あの日……私達は大切な仲間を失った。
緋黒い天に聳える魔城の最上階……膝をついて項垂れるヴァリマールと、胸に大穴を空けて立ち尽くすオルディーネに見守られながら、彼はリィンの腕の中で静かに息を引き取った。
「……うそ」
思わず口から言葉が漏れる。ここまで来て……こんな現実離れした場所まで来て……辿り着いた終着がこの結末……。とても受け入れる事は出来なかった。
きっと他の皆も同じなのだろう、誰もが彼に対する悪態を付きながら、必死になって涙を堪えていた。何をどうしても『今』という現実が覆る事は無い……それでも、目の前の出来事を受け入れまいと、無駄な足掻きを続けていた。
だが、腕の中で少しずつ冷たくなっていく彼を抱き抱えるリィンだけは、否応も無い現実を突き付けられているらしく、大粒の涙を流しながら大声で彼の名を呼び続けていた。……もう決して届く事はないのに、喉を枯らして聲を上げ続けていた……。
……きっと、あの時に私は決めていたのだろう……何が起きても、どんな手を使っても、もう2度とこんな事は起こさせないと。……例え、エイドスの教えに背く事になったとしても……。
そして私は今……。
「いやあぁぁぁ!!!!」
フィーと2人で導力バイクに跨がったまま、エイドスが座すであろう茜色の空高くへと舞い上がっていた……。
「ん、行くよアリサ」
ハンドルを握りしめながらフィーが呟く。
「え?い、行く??」
行く??……行くって言ったって、もうすでに行ってるのにこれ以上何処へ行こうっていうの!?それとも『行く』じゃなくて『逝く』の方かしら???
そんな事を考えていると、フィーは片側をハンドルに固定したワイヤーフックを、投げ縄の様にクルクルと回し、オーバルギアへと向かって投げ付けた。
「……ん、バッチリだね」
オーバルギアの機体下部にフックが引っ掛かり、バイクは宙吊り状態になって上空をフラフラと漂い始めた。
「いやあぁぁぁ!!!!??」
再びアリサの絶叫がルーアンの港にこだまする。
・
ん、上手く引っ掛かった。……っていうかアリサうるさい、そんな大声出したらご近所さんに迷惑だよ?
目を細めながらヤレヤレと肩を竦めた。
さてと……んじゃ、ちょっと行ってみますか。
ハンドルから手を離してワイヤーを掴み、オーバルギアに向かってよじ登り始める。
「ちょ!?ちょっとフィー、何処行くつもりよ!??」
必死の形相で座席シートにしがみつきながらアリサが叫ぶ。
「ん?勿論このままワイヤーを伝って、操縦席まで行くつもりだよ。ちゃんと付いて来てね♪」
真顔で応えてやる。
「わ、私にそんなアクロバットな真似出来る訳ないでしょうが!??」
アリサが「無理、無理……」と首を振る。つられて大きなバストもプルプルと横揺れしている。
「ん……そか……。んじゃ、アリサはここで待ってて。ワタシが乗り込んでオート制御の解除してくるから」
「うう……こんなところに1人……」
「なるべく早く済ますから。んじゃ、行ってくるね」
言いながらフィーはスルスルとワイヤーを登り始める。
高度は80アージュ以上、強い海風とバイクの重さでユラユラと揺れまくっている。常人ならば固まって動けなくなりそうなものだが……。
ん、1,000アージュからフリー落下するのに比べたらチョロいね♪
フィーは2階の屋根修理にでも行くような気軽さで、ワイヤーを登っていく。下からはアリサの断末魔にも似た悲鳴が絶え間無く続いていた。
さてと、このまま何事も無く辿り着ければ良いんだけど……っ!?
上方に視線を向けると、オーバルギアのチェーンガンがフィーに向けて構えられていた。
ちぃ!?
