I wanna make a rainbow with you   作:old777

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「やっほー、部長のモニカよ、見えてるかしら」
「この物語が私と彼の恋物語になることを見ててほしいわ」
「水族館デートとかお買い物とかやりたいことはいろいろあるのよね」
「そのためなら私なんだって頑張れちゃうんだから!」



All I Can Do

朝が来る

 

月曜日の朝はだれにとっても憂鬱なものだと考えてる

学校、会社、行かなければならないもの、やらないといけないことのために朝起きなければならない

 

なんで起きるの?

 

なんで私は起きて、学校に向かうの?

 

私は毎朝こんなことを考える……

考えて、考えて、頭がぐっちゃぐちゃになるまで考える……

 

私はなんで…………

 

机の上に置いたスマートフォンが振動する

机と共振してその音は部屋中に大きく鳴り響く

私の思考はいつもこのスマートフォンのコールに中断される

部屋中に振動して鳴り響く、音、音、音。

 

両親が家にいるのなら「うるさいから早く出なさい!」なんて怒られるんだろうなって一人思う

私の太陽からのモーニングコール

私がこのモーニングコールに出ることはない

彼もそれを知っている。

知っている、でもかけてくる。

私が小さいころから、彼は私の隣にいてくれる。

 

彼が隣にいてくれると、私の心の雨雲はすっかりと晴れてくれる。

でも、彼がいなくなると途端に雨が降る。

土砂降りの雨、雨、雨。

 

その音で私の心は乱される

太陽があるからこそ

雲もできるし

雨も降る。

でも、照らされなければこの雨は降り続ける

永遠に。

 

ちらりと時計を見る。7:35

扉の上の時計の秒針は無慈悲に回り続け、短針と長針が一直線に重なる。

今から着替えて、ご飯を食べれば始業時間の30分前には余裕で到着できるのになぁ

考えはするけど、ベッドから上体を起こしてから私の体は動こうとしない

 

私の心が動くことを拒否していた。

また自分の中で問答が始まる。

 

なんで起きるの?

 

なんで私は起きて、学校に向かうの?

 

私はなんで…………

 

生きているの?

 

でも、死んでしまおうなんて、思うことはない。

太陽が私を照らしてくれる限り、私は私でいられる。

彼は、私の太陽、私だけの太陽。

 

何も言わなくても、彼は私のそばにいてくれる。

もし、私が彼にこの気持ちを伝えた時どんな顔をしてくれるんだろう。

重いって突き放されるのかな?

 

きっとそうだろうな。彼にはもっといい人がお似合いだよ。

大粒の涙がいくつかこぼれる。

頬を伝った雫は黄色い掛布団にシミを作る。

後何リットル涙を流せば私の雨雲は晴れてくれるんだろう。

 

彼の隣にいる自分を想像するだけで、相反する二人の私が喧嘩する。

彼の隣に私はふさわしくないと自分を卑下する自分。

私には彼が必要なんだと泣き崩れている自分。

 

どっちも自分だとわかっているけど、そんなことはどうだってよかった

いつも私は、私を卑下する自分に負けるんだ。

でも、私が彼から離れたら、彼の笑顔も消えちゃうって思っちゃう。

彼の笑顔が私の太陽なんだ、ゼッタイに絶えさせちゃいけない。

 

彼の笑顔は私以外に向けられるべきだ!もう一人の私が私の頭の中でガンガンと騒ぐ

分かってる、分かってるよ。

だから昨日、ナツキちゃんに新入部員を連れてくるって言ったんだ。

部活に入れば彼も私以外に目を向けるようになる?

 

違う、違う、違う、違う。

私の本心はそうじゃないって泣きながらに訴えてくる。

1秒でも長く彼と一緒にいたい。

だから私は彼を文芸部に引き込もうとしてるんでしょ?

 

ちがうよ、彼にほかの人と幸せになってほしいから文芸部に引き込もうとしてるんだよ。

だから、ナツキちゃんにカップケーキを作るようお願いしたんだよ。

 

紅茶を入れる時のユリちゃんに彼はときめくんだろうな。

思いあがるなよ、私。

私みたいな精神疾患者が彼を幸せにできると思う?

