オリジナル要素マシマシです。
「では2週間後に解散総選挙をするということで、宜しいですか総理」
「ああ、頼む」
内閣官房長官の発言に総理大臣が頷く。総理大臣官邸5階、総理執務室にて閣僚が集まり定例の閣僚会議を進めていた。議題は解散総選挙の時期である。
転移後の処理や戦争などにより参議院の半数改選は行われてはいたが、武装勢力鎮圧と戦争により衆議院は解散できていなかった。元々転移の半年前に発足していた政権だったが、転移から既に4年近く経過しており任期満了は既に過ぎている。非常事態宣言に次ぐ非常事態宣言の布告で体裁を保ってはいるが内外の批判も沸きかけ、一部マスコミからは違憲内閣と揶揄されていた。
それ故に反対する者はいなかった。誰が刎ねられるかは当人含め大体予想は付いてはいたが。
「よし、明日辺りに臨時会を招集して解散を宣言しよう。急いで閣議書を書いて内閣総務官に渡してくれ―――」
「待ってください」
閣議書は全ての国務大臣の署名を集める必要がある為、手早く進めるために全員を集めていた。この場にいた者全員が総理の手の速さに舌を巻く。
だが、防衛相が待ったをかけた。先程防衛省職員が執務室に入室し、大臣にメモを渡していたがそのメモを読み終わると深刻な表情になっている。その様子を見て別に解散に反対しているわけではないことが伺えた。
「どうした、防衛相」
「海自哨戒機から第一報、大東島の南東500kmにグラ・バルカス帝国の軍事拠点を発見しました」
「…なんだと?」
「現在、空自が威力偵察に向けて活動準備中です」
「映像や画像は無いのか?」
「申し訳ありません、現在自衛隊が保有している航空機用偵察機材は通信が出来ず媒体は航空機が帰投してからになります」
「わかった。とりあえず署名は貰おう。防衛相、詳しい初動対応と事態が急変し次第緊急で翌日に
―――
翌日午前10時、その日は野党党首クラスの解散総選挙についての会談が予定されていたが、キャンセルとし総理大臣官邸地下1階に9大臣による会合が危機管理センターに閣僚が集まっていた。
超大型テレビにF-2ライダーが撮影した音も伴った映像が出力される。一番大きな島に艦艇が数多ある。そして自機が接近しようとすると対空砲が火を噴き黒い花を咲かせており、威嚇しているようだ。そして開けた場所に兵舎らしき建物と旗が掲げられた旗棒が立っていた。
たった数分足らずの映像だが、息を呑むには十分な濃度だ。
「防衛相、詳しい情報の説明をお願いする」
「はい、先日午前11時ごろ海自哨戒機がレーダー波を逆探し、不審船を探知。空自にスクランブルを要請したところそれが潜水艦だったことが判明しました」
「潜水艦だと」
「はい、そして拠点を探そうとした時に海保の調査船『昭洋』と遭遇。無線を交わしたところどうやら目的地が我々の目標と同じ可能性が浮上し『昭洋』に退避勧告を出し現場海域に向かうと件の島だったと。現在
防衛相の報告にどよめきが走る。大東島の500kmなど隣家も同然である。それが軍事的に意味する事は軍事に明るくない者でもよく理解できた。
さらなる事実確認と自衛隊に過失があるか見極めるため、総理大臣が発言する。
「防衛省は一体何をしていたのか?」
「パーパルディア皇国との戦争時に謀ったか解かりませんが国内に護衛艦や哨戒機がいなくなった隙に作ったのかと。調査船から話を聞いたところ戦時に島の情報が入ったと聞いております」
「そうなのか?国交相」
「はい。元々海保調査船があそこに向かったのはクワ・トイネの漁民から海賊の溜まり場となる場所はどこかと聞き込みをした所最近龍が出没する場所なら知っていると聞いたのが始まりでした。見かけたのは5,6ヶ月前なので皇国と戦争をしていた時期とピタリと符合します。そして島の所在は延長大陸棚の中に存在していたので恐らく発見が遅れたのだと思われます」
