妖精の軌跡second   作:LINDBERG

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第10話 機械は怖いよ……

ヤバい……、さっさと間接ハメとくべきだった。

 

右手だけに双銃剣の片割れを手にしたフィーが、苦笑いを浮かべながら牽制の弾幕を張り続ける。

 

「いけー!がーちゃんパーンチ!!」

アガートラムの鋼椀が唸りを上げ、白い機体に襲いかかる。

……が。

ヒットする寸前、白い機体は透明のバリアに包まれ、アガートラムの攻撃は遮断されてしまった。

戦闘を開始してからというもの、ずっとこの調子で障壁に阻まれ続け。ダメージを与える事はおろか、直接触れる事すら出来ずにいる。

 

ちぃ……、確かリアクティブアーマーとかいったか?

去年トリスタでSとヤり合った時は情報が無かったから全く歯が立たなかったけど、障壁を発生させる装置さえ破壊すれば何とかなるんだったな。

 

白い機体が腕を振り回して襲って来る。それを軽い身のこなしで避け続けながら、注意深く相手を観察する。

 

えーっと、装置、装置……。

……

……

……

……? 何処???

 

シュピーゲルの時は機体の胸部に発生装置が取り付けられていたが、目の前の白い機体からはそれらしきモノを視認出来なかった。

 

マジかよ……。いや、考えてみれば同じ所にいつまでも弱点を晒してるワケねーか……。

 

思わず1人で納得してしまう。

 

さて、どうする?

 

フィーの援護を受けながらミリアムがアガートラムで攻め続けるが、一撃どころか傷一つ付ける事すら出来ていない。自慢のビーム攻撃も障壁に弾かれてしまっている。

 

こっちの攻撃は全く届いて無い。しかも人間がコントロールしてるワケでも無いのにあの正確なディフェンス……、敵対者の攻撃を頭部のセンサーカメラで感知して、オートでシールドを展開してるみたいだ。

かといってセンサーカメラを狙おうにも、そこにもしっかり障壁が張られてる……。

……ヤベーな、打つ手が無ぇじゃねーか。

 

周辺の状況を観察しながら策を練る。

 

確か、リィンとヴァリマールは力ずくで強引に打ち破ってたな。多分、障壁じゃ耐え切れないレベルの攻撃を仕掛けられれば、システムエラーが起こって機能しなくなるワケなんだろうけど。

機神並の一撃か……。

ありったけの爆薬を注ぎ込んでも難しいか?

 

思わずマキアスが持ってたC4を分けて貰えば良かったと悔いる。

そんなフィーの思考は、リンクを通してミリアムにも伝わった。

「ふふん♪ボクに任せてよ、フィー!」

自信満々な様子で笑顔を見せている。

 

?、何か奥の手でもあるのか?

 

「行くよー!がーちゃん!!」

ミリアムが右手を挙げると、アガートラムに変化が起こる。

「巨大化!!」

突然アガートラムの全身から謎の発光が迸り、その姿を機甲兵並の巨駆へと変えた。

「……っ!!」

 

あ、アガートラム……、いよいよ何でもアリか!???

 

思わず言葉を失う。

「ふふん♪今度は分身にも挑戦しようと思ってるんだよねー♪」

ミリアムは弾けんばかりの笑顔を見せている。

 

イヤイヤイヤ、いくら何でも分身は無理だろ。巨大化は何となく出来そうな気がしてたけど、分身って……。

 

そうは思いながらも、コイツらならヤりかねんな、と小さく頷く。

 

「行っけー!!ジャイアントがーちゃんパーンチ!!!」

アガートラムの巨大な拳が、容赦なく障壁に襲い掛かる。直後に数十枚のガラスが一斉に割れたかの様な凄まじい破壊音と共に、障壁は粉々に砕け散って空気中に霧散していた。

「にししっ♪やったね、がーちゃん♪」

ミリアムが自慢気な顔を浮かべる。

 

ヒュー、やるー!

 

その様子を見ながら、心底アガートラムが欲しいと思うフィー。

「あ!言い忘れてだけど、巨大化すると内部エネルギーを全部使っちゃうから、がーちゃんはしばらくお休みだよー♪」

「……えっ?」

ミリアムの言葉通り、空気中に溶け込む様にアガートラムはその巨体を消した。

 

イヤイヤ、そういう大事な事は先に言っておけよ。……でもまぁ、障壁さえ無くなれば後はどうにかなるかな?

