妖精の軌跡second   作:LINDBERG

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第12話 伝説は前触れ無くやって来た

ふぅ……、ようやく一区切りか。

 

レグラムのギルドで、書類の山を目の前にしたトヴァルが、一つ大きく息を吐いた。

 

ったく、サラもフィーもいい加減な報告書作りやがって……。こんなもん本部に提出したら、来月の経費がまた削られちまうじゃねぇか。

 

無意識に1人ゴチ、悪態を吐露する。

基本的に『事務仕事はトヴァルの役割』という暗黙の了解がいつの間にか出来上がっており。トヴァル自身も、サラとフィーに任せる位なら自分がやった方が確実だ、という事で渋々ながらも了承していた。

先月、フィーはバリアハート、サラはノーザンブリア、トヴァルはリベールとカルバードと、それぞれ別の仕事で各地に散った3人。

事後報告の内容では、それぞれが相当に手を焼いたようだが、特に戦禍の真っ只中だったノーザンブリアは、かなりの地獄だったようだ。

 

避難民の誘導と、結社が市街地に解き放った人形兵器の後始末か……。流石のサラも一筋縄じゃいかなかったようだな。

 

今日は1人でパルムに向かっているサラ。

ノーザンブリアでの功績が本部に高く評価され、ブレイサーランクも一気に跳ね上がり、元のA級に戻るまで後一歩というところまで来ていた。

 

……それに、リィンの事も心配だぜ。

 

現役の学生であるにも関わらず、帝国政府に『灰色の騎士』として持ち上げられ、傀儡さながらの環境に身を置くリィン。

サラの報告書に目を通すと、ノーザンブリアでは鬼の力が暴走し、一時はかなり危険な状態にまでなったらしい。

ノーザンブリアの併合が完了した後、即時帝都の病院に入院する羽目になり、今月に入ってからようやく学院に復帰したそうだ。

 

こんな事なら、春先に誘った時に、無理矢理でも遊撃士協会に席を置かせるべきだったかもな……。このままこんな事続けてたら、いくらリィンが頑丈でも、いつかブッ壊れちまうぜ。

 

内戦時、リィンの故郷であるユミルでしばらく行動を共にしたトヴァル。その縁もあり、トリスタに寄る時は必ず様子を見に行く様にはしているが、この数ヵ月で微妙にリィンの影が濃くなった印象を持っていた。

 

元々、そこまで明るいっていう性格でもないが、リィンは生真面目なところがあるからな……。与えられた仕事は、どんな内容でも律儀にこなそうとするだろう。

適当にガス抜きが出来てれば良いんだが、カードゲームと釣り位しか趣味が無いからな……、アイツは……。ちゃんと夜は眠れてるのか?

……それに比べて。

 

チラリと、ギルドの奥に設置してある、今となっては本人専用と化したソファーで横になり、スヤスヤと寝息を立て続ける後輩遊撃士を見つめた。

 

こっちはこっちで、暇さえあれば良く寝やがるな……。……サラの奴、トールズでどういう教育してやがったんだ?

 

勤務時間中にも関わらず、堂々と昼寝休みを続けている。

 

そうだなぁ……、今度時間を見つけてどっかに連れて行ってやるか? 来春には俺達の同僚になる予定だし、今のウチからしっかり兄貴分として接してやらないとな。

 

トヴァルの頭の中では、卒業後のリィンの就職先は遊撃士協会で完全に決まっていた。

 

良し、そうしよう! そうと決まれば、早いトコ事務処理を終わらせて、スケジュールの調整しないとな!

 

気合いを入れ直して、再び書類の山に取り組む。

そんなトヴァルの考えとは関係無しに、超弩級の来訪者がギルドの扉を叩いた。

 

ん?お客さんか?

 

トヴァルが顔を上げるのと同時に扉が開かれ、2人の女が姿を現した。

 

……へっ???

