妖精の軌跡second   作:LINDBERG

28 / 40
第28話 守りたいモノの為に

あの日……私達は大切な仲間を失った。

 

緋黒い天に聳える魔城の最上階……膝をついて項垂れるヴァリマールと、胸に大穴を空けて立ち尽くすオルディーネに見守られながら、彼はリィンの腕の中で静かに息を引き取った。

「……うそ」

思わず口から言葉が漏れる。ここまで来て……こんな現実離れした場所まで来て……辿り着いた終着がこの結末……。とても受け入れる事は出来なかった。

きっと他の皆も同じなのだろう、誰もが彼に対する悪態を付きながら、必死になって涙を堪えていた。何をどうしても『今』という現実が覆る事は無い……それでも、目の前の出来事を受け入れまいと、無駄な足掻きを続けていた。

だが、腕の中で少しずつ冷たくなっていく彼を抱き抱えるリィンだけは、否応も無い現実を突き付けられているらしく、大粒の涙を流しながら大声で彼の名を呼び続けていた。……もう決して届く事はないのに、喉を枯らして聲を上げ続けていた……。

 

……きっと、あの時に私は決めていたのだろう……何が起きても、どんな手を使っても、もう2度とこんな事は起こさせないと。……例え、エイドスの教えに背く事になったとしても……。

 

 

 

そして私は今……。

 

 

 

「いやあぁぁぁ!!!!」

フィーと2人で導力バイクに跨がったまま、エイドスが座すであろう茜色の空高くへと舞い上がっていた……。

 

「ん、行くよアリサ」

ハンドルを握りしめながらフィーが呟く。

「え?い、行く??」

 

行く??……行くって言ったって、もうすでに行ってるのにこれ以上何処へ行こうっていうの!?それとも『行く』じゃなくて『逝く』の方かしら???

 

そんな事を考えていると、フィーは片側をハンドルに固定したワイヤーフックを、投げ縄の様にクルクルと回し、オーバルギアへと向かって投げ付けた。

「……ん、バッチリだね」

オーバルギアの機体下部にフックが引っ掛かり、バイクは宙吊り状態になって上空をフラフラと漂い始めた。

「いやあぁぁぁ!!!!??」

再びアリサの絶叫がルーアンの港にこだまする。

 

 

 

 

 

 

ん、上手く引っ掛かった。……っていうかアリサうるさい、そんな大声出したらご近所さんに迷惑だよ?

 

目を細めながらヤレヤレと肩を竦めた。

 

さてと……んじゃ、ちょっと行ってみますか。

 

ハンドルから手を離してワイヤーを掴み、オーバルギアに向かってよじ登り始める。

「ちょ!?ちょっとフィー、何処行くつもりよ!??」

必死の形相で座席シートにしがみつきながらアリサが叫ぶ。

「ん?勿論このままワイヤーを伝って、操縦席まで行くつもりだよ。ちゃんと付いて来てね♪」

真顔で応えてやる。

「わ、私にそんなアクロバットな真似出来る訳ないでしょうが!??」

アリサが「無理、無理……」と首を振る。つられて大きなバストもプルプルと横揺れしている。

「ん……そか……。んじゃ、アリサはここで待ってて。ワタシが乗り込んでオート制御の解除してくるから」

「うう……こんなところに1人……」

「なるべく早く済ますから。んじゃ、行ってくるね」

言いながらフィーはスルスルとワイヤーを登り始める。

高度は80アージュ以上、強い海風とバイクの重さでユラユラと揺れまくっている。常人ならば固まって動けなくなりそうなものだが……。

 

ん、1,000アージュからフリー落下するのに比べたらチョロいね♪

 

フィーは2階の屋根修理にでも行くような気軽さで、ワイヤーを登っていく。下からはアリサの断末魔にも似た悲鳴が絶え間無く続いていた。

 

さてと、このまま何事も無く辿り着ければ良いんだけど……っ!?

 

上方に視線を向けると、オーバルギアのチェーンガンがフィーに向けて構えられていた。

 

ちぃ!?