 

一瞬だけ苦笑いを浮かべるが、直ぐに気を取り直して行動を開始した。

目論み通りシステムエラーが発生しているらしく、白い機体は障壁を発生出来ずにいる。

 

チャンスだね。

 

右手でポーチから爆薬を取り出し、相手の足元に仕掛けようと素早く動き出す。

狙いは装甲が薄い間接部だ。

 

ふふん、ぶっ壊してあげ……、!?

 

唐突に第六感が警鐘を鳴らす。

 

何だ??

 

ふと顔を上げると、白い機体が背中に取り付けられている棒状のディバイスに手を伸ばしていた。

 

!!? な、何だか分からんけど、ヤバい!!

 

跳び跳ねる様にその場から退く。

ほぼ同時に、相手は背中から取り外した棒状ディバイスから破壊光線を立ち上らせ、フィー目掛けて振り下ろした。

 

くっ!!?

 

脱兎の如く、その場を逃げ出し、フィーは相手の攻撃を何とか避ける。

目標を捉え損ねた一撃は床に突き刺さり、その周囲はまるで高熱で熔けたかのように、歪に変形していた。

 

げっ!? オイオイ、マジかよ!? あんなの直撃じゃなくても大惨事確定じゃねーか!

 

白い機体は床に突き刺さった細長く伸びた破壊光線を引き抜くと、まるで剣の様に構えた。

 

ビームサーベルとでもいうのか? ヤバいな、障壁が無くなってもこれじゃ迂闊に近寄れねーぞ。

 

白い機体が動き出す。一瞬で間合いを詰めて横凪ぎの一閃を払って来た。

 

ちぃ!?

 

後方に跳んで距離を取りながら避ける2人。だが相手は間を置かず、更に容赦ない攻撃を繰り出し続ける。

 

さ、流石機械だ……、一欠片として容赦が無ぇ。

 

逃げ回る事しか出来ないフィーが、思わず苦笑いを浮かべる。

「いやー、ヤッパり強いねぇ。ガンダ……」

「ん、ミリアム、それ以上は言っちゃダメ」

「うん、オッケー♪」

そんな事を言い合いながらも何とかビームサーベルの連撃を掻い潜る2人。だが、とうとう壁際にまで追い込まれてしまった。

チラッとアガートラムが使用不能になっているミリアムへ視線を向ける。

 

ちっ、しゃーねーか。

 

「ん、ワタシが引き受けるから、ミリアムは予定通り写真撮っちゃって」

フィーがミリアムに向かってカメラを投げ渡しながら、白い機体の注意を引き付ける。

「何とか隙を作るから、撮ったらダクトの近くまで移動して」

「だ、大丈夫なのフィー!?片腕しか使えないんでしょ!?」

「ん、ま、何とかなるでしょ」

一直線に振り下ろされるビームサーベルを横っ飛びで避け、壁づたいにフィーが動き出す。それに釣られる様に相手もフィーだけに狙いを絞ったらしく、ビームサーベルを振り回しながら追って来た。

 

機械相手じゃ持久戦に持ち込まれたら絶対に勝てない。かといって逃げようにも、ある程度相手の動きを封じないとダメだ。

何とかして突破口を見つけないと。

 

相手の容赦ない攻撃を掻い潜りながらも、集中力を限界まで高め続ける。スリープ状態で停止している何体かの機甲兵が、巻き添えを喰う形でビームサーベルの餌食になるが、相手の猛攻は全く収まる気配が無い。

 

ホント容赦無ぇな……。でも、頭部のカメラだ。アレさえ破壊出来れば何とかなる、……ハズ。

 

片手で閃光弾を取り出し、口でピンを抜く。

 

ほい、プレゼント。

 

相手の攻撃に対し、カウンターになるタイミングで閃光弾を放り投げた。それは一直線に頭部目掛けて飛んでいき、直撃寸前にスパークして相手の視界を奪う。

 

よーし、今度こそぶっ壊して……、!?

 

しかし、視界が利かないにも関わらず、相手の攻撃が止まる事は無かった。

 

なっ!?……そっか、人間が動かしてるワケじゃないから、精神的に揺さぶっても意味無いのか。

 

白い機体がビームサーベルを大上段に構え、フィー目掛けて振り下ろす。

 

!!、ヤバい!!