この場合の延長大陸棚は小笠原諸島、沖ノ鳥島、大東島に挟まれた日本のEEZ外の海域である。
そして話を聞いた結果は自衛隊の戦力に余力がないというのと時期が悪すぎたという対策のしようがないことが分かる。むしろ皇国との戦争が終わり、哨戒機が一報を伝えたこのタイミングが一番良かったのかとも感じる。
総理大臣は現場で何が起こっているかを考えるのを止め、現状の解決に切り替えることにした。
「現在自衛隊の対策はどうなっている?」
「陸自は習志野の特殊作戦群と佐世保の水陸機動団に出動を命じ、
水陸機動団とは
その報せを聞いた総理大臣はため息を吐き背もたれによりかかり言葉を紡ぐ。
「自衛隊の戦力で彼の地を制圧することを許可する。ひと段落付けた後閣僚を閣僚会議室に再招集し防衛出動の閣議決定を」
「はい!」
「そしてマスコミに公表の準備を、ガンカメラの映像もだ」
「映像もですか?それは流石に…」
「自衛隊に過失はないとはいえ失態は失態だ、もとより国民には全てを公表する義務が我々にはある。会見には私が出よう」
「…わかりました、それでは会見の準備を」
官房長官が会見の手続きと準備、マスコミへの呼びかけを行うために先に危機管理センターを一旦退出した。国交相と総務相は渡航の制限の命令を出そうとし、経産相はそれによる経済損失の試算の取り掛かりを指示している。
それぞれのタイミングで危機管理センターを離れている頃、特命担当大臣が総理に話しかける。
「総理、場違いなのは承知で伺いますが衆院解散についてはどうしましょうか」
「延期だ延期。武力侵攻されかかってるのに選挙なんてできる訳がない」
30分後、一度解散した閣僚が閣僚会議室に集まり、防衛出動の閣議決定が行われた。その20分後に総理大臣が会見を開き、グラ・バルカス帝国海軍の存在と防衛出動が閣議決定されたことについてを発表した。
そして会見の2時間後にガンカメラの映像が各テレビ局や動画配信サイトに届けられた。
―――
「ではグラ・バルカス帝国は日本の防禦が手薄になっていたとは知らず偶然あのタイミングで拠点を作ったということですか田原さん?」
「はい、あの公開された映像や海上保安庁の取材で分かる情報を精査すると自然とそう判断できますね。」
夕方の情報番組ニッポンテレビのneveryは特別特集を組み、解説者の田原聡一をゲスト兼解説者に迎え、推察も含んだ解説が行われていた。映像などが公開されてからあるテレビ局以外似た放送をしていた。
「まず全てを知っていたならば我々が戦争中に潜水艦による通商破壊をやる筈です。何故ならばクワ・トイネとクイラ両国のリソースを運ぶタンカーは海賊に対処するには十分すぎる能力を持っている海保の巡視船が護衛してますが潜水艦を見つけ、迎撃できる能力はないからなんですね。やはり状況的にアルタラス国や皇国から帰還した哨戒機が探知したという所が妥当な見方でしょう」
海上保安庁の巡視船には機関銃が搭載されており、特に
「成程、では弾道ミサイルを用いた攻撃をするつもりだったという可能性はどうなんでしょうか?」
「グラ・バルカス国自体が弾道ミサイルを所有しているかわかりませんがF-2による映像では少なくともミサイルサイロは確認されていないのでありえないでしょう」
公開された映像の一部である島の全部が映る場面が切り取られているパネルを持ち出す。そこには施設や砲台が丸で囲まれ種類などが分かりやすく書かれている。そしてミサイル発射基地はないとパネルの空いたスペースに書かれていた。
「ということはあまり脅威ではないと?」
「いえいえとんでもない。あの近辺でタンカーや船が接近していたら間違いなく沈められていたでしょう。まだ海域情報がないから下手に動き回れないだけで我々を斃す意思は明確だと思われます」
キャスターに向き直り、解説を再開する。自分たちのいる場所がいかに不安定であるかを証明するように田原は言葉を強くする。聞いている者も緊張が高まるのを実感していた。