 

舌を打ちながらワイヤーを片手で掴み、空いた手で双銃剣の片割れを引き抜く。チェーンガンの銃口が火を吹き、全く逃げ場の無い空中で銃弾の雨に晒されるフィー。ワイヤーを握りながら何とか身体を捩って避け、更に双銃剣を振り回して銃弾を叩き落としていく。

 

にゃろー、下向きにも撃てんのかよ!?万能過ぎるぞ!っていうかヤベー、このままじゃ近寄れねーじゃねーか。

 

至近距離から降り注ぐ大量の銃弾、いつまでも防ぎきれる筈もない。徐々にワイヤーを掴む握力が無くなっていく。

 

ま、マジでヤバい、何とかしないと……。

 

状況を打開しようと頭を捻りながら、オーバルギアを見つめる。……すると、特定の射線軸だけは銃撃がストップしているのに気付いた。

 

ん?これってもしかして……。

 

フィーは下で叫び声を上げ続けているアリサと、射線が重なる位置へと身体を移動させる。……銃撃が止んだ。

 

ヤッパりね、暴走してても創造主には逆らえないワケか……。ん、それなら。

 

フィーは双銃剣の刃を、アリサからは見えない様に垂れ下がるワイヤーへと押し当てた。収束した細かい繊維がプチプチと音を立てて千切れ始める。

『ギッ!?』

 

さぁ、どうする?このままじゃアリサが堕っこちちゃうよ♪

 

フィーの顔には、悪戯っ子特有の無邪気な悪意が浮かんでいた。

『ギ……ギギギ……』

オーバルギアは観念したように銃口を収納し、その動きを停止した。

 

ふふん、やった♪まぁ、ご主人様を人質にされたら、そうするしかないよね♪

 

フィーは双銃剣をホルスターに収めると、再びワイヤーを登り始める。顔には勝者だけに許される不敵な笑みが浮かんでいた。

『ギッ……』

オーバルギアは悔しそうに呻きを上げたが、それ以上動こうとはしなかった。

 

 

 

 

 

 

「アリサ、暗証コードは?」

素早く操縦席に乗り込んだフィーが、宙吊りでぶら下がったままのアリサに声を掛ける。

「1,1,0,8,1の5桁よ」

「オッケー、1,1,0,8,1ね。……ん?」

 

1,1,0,8,1?……1,1,0,8,1→イ,イ,オッ,パ,イ。……ん、ツっ込んだら負け、ツっ込んだら負け。

 

フィーは強く自分に言い聞かせながら、タッチパネルにコードを打ち込んでいく。

 

ピーッ。

 

打ち終わると、AUTOからMANUALに画面表示が切り替わり……機体が急速に失速を始めた。

 

げっ!?や、ヤベー!!

 

元々アリサの弓矢で飛行ブースターは既に機能停止している。バランス機能だけで紙飛行機の様に宙を飛んでいた機体は、オート機能を解除した事によって、みるみる高度を下げていく。

 

や、ヤバい……墜落なんかした日にゃ、町一個跡形も無く消し飛んじまうぞ……。

 

何とか浮力を得ようと試みるが、操作がさっぱり分からない。飛行艇の操縦は経験済みだが、操作の複雑さはそれの比ではなかった。

「アリサ……堕ちそうなんだけど、どうすれば良い?」

頼みの綱のアリサに聞く。

「飛行ブースターが再起動出来ないか試してみて!」

「どうやって?」

「ブースターは独立機構になってるの。だからまずは全部リセットしてから、機体とブースターを改めて紐付ける必要があるわ。それから再起動のコードを入力して、リセットしたブースターの出力数値を今の状況に合わせて再設定して、それから……」

「……」

 

あ、アホか!?初見でそんなにいっぱい出来る訳ねーだろ!!

 

心の中で叫んでいる間にもみるみる高度が下がっていく、残り時間は数十秒程度だろう。

「……もっと簡単なの無いの?」

「そうね……レバー操作で墜落場所を変える位かしら?」

「……」

 

なんか、急に方策が原始的な気がするけど……やるだけやるしかないか。

 

ガチャガチャとレバーを操作してみる。

 

ん?あ、あれ??

 

だが進行方向が変わるどころか、殆ど動きもしない。……どうやらブースターとのリンクが切れた事によって操作レバーにロックが掛かっているらしい。

 

あ、アリサ……余計なトコにセーフティを……。

 

レバー操作を諦め、何か使える装備はないかと操作パネルをイジりまわす。すると何故か、突然MANUALからAUTOに再びモード変更された表示が、ディスプレイにデカデカと浮かび上がった。

 

げっ!?いやいやいや、変なトコは触ってねー筈だぞ!ヤッパどっかおかしいだろコレ!?

