF-2の十八番だからな。それにこのフライトだけじゃ任務は終わらんだろう」
「というと?」
「
6、70分前に離陸したF-2は
「
『
「
『
「
P-3CはF-2と比べ指揮能力や多彩な情報収集活動が出来るので長機になった。機長がこの場で一番階級が高いのも要因である。事前に指揮権の話は滞りなく終わった。
「あ、あー、こちら第8飛行隊所属キングフィッシャー隊。現場空域待機中のP-3Cで宜しいか?」
「合っている。目標の電子機器について伝える。恐らく対空2次元の監視レーダーだと思われ、現在南大東島東部沖に進出中」
「了解。では低空で進出した後目つぶしを喰らわす。貴機はまだこの場にいるのか?」
「いや、ビンゴが怪しい。後続が来次第お暇する。目くらましには付き合おう」
「了解。お気を付けを」
F-2が2機とP-3Cが揃って機首をモニターの
「ECMをアクティブからパッシブに、ジャミング照射―――。」
カチリと、ECM変換の操作をする。今日のジャミングの手段は周波数掃引妨害と呼ばれるものが広く使われる。これは相手の周波数に合わせてジャミングを照射する。そして敵が周波数を変調しても同調するのだ。故に敵の全周波数に広く妨害を掛けるバラージとは違い、強力な照射が行える。
不審船に合わせたジャミングが、見えない嵐となって飛んで行った。
「では、我が隊は突っ込んでくる。堕ちないよう祈っててくれ。」
「
「了解、できるだけ原型を残すよう頑張るよ。」
お互いのダブルミーニングの皮肉り合いも終わり、それぞれが任務を遂行すべくやるべきことを十全にさせた。
―――
「レーダー機能に異常発生、北面全体に砂嵐が掛かっています」
「故障か?太陽嵐か?周波数も変えてみろ。」
「故障にしては、こんな風には…それとも首振り機に異常が出たかもしれません」
「では艦体を逆向きにするぞ。転舵、面舵180」
「ヨーソロー」
秘密基地から200kmの位置、沖縄諸島の南東300kmの位置にそれはいた。グラ・バルカス帝国軍の潜水艦である。日本の通商破壊と、どこまでも自国の攻撃の射程距離内だと世界に知らしめるために彼らは来ていた。
基地に集積物を積み終わり、陣地構築までに数日ほど経ち、この潜水艦も哨戒と付近を通りがかる日本軍の軍艦、商船の行動把握のために紹介をしていた。
「どうだ、やはり故障か?」
「い、いえ…依然砂嵐は北面にかかっています。何らかの攻撃かもしれません!」
「艦長!対空戦の準備を致しますか!?」
「いや、いい。潜るぞ。本当にいるどうかもわからんが目視圏内に入られたら流石に危険だ。」
この潜水艦の武装は魚雷発射管前後合わせて6門、7.7mm機銃と13mm機銃が一挺ずつ、10cm単装高角砲1門である。これでは複数機で来られたら流石にまずい。
「急速潜行。手の空いてるものは艦首に行ってトリムを稼げ。」
機関士や水雷員、電測員、司令官以外の者が艦首に走る。重心が変わったことによりただ潜るより早く沈降した。
「潜望鏡深度につけて、様子を見る」
―――
「…!不審船の反応が小さくなっていきます」
「沈没か?」
「詳しくは判りません。ですが沈む速さがただの沈没より著しく早いです。」
「…。救難支援に行くぞ。あと
「ソノブイを投射ですか?」
「詳しい位置情報と爆沈かどうか見極める必要がある」
「は!」
電子戦を仕掛けたことにより、分解能が極めて高い
そしてポン、と火薬によってソノブイが機外へ放出された。ソナー員である
F-2が接近して少し後、事態が急変し、緊張感が高まる。眼で見ようとしていたモノが、突如沈み始めたのだ。TACOは救難支援へ動こうと変針する指示を飛ばそうとする。だがその前にF-2パイロットに伝えるべき事があると無線を掛けようとした時、相手側から無線がかかってきた。
「こちらキングフィッシャー隊、どうかしたのか」
「恐らく沈没の可能性が高い。当機は救難支援用のキットを持っているので急ぎ現場に向かう。海の下からも現状を確認しつつ向かうから貴隊はそのままレーダーが反応するまでに現場に向かってくれ。そしてジャミングの解除を」
「了解―――」
「待ってください」
水城がジャミングを切りかけた瞬間、ソナー員が待ったをかけた。深刻な声にどうしたと搭乗員が耳を傾ける。
「ソナー員どうした。爆沈ではなかったのか?」
「不審船は
数字などは軽く計算したり調べたりしてますがかなり適当なのでご了承ください。もし酷かったらご指摘ください。
次話は横浜駅の改修が終わったら投稿します。
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