日本国召喚補遺の伝 -離島強襲作戦ー   作:kotomari

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着陸のやりとりとかはかなり適当なので酷かったらご指摘ください。



シマ・ウミ・オカ

「グラ・バルカス帝国の海軍旗がなぜここに…」

 

 フォーク海峡海戦でムーのラ・カサミの乗員や武官からまだ国交の開いていない国の旗やグラ・バルカス帝国の情報などを聞いていた。武官たちが普通に話してくれたことから先に日本に教えて良いと言われていたのかもしれない。

 そんなことがあったので、敵対する可能性が極めて高い国として政府要職者や自衛官以外でもかなり有名な旗になったのである。

海軍旗を視認すると、隊長である青木が機体を急降下させ、マッハ1.2で直上を通過した。

 

地対空ミサイル(SAM)サイト類や輸送起立発射機(TEL)等は確認できず、レーダー類の当機への照射なし。高射砲らしき砲台から発砲を確認、数は見える限りでは恐らく4」

「カモフラージュで見えにくくなっている可能性もあります。気を付けて」

「解かっている。…一時離脱し環礁を周回する」

「高射砲や機関砲の発射炎視認。ですがロケット弾は見られません。今度は我が機が接近します」

「02,チャフ・フレアの射出準備を怠るな」

「Roger」

 

 高射砲の弾は機の後方で炸裂している。近接砲弾ならばあんな場所で爆発しないので時限信管の可能性が極めて高かった。グラ・バルカス帝国は近接信管を実用化しているという話は聞いていたがここにはないのかと青木は気付く。

 水上機が飛んでくる可能性もあり機内燃料も無理をしていい程残っていないので帰ることを逡巡した。

 今度は水城がぐるりと周回し、とりあえずの偵察を完了させた。

 

「まあ南沙諸島(スプラトリー)中国海軍(PLAN)じゃなくて良かったってところか。これなら対処は随分楽だ」

「発想が瀬戸際ですよ…」

「任務も完了した。あちらさんも大分賑やかしくしてしまったようだし海自機の場所へ帰るがいいな?」

「大丈夫です」

 

 島上空を飛行している時、結局ミサイル警報装置(MAWS)のアラームが鳴ることは無かった。高射砲を持ち出している時点で気付いてはいたがミサイルは配備されていないらしい。対艦ミサイルも島外周には砲台しか見当たらないので恐らくそちらもない。

 

「P-3Cへ、あとは貴機の護衛のみだ」

「了解。貴隊らも那覇を目指すんだろう?エスコートは頼んだ」

「自分の足でも十分逃げ切れるでしょうに。潜水艦の追尾は大丈夫ですか?」

「先遣された護衛艦が到着するようなので一緒に帰投することになっています」

 

 護衛艦が遂に到着したとなると潜水艦の察知と撃沈に切り替えたのだろう。多分自分達(空自)も混ざってここら海域は中は出られず外は入れずの金魚鉢と虫篭になるんだろうなと青木は思った。

 

―――

 

 キングフィッシャー隊が島の上空に達する前、グラ・バルカス帝国海軍陸戦隊の人員はレーダーのスコープが突如砂嵐に覆われてから数十分経ってから異変を感じ始めていた。

 この大隊の任務は日本に正体を出来るだけ気取られることなく商船や軍艦を沈め、制海権を奪った後この島を中心として日本本土を攻撃する主力艦隊を招待するというものだ。一番危険な時であった簡単な拠点を作る際は事前情報で爆撃機や攻撃機は保有すらしてないということを掴んでいた上、レーダーに艦艇も映らなかったのでそれ程兵も恐怖に怯えることなく作業していた。

 

「なんだ?この音は航空機か?」

「にしては違和感があるな。航空機の出す音じゃないぞ。」

 

 彼らが想像する航空機の音とはプロペラが回る音とエンジンそのもののが混ざった音である。だが今聞こえているのはまるで空間と空間が引き剥がされるような、悪魔の咆哮のような異音だ。

 

「何だ音はどこから聞こえるんだ?」

「あれ、何だ…?」

 

 空の色に交じり、太陽を背に高速で急降下して来る物体がある。翼下に何本かの筒を抱えていた。高空を飛んで尚且つレーダーが使えないので機体の大きさが正確に把握できない。だが国籍は判る。翼下に日の丸が描かれているからだ。

 

「本部へ!日本軍機が急降下で接近中!」

「総員第一種戦闘配置!高射砲の砲術員は準備完了次第直ちに攻撃開始し後方部隊は退避を行え!」

「うお!」

 

 大隊指揮官の号令に一斉に動き出す。高射砲担当や機関砲担当の砲術員以外は壕に身を隠し、双眼鏡で敵の航空機を見る。機体を確認した兵員がそれぞれの憶測を話し合う。

 