 

どうやら通常とは違う手順で操作したため、誤作動が起こったらしい。

『……ギギッ』

再びオーバルギアが呻きを上げ、オート起動を開始した。

 

や、ヤバい……まぁいっか、もう一回『イイオッパイ』コードを入力しよう。

 

再度パネルに暗証番号を入力する。

……

……

……

『コードが違います』の表示が出た……。

 

はぁ!?な、なんで???

 

「暗証番号は一回使う度にリセットが掛かる仕組みよ。今のコードは専用の端末で確認しないと私にも分からないわ!」

状況を察したアリサが、下から声を上げた。

「その端末って何処にあるの?」

「ツァイス中央工房よ」

「っ!……」

 

なんでオメーはそういう大事なのを、そのでっかいオッパイに挟んでおかねーんだ!?

 

『ギギギッ!!』

完全に主導権を取り戻したオーバルギアが、導力音を響かせながら駆動を開始した。

 

あちゃー、マジかよ……本体にリセットは掛けて無いから、どう考えてもまた暴走するんだろうなぁ……。

 

覚悟を決めて双銃剣に手を伸ばす。最悪の場合はエンジン部分以外を破壊して、そのまま海上に墜落するのも覚悟の上だった。

 

『ギギ……ギギギ……』

 

しかしフィーの予想に反し、オーバルギアは暴走する素振りすら見せなかった。それどころかバランス機能を駆使して、何とか墜落を先伸ばそうと試みているような気がした。

 

あ、あれ?意外に直ってる??

 

さらに良く見ると、機体から垂れ下がるワイヤーを極力揺らさない様に滑空している様に感じる。

 

……あ。

 

ワイヤーの先には、導力バイクにしがみつくアリサの姿があった。

 

……そっか……アンタもご主人様をなんとかして助けようって必死なんだ……。……アリサ、果報者だね。

 

オーバルギアの健気な様子に、フィーは薄い笑みを浮かべた。

 

ワタシも何とかしてあげたいんだけど、操縦桿が利かないと出来る事が無いんだよね。何か使えるモノは……ん?

 

ふと見ると、ディスプレイに反射して、オーバルギアの背後に青い影が写っていた。

 

っ!!

 

フィーは素早く予備のワイヤーを取り出すと、片側を操縦桿に巻き付け、後方の影へ向かって放り投げた。

「お待たせしました、アリサさん、フィーさん」

オーバルギアから数アージュ後方。ティオはエイドロンギアを操作しながら、フィーが投げたワイヤーを受け取ると、自身の機体に手早く巻き付け。

「安全な場所まで曳機します。しっかりと掴まって下さい」

エンジン出力を上げて、オーバルギアと導力バイクをブラ下げたまま、町から離れた海岸方面へと機体を動かし始めた。

ワイヤー距離が伸びた事により、一番下のアリサは洒落に成らない程ブラブラと揺さぶられている。

「いやあぁぁぁ!!!」

アリサの絶叫が夕闇にこだました。

 

 

 

 

 

 

「……し、死ぬかと思ったわ」

海岸線の砂浜にへたり込み、身体を小刻みに震わせながらアリサが呟く。大きなバストも「コワ、コワ……」と言わんばかりにプルプルと震えている。

「……高所恐怖症になりそうよ……実家に帰れるか不安だわ」

 

ん、ラインフォルト本社、最上階のペントハウスだもんね。

 

「ん、大丈夫、いざとなったらエマに連絡して暗示の魔法でも掛けて貰おうよ」

「……出来れば、それは遠慮したいわね」

アリサは言いながらヨロヨロと立ち上がると、ティオのおかげで無事に着陸したオーバルギアへと歩み寄り、タッチパネルから現在の状態を確認し始めた。

 

 

 

