日本国召喚補遺の伝 -離島強襲作戦ー   作:kotomari

11 / 13
2020年6月に新たに投稿した話です。あらすじにある通り各話修正を加えておりますので未見の方は是非1話から見てみてください。でも最悪この話からでも…大丈夫…かな?

あと地の分クッソ多いです。


735秒

 物量に物を言わせる波状攻撃という問いがある。旧世界で日本は大量の対艦ミサイル、魚雷の備蓄と多様な運搬手段(ミサイルキャリア―)、米軍との連携をもって回答し当面の対応としていた。

 しかし2015年に国が丸ごと新世界へ転移し、強力な対地攻撃能力と頼みの綱の米軍を欠損した日本は第3文明圏とは非対称戦を繰り広げることになる。技術的に数百年優位にいながら上の問いによりciwsの世話になった護衛艦などがあった。その答えとして哨戒機の爆装化や増設パイロンの開発で一先ず抑えるが、西の果てでまた新たな脅威が勃興した。

 

 基準排水量6万tを凌ぐ強大な戦艦に50機以上の艦載機を運搬できる航空母艦。その護衛や沿海哨戒を担当する巡洋艦に駆逐艦や輸送艦や補助艦艇併せて旧軍を上回る海軍力であった。勿論技術レベルが80年以上前であるので勝てる。だが今の日本の防衛力で無傷に完遂できるかと言われれば断言が怪しくなる上、パーパルディアとの大国間の戦略的抗争(グレート・ゲーム)に勝利した日本は第3文明圏全体を守る義務を負っている。日本が孤立(モンロー)主義ではやっていけないのは歴史が証明する所だ。

 

 それら問題を空間的に支配可能なのは米海軍の空母を擁した戦力投射力が高い空母打撃群だが、その作成は容易なものでなく旧世界の中国はあれ程の国力と無茶が可能な体制でありながら空母を擁した艦隊を獲得するのに20年以上は費やしていた。艦載機についても同程度の時間とそれなりの資金を掛けており日本も同程度の準備期間(マイルストーン)がどうしても生まれると見込まれる。

 現有の射程100km程度の対艦ミサイルの波状攻撃による量対量では撃ち漏らしが怖すぎる。もっと根本を叩くような高価値目標(HVT)キラーや空母(キャリア)キラーであり、早急に準備可能且強力な戦力投射能力を有する装備という何とも都合の良い銀の弾丸(ゲームチェンジャー)を日本は欲した。

 

 如何にリソースを割かず即応が可能で量産性が優れた兵器をどのようにするか防衛省と防衛装備庁は悩んだ。悩みに悩んだ結果自らと比較的近しい国の事を思い出す。

 

(そういえば海軍力の育成中は人民解放軍は何をしていたんだ?)

 

 A2/ADという戦略がある。接近阻止・領域拒否といった意味であり、かつて米空母戦闘群2個が喉元の台湾海峡に突き付けられた際に為す術がなく辛酸を舐めた中国軍は弾道ミサイルの精密投射技術を磨き大陸国家から海洋国家への脱皮が終わるまでの米国の空母打撃群に対する回答としていたのだ。

 防衛装備庁と防衛政策局はこれらを流用した案を省議にかけ、弾道ミサイルや極超音速滑空体(HGV)の開発と装備化を進める防衛計画をミーティア計画とし防衛省が転移後初の大綱にこの戦略を盛り込もうとしていた。

 

 

―――

 

 

 小笠原諸島最南の有人島である硫黄島、そこには4両の重装輪回収車がいた。ただその回収車の平ボディには異様な物が積まれている。それは発射筒(ランチャー)ではなく、まるで巨大なライフル弾の様で先端部がキャビンにまで達している。

 陸上自衛隊…ではなく防衛装備庁の試験装備品、XMSM-1。射程1000km程度の二段式準中距離(MR)対艦弾道ミサイル(ASBM)である。全長10m、直径1.02m重量は7300kgであり一段目ロケットモーターと弾頭後部に4枚ずつ動翼が備え付けられ機動再突入体(MaRV)である事を示唆するかのようだ。

 

 Xの現状接頭語が表す通りこの装備は〇〇式などの冠称がついておらず、性能評価のために10基のみ生産され、ここ硫黄島で試射を行っていた。本来であれば日本唯一のミサイル発射試験場である新島試験所で行われるはずだが、硫黄島の丁度数千キロ先にロデニウス大陸があり空港もあり観測機が追跡・着弾観測がしやすいということでスタンドオフミサイル類の射爆場として硫黄島に新たに設置されたのだ。

 既に6発が発射されており900km先の目標に対し半数必中界(CEP)が10m以内と優れた命中精度を叩き出し、極超音速高高度飛翔体のクラッタデータの取得に役立てられると期待されている。旧世界から弾道弾迎撃技術に用いられる弾道弾の飛行(トラック)データは完全にアメリカ頼りであり迎撃技術の確立のためにも弾道弾そのものの技術は不可欠と判断されたのも一早く実用化と尻を叩かれている要因となった。