 

その内の1人の顔には、あからさまに見覚えがあった。昨年の煌魔城でオリヴァルト皇子と共に、嫌と言う程に向かい合った顔だ。

女は不機嫌そうな様子で目を伏せ、こちらを見ようともせずにブツブツと何かを呟いている。

「げげぇ!??け、結社の神速!??」

「ふん……」

神速のデュバリィはトヴァルを一瞥すると、鼻を鳴らしながらすぐに目を逸らした。

「な、な、何しに来やがった!?まさか、この前俺と皇子にヤられた仕返しか!?」

「なぁっ!?だ、誰も貴方達なんかにヤられた覚えはありませんわ!!」

「それじゃ何だ!?殴り込みか!?」

「な、何故わたくしがそのような蛮行を働かなければならないのです!!?」

「それじゃあ何の用だ!?」

「そ、それは……」

デュバリィが口ごもっていると、隣に立つもう1人の女性が口を開いた。

「突然の訪問で驚かせてしまったようですね、ご容赦の程を願います」

凛とした声色で、丁寧な謝罪を口にする。

「へ?あ、いや、ご丁寧にどうも……」

思わず恐縮してしまうトヴァル。見知った顔に気を取られ、今になって初めてその姿をしっかりと確認した。

古風な令嬢といった装いと、まるで絵画から抜け出してきたかの様な容姿。街中ですれ違ったら、間違いなく5度見はしてしまう程の美しさだ。

 

ヒュー♪おいおいおい、マジかよ!!とんでも無い美人さんじゃねーか!?

 

思わず鼻の下が伸びる。

 

「今日はお願いがあって参りました」

そんなトヴァルの様子を気にする素振りも見せず、女性は話を続ける。

「お願い?」

「ええ、こちらに在籍するフィー・クラウゼルに仕事の依頼を持って来たのですが。受けては頂けないでしょうか?」

「フィーに依頼?」

「はい」

「……い、いや、いや……。依頼って言われても……。そっちのお嬢さんと一緒に居るって事は、あんたも結社の関係者って事だよな?」

「はい」

「あー、そのー……。一応ウチのギルドとおたくの組織は敵対してる訳だから、依頼って言われても……」

「困っている人を助けるのが、遊撃士の本分だと訊いていますが?」

「いや、まぁ、それはそうなんだが……」

トヴァルが顔をしかめる。

 

いやいや、いくら美人さんの頼みでも、出来る事と出来ない事があるぜ。

 

「マスター!お言葉ですが、何もこのような所であのような小娘に頼まずとも、宜しいのではありませんか?」

デュバリィが女性の話を遮る様に口を挟むが。

「デュバリィ、一度は納得したのですから、大人しく従いなさい」

女性は優しい口調ながらも、デュバリィの意見をバッサリと断ち切った。

 

マスター?……マスター!?????

 

もう一度改めて目の前の女を見つめる。

美しい黄金の髪を靡かせ、全てを見通す様な碧玉色の瞳を携え、女は静かにトヴァルを見つめていた。

 

ま、マスター???……って事は……。

 

鉄機隊の筆頭であるデュバリィが、マスターと呼ぶ人物はこの世に1人しかいない。

「あ、あ、あ、あんた、まさか???」

「?。ああ、自己紹介がまだでしたね。身喰らう蛇が使徒第七柱、アリアンロードと申します。見知りおきを、ゼロ駆動のランドナー殿」

 

は、は、鋼の聖女かよ!?!?!?

 

先月リベールに行ったおり、ギルド仲間から断片的にだが話は聞いていた。曰く、人類最強の女。曰く、不老不死の怪物。曰く、目が合ったら人生の最後……。

 

お、終わった……。俺は今日ここで死ぬのか……。……アイン……すまない……。

 

トヴァルは観念したかの様に、そっと瞳を閉じた。

 

「ちょっと貴方!マスターが話していらっしゃるのに、何を寝ていやがります!!」

「え?あ、ああ、すまない。ちょっと現実逃避しかけちまった……。フィーに依頼だったな、呼んで来るからちょっと待っててくれ」

怪訝な顔を見せる2人にそう言い残し、トヴァルは事務所奥のソファーで眠り続けるフィーの元へ駆け寄った。

 

ヤバい!ヤバい!ヤバい! 絶対にヤバい!!! どう考えても、俺1人でどうにかなる様な相手じゃねぇ!早いところフィーを起こさねーと!