……

……

……

「……変ね」

アリサが首を傾げる。

「どうしたの?」

「操作履歴の一覧が出る様になってるんだけど、最初のオートモードを解除した後が何も残ってないのよ」

「?……えーっと、どういう事?」

「つまり2回目にマニュアルからオートに切り替わったのは、フィーの操作で誤作動が起きたんじゃなくて、別の要因がきっかけって事になるわ」

「別の要因?……具体的には?」

「サッパリ見当が付かないわ」

アリサが両手を広げて見せる。大きなバストも「ワカラン、ワカラン」とでも言うようにプルんプルんとしていた。

 

「……きっと、マシンが自分の意思で、アリサさんを助けようとしたんだと思いますよ」

その様子を見ていたティオが、横から声を掛けた。

「マシンが自分の意思で?……あり得ませんよ、そんな事」

「ですが、現状から考えると、それが一番納得できる答えです」

「そう言われましても……」

「人が丹精を込めて作った物には魂が宿ると聞いた事があります。それは機械でも同じなんじゃないですか?」

「……」

「私が尊敬するアーティストの言葉で『本当に大切なモノを目の前にして、アナタは頑張らないでいられるの?』というのがあります。多分それは、人間だけに限らないのではないですか?」

「……」

「……ん、それにワタシ達は、煌魔城で似た様な経験してるしね」

「似た様な経験?」

「クロウの事」

「っ……」

「あの時、クロウは心臓にデッカイ穴を開けながら、5分近く生きてた。クロウのしぶとさと、エマ達の治癒魔法があったとしても、ちょっと考えられない時間。きっとあの時、オルディーネは自分の霊力を限界以上にクロウに分け与えてたんだと思う。……その後で、自分が長い休眠状態になる事も分かってて……」

フィーはそこで言葉を区切った。

 

……

……

……

「そうね……きっと……」

アリサは少しだけ感謝の笑みを浮かべながら、大切そうにオーバルギアのフレームを撫でた。

「ありがとう、必ず直すから待ってて」

タッチパネルを操作し、次元の裂け目が生じてオーバルギアが吸い込まれるのを確認すると、アリサはフィー達に向き直った。

「ありがとうフィー、助かったわ。ティオ主任もありがとうございました」

「ん、どういたしまして」

「いえ、私は殆ど何もしてませんから」

「ツァイスに戻ったら、早速今日のデータを整理して、必ず完成させて見せるわ」

「……ねぇ、アリサ。1つ聞いても良い?」

「?、なに?」

「何でアリサは、こんなヤバい兵器造ろうと思ったの?」

「や、ヤバい兵器って。もうちょっと言い方が……」

「ヤッパり、クロウの事?」

「……っ。……そうね」

アリサは視線を外し、遠くの空を見つめた。

「……ええ、きっとそう。……この先何が起こっても、私はリィンのあんな辛い顔を二度と見たくない。……多分それが理由よ」

「……そか」

 

ん、結局はクロウじゃなくてリィンか……まぁ、そうだろうけどね。

 

苦笑いを浮かべる。

「私だけじゃなくて、Ⅶ組全員が同じ気持ちだと思うけどね」

「……ん、そだね」

「そう言うフィーは、何で遊撃士になろうって決めたの?」

「え?……ワタシは……」

「勿論、古巣の仲間を探すっていう理由もあるんでしょうけど、アナタなら他の手段もあったんじゃない?」

「……ん」

「遊撃士なら、Ⅶ組の様子も分かりやすいし、サラ教官やトヴァルさんと連携も取れる。そう考えたんじゃないの?」

「……」

「考えるてる事は、多分みんな一緒よ」

「……ん、手間の掛かるリーダーだからね」

「ええ、本当そうね」

2人は顔を見合わせると、堪えきれずに笑い声を上げた。

 

「……どうやらお二人が居たⅦ組とやらも、なかなかに面倒なリーダーだった様ですね……まぁ、私も他人の事は全く言えませんが……」

ティオが話に乗って来た。良く分からないが、前の職場リーダーはかなり面倒な人間だったらしい。

「ところで、フィーさんに簡単な質問があるのですが?」

ティオは急に真面目な顔で言い出した。

「ん?質問?」

「はい、直感で構いませんので答えて下さい」

何故か瞳から危険な光が見て取れた。

 

な、なんだ?何かヤバい感じが……。

 

「貴女にとって、みっしぃとは何ですか?」

優しげな声色とは裏腹に、目が完全に据わっている。そしてどういうわけか、隣に居座るエイドロンギアの銃口がこちらに向いていた。

 

と、突然なにを言い出してんだコイツは!?ワタシにとってみっしぃとは?考えた事無ぇよそんな事!……やべぇ、ヤッパりこないだヤりあったの、ワタシってバレてるのか?……。

何だ、何て返すのが正解だ???