舌を打ちながらワイヤーを片手で掴み、空いた手で双銃剣の片割れを引き抜く。チェーンガンの銃口が火を吹き、全く逃げ場の無い空中で銃弾の雨に晒されるフィー。ワイヤーを握りながら何とか身体を捩って避け、更に双銃剣を振り回して銃弾を叩き落としていく。
にゃろー、下向きにも撃てんのかよ!?万能過ぎるぞ!っていうかヤベー、このままじゃ近寄れねーじゃねーか。
至近距離から降り注ぐ大量の銃弾、いつまでも防ぎきれる筈もない。徐々にワイヤーを掴む握力が無くなっていく。
ま、マジでヤバい、何とかしないと……。
状況を打開しようと頭を捻りながら、オーバルギアを見つめる。……すると、特定の射線軸だけは銃撃がストップしているのに気付いた。
ん?これってもしかして……。
フィーは下で叫び声を上げ続けているアリサと、射線が重なる位置へと身体を移動させる。……銃撃が止んだ。
ヤッパりね、暴走してても創造主には逆らえないワケか……。ん、それなら。
フィーは双銃剣の刃を、アリサからは見えない様に垂れ下がるワイヤーへと押し当てた。収束した細かい繊維がプチプチと音を立てて千切れ始める。
『ギッ!?』
さぁ、どうする?このままじゃアリサが堕っこちちゃうよ♪
フィーの顔には、悪戯っ子特有の無邪気な悪意が浮かんでいた。
『ギ……ギギギ……』
オーバルギアは観念したように銃口を収納し、その動きを停止した。
ふふん、やった♪まぁ、ご主人様を人質にされたら、そうするしかないよね♪
フィーは双銃剣をホルスターに収めると、再びワイヤーを登り始める。顔には勝者だけに許される不敵な笑みが浮かんでいた。
『ギッ……』
オーバルギアは悔しそうに呻きを上げたが、それ以上動こうとはしなかった。
・
「アリサ、暗証コードは?」
素早く操縦席に乗り込んだフィーが、宙吊りでぶら下がったままのアリサに声を掛ける。
「1,1,0,8,1の5桁よ」
「オッケー、1,1,0,8,1ね。……ん?」
1,1,0,8,1?……1,1,0,8,1→イ,イ,オッ,パ,イ。……ん、ツっ込んだら負け、ツっ込んだら負け。
フィーは強く自分に言い聞かせながら、タッチパネルにコードを打ち込んでいく。
ピーッ。
打ち終わると、AUTOからMANUALに画面表示が切り替わり……機体が急速に失速を始めた。
げっ!?や、ヤベー!!
元々アリサの弓矢で飛行ブースターは既に機能停止している。バランス機能だけで紙飛行機の様に宙を飛んでいた機体は、オート機能を解除した事によって、みるみる高度を下げていく。
や、ヤバい……墜落なんかした日にゃ、町一個跡形も無く消し飛んじまうぞ……。
何とか浮力を得ようと試みるが、操作がさっぱり分からない。飛行艇の操縦は経験済みだが、操作の複雑さはそれの比ではなかった。
「アリサ……堕ちそうなんだけど、どうすれば良い?」
頼みの綱のアリサに聞く。
「飛行ブースターが再起動出来ないか試してみて!」
「どうやって?」
「ブースターは独立機構になってるの。だからまずは全部リセットしてから、機体とブースターを改めて紐付ける必要があるわ。それから再起動のコードを入力して、リセットしたブースターの出力数値を今の状況に合わせて再設定して、それから……」
「……」
あ、アホか!?初見でそんなにいっぱい出来る訳ねーだろ!!
心の中で叫んでいる間にもみるみる高度が下がっていく、残り時間は数十秒程度だろう。
「……もっと簡単なの無いの?」
「そうね……レバー操作で墜落場所を変える位かしら?」
「……」
なんか、急に方策が原始的な気がするけど……やるだけやるしかないか。
ガチャガチャとレバーを操作してみる。
ん?あ、あれ??
だが進行方向が変わるどころか、殆ど動きもしない。……どうやらブースターとのリンクが切れた事によって操作レバーにロックが掛かっているらしい。
あ、アリサ……余計なトコにセーフティを……。
レバー操作を諦め、何か使える装備はないかと操作パネルをイジりまわす。すると何故か、突然MANUALからAUTOに再びモード変更された表示が、ディスプレイにデカデカと浮かび上がった。
げっ!?いやいやいや、変なトコは触ってねー筈だぞ!ヤッパどっかおかしいだろコレ!?