 

一目散に事務所の奥に駆け寄り、スヤスヤと眠り続ける少女の肩を揺さぶった。

「フィー!起きろ!とんでもない客が……ぶふぉ!?」

不意に、トヴァルの顔面にフィーの拳が叩き込まれる。

「……ワタシの眠りを妨げるモノは、何人たりとも許さない……Zzzz……」

フィーは一度も目を開く事無くそれだけを告げ、再び夢の世界へ帰っていった。

「い、いやいやいや、フィー! 良いから起き……ぐぎゃ!?」

今度は蹴りが飛んで来た。

「ふざけんなよ!フィー……ぐほっ!?」

鳩尾に拳がめり込んだ。

「ふ、フィ~……ほあぁ!??」

大事な所を爪先蹴りされた。

「お、おい……ひぃっ!????」

枕元に置いてある双銃剣が引き抜かれ、躊躇無く発射された銃弾が耳たぶを掠め取った。

 

「ちょっと貴方!いつまで待たせるつもりですの!?」

ギルドの受付から、デュバリィの苛立たしげな声が響いて来る。

「も、も、もう少しだけ待っててくれ!すぐに連れて行くから!」

 

な、何で俺がこんな目に……。

 

半泣きのトヴァルは、その後も懸命にフィーを起こし続けた。

 

 

 

数分後

 

 

 

「ん……、ふぁ~……。……なに?」

何故か満身創痍のトヴァルを眼前に、ようやくフィーは寝ぼけ眼を擦りながら身体を起こした。

 

?、1人で大型魔獣でも討伐して来たのかな?無理しないで、ワタシの事起こせば良いのに。

 

むにゃむにゃとまだ寝足りなそうな顔で、フィーはそう思った。

「……お、お前、寝起きが悪いにも程があるぞ……」

全身をくまなくアザだらけにしたトヴァルが、疲れきった様子で応じる。

「……お客さんだ、お前に仕事を依頼したいらしい」

「お客さん?」

寝癖の付いた髪を掻きながら、受付の方へと視線を飛ばす。

「……あ、マスター。久しぶり」

生欠伸を噛み殺しながら、軽く手を挙げてフィーが挨拶する。

「久しぶりですね、クラウゼル。……相変わらずの様ですが」

「ん、まぁ、ね……」

少しだけ視線をずらして、隣の女を見つめる。

「そっちも久しぶり、煌魔城じゃスレ違いだったみたいだけどね」

「ふん!こっちはあなたの顔など、見たいとは思っていませんでしたわ!」

「ふぁ~……。……で?何の用?」

寝癖の付いた銀髪をぐしゃぐしゃと掻きながら、フィーが無造作に2人へ近寄る。

その様子を、トヴァルは後ろから呆れた様子で見つめていた。

 

フィー、大物過ぎだぞ……。……というか、一応はお客さん何だから、いくらなんでもその対応はマズイだろ!

 

「クラウゼル、貴女に遊撃士として仕事を依頼したいのですが。受けては貰えないでしょうか?」

「仕事? 今日は暇だから全然大丈夫だよ。内容は?」

「そうですね、出来れば場所を移動して話したいのですが」

「ん、らじゃ。そんじゃアプリコーゼにでも行って、お茶しながらで良い?」

「ええ、構いません。デュバリィもそれで良いですね?」

「……マスターがそう仰るなら、わたくしは従うまでですわ」

相変わらず分かりやすい態度のデュバリィに、聖女は少し苦笑いを浮かべた。

 

