いわゆる「普通」な魔法使い   作:朱莉

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 コソコソ


その十伍! これ副題に意味あるんです?

 

 特にないなら要りませんよね。必要だと言うならそういうのは寝ているこの子に任せましょう。

 

 

 

 人の喧嘩に首を突っ込むのは野暮だと思っていた。もしもその片方がやんちゃな同族だったら。その場合なら折を見て介入するが、今回のそれは人間同士。喧嘩なんて日常的だったし、仲も良好。今回もそうなるだろうと深く知らないのに決めつけて、勝手に高を括ってた。

 

 何時もは霊夢が折れていた。何を言っても何処吹く風、そんな相手だから。もしくは取り敢えずその場はあの子が謝って難を逃れるかしている。長引くことはない。それが普通だった。

 

 もしもあの子が心変わりしてさえいなければ今回もそうなっていただろう。だからこそ人間の心変わりのひとつでそこまで変わるとは思わなかった。大丈夫だと勝手に思ってしまった。

 

 

 

 あの子がどうして心変りをしたいと願ったのか、本人すらわかっていない事なので詳細は不明なのだが、それにより一人を除いて良好な関係を結んでいた事は明白。

 その例外が霊夢。なんだかんだ言って以前のあの子の性格が人一番気に入っていたらしい。ツンケンしていたのはそういうこと。

 

 そうして拗らせた感情のまま暴走、怒らせたら化けの皮が剥がれると思ったようだ。家を吹き飛ばしただけで止めておけば良かったのに続行。相手の反応が薄かったのがこの行動を助長してしまった。

 

 結果はあの子が傷付いて、霊夢も傷付いての両成敗だった。

 

 

 スキマ越しではあるけれどあの子は奮闘していた。端から見たら解るが、渦中だったら解るわけのない問題を、解らないなりに答えを模索していた。

 

 

 

 

 仮説としてだがあの子は性格が変わったのではなく幼くなったのではないかと思う。いつもの実験か何かの影響で。根に正直なのが理由のひとつ。一度あの子の実家の方へ行ってみるか。

 

 家が吹き飛んだせいでどうしても仮説しか立てられない。残ってさえいれば残留思念の一つでも見つかったかもしれないのに。完膚なきまでに吹き飛ばした巫女がいるらしい。畏いわね。妖怪に畏れられるなんてあの子くらいよ。

 

 

 事の発端であるあの子。白黒、普通の魔法使い。努力家で負けず嫌いで捻くれ者、でも根は真面目。霧雨魔理沙、ただの人間の少女である。

 それが唐突に絵に書いたような普通の魔法使いになった。予兆などなく、本当に唐突に。過去に起きた異変とは違い彼女一人の変化。以降を含めても彼女一人。種族は未だ変わっていないが。

 

 紅魔館にいる気を使う妖怪、竹林の姫や賢者に本人かと確認すれば本人だと返ってきた。勿論魔法使い仲間にも聴いたが内容は変わらず。技術を物理的に奪われるよりはマシという言を並べられ、彼女たちにしたらこちらの方が好ましいようだ。風の噂程度で耳にしたであろう者たちもあの子の変化は好ましいらしい。身近であればあるほど違和感を抱く、そういうことだろうか。

 

 

 

 私のスキマで紅魔館にいたあの子を自宅へと保護したのだけれど、その時には遅かった。というより私が引き金を引いたとも言える。迂闊に口を開くものではない。口は災いの元とはよく言ったものである。遅かれ早かれとは言えども。

 

 彼女は精神の磨耗により、物理的に二つに別れかけていた。それも別れる寸前。私との会話でそれに気づいてしまった彼女は保ちきれずに分裂した。片方はその場に、片方は壁に打ち付けられて。

 私が保護できたのは弾き飛ばされた片側だけ。もう片方は私の驚きにより生じた隙を見て逃走。微かに見えた横顔は笑っていたようにも見えた。

 

 追走は藍に任せたが、未だに連絡がないと言うことは概ね逃げられたと見て良いだろう。介護と追走を逆にしておけばよかった。動揺していたので判断を誤った。

 

 弾き飛ばされた方は呼吸をしていたので死んだわけではない。微弱ながら魂もある。外来的なショックで気を失っているだけのようだ。一先ずは安心できた。

 

 霊夢に連絡はこの子が目を覚ましてからにしよう。私もまだわからないことが多い。いや、保護した事だけは伝えておきましょう。別れたもう一人の動向も気になりますし。

 

 

 面倒が増えたが何故かそれを楽しんでいる私は根っからの妖怪なのだろう。人の不幸は蜜の味だったか。なるほど、これは甘美だ。下っ端の妖怪が好むのも理解できる。

 

 

 

━━━───━━━

 

 

 

 どうやら私は間違えたらしい。それも本当にやばいやらかしをした。

 

 現状報告という致命的になった答えを藍が伝えたからだ。

 

 別れた魂を勝手にそれ以上別れないモノだと思い違いをしてしまった。別れた魂がずっと分裂を繰り返し、繰り返し、ネズミ算……とまではいかないにしろ増え、相当に希薄な存在にまでおちてしまっているようだ。

 

 そして最初に別れた、介抱していたあの子。目を覚ます気配が一切なく、見ていないから多分としか言えないが、最初の片割れが別かれる度にこの子は弱っている。報告をさせた藍に竹林の賢者を呼ばせに行かせたが救いにはなり得なさそうね……、出来て延命程度だろうか。

 

 最初は寝静まった人の様だったのが今じゃ大粒の汗を流し悪夢に魘されるように体中を強張らせている。苦しそうなのに声すら出さない。……この子は多分、空っぽなのだろう。きっと器でしかないのだ。本来は満たされていなければならないのに身勝手な妖怪のせいで中身がなくなって、壊れていく。起きぬままにこうなって、未だに霊夢に連絡をまだ出来てないのが黒幕扱いされそうだけれども……いや、今、こうなった原因は確かに私だけれども。そこを詰められたのならいつも通りにやろう。それで満足するならその程度の能力だったってことなのでしょう。

 

 

 仮にの話、器だとしたあの子は全員からも認識されているが、分裂した個体は私にしか見えない、藍にしか見えない、橙にしか見えない、のような特殊な状態のようだ。だとして、それが分かったところでどうなる……。分裂した魂が、弱りきった只人が、遊びとはいえ弾幕に耐えられる理由がない。

 

 ──流石に不味いのでは?

 

 

 

 あぁ、いやいや、穏やかな性格になってからのあの娘ならのらりくらりと躱せそ──

 

 

 

 ──いや、全然普通に弾幕やってたわ。なんなら口では嫌そうにしてても好戦具合は一切変わりなかったわ。

 

 

 ………そもそも、別れたあの娘はどんな性格なの? 私から逃げたってことは普段の性格と違うってことよね? 間違いじゃなければ笑っていたわよね?

 

 

あれ、もしかして、もしかしなくても割と詰んでる? 

 

 

 

 





 何故か評価を頂いてしまったので書いときました。イキワレ

 ランキングに載らなければまた投稿するかなぁ……くらいの気持ち。載ったら雲隠れしそう()
 暇があればこつこつ書いときますね。一応ね。
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