日本国召喚補遺の伝 -離島強襲作戦ー   作:kotomari

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ユウ@04271様 グルッペン閣下様 Haltforce様 お気に入りありがとうございます。 


接岸

 帝国軍の海上戦力は潜水艦だけではない、魚雷艇も存在する。彼らはレーダー機能喪失後いち早く島を脱していた。魚雷艇も潜水艦と同じく夜が最も活動しやすい時間帯である。全4艇の魚雷艇は水平線を目視で哨戒を行っている。

 

「日本の奴ら、来るんでしょうか」

「さあな、だがハレー島を接収することが目的なら必ず兵を寄越してくるはずだ」

「そこを捉えるんでしょう、元々魚雷が想像もできない蛮族共に我々の火力を思い知らすのが我々の任務です」

「ああ、先程は卑劣な先制攻撃で後れを取ったが水上ならば我々が主役だ」

 

 日本にも駆逐艦があるようだが魚雷発射管はなく機銃も見える限りでは前後数基の最低限度しかない為ミリシアル帝国と同じくただの小型艦だというのが分析官の見解だった。魚雷艇に大型艦の主砲などは当たらない。駆逐艦の主砲が精々だが、小口径砲しか持たない日本相手は間合いを見図る必要があると報告されていた。

 

「今のところ艦艇らしきものは見つかりませんね」

「警戒を怠るな、日本人は何を考えてるかわからないぞ」

「また本島が爆発しましたね」

「怯むな、俺達ではどうすることも出来ん」

 

 乗員全9名いる艇内は島が爆発していく様子を感じ取り、恐怖を募らせていく。昼から見た重要拠点と恐らく同じ地点が爆発しているのだ。そして他3隻も同じ思いだろう。だが今は仲間の心配よりも自分の心配をすべき時だ。いつ死ぬのかもわからないのは自分達も同じだからだ。

 

「何か聞こえませんか?」

「他の魚雷艇のエンジン音か、敵の爆撃機じゃないのか?まさかこんな小さい目標で高速移動する物体は攻撃できないだろう」

「いえ、完全に別種の音です。銃撃とも違いますがプロペラ機にも似た音が…」

「わかった…。速度を落とせ!」

 

 最初に異変を感じ取れたのは目がいい哨戒担当ではなく耳がいい副官だった。副官にはパタパタと空気を叩く音がするが航空機とは少し違った音を出しているように聞こえた。艇長は敵が爆撃機を所有してたことを認め、分析官がこちらに齎した情報をとりあえず再検証するという風に頭を切り替える。

 

「どうだ、聞こえるか?」

「自分にも聞こえます…」

「お前にもか。方位は解かるか?」

「2時の方向かと」

 

 先程とは違う者が報告を上げ、どの方角を見ると明らかに星ではない輝点がチカチカト小さく明滅している。危機感を覚え速力を落とす前に戻し波を切り裂くどころか水切りの石のように水面から弾かれバウンドしながら35knt(65km/h)の高速で加速を始めた。

 しかし更なる異変が齎される。

 

「空中から炎が出現しました!」

「…自爆か!?」

「数は1(すじ)、こちらに向かって来ます、攻撃されている様です!」

「ロケット弾か、急速転舵でかわすぞ!」

 

 帝国には一応ロケット弾は存在する。だがそれは地上目標などの固定されたもので、機動性は他の艦艇より一線を画する魚雷艇には不向きであったと艇長は記憶していた。

 一発だけなら、躱せる。銃弾よりも遅く発射炎で場所が分かりやすいロケット弾など目を瞑ってでも躱せる自信があった。

 

「右にターンだ。転覆(キャプサイズ)しないよう、腕を見せろ操縦士!機銃担当、回避機動が終わったら直ちに攻撃開始!」

「了解…!」

 

 操縦士がハンドルを捌き、エンジン出力を調整する。魚雷艇はドリフトをしつつ180°ターンし射線から逃れる。機銃担当士官が銃座に座り射撃を行おうとした瞬間、報告を上げる。

 

「ロケット弾、直進せず進路変更してこちらに向かってきます!」

「な…そんなことある訳―――」

 

 ロケット弾――否、ミサイルは魚雷艇に触れる前に爆発した。魚雷という爆発物はミサイルの熱と衝撃波が殴ったことで誘爆、魚雷艇の原型を留めない規模の爆発が続いて起こりオレンジ色の花が開いた。

 

 

―――

 

 

 攻撃したのは輸送艦くにさきから飛び立った陸上自衛隊木更津基地所属の攻撃ヘリAH-64d(アパッチ・ロングボウ)である。そして発射したミサイルはヘルファイアミサイルだ。ただ、2回の自衛隊派遣の戦訓から対舟艇榴弾(HEAS)を新たに付ける改修が行われていた。46kgという重量級のミサイルは例え外して海中に落ちても水中爆破した威力で舟艇程度は沈めうる火力を持っている。