 

間一髪のタイミングで横っ飛びに避ける。しかしサーベルが放出する熱波と、残撃の衝撃に巻き込まれ、フィーは思い切り左半身を近くの壁に叩き付けられた。

 

ぐっ!? 痛ってー……。……ん? あれ???

 

不意に左肩に違和感を覚えた。何とはなしにグルりと回すと、しっかりと動いている。

 

ら、ラッキー、今ので肩入った!……め、メチャクチャ痛いけど……。

 

自分でちゃんとハメたワケではないので、筋を痛めたらしい。左腕を動かすと思わず顔をしかめる程の激痛が走る。

 

ぐぅ、マジで痛てぇ……。……痛てぇけど、動く!

 

翡翠色の瞳が烈火の如く燃え上がり、脳内で洒落にならない量のドーパミンが分泌され、肩の痛みが消し飛んだ。

 

絶対にぶっ壊してやる!!

 

再びビームサーベルの一撃が振り下ろされる。両手に双銃剣を構えたフィーは、飛び上がって攻撃を避け、そのまま相手の腕に飛び乗った。

 

小細工が効かないなら、直接ぶっ叩く!

 

素早く相手の腕を駆け上がって頭部付近まで接近し、センサーカメラを射程距離に捉える。

 

行くよ! 今度こそぶっ壊し……げっ!?

 

下から見上げている時には死角になっていて気付かなかったが、頭部には機銃が2門も設置されていた。

 

ふ、ふざけんなぁ!??

 

近距離からバルカン砲の掃射に晒されるフィー。

 

ちぃ!!?

 

仕方なく腕から飛び降りて緊急離脱を図る。しかし身動きの取れない空中で、更に狙い撃ちにされてしまう。

 

にゃろー!?

 

空中で双銃剣を乱射してその反動を使い、何とか相手の銃弾の嵐を避けようと試みる。

 

ぐっ!???

 

だが、近距離からの一斉射撃。全てを回避出来る筈も無く、左肩を銃弾が掠め取った。

 

痛ってー!!? また左かよ!??

 

思わず顔が歪む。

 

くっそー、まさかあんなトコに武装してあるとは思って無かった。

 

鮮血を散らしながらも着地し、肩の具合を確かめる。

「……っ」

肉を抉られただけで、骨には異常なさそうだ。軽く肩を回すと、問題無く動いた。……だが、気が狂いそうになる程痛い。

 

……ヤベー、マジでヤベー。今までにも何回か生身で機甲兵とヤり合った事はあるけど、コイツはその中でもダントツに強い。しかも人間が動かしてるワケじゃないから、動きに全く無駄が無い上に躊躇も容赦も無ぇ……。

 

白い機体が再びビームサーベルを振り回してきた。

 

ち、ちょっとは休ませろよ……。

 

バックステップを駆使して何とか距離を取る。そこに頭部から機銃の雨が降り注ぐ。

 

ちっ!!?

 

何とか弾道を見切り、避けきれない銃弾は双銃剣で叩き落とした。

 

くっそー! ジリ貧もいいところだ! そういや、こっちの攻撃はアガートラムの一発しか当たってねぇんじゃねーか!?

 

相手の追撃の手が緩む事は無い。再びビームサーベルが振り下ろされる。

 

ぐっ!?

 

近くに留めてあった機甲兵の下に潜り込み、相手の視界から姿を隠す。だが白い機体はお構い無しにビームサーベルを振り抜いて来る。

残撃に巻き込まれた機体は胴体を寸断され、見るも無惨な有り様で地面に転がった。

 

ちっ、ヤッパりダメか……。ターゲットを仕留めるまで、どれだけ損害が出ようが全く関係無いみたいだ。

……敵も味方もあったもんじゃ無ぇな。

 

苦笑いを浮かべながらもとにかく逃げ回る。

 

「頑張れー、フィー!! がーちゃんが動ける様になったらボクがヤっつけてあげるから!!」

パシャパシャとシャッターを切りながらも、ミリアムから熱い声援が贈られて来る。

しかし、ファインダーの視点はどう見てもフィーに向いていた。

「……」

 

いや、ワタシを撮ってどうする!? ドック内の写真撮れよ!!