どうやら通常とは違う手順で操作したため、誤作動が起こったらしい。
『……ギギッ』
再びオーバルギアが呻きを上げ、オート起動を開始した。
や、ヤバい……まぁいっか、もう一回『イイオッパイ』コードを入力しよう。
再度パネルに暗証番号を入力する。
……
……
……
『コードが違います』の表示が出た……。
はぁ!?な、なんで???
「暗証番号は一回使う度にリセットが掛かる仕組みよ。今のコードは専用の端末で確認しないと私にも分からないわ!」
状況を察したアリサが、下から声を上げた。
「その端末って何処にあるの?」
「ツァイス中央工房よ」
「っ!……」
なんでオメーはそういう大事なのを、そのでっかいオッパイに挟んでおかねーんだ!?
『ギギギッ!!』
完全に主導権を取り戻したオーバルギアが、導力音を響かせながら駆動を開始した。
あちゃー、マジかよ……本体にリセットは掛けて無いから、どう考えてもまた暴走するんだろうなぁ……。
覚悟を決めて双銃剣に手を伸ばす。最悪の場合はエンジン部分以外を破壊して、そのまま海上に墜落するのも覚悟の上だった。
『ギギ……ギギギ……』
しかしフィーの予想に反し、オーバルギアは暴走する素振りすら見せなかった。それどころかバランス機能を駆使して、何とか墜落を先伸ばそうと試みているような気がした。
あ、あれ?意外に直ってる??
さらに良く見ると、機体から垂れ下がるワイヤーを極力揺らさない様に滑空している様に感じる。
……あ。
ワイヤーの先には、導力バイクにしがみつくアリサの姿があった。
……そっか……アンタもご主人様をなんとかして助けようって必死なんだ……。……アリサ、果報者だね。
オーバルギアの健気な様子に、フィーは薄い笑みを浮かべた。
ワタシも何とかしてあげたいんだけど、操縦桿が利かないと出来る事が無いんだよね。何か使えるモノは……ん?
ふと見ると、ディスプレイに反射して、オーバルギアの背後に青い影が写っていた。
っ!!
フィーは素早く予備のワイヤーを取り出すと、片側を操縦桿に巻き付け、後方の影へ向かって放り投げた。
「お待たせしました、アリサさん、フィーさん」
オーバルギアから数アージュ後方。ティオはエイドロンギアを操作しながら、フィーが投げたワイヤーを受け取ると、自身の機体に手早く巻き付け。
「安全な場所まで曳機します。しっかりと掴まって下さい」
エンジン出力を上げて、オーバルギアと導力バイクをブラ下げたまま、町から離れた海岸方面へと機体を動かし始めた。
ワイヤー距離が伸びた事により、一番下のアリサは洒落に成らない程ブラブラと揺さぶられている。
「いやあぁぁぁ!!!」
アリサの絶叫が夕闇にこだました。
・
「……し、死ぬかと思ったわ」
海岸線の砂浜にへたり込み、身体を小刻みに震わせながらアリサが呟く。大きなバストも「コワ、コワ……」と言わんばかりにプルプルと震えている。
「……高所恐怖症になりそうよ……実家に帰れるか不安だわ」
ん、ラインフォルト本社、最上階のペントハウスだもんね。
「ん、大丈夫、いざとなったらエマに連絡して暗示の魔法でも掛けて貰おうよ」
「……出来れば、それは遠慮したいわね」
アリサは言いながらヨロヨロと立ち上がると、ティオのおかげで無事に着陸したオーバルギアへと歩み寄り、タッチパネルから現在の状態を確認し始めた。
……
……
……
「……変ね」
アリサが首を傾げる。
「どうしたの?」
「操作履歴の一覧が出る様になってるんだけど、最初のオートモードを解除した後が何も残ってないのよ」
「?……えーっと、どういう事?」
「つまり2回目にマニュアルからオートに切り替わったのは、フィーの操作で誤作動が起きたんじゃなくて、別の要因がきっかけって事になるわ」
「別の要因?……具体的には?」
「サッパリ見当が付かないわ」
アリサが両手を広げて見せる。大きなバストも「ワカラン、ワカラン」とでも言うようにプルんプルんとしていた。