 

「ありゃあ直撃だな、脱出できるタイミングではないし全員死亡か」

「いや、行方不明扱いだろうな。あの国にドッグタグが無ければだが」

 

 日本は法律上医師が死亡確認をして始めて死亡扱いとなる。なので遺体が身元確認ができない程破損していれば誰かも確認もできないので第1次世界大戦以降に認識票(IDタグ)、所謂ドッグタグの普及が進んだ。引いては旧世界の話であり今まで艦隊や歩兵の横隊が丸ごと消滅するような戦乱がなかった第3文明圏ではこれがなく、行方不明者が死亡者より遥かに上回っていた。そしてドッグタグがないのはムーも同じである。

 攻撃が終わった後、見計らっていたのかオペレーター役であるOH-1から通信がかかってきた。

 

「こちらタイガー02」

「貴機が担当する魚雷艇が最後だ。この後LCACが接岸するので撤収を」

「おおすみに着艦後要請があれば飛び立つんですよね?」

「そうだ、他に質問はあるか?」

「ありません了解です」

 

 回線が途切れ、おおすみに戻る。一発しか撃っていないが弾薬と燃料の補給などを行った後いせにある指揮所から命令があれば即時飛び立つというフロー(流れ)になっていた。

 

―――

 

「沿岸砲台、壊滅、攻撃ヘリ収容完了しました。接近の開始準備よし」

対潜戦闘(ASW)用意―――目標は無誘導の魚雷を所持している。囮で躱せると思うな」

 

 輸送隊からの報告をいせ艦長が確認し、対潜戦闘の号令を出す。島最前線にはファランクスBlock1bベースライン2が搭載されているたかなみがいた。

 島の10km沖合に複数存在する潜水艦を始末すべく、艦隊を動かし、輸送隊の離脱ポイントに移動させる。既にSH-60k(シーホーク)が支援の為いせから飛び立っていた。

 

「敵潜水艦我が方を察知したようです、回頭を始めています。」

「遅い。割り振った目標を各艦攻撃開始!」

「射線方向50度。方向クリア。発射始めよし」

「撃ーっ」

 

 護衛隊群全艦のCICに伝える無線で攻撃を指示する。事前に潜水艦の担当を決めており、はるさめ、あさひ、たかなみはドアを開放し短魚雷発射管から魚雷を放った。

 潜水艦は回避運動も行わす回頭を行っている。恐らくあちらも魚雷の発射準備を行っているのだろう。

 

「浮上してこない…聴音襲撃でもするつもりか?」

「囮魚雷撃ちますか?」

「いい。あちらは撃ったとしても放射状に放つからデコイも大して有効にはならないだろう」

 

 各艦から発射された3発の短魚雷。一度深く潜った後音響を探り、一気に突っ走った。それぞれ魚雷が直進する方向に潜水艦がいるよう発射を行ったので別々に行動を始めている。

 

「重複もなく別々に目標に食らいついていってます。回避操艦を取る様子もありません」

「油断するな。あっちの方が射程は長い」

 

 ハレー島は堡礁なので近い所なら海岸部から2m先からいきなり水深数百メートル以上の崖がある、着底し機関停止という敵が一矢報いれる唯一の手段は使えない。そんな海域で対潜戦闘など演習や訓練以下のシチュエーションだった。

 

「マスカーや囮の作動見当たらず」

「3本の魚雷命中まで5,4,3,2,1,弾着」

「魚雷爆発音確認」

「ヘリへ、攻撃評価確認お願いします」

『こちらシーガル、水柱に燃料と思われる油泡と浮遊物を確認』

「魚雷攻撃の評価は有効と見られ、水中目標全て撃沈したと思われる」

「了解。第1輸送隊前に出せ」

 

 いせCICの水雷長と水測員が報告を上げる。その外では魚雷と潜水艦の爆発により3本の水柱が数十メートルの高さまで上っており高波を作り出す。

 これまでは予定通り、ついに第3フェーズに移行することになる。いせ艦長はそのための号令を出した。

 

 

―――

 

 

「これによりハレー島の海上優勢は確保された、遂に水陸機動団のハレー島への接岸だ。輸送隊は予定通り島の3kmの位置に着け」

「了解。これまでのエスコートに感謝する」

 

輸送艦くにさきとしもきたが第2護衛隊群を離れLCACの放出ポイントに急ぐ。ウェルドック内の水陸機動団のコンディションは完璧であり士気は高かった。

 

「ハレー島は空爆による煙がまだ立ち込めてる筈だ、真夜中でも鮮明に見えるほどのな」

「目印は付いているということになりますね」

「団長空挺の報告では接岸ポイントに目立った人の動きは見られないようです」

「ああ、本番は上陸してからということだ」

 