「では、自衛隊はどのように対処するでしょうか」
「政府の初動対応と見解によりますが、数日後には島の処理が行われるでしょう。戦闘は早くて2,3日以内に終結するかと。」
「自衛隊とグラ・バルカス軍とがあの場所で戦ったらどうなってしまうんでしょうか?」
「自衛隊が圧勝するでしょうね。ですが戦場となるのは逃げ場がない島ですので死に物狂いの抗戦が予想できます。ロウリアやパーパルディア戦のような自衛官の被害がゼロということはあり得ないでしょう」
制圧するとなれば空爆や無人機の技術が向上していても白兵戦というのはなくならず普通科《歩兵》の存在は必要不可欠だ。そしてその形態は自然と50m以内の
「では、転移後初の自衛隊員の死傷者発生もありえますか?」
「高い確率でその結果が見込まれます」
「ありがとうございます。CMを挟み、今度はグラ・バルカス海軍の脅威となるポイントなどを田原さんにお聞きしたいと思います―――」
この後もゲリラ戦の脅威やそのゲリラに対する自衛隊の対策などが特集に組まれ続け放送が終わる。そして他局も同じ様な形だった。内容は元政治家や官僚を集め、自衛隊が島に戦力を送れる根拠やグラ・バルカス海軍の戦力などが主だった放送内容だ。
―――
「第10艦隊に向けた潜水艦から暗号化された電文が届きました」
「きたか。復号してみろ」
送られてきた電文を通信員から受け取る。潜水艦が島を出て10時間以上経過し、第10艦隊に接触し、本国最高司令部に情報が伝わった。そしてその情報が潜水艦から伝わってきたのである。
暗号文はグラ・バルカス帝国で使われている文字を置き換えたものだ。それを通信員が当日鍵と解読表を用いて復号化する。近年帝国で開発された換字式の暗号機であり、まともに解こうとすれば幾つものローターにより1京通りの沼に嵌まるとして軍や情報機関で正式に採用され始めている機である。
「何ということだ…」
シュスターは通信文を理解し、驚きの言葉を上げていた。そしてその表情は絶望に打ちひしがれている
日本に察知されたことにより、戦って死ぬよりも辛い撤退の道を選ぶ事になるかと危惧していたが艦隊が指示してきた指示はその真逆だった。まとめていえば、日本本土進攻作戦の日程を繰り上げるという指示だ。概要は第10艦隊に戦艦を2隻新しく編入し、この島を
「
「腕が鳴りますね」
潜水隊指令のベーレンス中佐と副隊長のティエレ少佐が思い思いの感想を上げる。シュスターと感じる事は同じなようだった。ムーと蹴りを付ける間ちまちまと輸送船や巡洋艦並みの軍艦を沈めて行けと命令された時は不満はなかったが士気が芳しく上がらなかった。だがこんな大規模作戦に参加できるのであれば喜んで参加したいし、散っても不満はないと2人は思った。
大隊長のシュスターも2人と同じ気持であった。そして喜色満面の笑みを持ちつつ2人にもったいぶらず命令を下した。
「ティエレ少佐、我々は大いに働かなければいけない。我々はこのハレー島に必要物資を再度搬入する任務が出来た。兵たちにそれを伝えろ。そして彼らが来る前に我々がやられていては意味がない。島嶼防衛の強化に努めるんだ」
「は!」
「ベーレンス潜水隊司令、この拠点には水上戦力が乏しい。通商破壊任務は一旦放棄し迫って来る日本の水上艦艇を追い払ってください。一週間とは言いません」
「ああ、了解した」
ハレー島のハレーとは潜水艦による日本の通商破壊を行うための作戦を指示した参謀の姓である。軍公式で決められた訳ではないが便宜的に付けようと陸戦隊や第10艦隊で内々に話し合った結果このような名前に相成ったのだった。
ギリギリ日本の
話が進まなくてごめんなさい。
次話はスラムダンクが連載再開したら投稿します。
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