「……きっと、マシンが自分の意思で、アリサさんを助けようとしたんだと思いますよ」
その様子を見ていたティオが、横から声を掛けた。
「マシンが自分の意思で?……あり得ませんよ、そんな事」
「ですが、現状から考えると、それが一番納得できる答えです」
「そう言われましても……」
「人が丹精を込めて作った物には魂が宿ると聞いた事があります。それは機械でも同じなんじゃないですか?」
「……」
「私が尊敬するアーティストの言葉で『本当に大切なモノを目の前にして、アナタは頑張らないでいられるの?』というのがあります。多分それは、人間だけに限らないのではないですか?」
「……」
「……ん、それにワタシ達は、煌魔城で似た様な経験してるしね」
「似た様な経験?」
「クロウの事」
「っ……」
「あの時、クロウは心臓にデッカイ穴を開けながら、5分近く生きてた。クロウのしぶとさと、エマ達の治癒魔法があったとしても、ちょっと考えられない時間。きっとあの時、オルディーネは自分の霊力を限界以上にクロウに分け与えてたんだと思う。……その後で、自分が長い休眠状態になる事も分かってて……」
フィーはそこで言葉を区切った。
……
……
……
「そうね……きっと……」
アリサは少しだけ感謝の笑みを浮かべながら、大切そうにオーバルギアのフレームを撫でた。
「ありがとう、必ず直すから待ってて」
タッチパネルを操作し、次元の裂け目が生じてオーバルギアが吸い込まれるのを確認すると、アリサはフィー達に向き直った。
「ありがとうフィー、助かったわ。ティオ主任もありがとうございました」
「ん、どういたしまして」
「いえ、私は殆ど何もしてませんから」
「ツァイスに戻ったら、早速今日のデータを整理して、必ず完成させて見せるわ」
「……ねぇ、アリサ。1つ聞いても良い?」
「?、なに?」
「何でアリサは、こんなヤバい兵器造ろうと思ったの?」
「や、ヤバい兵器って。もうちょっと言い方が……」
「ヤッパり、クロウの事?」
「……っ。……そうね」
アリサは視線を外し、遠くの空を見つめた。
「……ええ、きっとそう。……この先何が起こっても、私はリィンのあんな辛い顔を二度と見たくない。……多分それが理由よ」
「……そか」
ん、結局はクロウじゃなくてリィンか……まぁ、そうだろうけどね。
苦笑いを浮かべる。
「私だけじゃなくて、Ⅶ組全員が同じ気持ちだと思うけどね」
「……ん、そだね」
「そう言うフィーは、何で遊撃士になろうって決めたの?」
「え?……ワタシは……」
「勿論、古巣の仲間を探すっていう理由もあるんでしょうけど、アナタなら他の手段もあったんじゃない?」
「……ん」
「遊撃士なら、Ⅶ組の様子も分かりやすいし、サラ教官やトヴァルさんと連携も取れる。そう考えたんじゃないの?」
「……」
「考えるてる事は、多分みんな一緒よ」
「……ん、手間の掛かるリーダーだからね」
「ええ、本当そうね」
2人は顔を見合わせると、堪えきれずに笑い声を上げた。
「……どうやらお二人が居たⅦ組とやらも、なかなかに面倒なリーダーだった様ですね……まぁ、私も他人の事は全く言えませんが……」
ティオが話に乗って来た。良く分からないが、前の職場リーダーはかなり面倒な人間だったらしい。
「ところで、フィーさんに簡単な質問があるのですが?」
ティオは急に真面目な顔で言い出した。
「ん?質問?」
「はい、直感で構いませんので答えて下さい」
何故か瞳から危険な光が見て取れた。
な、なんだ?何かヤバい感じが……。
「貴女にとって、みっしぃとは何ですか?」
優しげな声色とは裏腹に、目が完全に据わっている。そしてどういうわけか、隣に居座るエイドロンギアの銃口がこちらに向いていた。
と、突然なにを言い出してんだコイツは!?ワタシにとってみっしぃとは?考えた事無ぇよそんな事!……やべぇ、ヤッパりこないだヤりあったの、ワタシってバレてるのか?……。
何だ、何て返すのが正解だ???