 

普段なら呆れながらもピースサイン位は返してやる所だが、今はそんな余裕は何処にも無かった。

 

くっそー。アガートラム、早く助けに来てくれ!

 

心の中で祈りながらも足を止めずに動き回るフィー。

だが、突如として白い機体はその動きを止めた。

 

えっ?? ……なんで???

 

 

 

「何だキサマ達は!?ここで何をしている!!」

不意にドック内に、威圧的な声がこだまする。

見ると、白髪を撫で付けた壮年の男が1人、杖を付いて壁際に立っていた。

 

ああ、……ユーシスのお父さんか。

 

「ネズミが入り込んだと聞いて、まさかと思い来てみたが……。ふん、ユーシスの差し金か」

ヘルムートが鼻を鳴らしながら、まるで汚いモノを見るような眼を向けて来た。

「トールズのⅦ組とかいったか? 薄汚いネズミ風情が、ワシの城を荒らしおって!」

湯気が出る程、顔が怒りに染まっている。

「だが、狼藉もここまでよ!我が最高傑作、メビウスの餌食になるが良いわ!!」

杖を高く掲げ、白い機体に指示を飛ばした。

 

ふーん、メビウスっていうのか、この白い機体。……てっきりガンダ……おっと、危ない危ない。

 

「行け!! RXー78メビウスよ!!」

 

メビウスって言ってんだから、その形式番号はヤメロー!!!

 

メビウスが再び動き出す。ビームサーベルを振りかぶり、フィーに向かって一直線に振り下ろした。

 

ちぃ!……ん?……待てよ。

 

横っ飛びにビームサーベルを避けると、フィーはメビウスに背中を見せる事になるのも構わずに、ヘルムートに向かって銃口を構えた。

「なっ、何のつもりだ!??」

ヘルムートの顔が、一瞬で恐怖に凍り付く。

 

ふふん♪ さあ、どうなるのかな?

 

何の躊躇いもなく引き金を引くフィー。

すると、フィーへの追撃の構えを取っていたメビウスが、即時に行動を中止してフィーとヘルムートの間に割って入り、その身を挺してヘルムートをかばった。

 

ヤッパね、第一優先はご主人様か。

 

ヘルムートが現れた瞬間に殲滅行動を中止したメビウスを見てピンと来た。自身の主が近くに居ては、どう巻き添えを喰わす事になっても不思議は無い。忠誠心の厚い兵士ならば、行動中止は当然の判断だろう。

それは機械でも同じ事……。

 

まぁ、主人に危害を及ぼさないのが最優先ってインプットされてるんだろうけど、これを利用しない手はないね。

 

口元に悪魔の様な笑みを浮かべ、フィーが更にヘルムートへ向けて弾丸を発射する。

健気にも自身の体を隙間無く小さく丸めて、ヘルムートの盾となるメビウス。

 

ふふん、ただ守ってるだけじゃ、いつまで経っても敵は居なくなってくれないよ?

 

閃光弾を取り出し、爆薬を張り付けてメビウスの足元に投機する。同時にARCUSを駆動させて、絶好のタイミングを待つ。

数秒後、メビウスの足下で爆発が起こり、同時にフィーがスパークアローを発動させる。相手の右足を正確に捉え、メビウスの体勢が大きく崩れた。

 

そんじゃ、仕上げといきますか。

 

双銃剣の銃口を頭部のカメラへ向けて構えた。

 

待たせたネ、今度こそぶっ壊して……、ん??

 

不意に気配を感じて後ろを振り返ると、ミリアムが笑顔を見せながら右手を高々と挙げている。

「にししっ♪ お待たせフィー! 行っくよー、がーちゃん!!」

ミリアムの呼び掛けに応じ、アガートラムが巨大化した状態で出現する。

 

……いやいや、遅せーよ、お前ら。っていうかアガートラム、さっきよりもデカくね???

 

先程は機甲兵並のサイズだったアガートラムだが、今度は更に大きい。天井に頭が付きそうな程の巨体だ。

 

「行けー!! 超ジャイアントがーちゃんパーンチ!!」

アガートラムの極大化した拳がメビウスの顔面に炸裂する。それは一辺の容赦すら無く頭部のカメラを粉々に破壊し、更に勢い余ってか顔面自体が木っ端微塵に砕け散った。

 

 

 

「め、め、メビウスぅーー!!???」

ドック内にヘルムートの絶叫がこだまする。

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