「そんじゃトヴァル、ちょっと出てくるから後はヨロシクね」

「お、おう、気を付けてな。何かあったらすぐにARCUSで俺を呼べよ」

「?、……ん、まぁ、特にトヴァルを呼ぶ様な事は無いと思うけど?」

3人は連れ立ってギルドを後にする。

去り際、聖女はトヴァルを一瞥すると、軽く会釈しながら優しい微笑みを投げかけた。

 

ギルドの扉が閉まった時、トヴァルは思った。

 

……あの人になら、人生を終わりにしてもらっても後悔無いかも。

 

 

 

 

 

宿酒場 アプリコーゼ

 

人気の無い奥隅のテーブルに陣取った3人。それぞれが頼んだ飲み物に口を付ける

フィーは砂糖をたっぷりと追加したコーヒーを飲みながら、正面に座るマスターをジッと見つめていた。

「?、どうかしましたか?クラウゼル」

「ん、……いや、別に」

「??」

 

この人がリアンヌ・サンドロット?250年も生き続けてる槍の聖女?……ホントかよ?20代後半位にしか見えねーぞ?

……まぁ、ロゼからは内緒にしておいてくれって言われてるし、触れないでおくか。

 

「……で?どんな依頼内容なの?」

「端的に言えば、ヘイムダルの街案内です」

「街案内?それ位ならお安いご用だけど……。ひょっとして、マスターも競馬とかゲームとかやるの?」

「?、何ですかそれは?」

「ん、いや、何でも無い……」

 

ま、流石にそれは無いか。

 

「具体的に言いますと、貴女と同じ位の年頃の男子が、楽しめそうな場所を紹介して欲しいのです」

「?、……なんか、変わった依頼だけど、どういう事?」

「ええ、実は……」

「お、お待ち下さマスター!!」

唐突にデュバリィが話を遮った。

「何もこの小娘に詳細まで話さずとも、宜しいのではありませんか!?」

「デュバリィ、我らは頼みに来ている立場です。詳しい内容を話さなければ、クラウゼルも対応出来ないのではありませんか?」

「そ、それはそうかも知れませんが……」

「ここは私に任せて、控えていなさい」

「っ~~~」

渋々といった様子ながらも、マスターの言う事には従うデュバリィ。

 

「ん、で?どういう事?」

「はい、実はここに居るデュバリィが恋をしまして」

「恋?」

「はい」

「……」

フィーがチラリと視線を向けると、デュバリィは顔を真っ赤にして俯いた。

「……って事は、好きな男が出来て、デートに誘いたいけど、何処に行ったら良いか分からないから、ワタシに相談しに来たって事?」

「ざっくりと言ってしまえばそういう事です」

「……」

 

イヤイヤイヤ、お門違いもいいところじゃねーか。何でワタシんトコに来たんだ、コイツ等?

 

「どうでしょう?依頼を受けては貰えませんか?」

「ん、……まぁ、遊ぶ所を紹介する位は出来るけど。相手の男がどういう人か分からないから、あんまり力にはなれないかもよ?」

「いえ、貴女も良く知っている人物です」

「えっ?」

「ま、マスター!?何もそこまで話さなくても!?」

「デュバリィ、控えているように申し付けた筈です。あまりしつこいとグランドクロスしますよ!」

「ひ、ひぃぃぃ!?!?」

突然デュバリィが頭を抱えて震え出した。顔が恐怖で真っ青になっている。

 

な、何だ、グランドクロスって?……良く分かんないけど、ワタシもグランドクロスされない様に気を付けなくちゃ。

 

「ワタシが知ってる人?……って事は結構限られるんだけど?」

「はい。恐らく貴女以上の適任は、遊撃士協会には居ないでしょう」

 

……な、なんか、嫌な予感。

 

「デュバリィの想い人は、今帝国内で最も注目されている若者です」

「……え?……それって、もしかして?」

「はい、貴女が想像する通りの人物です」

「……マジ?」

「マジです!」

 

イヤイヤ……、マジです!じゃねーよマスター……。

 

