日本国召喚補遺の伝 -離島強襲作戦ー   作:kotomari

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モルガーナ・ベルンカステル様 セラス様 ぜく。様 kurou39様 カズkaz様 ベッテル様 お気に入りありがとうございます。 
 朝田さんの年齢的に大使に任命されるならこの位の経歴はあるんかなーと思いつつ書きました。


宣言

 グラ・バルカス帝国の捕虜銃殺から数ヶ月後、強襲作戦から2週間ほどたったこの日レイフォルの帝国外交窓口から帰りムー大使館に待機していた朝田は衛星通信で送られてきている資料を整理していた。そこに世界会議に出席していた近藤が話しかける。

 

「よお朝田、今度レイフォル行くのに寝てないのか?」

「ああ、資料と話す内容の整理を付けていまして…。」

「それで体壊せば元も子もないぞ?」

「部長に言ってください。」

 

 目の下のクマは濃く不健康そうだと見るからにわかる。無茶ぶりを振った上司を恨みつつ朝田は作業に没頭した。

 朝田は自分の半生を言葉に表すならと言われれば悪運と偶然だと答える。そう言われた者は基本的に彼はツイてるんだな理解するが本人は全くツイてるとは思っていない。

 朝田家は祖父の代から外務省官僚を務め上げ、父親は在スペイン日本国大使館の大使一等書記官で母は開業医の娘であったので相当に裕福であり外務省の内情に詳しいものならば朝田家といえばそこそこ有名な家だと認識されている。彼も又持ち前の能力の高さと熱量で日本一の名門大学に入学し日本という国の舵役になりたいと外務省に入省した。

 なので彼は2世どころか3世官僚だが熱量と真面目さから初めて会った者からは叩き上げだとよく思われる。そしてその後上司から

 

『ああ、あの朝田家なのか君。』

 

 とあの若さでは信じられない程の大役を担わされることになった。アジア大洋州配属になったのだ。本人的にはこれが悪運その1らしいがインド大使館や中国大使館などを担当し20代後半で父親と同じだった一等書記官にまで至ることとなり全権大使となることも夢ではなくなってきた。

 全権大使とは一般人が本当になれるかは別として原理的には一般人が成れる世界で一番位が高い職業の一つである。事日本において大使になるには他の省庁は事務次官が総理大臣との面談という事に比べ全権大使はその職に就くために天皇陛下の謁見が必要となる。その上他国の首脳や王族とも面会をするし、交渉役としてかなりの特権が許されているからだ。

 そして2014年年末タイ大使館勤務中に霊感の強い母親から悪い予感がするから帰って来てくれと携帯端末越しに言われ、そんな理由で休める筈などないのだがその話を聞いた大使から

 

『お前は休めと言わないと休まないだろう。一旦日本に帰りなさい。』

 

 と言われ渋々日本に帰国し冬休みが終了しタイに戻ろうとしたその日に日本が異世界に転移してしまった。

 転移で一番の被害を被った省庁は外務省である。何せエリート兼実力も申し分なさすぎる大使がいなくなってしまったのだから。その外務省が朝田を手放す道理は当然なく、30代手前で特命全権大使の任を与えるなど極めて異例な処遇を行った。朝田に言わせると悪運その2らしい。

 そしてアジア大洋州局が第3文明圏を受け持つこととなり彼はパーパルディア皇国担当となり戦争が起きてしまった。処刑されるかもしれないあの場で朝田だけが率先してレミールと会談し、レミールという大捕り物を引っ提げて帰国するという大手柄を挙げたことで今度は元欧州局の第2文明圏配属という事になった。

 

―――

 

 場所は戻りムー大使館。通信衛星により写真などのデータが送信され資料整理が大詰めを迎えてきた。レーザープリンター、インクジェットプリンターなどはまだ特許関係とニセ札製造対策でムーと折り合いがついておらず技防法で輸出が禁止されているが大使館内は日本国という立ち位置なので堂々と業務において使っている。

 グラ・バルカス帝国と戦うとムーに言質を取られその後ヌーカウルに謝罪と食事の接待を受け、朝田は大使館に引き戻り衛星電話の秘話回線で強襲作戦の内容と結果を聞いていた。

 

「自衛隊初の人的損失と帝国側将兵の200近くの捕虜を獲得、ですか。」

「ああ、ただ旧皇国の時のように我が国のPVを見せるだけとは訳が違う。かなり強烈な反応が得られるはずだ。」

「こちらのある程度の防衛力についての言及はいかがいたしますか?」

「究極的に言えばばどうせ戦後にすべて割れる。あらゆることを言う必要はないが君が好きに判断したまえ。」

「は…わかりました。」

「何度も言うが目的は戦意を挫かせることではなく攻撃準備を長引かせることだ。まあ挫かせられるならぜひやって欲しいがそれも難しいだろう。何とか上手くやってくれ朝田君。」