 

『こちら統合火力調整所、作戦域に何者かが接近。MSM中隊は対艦戦闘準備せよ』

「了解。対艦戦闘用意」

 

 車両に横たわるように寝ていたXMSM-1が起立し、発射準備が整う。射撃管制のレーダーは73式小型トラックに載せられたP23レーダーであり覆域範囲の若干の底上げを狙い標高170mの摺鉢山に展開しており進行する艦隊の情報収集や捜索にあたっている。

 装備自体はまだ防衛装備庁なのだが、現在運用しているのは歴とした陸上自衛官であり各地対艦ミサイル連隊の人員らから志願者を募り、中隊と言われる通り100人程度で構成された。これだけだと規模が小さく見えるが実際は施設科や通信科の人員も寄せ集まっており千人規模である。

 

『未確認船舶が目標の艦隊と同定。敵艦隊の未来位置は我の位置から480nm(890km)先、方位2-2-5(西南西)

「了解。ICC指示の目標距離480nm、方位2-2-5。航法(ナビ)は比例航法を選択」

 

 既に上空待機しているP-3cの情報提供を指揮統制官が報告し、未来位置を射撃手に伝える。従来の射撃管制装置、指揮管制装置と同じように大型トラックを改修とも考えられたのだが、ユーザビリティのテストも兼ねとりあえずまとめて仮設テントの中で行うことになった。

 そしてテント内のシステムコンソールではレーダースコープのトラックが評価が変わったため識別不明を示す緑から赤に変わり、もたらされた情報をXMSM-1に入力を行う。

 

「こちら射撃統制、4本全ての調整完了」

『状況そのまま、一一四五まで待機維持せよ』

 

 P-3cもこの作戦に参加しているとはいえ有視界下に飛び出させることはさせられない。故に戦果確認は上空に飛ぶ情報収集衛星だがその際解像度向上のため低軌道に落とすためにタイミングを計る必要もある。時刻は10時25分、約20分ほどの待機時間が発生した。

 

 

―――

 

 

「時間です」

「そのようだ」

「朝霞より通達。存分にやれ、と…」

「……」

 

 官邸、防衛省、方面総監部経由で射撃命令が仮設の第1地対艦ロケット中隊の隊長である星野に下る。星野はフッと息を吐いて命令を下した。

 

「妙見作戦発動、弾道弾射撃用意。一定間隔で全弾発射にセット」

「了解。一定間隔で全弾発射準備」

 

 コンソールにいる射撃担当官が一定間隔(RIPPLE)ボタン、掃射(FULL)ボタンを押す。更に透明なスイッチカバーで蓋された交戦(ENG)と書かれたボタンに手をかけた。誤操作抑止の為にエンゲージモード選択ボタンを選択してからエンゲージボタンを押さなければ発射されない仕組みになっている。

 

「発射弾数4発、緒元最終入力と内部電源への移行完了。風向きと風速全て修正範囲内」

〇一(マルヒト)、西部敵艦隊、対艦、中隊集中、指命!」

「用意よし」

「撃―っ」

「撃―っ」

 

 透明な樹脂ケースを捲り、ENGスイッチを押した。そのオペコードが有線で車両に通達され、命令がモーターケースに電気プラグで火が灯る形で反映された。

 一定間隔を上げながら固体燃料推進特有の炎をスカートのように広がらせつつ煙を吐く。発射炎を出しながら上空彼方に1本ずつ轟音を奏でながら消えていく。これにより12分15秒間の空の旅が始まった。

 

「XF-1燃焼終了。モーターユニットを投棄(ジェットソン)。サブバーンアウト速度1.7km/s(M5.2)

「続いてXF-10を点火――燃焼終了まで32秒」

「――燃焼終了、ユニットを分離(セパレーション)。高度120km、バーンアウト速度2.4km/s(M7.25)。亜重力脱出速度に到達」

「07から10すべて予定軌道点(ウェイポイント)を通過中、間もなくミッドコース・フェイズに突入」

「MSMとの通信途絶。レーダー車による追跡に移行します」

 

 MSMのヴィークル後部にはRCS値を高める為にマグネシウム由来の発火体が仕込まれており、レーダーの追跡を容易にさせている。通信が途絶した以上、目標物に着弾するまで誘導は全てMSM自身に一任される。

 

 ミッドコース・フェイズに入りヴィークルの速度が若干落ち始める。とはいえ出している速度はマッハ5以上の極超音速域でありその速度帯で最高到達点に達し、高度200km弱で下降を始める。すると弾頭は再び加速を始めた。

 準中距離弾道ミサイル(MRBM)の場合再突入速度は最低マッハ9以上とされている。その極超音速下で弾頭は800kg以上の重量がありながら東京福岡間の距離を約10分で運搬可能である。

 

 しかし大気圏内で極超音速域で飛行すると熱で機材が劣化するために精密誘導が非常に困難になり通常MRBMはCEPが1km以上になってしまう。その事態を解消するためにXMSM-1は高度計から自身の位置が高度50kmを切ったことを察知し、再突入体後部に備え付けてある動翼が起動する。