「プロペラがない!どうやって飛んでるんだ」

「ミリシアルの戦闘機もプロペラがないらしいぞ。フォークに行った知り合いに聞いた」

「翼下に携えた搭載物に爆弾類は見当たらず」

「機関砲は備えている筈だ。対応をーッ」

 

ダウンダウンと高射砲から白煙が撒き上がる。レーダーが使えない為目測で高度を定め弾頭を回して信管を調節するが、その敵機より後方で砲弾が炸裂している。

 

「莫迦な、奴ら高度いくつを飛んでるんだ…?」

「これ以上となると狙って当てるなんて不可能ですよ。しかも異常に速いです。」

「弾幕を張れ。いくら速くてもバントすればチャンスはある。」

「しかしそれは…。」

 

 2次大戦期の戦闘機の全長は大体8~9m程度だ。だが比較的小型な部類のF-16をベースに作られたF-2も全長は15.6m程で1.8倍程あり、翼面積は零戦の1.5倍程もある。距離感を間違えるのも当然だった。そして、遷音速級というそもそも自分達ではあり得ないとされてきた速度域を展示飛行のごとく披露されており対応が全くできていない。そうなれば取れる手法はこちらの距離(レンジ)に誘うしかない。だがそれは全滅させられる恐怖とそれに伴う兵の怯懦と表裏一体の手段だ。

 だが事態が変わる報告を司令部が受けた。

 

「敵に動き。当空域を離脱する模様!」

「何だ、急に。」

「航空機用の爆弾に兵装を変えるため、戻ったのかもしれません。」

「そうなれば面倒です。中隊長、追撃の命令を!」

「間に合うまい。こちらは所詮水上機しかない。」

「しかし…。」

「落ち着け。我が拠点の攻撃が目的ならば何故浮上している潜水艦を魚雷で始末しない。恐らくガス欠か奴らの目的が偵察だからだろう。」

 

 大隊長であるシュスターは理論立てて推測を述べる。武装やその他のスペックについては完全に誤認していたが戦術的な判断はピタリと的中させてはいた。

 

「は…。」

「日本軍が近々来ることは間違いない。だがそれはもう少し後だ。今は応援を呼んでこちらで対応を練ってからでも遅くはない。巡洋潜水艦か水上機で第10艦隊に応援要請を伝えろ。」

「了解!」

 

 第10艦隊は第三文明圏の監察が主な目的の艦隊で、この島の拠点化も第10艦隊が深くかかわっておりこの島にいる潜水艦もこの艦隊所属だ。一線級とまではいかないが戦力が戦艦も潜水艦も持たない日本の相手も充分相手できる程度にはある。電子装備が現状使えないならローテクながら人伝えで応援を要請するしかない。

 航空機が目視から消えた後、潜水艦がこの事態を伝えるためと応援要請をする為に島を出た。

 

―――

 

「よっこらせ」

 

 4,5時間余りの飛行を終え那覇空港に着陸した。この位の飛行は別にあまりやらないが普通苦労はない。だが色々とありすぎたため、疲れが見えた。数か月前のデュロ爆撃以来であったから猶更だった。

 南西航空警戒管制団から那覇空港に回線を引き継ぎ、着陸誘導管制(GCA)による着陸誘導態勢に入った。基本的に民間空港は計器着陸装置(ILS)を用いるが自衛隊管轄の基地や軍民共用空港は未だ使っているのだ。

 F-2の1番機、2番機が着陸した後P-3Cが最後となった。3機ともタキシーウェイを指示され、どこに駐機するのかを指示されたので、タキシングでそれぞれの場所に向かう。

 

「以上が、偵察した島のわかる範囲での報告です。」

「海保の掴んでいる情報は海自から聞くか。しかしミサイルもあるかと思ったが高射砲で弾種もVTではなく時限とは話に聞いてたものより随分違うな。」

「我々に鹵獲されることを恐れたのでしょうかね。ですが解かる限りだとレーダーの性能は大戦時のアメリカ軍並みですし」

「まあ細かい情報は情報本部が精査するだろう、偵察ご苦労。休息をとれ」

「次の偵察はやりますか?」

「やる。だがそれはRF-4EJ(偵察機)らが行う。それに海自の潜水艦も加わるようだ。そして貴隊には別の任務がある、その日程自体は未定だが」

「了解、失礼します」

 

 ガチャリと司令室を退室する。やはり隊長がおっしゃってた通りになりましたね、と水城が青木に疲れの色を見せつつ話しかけた。報告も終わり、緊張感が弛緩して自然と空腹を感じる。

 

「気圧が上がったせいで腹が減ったなぁ」

「逆では?」

「ここの昼休憩も終わってるだろうし俺達どうすりゃいいんだろうな」

「まあ購買もやっているでしょうしそこで…」

「カードとか現金どころか携帯も築城にあるんだけどな」

「あっ」

 