 艦尾門扉を開口していく、もうすぐ離艦するとの合図だろう。水陸機動団は目標を目で確認し言いようのない感覚が一同に走った。輸送艦1艦につきLCACは2艇搭載されている、搭載物資は水陸両用車や装甲車、重火器運搬用の73式トラックが積まれ、一つの島を分捕るには十分すぎる戦力だ。

 

「よーし時刻も丁度だ、出せ!」

「は!」

 

 午前2時05分。水陸機動団を載せたLCACは最大積載時用の速力40knt(75km/h)の高速で航行する。僚艦であるしもきたの方もLCACが放出され、4艇は並走するように並びハレー島に向かう。

 

「ハレー島から機関銃らしき発砲炎を確認!」

「戦力の把握を急げ。予定通り応撃の準備はまだ良い」

「ですが団長…」

「作戦通りなんだ、むしろ喜べ。というか魚雷艇の数と同じ爆発が起きればそりゃ気付くわな」

「あの量の弾幕は流石に脅威ですよ」

「ああ、屈んどけよ?もうじきあそこは爆発するからな」

 

 狙撃班が指揮官らしき人物を殺害したという報は入っている。1号艇に乗り込んでいる団長の土樹は安心していた新しい指揮官は島嶼防衛やゲリラ戦は理解していなさそうだったからだ。

 そんなことを考えていると偽装の為一時離脱していたF-2攻撃隊が帰ってきたようで闇夜を切り裂く轟音が響く。そのことに気付いていないのか機銃の発砲炎が上を向くことは無かった。

 

「レーザー照射。沿岸部を中心に広範囲にばら撒くぞ」

「02から長機へ、何もない所にも放つことになりますが」

「これは地雷と侵攻防御の罠潰しの意味もある。地上目標のストロボにも気を付けろ。同士討ちはパイロットの恥だ」

「了解」

「ああ、石器時代に戻せ」

 

 青木は最近見た映画にかぶれ部下に指示をした。そして誰一人その言葉(ボケ)を回収することなく符丁をコールし、全機LJDAMの赤いリリース(投下)ボタンを押した。

 片方から見ればさながら魔法である。島の砂浜から続く平野部が正確に丸ごと火の海と化したのだから。当然畏怖の念を抱くがだがそう思った者は全員死ぬ。さながらこの攻撃はフグを喰らえば毒が強すぎて外敵が食べてはいけないと学習できないフグ毒(TTX)のようであった。

 

「いいヘリポートが出来たな」

「長機へ、そろそろビンゴです。燃料が…」

「ああ司令部に通達しつつKC-767(空中給油機)の所に行くぞ」

「了解」

 

 F-2の航続距離は長大と言えど250LBの爆弾を8発抱えた状態で数時間飛行できるものでもないので空中給油機が不可欠だ。そばに控えるRF-4ejは何も言ってこないので司令部が何か言ってこない限り予定通り爆撃の任は終わりだろう。残弾は隊全体で12発ほどであり第2次攻撃も十分だろう。

 

「敵機関砲による損害はあるか?」

「いえ装備、隊員共に無傷です」

「ですが団長、敵はまだ機関砲を持っているということでしょうか?」

「多分な、だが今ので5つ以上潰したはずだ。しかも空爆で罠類はぶっ飛んだはずだし上陸はやりやすいはずだ。」

 

 LCAC4艇が砂浜に乗り上げ、遂に水陸機動団が上陸した。班ごとに島を出て周辺の安全確認を行い、艇内にあるトラックや装甲車を艇外に出す。空爆の威力はすさまじくまだ燃えている箇所があり、数班の隊員が機関砲を射撃していた部隊があった場所に急行する。

 その場所を見た隊員から順に構えていた小銃を提げ、ぼうっと立ち尽くしていた。

 

「おい、どうし―――」

「団長に連絡。おそらく80人程度の一個小隊含め機関砲8門以上が消滅したと」

「…ああ」

 

 元は重火器だったのであろう鉄屑と人体を構成するパーツ(部位)黒く焼け焦げ熱硬直により腕と足をかがめている死体など、現実というものを見せつけるような景色だ。奥にもこういった光景は点々とあるのだろう、感情を殺しつつ見つけた隊員は報告を行った。

 

「…ああ、わかった。早急に対応する」

「団長、どうしましたか?」

「いせにいるオペレーターからの報告だ。司令部施設と思わしき建物で特戦群が交戦し制圧完了したそうだ」

「では直ちに数班程向かわせましょう」

「ああ」

 

 水陸機動団のうち1個小隊が動かされ、しらみつぶしの作業が始まる。

 

 




ストック完全に切れたんで次話投稿遅れます。

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