「は…わかりました、総理。」

 

 通話が切られ、ふっと息を吐く。背中には嫌な汗が伝っていた。大使ともなれば自ら(公務員)の直属の上司たる総理大臣と直接通話できる。自分の重さを改めて痛感していた朝田であった。

 

「大使、交渉の大まかの流れについての要旨です、機内でお読みください。あとこれは交渉材料です。」

「ありがとう。」

「ついに発つのか。死ぬんじゃないぞ?」

「近藤さん…。人物評については参考になりました、ありがとうございます。」

「ああ。」

 

 ムーの日本が整備した空港を発ちレイフォルに向かう。近藤たちも見送りなどをし朝田と随行員たちの無事を願っていた。

 機内で整備されたムーの市街を見下ろし、朝田は2週間前のことをふと思い出していた。

 

『朝田大使、どうか許してほしい。我が国は滅びの道を避けられるのならば友好国でも巻き込む。そんな弱い国だ。』

『いえ、宣戦布告を上げられた以上こちらも振り上げた拳を下ろさなければいけません。』

『誠に申し訳ない。替わりと言っては何だが日本が帝国にどんな処遇をしても我が国はそれを支持する。例えそれが我が国の国民の不満を買うことになろうとも。』

『それが聞けただけ充分ですよ。』

 

 ヌーカウルというか、ムーの首脳部は覚悟しているだろう。日本は魔帝戦に備え戦後グラ・バルカス帝国にかなり甘い処分を下すだろうということを。そして日本に帝国の処分を委ねるのは本格的に日本に劣るという事を認めるという事になる。巡視船とはいえ沈められた日本にそこまで賭けるのは相当切羽詰まっていたのだなとあの状況を改めて俯瞰的に考えるとそう感じた。

 

―――

 

「これはこれは日本国の皆さん、随行員らも引き連れて穏やかではありませんな。」

「それは貴国の方でしょう。」

「我が国は陛下より賜りし勅令を行動に移したまで。」

「ほう…民間人の不当な銃殺もか?」

 

 潜水艦を探知して16日後、午後1時10分にグラ・バルカス帝国レイフォル外交出張所にて協議が行われ始める。朝田から見て右側に座る男がダラス、その隣に控えるのがシエリアだ。

 近藤が行って寄越した人物評というのはシエリアの事だった。尤も近藤のシエリア評は会議中いきなり笑い始めて宣戦布告をぶち上げたぶっちぎりでヤバい女、という散々な物だったが。

 そしてまず開幕で煽り合いが始まった。銃殺についてはこの2人が決めたわけでもないのでさらりと返す。

 

「ああでもしなければ我が国の偉力を図れない残念な国もいるのでな。」

「成程、現場の独断で行ったと。」

「貴様たちこそ、あくまでも国の秘事を守り通した兵に対して民間人扱いか?」

 

 シエリアが話の中に割って入る。あの中で図星を突かれたダラスが言葉に詰まりシエリアが攻撃的な口調で朝田になる。あの恐怖に歪んだ顔はいまでもシエリアの脳裏に焼き付いていた。

 

「彼らが何も喋ら――喋れなかったのは何も知らなかったからだ。前にもあれは巡視船だと貴方には伝えたはず。」

「我が国の航空機を数機も落としたのだからあれが軍艦で無く何だ。」

「ムーですらあれと同じ型の船を見て巡視船と信じてくれた訳だが貴国があれを巡視船として信じない理由はそれか?」

「もういい、皇帝陛下はお前たちに対して矢を放った。今回下手に出れば属国扱いで赦してやったものを…後悔するといい。」

「放った矢というのはこれの事でしょうか?」

 

 若干生産性の無い煽り合いで時間を消耗したことを反省し、そして朝田は思った通り潜水艦についてだろう話を相手から持ち上げさせることに成功しほくそ笑んだ。

 朝田が出したのは印画紙にインクジェットプリンターで印刷された数枚の写真だ。それは真ん中からへし折られた潜水艦がクレーンによって引き上げられ台船に下ろされようとしている場面だ。

 

「…。」

「それは2週間前とある作戦によって沈められた潜水艦だ。艦内の写真のとおり貴国のモノだと睨んだわけだが合っているか?」

「さてな、こんな艦見たこともない。」

 

 外交官という職務上表情は出さなかったが2人ともかなり焦っていた。2枚舌を使ってしまう程に。だがその3枚後ろにある写真と朝田の言葉で今度こそ絶句した。

 

「3枚目の写真は第10艦隊だったか、それを全滅させたときの写真だ。艦首だけ見えるのは戦艦プロキォン号の筈だ。」

「……大した合成写真の技術だな。」

「既に200名ほど捕虜も獲得済みだし潜水艦と海戦の貴国の様子で技術レベルは大体予測できた。約70年前の我が国だと解かる。」

「何だと?」

 