 

できたらいいな、なんて微塵も考えちゃダメなんだ。

私は頭を左右にぶんぶんと振る。

頭の中の二人の私を振り回して一つにする。

 

袖で目を乱暴に擦って涙を止める。

濁った青い瞳は赤く充血して汚らしいんだろうな。

 

「起きなきゃ」

そう呟いて掛布団を取り除いて両足を床につける。

 

足の裏にひんやりとした床の感覚が伝わってくる

このままだと、私の心まで凍り付いてしまいそうだ

近くにあったスリッパに足を滑らせる

ふわふわとしたクッション材が床との間に挟まる

 

それでも一度触れた冷たさは戻ってくれない

布団と机の距離が遠い。数歩歩けば届く距離なのに

その一歩をなかなか踏み出せずに直立したまま動けなかった

やっとの思いで一歩、また一歩と踏み出して

鳴らなくなったスマホを手に取る。

 

スマホの着信履歴には■■■■君の名前が……

 

何で、名前が読めないの……?

 

読めないだけじゃない……彼の名前が思い出せない

 

なんで?私の大切な人なのに、どうして!

私はもう一度目をこすってスマートフォンの画面を見る

目がまだ開いてなくって見えなかっただけ。

 

そう信じたかった。

スマートフォンの画面にはタチバナ君と書かれた着信履歴だけがポップアップされていた。

そう、タチバナ君、うん、大丈夫、覚えている……

 

さっきのはまだ頭がぼーっとしてただけ……

きっとそうに違いないと思いながらスマートフォンを握りしめ、部屋の扉を開く

静かに階段を降り、リビングに向かう

両親は他の家に住んでしまっているので、今いるのは私一人だ

 

一人暮らしには大きすぎるリビングの片隅で、今日も私は目玉焼きを焼く。

目玉焼きと食パン、長年朝ごはんはこれしか食べていないような気さえしてくる。

好きなわけでも、手軽なわけでも、作るのが面倒なわけでもない

ただただ、これを作る。なぜかわからないけれど。

 

食べなきゃ元気が出ないから、食べたら元気が出ると思いながら

私は無言でご飯を口に運ぶ。

なんでだろう、目玉焼きに塩入れすぎちゃったかな

なんだかすごくしょっぱいや。

食べてるときだけは何も考えずにいられる。

そんなことをしているせいで、小さくなってしまった制服に腕を通し、身支度を整える。

 

早く出ないと遅刻しちゃうとは思いながらも身支度をする手は一向に早まらない

何で学校に行かなきゃ行けないの?

そんな思考が頭の中を支配して、さらに身支度の手は遅くなる。

 

ふと、彼のことが頭をよぎる

もし彼が、私のことを家の前で待っていたら?

もし彼が、私がなかなか来ないことに心配していたら?

もし彼が、私のことを迎えに来て待たせてしまったら?

そんなことを考え始めると止まらなかった。

 

身支度を乱暴に済ませ、階段を上りかばんを引っつかむ

彼に迷惑をかけることだけは絶対にしたくない。

彼に負担をかけたくない、彼の荷物になりたくない。

それだけを考えて、玄関で靴を履いて一呼吸置く。

 

さぁ、いつもの笑顔の仮面を張り付けて家を出よう。

小さいころ、彼からもらった笑顔の仮面。

今は彼を騙すため、心配されないためにつける仮面。

 

気づいてよ、気が付かないで。

 

仮面の下を覗かないで。私のことをもっと知って。

笑顔の仮面をつけると私の頭の中はリセットされる。

 

二つの私が持っているたった一つの共通項。

彼に迷惑をかけたくない。

さぁ、走るんだ。彼に笑顔を見せるため。

彼に心配をかけないためにも。

 




「サヨリったら、最初から鬱病だったのね。少しだけ同情するわ」
「それでも、私の悲願のためには……今は彼女を救うことはできないわね……」
「もし何か手段があるなら考えたいけど……」
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