 MaRVと言っても再突入体を水平に起こすような事はやらない。大気圏内でそれをやると着弾速度が亜音速まで低下する為だ。なので再突入体が行う機動(マニューバ)は急降下時の回転(ロール)のみであるが超音速域(M1~5)まで減速するにはそれで充分だった。

 

 落下速度がマッハ4を切った時、再突入体のパッシブシーカーがレーダー波を検知する。目標に対しアクティブレーダーシーカーが覆域範囲を1㎡四方に分解していき、RCS、レーダー波や艦隊位置の情報を踏まえ脅威度判定を次々と下していく。このようにシーケンスとは異なり有機的(オーガニック)にターゲットを選択していく技術はマッハ3を超す速度を出すXASM-3のシーカー技術と12式地対艦誘導弾のシステムを応用したものだ。

 

 MSMはそれを更に高度化させた物で、発射された4基間でネットワークを組み脅威を設定し2つに分かれるルート選択を自動で組む。MSMは垂直突入を行い終末誘導を終わらせようとしており、さながら破壊意志を持った隕石と形容できる。

 

 

―――

 

 

「MSM、第5ウェイポイント通過。不確実性領域(AOU)上空30kmに到達終末段階に入りました」

「弾着まであと10秒…6,5,4弾着、今!」

「再突入体、レーダーから消えました」

「衛星が上空に到達するまでは、あとどのくらいだ?」

「あと5分ほどになります」

 

 発射されて735秒。目標領域に敵艦隊は予想通り到達し、その上空に再突入体が突っ込んだ様だ。後は神のみぞ知ると言ったところであるが、祈る者は誰一人としていなかった。

 

『火力調整所から指揮所へ、レーダーに動きが』

「どうかしたか?」

『艦隊陣形がばらけ始めています。明らかに陣形変更ではありません』

「その中で速度を落としている艦がいるか確認できるか?」

『そこまではまだ…』

 

 何者かが艦隊近くに落下し、艦隊陣形が変更される事はあるにしても、ばらけ始めるという事は大なり小なり何かが起きたという事を意味する。速度を落としていれば猶更だが其処までの情報は収集できない。そして偵察衛星が上空に到達し、防衛省経由でMSM中隊の指揮所に画像が到着した。

 

「市ヶ谷から情報受領、赤外線衛星画像が届きました」

「着弾観測を行う。正面プロジェクターに画像を映せ」

「了解!」

 

 コンソールにいる人員がプロジェクター周りの機器を操作し、受領したデータを投影する。艦隊陣形はかなり乱れ、その画像には高い熱を持つ箇所が白く反映され、それが見える限り3つ存在していた。それらを守るかのように護衛艦らしき巡洋艦や駆逐艦が取り囲みつつありテント内におぉ、と小さな(どよめ)きが生まれた。

 

「やった…ぞ」

「今のところほぼ確実に…」

「向かって右、下から3つ目の煙を吐く艦をクローズアップ」

「はっ!」

 

 煙を吐く物体は、明らかに戦艦だとわかるサイズの艦が2隻。もう1隻は艦橋が右舷に偏り艦砲が無く甲板が開けていた。明らかに空母である。

 

「aに2発、βに1発、空母に1発…。一発外れたか」

「ですが戦艦にも十分であることは証明されましたね」

 

 XMSM-1は地中貫通(ペネトレート)型の弾種はまだ製造されず、あくまで命中精度を図るため弾頭重量1t未満の能力検証型のみである。しかしそれでも2発が命中したらしき目標は写真で見ても火煙が吹き荒れ修羅場を想像するに足る破壊状況だ。もう一艦も着弾したであろう破孔が禍々しく焔と灰を吐き、戦闘行動不能(ミッションキル)は確実であろう事は見て取れる。

 

「大型艦を狙って始末するのが我が隊の任務だが…これで十分だろう」

「あとは海自が殲滅するはずです」

「ああ」

 

 この衛星画像は官邸や防衛省幹部も精査を行い、妙見作戦フェーズ2に移行されロデニウス大陸沖を上空待機している第3航空隊へ航空攻撃が下令された。

 

 旧世界の2つの超大国が酌み交わした戦略兵器削減条約(START)中距離核戦力(INF)全廃条約はソレの拡散は あっても、世界的に使用は超えてはならない一線(レッドライン)だという風潮が成り立つ。

 だが日本は河を渡った。それは抑止力というのは()()()()()()()()()()()()()()()()()成り立たないという図式を改めて証明した形になったのだ。

 

 




XMSM-1はGAのレイフォル襲撃の情報を掴むのと、カルミアークに外交官が派遣され魔帝の核所有が発覚した位に試験部門が立ち上がったという設定です。

どんな環境で本作をご覧になられてますか?

  • スマホでスマホ用ページを見ている
  • PCでPC用ページを見ている
  • スマホでPC用ページを見ている
  • PCでスマホ用ページを見ている
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。