 2名とも寮暮らしであったが私物類は全て別の基地にあるので何をするにしても不自由を被る。自分達が当直だったことを先程とは違う意味で恨んだ。本日二度目である。

 

―――

 

 

「水山司令官入ります」

「敬礼ー!」

 

19時丁度、グラ・バルカス帝国海軍(Imperial Gravalcs Navy)の大東島沖群島原状回復部隊、陸海空統合任務部隊(Joint Task Force)を編成し、横須賀にある自衛艦隊司令部へ設置された。

 空自の手に入れた情報、現在現場海域に到達した護衛艦の情報を各員が共有し、陸空の作戦運用課のメンバーらが招集された。

 

「制海権確保は第2護衛隊群のみでよろしいかと。既に護衛艦たかなみを先行させて現場海域に向かわせました」

「現在第2護衛隊群はどこに?」

「旧東シナ海沖で演習中でありましたが直ちに切り上げて第6護衛隊がたかなみを追い、第2護衛隊が那覇に停泊しています。海域の到達に1日は要しますが」

 

 第2護衛隊群とは、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)いせを旗艦として第2護衛隊と第6護衛隊で構成される計8艦の艦隊である。母港は佐世保にあり、南西方面防禦の一翼を担う。規模や戦力的に一個護衛隊に任せられるものなのでこれには全員が納得する。

 ちなみに東シナ海という名称を残したのは前世界の記憶は残しておくべきという声が多数あったので戒めの意味も含め残しておいた。改名候補は南日本海などがあり、この名はロデニウス大陸と琉球諸島の間の海に使われた。そして2つの海両方ワカメが問題になりつつあるらしい。

 

「島嶼の奪取ともなれば普通科の存在は不可欠です。陸自の隊員と物資の輸送はどれがやりますかね」

「第1輸送隊だろう。現在呉にいるし那覇には2日とかからない。問題は輸送隊の護衛だ」

 

 第1輸送隊はおおすみ、しもきた、くにさき、の3つの輸送艦で構成される艦隊だ。輸送艦と銘打ってはいるがほぼドック型揚陸艦に相当する艦である。全力であれば隊員2,000名、戦車一個中隊、特科一個大隊などの普通科連隊戦闘団半個の輸送が可能となる。尤もこれほどの戦力が必要となるとは思えないので陸自がどの程度の戦力を送るかを決めてから何隻向けるかを決める。

 そして当たり前だがおおすみ型自体に個艦防空はCIWSしかなく、対潜能力に至ってはない。輸送艦の護衛が必要だった。

 

「第6護衛隊に任せて良いのでは?」

「対空や対潜はともかく、第2護衛隊の対水上能力がかなり心配になりますね。」

「第2護衛隊の主任務は対潜であるし、任せるといってもそんな長時間でもなし。もし戦艦が現れても沈められないだけで無力化は十分な戦力だろう」

「そうだな、海上優勢は第2護衛隊群に託そう。だが水上戦力に心許ないのも事実だ。潜水艦隊を更に引っ張り出そう」

 

 潜水艦はこれまでの国の主な船舶が木造で水中を進む兵器がなかったこともあり、秘匿する意味もあり表で活躍することは無かった。相手の文明のレベルが近代で半端に対潜能力があるのであれば前世界においてトップクラスと謳われた海自潜水艦の静粛性と対水上戦闘は完璧に機能する。初の晴れ舞台としては十分なシチュエーションだ。

 

「陸自特殊作戦群及び水陸機動団は動けるのか?」

「出動命令が下れば特殊作戦群2個中隊、水陸機動団2個連隊が直ちに即応機動が可能です」

「島の全図は既にみたであろうが所見は?」

「島外周は高い岩礁で覆われていますが一部に砂浜が見られ、そこにホバークラフトによる接岸が可能であると考えます。ですが相当の抵抗が予想されますので接岸は空爆や空挺の橋頭保確保が前提となります」

 

 やはりという感じだが、地上戦は免れそうになかった。とりあえず各自衛隊の即応できる部隊と如何に運用するかの大雑把な形が出てきたところで締めにかかろうとしたところで、司会役の幹部が新たな情報を伝えた。

 

「報告―――。先行したたかなみが潜水艦を撃沈」

「なんて迂闊な真似を…状況は?」

「潜水艦が民間船舶に接近し、やむなくピンガーで自艦位置を曝し、眼を背けさせることには成功したものの魚雷を発射されやむをえず、と…」

「相手側にこのことは?」

「周辺54nm(100km)に正体不明艦の存在はあり得ないので察知はされていないと」

「状況は切迫している様だ。いったん解散させ、情報収集。二二〇〇に改めて会を持つ。以上」

「了解」

 

 この日の夜、海上自衛隊横須賀司令部某会議室の照明が消えることは無かった。

 

 

 

 




サブタイはワカメにするか悩みました。

次話はサグラダ・ファミリアが完成したら投稿します。

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