「トールズ士官学院2年に在籍しながら、帝国政府からのオーダーを受け、先のノーザンブリアでは心身を痛めながらも多くの人々を救ったエレボニアの若き英雄」

 

……はぁ、……何でこうなるかな。

 

「灰色の騎士、リィン・シュバルツァー!」

マスターが威勢良く言い放ち、その隣でデュバリィは、顔を赤くしながらギュッと唇を噛んでいた。

 

ああ、マジか……。よりにもよってソコに惚れちゃったんだ……。

 

「これで貴女に依頼した訳を理解して頂けますね」

「ん、まぁ、ね……」

無意識に目を細めるフィー。

「?、どうかしましたか?浮かない顔のようですが?」

「ん、いや、別に……」

 

いやー……、前に会った時も思ったけど。この聖女さんは結構ずけずけと踏み込んで来るな……。この辺はロゼと一緒でババアのやり口なんだよなぁ。

 

「ん~、いや、ワタシが言うのも何だけど……、リィンはあんまりオススメしないよ?」

「おや?何故ですか?」

「ん、仲間としては最高なんだけど、男としては足んないトコばっかりだから……」

「?、例えば?」

「肝心なトコでニブイし、おっぱい好きだし、朴念仁だし、八方美人だし、シスコンだし、胸に鬼とか飼ってるし、お嬢様キラーだし、八葉一刀流だし、年上もアリだし、すぐプレゼントとか贈るし、女風呂覗いても不可抗力で済まそうとするし、小さい女の子を見ると遠慮無く頭撫でるし……」

リィンの事になると、途端に愚痴っぽくなるフィー。

「ほう? 付き合ったらなかなかに苦労が絶えなさそうですね……、ですが!」

マスターは瞳をキラリと光らせると。

「男で苦労しているという点に関しましては、私の右に出る者はこの世に居ない筈です!」

キッパリと言い切った。

 

オイオイ、何か妙な苦労自慢が始まったぞ……。んっ!?、まさか、男の為に250年も生きてる訳じゃ無ぇだろうな!?

 

「更に言うならば、その程度の事でうちのデュバリィが引き下がる訳がありません!」

 

いや、さっきから本人の意見は一回も聞いて無いんだけど……。

 

「デュバリィは我が娘の様なものです。という事は、その婿としてリィン・シュバルツァーを迎えれば、彼は我が息子も同様となる訳です!」

 

言ってる事、無茶苦茶だよ、この人。

 

「ん、いや、っていうか、どうやって誘い出すの?いくらリィンがアホでも、結社の関係者から呼び出し食らって、ノコノコ出て来るとは思えないけど?」

「それについては心配入りません、既に手は打ってあります」

「……どんな手?」

「先月のノーザンブリア併合の際、彼が入院する事態になった事は知っていますね?その後退院しましたが、今でも週に1度は帝都の病院に通っているとの情報が入りました」

 

……流石結社、どんな情報でも手に入れるね。

 

「これを利用しない手はありません。病院帰りの彼に偶然を装って近付き、さりげなく誘い出してからが勝負です!」

「ん~、そう上手くいくかな?」

「ふふ……、人間とは心身に不安がある時、少なからず隙が生まれるモノです。そこをデュバリィが、持ち前の神速を駆使して攻め落としてやるという訳です!」

 

はぁ……、もう、好きなようにしてくれ。

 

心の中で大きな溜め息が出た。

 

「ん……、そんじゃリィンが喜びそうな場所をピックアップしてあげるよ」

「宜しくお願いしますクラウゼル。デュバリィ、ヘイムダルの地図を出しなさい、もたもたしてるとグランドクロスですよ」

「ひぃぃぃ!い、今すぐ!」

あたふたと懐を探るデュバリィ。

 

やれやれ、仕事とはいえ何だか変な事に巻き込まれちゃったな……。ま、いっか、ちょっと面白そうだし。……っていうか、グランドクロスって結局なんだ?

 

トヴァルのツケで注文した甘ったるいコーヒーに口を付けながら、フィーは再び大きく息を吐き出した。

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