 ダラスとシエリアは朝田からプロキォンという名が出た時点で真実だと認めざるを得ない。だがその後の朝田の吐いた言葉に2人は思わず聞き返した。

 

「70年前だと?よくもそんな荒唐無稽なことを吐けたな。」

「別に信じなくていい。言葉だけで信じないだろうしじき痛みで解ることになるだろう。」

「痛み?」

「アルーのことだ。」

「ずいぶん親切だな、攻撃場所を教えてくれるとは。」

 

 ダラスは朝田の口から艦名と捕虜についての事でしゃべれなくなってしまった。流石にブラフでここまでの手札は用意できないし、その上攻撃目標として皇太子が訪問するかもしれない場所を言い渡してきた。

 

「アルーから今すぐ引き上げるのならば追撃はしない。だがそのまま武器を持ち侵攻するのであれば我が国はその場所にいる兵を消滅させる。」

「やれるものならばやってみろ。70年優れているという妄想だけを拠り所としてな。」

「ああ、そして一応伝えておく貴国が勝手に作った基地も当然攻撃対象に入っている。そして其処に居る者はだれであろうと始末する。たとえそれが国の重要人物であろうともな。」

「…!」

 

 気付いているのかと思ったが聞けるはずもなかった。朝田が言っていることは外交というよりかはあまりに稚拙なただの宣言のようなものだったが、だからこそ2人を黙らせるには十分すぎる威力を持ち合わせている。

 

「我が国が言いたいことはこれで全てだ、もう用はないので失礼する。そしてこれは置き土産だ。」

 

 出したのはアタッシュケース。朝田がそれを開くと帝国の最高額紙幣、それが見たところ1000枚束が8つはありそうだった。朝田が帝国で荒稼ぎしたわけでは当然なく国立印刷局で刷られたものだ。

 

「あまりに待ち時間が長いとこれが貴国に振り下りることになるかもしれない。」

「貴様…。」

「できれば早い時間、またお会いしたい。何か用があればムーにある日本国大使館の門を叩いてくれれば良い。何度も言う通り我が国の目的は民間人殺害の責任者の引き渡しとムー並びに世界各国への謝罪だ。別に首長の身柄には拘らない。」

 

 朝田率いる随行員5名は出張所を後にした。札束の件は見せ札でしかないがあれが大量に降ったら別に物資に困ってもいないのに配給制になるだろう、それによる支配階級のダメージなど計り知れない。このような見せ札のお陰により朝田の主張は全て上申され、攻撃が数日間見直されるという事になった。

 

―――

 

 朝田がこの交渉に臨んでいる間、日本では衆議院解散総選挙が5年振りに行われていた。といってもムーに自衛隊戦力をある程度送り込んでからではあるがその1週間転移してから初の衆議院選挙なので関心も高く投票率も18歳以上に選挙権が与えられ若い層のポイントも高かった。

 結果はこれまで通り保守第1党が勝利しムーへの派兵は継続して行われることとなり内閣改造も行われ防衛大臣は続投、総務大臣は副総理の地位に座ることとなり法務大臣と環境大臣は国務大臣としての席はなくなっていた。

 最初に政権が行ったのはアルー奪還ではなくハレー島の正式な日本、そして沖縄編入である。観測船『昭洋』が今度こそはとその島に向かい近海の探索を行った。水龍も飛龍もいなかったがメタンハイドレートがその近海に元々埋まっていたので少し期待されたが島の外は相変わらず断崖で採掘は難しいと結論付けられた。

 結局ビーチはあるが湧水が出るような場所はなく人が720人も死亡した場所は観光地化するのは難しいという事で無人島と相成ったのだった。




 稚拙な文章力ながら沢山の方にお付き合い頂き感謝の言葉もありません。そして誤字報告や評価などをして頂いた方にはこの場を借りてお礼申し上げます。
 ダラスとシエリアが後半単語しか喋っていないのは筆者が1話5千字という謎マイルールを設けているからです。(だったら朝田の回想無くせって話なんですが)
 あと書いてる途中に思いついたネタを

青木(原作にいる方)「あんた…それでも人間かよ!?」
闇堕ち朝田「俺は、選ばれた人間だ!」
青木「何!?」
闇堕ち朝田「特命全権大使って知ってるか?ん?陛下から、国の代表と認められた人間なんだ!全ての特権を与えられた…選民だよ。お前なんかが気安く口を利ける相手じゃないんだ馬鹿野郎。」
青木「――!」
中野「愚かな人間が、この世にはいるものですねぇ。おまけに哀れだ。ああ、お分かりにならないといけませんので、はっきり申し上げましょう。あなたの事ですよ。」
闇堕ち朝田「…。」
                                           完

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