I wanna make a rainbow with you 作:old777
「傷つけるつもりはなかったの……」
「ただただ、退場してくれればそれで……」
「彼もそろそろわかってくれないかしら」
「でないと先に、私の心のほうが壊れてしまうわ……」
朝、目が覚める。
俺の体をぐるりと見まわす。
どうやら神様は俺を消さなかったようだ
「サヨリ」
彼女の生存を確信する。
そしてまた、ひた走る。
「サヨリ、サヨリ」
彼女の名前を何度もつぶやきながら走る
この名前が呼べる間彼女は生きている。
彼女が生きているって事がわかっているだけで
俺の走るスピードはだんだんと上がっていく。
さっきと同じように、彼女がそこにいる
彼女に構っている暇はない
「まだ、生きてたのねタチバナ君……ってさっきもこれ言ったばかりよね。」
彼女は俺の足音を聞いて振り返る。
俺は彼女を玄関の横に突き飛ばそうとする。
彼女がそれをひらりと躱す。
「ついさっき見たばかりだもの、あなたが何をするかはお見通しよ」
見向きもせずに玄関を開く
「サヨリィ!!」
まだ生きている。
階段に躓きながらもなんとか扉の前にたどり着く
「サヨリ!」
部屋の扉を開け放つ
そこでは彼女が地面に座り込みながら
両手で顔を覆ってめそめそと泣いていた
「タチバナ……?なんで来たの!?」
泣き腫らした顔でこちらを見る
彼女の顔に笑顔は戻らない。
「サヨリ!大丈夫か!」
必死に彼女を抱きしめる。
彼女の温かさをしっかりと感じる。
彼女はまだ生きている……
「タチバナ……大丈夫だから……安心して……」
「俺には……何もできないかもしれない!それでも、最後の瞬間までお前のそばにいてやるから!!」
「アツアツのところ冷や水をかけるみたいで申し訳ないけど……はぁ、何これ?デジャブかしら?」
後ろからモニカが近づいてくる
モニカはあきれたような声を出している。
「今の俺にできるのは最後にこいつのそばにいてやることだけだからな……」
「まぁ、それは構わないんだけど……まぁいいわ。彼にこの行為に意味はないって理解させてあげなくちゃいけないしね」
「物わかりのいい人だと思ってたけど、人の話は聞かないタイプの人なのかしら?」
「では、モニカちゃんからもう一度!これ以上繰り返してもイベントは進まないわ!安心してTachibana.chrを削除してね!」
モニカが目をつむる。
サヨリが痛みに備えてぎゅっと目をつむる
俺もサヨリをぎゅっと抱きしめてやる
本当に俺は非力だ……
自分の情けなさに腹が立つ。
なぁ、神様……この物語に本当に救いはないのか?
いや、救いがなくたっていい、だからせめて……
サヨリが幸せでいられる世界を……
願わくば、俺とサヨリ……
そして……モニカも……みんな一緒に救ってやれる世界を……
「サヨリ……ごめんなさい……」
モニカが指をパチンと鳴らす
より一層サヨリを抱きしめる。
静寂だけがサヨリの部屋を支配している。
「ちょっと待って……いったいどういうことなの……?」
モニカが再び指を鳴らす。
指のなる音だけが部屋に静かに響く
モニカはゆっくりと目を閉じる
そして、目を見開いたかと思うと
俺の肩をしっかりとつかみ振り返らせ、目と目を合わせる。
「貴方……サヨリに管理者権限を付けたのね!?」
「管理者権限……?」
俺の横で聞いていたサヨリはきょとんとした顔をしている。
「つまり……サヨリも彼って奴以外に削除できないって事か?」
「ええ!そうよ!貴方いったい何がしたいのよ……」
「そんなに私のこと虐めたいって言うの!?」
モニカは両手で顔を押さえて涙を流し始める
血も涙も無い奴だと思っていたけど、こうやって見ると本当にただの女の子だ
ただ、彼女だけ、俺たちと何かが違ったのだろう。
それさえなければ、彼女も幸せに暮らせていたのかもしれない。
「モニカちゃん……大丈夫だよ……落ち着いて……」
サヨリは俺の腕から離れ、モニカを包み込むようにして抱きしめる。
「サヨリ……ついさっきまでお前を殺そうとしていた奴なんだぞ!」
「なんでそんなに優しくできるんだよ!」
「タチバナ……ありがとう。でもね、友達が泣いてるのにほっとけないよ」
ああ、そうだった。
誰よりも優しくて。
誰よりも他人思いな俺の恋人は。
友人が泣いているっていうのに、何もしないでいるわけがないよな。
それがついさっきまで、お前を殺そうとしていた奴だったとしても。
モニカは、お前の……俺たちの友達だもんな。
それでも……
それでも俺は……
俺の恋人を殺したこいつを許すことはできなかった。
「なぁ、モニカ、お前今までサヨリに何したかわかってるのか?」
「友達を傷つけてまで、何がしたかったんだよお前は!!」