 

「……わ、ワタシにとってみっしぃとは……」

「みっしぃとは?」

エイドロンギアの銃口が、夕陽に反射してキラリと光った。

 

ど、どうしよ?間違ったら大気圏の外までブッ飛ばされそうな気がする……。

 

「みっしぃとは……」

「みっしぃとは?」

 

……

……

……

「え、エンジョイみっしぃ!」

フィーは覚悟を決めて、ポーズ付きでそう答えた。

「……」

 

ど、どうだ?どうなるんだ???

 

冷たい汗が背中を伝っていく。

 

……

……

……

「……同士。今日からそう呼ばせて貰いましょう」

ティオはエイドロンギアを収納すると、満面の笑みを浮かべそう応えた。

「ど、同士?」

「フィーさんのみっしぃ愛は確かに受け取めました。今後は同士として付き合わせて頂きます」

「同士……。……よ、よろしく」

全く嬉しくなさそうにフィーが応える。

「それでは同士の証として、ミシュラムの特別会員登録を、私の方で進めておきます。年会費が50万ミラと高額ですが、ホテルのスウィート招待、ビーチの貸し切り使用、ナイトパレードの乱入、打ち上げ花火打ち放題、占い館での適度な忖度、みっしぃグッズ新製品の優先購入権と、特典が山盛りですから決して損はしません!」

「……さ、さんくす」

 

い、いや、ミシュラムなんか年に1回行くかどうかなのに、年間50万も払いたくないんだけど……っていうか50万も払ってそんな特典かよ?

 

「全て私に任せて下さい、同士フィー」

ティオは満足そうな笑顔を浮かべ、そう締め括った。

 

はぁ……50万か……。……同士ってお金が掛かるんだね。

 

フィーは気付かれない様に、大きなため息を吐きだした。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、私達はそろそろツァイスに戻るわ」

ティオのエイドロンギアに同乗させて貰いながら、アリサが笑い掛ける。

「あ、念のため言っとくけど、私がオーバルギアの製作してるのは内緒でお願いね」

「ん、らじゃ」

「絶対誰にも言っちゃダメよ。言ったら怒るからね!」

アリサが念を押すように付け加える。大きなバストも『オコ♪オコ♪』というようにプルプルしている。

「ん、りょーかい。誰にも言わないよ」

 

寝込みに核ミサイルでも撃ち込まれたら敵わん。

 

フィーは沈黙こそが最善である悟った。

 

「じゃあねフィー!また!」

「フィーさん、ミシュラムに行く時は連絡して下さい。では」

「ん、そんじゃ」

エイドロンギアが発進し、2人は夕闇の中をツァイスへと去って行った。

 

やれやれ……騒がしい事この上無いね。まぁ、バイクの調整もして貰ったし、良しとしとくか?……それにしても年間50万か……はぁ、どうすれば元取れるのかな……ん?

 

ため息を吐きながら肩を竦めているとARCUSに着信が入った。

「ん」

「フィーか?」

「ああ、なんだ、アガットか」

通信相手は赤毛のロリコンだった。

「今何処だ?まだリベールに居るのか?」

「ん、まだ居るよ。……っていうか、そろそろ帰りたいんだけど」

「なら、帰る前にもう一仕事頼んで良いか?」

「……」

 

……はぁ、ホントに、やれやれだね。

 

「ん、何すんの?」

どこか諦めた様にフィーは応えた。

「詳しくはルーアン支部に行って、ジャンって奴から聞いてくれ。ヤバそうな内容なら、後から俺も応援にいく」

「……」

 

コイツ、ワタシが何処に居るか分かってて連絡してんじゃねーのか?

 

「それじゃあ、頼んだぜ!」

通信が切れた。

 

……はぁ、やれやれだね、マジでそろそろ自分のベッドで寝たいんだけど。

 

フィーは盛大に溜め息を吐きながら、浜辺の砂で汚れた導力バイクに股がり、エンジンを点火させた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。