「……わ、ワタシにとってみっしぃとは……」
「みっしぃとは?」
エイドロンギアの銃口が、夕陽に反射してキラリと光った。
ど、どうしよ?間違ったら大気圏の外までブッ飛ばされそうな気がする……。
「みっしぃとは……」
「みっしぃとは?」
……
……
……
「え、エンジョイみっしぃ!」
フィーは覚悟を決めて、ポーズ付きでそう答えた。
「……」
ど、どうだ?どうなるんだ???
冷たい汗が背中を伝っていく。
……
……
……
「……同士。今日からそう呼ばせて貰いましょう」
ティオはエイドロンギアを収納すると、満面の笑みを浮かべそう応えた。
「ど、同士?」
「フィーさんのみっしぃ愛は確かに受け取めました。今後は同士として付き合わせて頂きます」
「同士……。……よ、よろしく」
全く嬉しくなさそうにフィーが応える。
「それでは同士の証として、ミシュラムの特別会員登録を、私の方で進めておきます。年会費が50万ミラと高額ですが、ホテルのスウィート招待、ビーチの貸し切り使用、ナイトパレードの乱入、打ち上げ花火打ち放題、占い館での適度な忖度、みっしぃグッズ新製品の優先購入権と、特典が山盛りですから決して損はしません!」
「……さ、さんくす」
い、いや、ミシュラムなんか年に1回行くかどうかなのに、年間50万も払いたくないんだけど……っていうか50万も払ってそんな特典かよ?
「全て私に任せて下さい、同士フィー」
ティオは満足そうな笑顔を浮かべ、そう締め括った。
はぁ……50万か……。……同士ってお金が掛かるんだね。
フィーは気付かれない様に、大きなため息を吐きだした。
・
「それじゃあ、私達はそろそろツァイスに戻るわ」
ティオのエイドロンギアに同乗させて貰いながら、アリサが笑い掛ける。
「あ、念のため言っとくけど、私がオーバルギアの製作してるのは内緒でお願いね」
「ん、らじゃ」
「絶対誰にも言っちゃダメよ。言ったら怒るからね!」
アリサが念を押すように付け加える。大きなバストも『オコ♪オコ♪』というようにプルプルしている。
「ん、りょーかい。誰にも言わないよ」
寝込みに核ミサイルでも撃ち込まれたら敵わん。
フィーは沈黙こそが最善である悟った。
「じゃあねフィー!また!」
「フィーさん、ミシュラムに行く時は連絡して下さい。では」
「ん、そんじゃ」
エイドロンギアが発進し、2人は夕闇の中をツァイスへと去って行った。
やれやれ……騒がしい事この上無いね。まぁ、バイクの調整もして貰ったし、良しとしとくか?……それにしても年間50万か……はぁ、どうすれば元取れるのかな……ん?
ため息を吐きながら肩を竦めているとARCUSに着信が入った。
「ん」
「フィーか?」
「ああ、なんだ、アガットか」
通信相手は赤毛のロリコンだった。
「今何処だ?まだリベールに居るのか?」
「ん、まだ居るよ。……っていうか、そろそろ帰りたいんだけど」
「なら、帰る前にもう一仕事頼んで良いか?」
「……」
……はぁ、ホントに、やれやれだね。
「ん、何すんの?」
どこか諦めた様にフィーは応えた。
「詳しくはルーアン支部に行って、ジャンって奴から聞いてくれ。ヤバそうな内容なら、後から俺も応援にいく」
「……」
コイツ、ワタシが何処に居るか分かってて連絡してんじゃねーのか?
「それじゃあ、頼んだぜ!」
通信が切れた。
……はぁ、やれやれだね、マジでそろそろ自分のベッドで寝たいんだけど。
フィーは盛大に溜め息を吐きながら、浜辺の砂で汚れた導力バイクに股がり、エンジンを点火させた。