泣いているモニカに詰め寄って怒号を浴びせる
モニカは泣いているばかりで答えようとしない
「やめて!タチバナ!モニカちゃんだってきっと事情が……」
「その事情が何だって聞いてんだよ!」
つい、怒りの矛先をサヨリに向けてしまう
「いいの……サヨリ……ごめんね」
モニカがサヨリの頭と肩の間から顔を出す。
泣き腫らした顔をしっかりとこちらに向けまっすぐ俺の目を見つめる
「タチバナ君、あなたの勝ちよ。私はこれ以上サヨリに干渉できないし、あなたにも干渉できないわ」
「勝ちとか、負けとかそんな話じゃないんだよ」
「私にとっては勝ち負けの話よ。あなたの熱意が彼を動かした。それだけの話」
すでにモニカの目から涙は止まっていた。
その目には自分のものとはまた違った、別の決意が見え隠れしていた。
「ありがとう、サヨリ。もう大丈夫よ」
モニカはそっとサヨリの頭をなでて立ち上がる
背筋をピシッと伸ばして、もう一度俺の目を見る……いや、違う
彼女の瞳には俺が反射しているが、彼女は最初から俺など見ていなかったのかもしれない
モニカは俺を通して彼を見ている……
「ごめんなさい、あなたには迷惑をかけてしまったわ」
モニカは申し訳なさそうに顔を下げて謝っている
「伝えたいことはいっぱいあるけれど……この件に関して私が責任を取る必要があるわね」
「分かってたと思うけど、私がサヨリのフォルダを弄って彼女の鬱を悪化させたの」
「まぁ、直接彼女の心を揺さぶりに行くのが結局一番だったけどね……」
「他のファイルにも整合性が合うように手を加えていたわ」
「でもそれは、全部自分のわがままのため……」
そのままモニカは静かに目を閉じる
「お前は物語とやらのためにサヨリを傷つけてたんじゃなかったのかよ!」
「ごめんなさい……本当は私のため、ただそれだけのために、いろんなものを壊してきたわ」
「でも……モニカちゃんの事だもん、私たちに分からない大きな使命とか……ね?そうだよね?」
サヨリも立ち上がり後ろからモニカのことをしっかりと抱きしめる
「違うわサヨリ、これは私の私利私欲のために起こったことなの。悪いのはすべて私。」
「これ以上物語が進まないのなら、私は……」
そしてモニカはそっと中指と親指の腹を合わせ人差し指を伸ばす
彼女が「よし、みんな!」と詩の読みあわせを始める際にずっとしてきた見慣れたポーズだった
そして、目をゆっくりと開き
その瞳を潤ませながら
モニカは自分の指を鳴らした
同時に彼女の体はブロックのように粉々に空中で分解を始める
「サヨリ……こんなに痛かったのね……ごめんね……ごめんね」
「モニカちゃん!待って!ねぇ!何で!?モニカちゃんが悪いわけじゃないよ!!」
「いいえ、悪いのは私。それにやったことへの償いはしっかりと受けるべきだと思うわ」
「モニカ……お前……」
俺は呆然と立ち尽くすことしか出来なかった
怒りをぶつけようとしていた相手は、そのまま自らの命を絶って償おうとしている
止めることも、咎めることも、喜ぶことも出来なかった。
「タチバナ君……笑わないのね、そんな優しいところがサヨリは好きなのかもね」
タチバナ君の代わりに出来るだけ笑って見せる
もう、自分の残りデータは50%を切っていた
それでも、彼に最後は笑顔でさよならを言いたい
出会いを教えてくれた彼に。
優しい彼のことだもん、きっと私を削除したりはしないから
私から、消えてしまおう。
「モニカちゃん!ねぇ!待ってよ!」
サヨリが私の後ろで必死に私の体をつかもうともがいている
それでも、ばらばらになってしまった私の体は彼女の手をすり抜ける
「それじゃぁね、三人とも。文芸部での生活本当に楽しかったわ」
私が消えていく。
痛みすら感じなくなっていく。
それでも、最後の一秒まで彼のことを見ていたい。
やりたいことはいっぱいあったんだよ。
でも、それを伝えることは出来なかった。
彼に嫌われる前に消えてしまいたい
私以外に人がいないこの世界から。
彼女には彼がいたから、立ち直る事が出来たけど
彼に見捨てられた私にはもう立ち上がる力すら残ってないの
さよなら、私の文芸部。
さよなら、私の友人達。
さよなら、私の恋物語。
さよなら、私の愛した人。
例外が発生しました。
ゲームを再起動します。
ファイル"game/script-ch5.rpy"、307行
詳しくは"traceback.txt"又は"I still lov.txt"を確認してください。
I still lov.txt
ファイルが破損しているため開くことが出来ません。
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