何だかんだ言って、デュエルのバランス取るのってすごい難しい……
要塞が見える荒野、その戦場に3体のクリーチャーたちが武器を構える。
口に剣を咥えた蒼い鎧のドラゴン。
メカニカルな戦車に乗り込んだ、蒼い肌の人型クリーチャー。
そして、鉈の様な武器を構えたインディアンの様なクリーチャー。
トリプルブレイカーに、ダブルブレイカー、そして全ての文明のクリーチャーが揃っているという、そうそうたる顔ぶれ。
だが恐ろしい事に、この盤面は僅か3ターン目の番面。
前のターンにクリーチャーが一体も居なかったバトルゾーンは巨大なクリーチャーたちがひしめいている。
少年 盾5 手札2 マナ3
「ドギラゴン……やはり来ましたか」
目の前のドラゴンに雪菜が苦々しい顔をする。
雪菜 盾5 手札4 マナ4
「さぁ、生き残って見ろよ!!ドギラゴン
「くっ!」
巨大な剣が雪菜を守る盾を一気に半分以上吹き飛ばした!!
「雪菜ちゃん!!」
想護が声を上げて、走り出そうとする。
離れた場所に居る想護にとってもかなりの衝撃だ。
砂埃が舞い上がり、雪菜の姿を隠す。
シールド越しとは言え、アレを直に食らった雪菜はどうなったのか、想護が心配をする。
「……私は、無事です……から、ケッホ!ケッホ!」
砂を吸ったのか、雪菜が咳込む。
「はぁー……はぁー……シールドトリガー発動です……召喚、イージスブースト」
雪菜の手札から現れた盾を装備した細長い体のドラゴン。
それが盾を構えると、山札から一枚がマナゾーンに置かれる。
「イージスブースト……マナチャージが出来るブロッカー。
弱いカードじゃないけど……」
『あの化け物トカゲの前じゃね……』
コートニーまでもが苦い顔をして見つめる。
「まだまだ行くぞ!俺はアパッチウララーでアタック!」
鉈を装備したインディアンが2つの鉈を振りあげ、雪菜を襲う。
「くっ!」
雪菜がイージスブーストを一瞬だけ見る。
イージスブーストのパワーは3500。アパッチウララーのパワーを僅かに500だが上回っている。
だが――
「ブロック、出来ないよな?」
少年がにやりと笑う。
アパッチウララーはバトルゾーンに出た時、サイキッククリーチャーをバトルゾーンに出す。
そして、自身が破壊された時もまたバトルゾーンにサイキッククリーチャーを出せるのだ。
つまり――
「ブロックすれりゃ、新しいクリーチャーを呼び出す事に成るんだからなぁ!」
雪菜の盾がアパッチウララーによって破壊される。
「シールドトリガー!音階の精霊龍 コルティオールを召喚!」
再度現れたのはシンバルの様な物を持った、白い肌のドラゴン。
背中合わせの2匹の龍はシンバルの様な物をかき鳴らす。
「コルティオールは召喚時に自身のドラゴンの数だけ、相手クリーチャーをタップします!
〈BAGOON〉パンツァーをタップします!」
コルティオールの音波攻撃によって、少年の最後のクリーチャーが力を失う。
「トドメまで行けるかと期待したんだが、まぁ良い。
ここまで来ただけで十分だからな。
俺はターンを終了だ」
少年は歯を見せて笑った。
それはまるで龍が牙をむいた様に見えた。
少年 盾5 手札2 マナ3
雪菜 盾1 手札6 マナ5
雪菜が戦う店の前、赤いジャケットを羽織った男が首を鳴らす。
「ここか、強い力を感じる。
どんなカードかは知らないが、とりあえず所有者を倒して奪うか」
その男はホムラだった。
彼は店の中の魂を持つカードの力を感じ取っていた。
「さて――」
店に入ろうとした時、突如周囲の風景が書き変わった。
昼が夜へ、太陽が月へ、雲が霧へ……
光あふれる世界は、闇が全てを染める停滞の世界へと変わった。
「な、これはデュエルゾーンか!?」
一瞬遅れてホムラが気が付く。
不意打ち気味な襲撃。
これは、近くに自身を明確に認知し、勝負を挑んできた者がいる証だ。
「何処だ!!姿を見せろ!!」
デッキケースからデッキを引き抜き、相手を待つ。
「おやおや、挨拶もせずに呼びつけた事は謝罪いたしまする。
まことに申し訳ありませぬな。この通りでありまする」
暗闇の中から出て来たのは、細身の男。
おかしなしゃべり方で、扇子を開いて口元を隠す。
そのあまりにも頼りない姿は、今にもこの闇の中に溶けてしまいそう――
あるいは、暗闇が人の形に凝固した様にすら見えた。
「なんだ、お前は!!
デュエルゾーンを出すという事は、人間に憑りついたカードか!?
それとも魂を持つカードの所有者か!!」
ホムラがデッキを構えた。
「さて、どちらでありますりますかねぇ?」
暗闇から現れた男、藤御門の背後に一瞬だけ闇の不死鳥が羽を広げた。
そして、その足元からひび割れた家具たちが不気味な笑みを浮かべながら這い出してきた。
『クキキキキキ!!』
『ぐぅりぐりりりりっり!!』
『きゃやきゃきゃかきゃ!!』
「申し訳ありませぬ。部長命令故、怪しげなデュエリストは『狩る』様にと言われておりますりますから。
なにとぞご容赦を――」
藤御門が扇子で口元を隠しながら嗤った。
「私のターンドロー!!」
雪菜がカードを引く。これで雪菜の手札は7枚。マナの数も有利に進んでいる。
先ほどのシールドブレイクでトリガークリーチャーが2体も出た。
手札も大量に増えた。
だが、それでも絶望的な状況に変わりはない。
盾が一枚だけ残ったが、それが失われるのも時間の問題だろう。
「クリーチャーが2体いるけど、どっちもパワーが低い……
それに対して相手は3体の上に、トリプルブレイカーにダブルブレイカー。
手札にはさっき戻したネズミが控えている。
おまけに盾はたったの一枚……」
想護が苦々しい顔をする。
はっきり言って状況は絶望的だ。
『けどさっきのトリガーでマナが1枚増えたわよ』
「増えたから何だっていうんだよ?」
コートニーの言葉に想護が答える。
確かにマナは必要だが、この時点では焼け石に水だ。
『バカソウゴ!あの女のデッキタイプを忘れたの?』
腕を組んだまま、コートニーが口を開く。
「え、あ!そうか!あのデッキは――!」
そう、さっきの攻撃で雪菜のマナは現在5マナ。
そして、今のターンのマナチャージを含めれば6マナ。
彼女のデッキで6マナと言えば――!
「私はマナをチャージ、そして溜まった全6マナをタップします。
そして、呪文を使用『ジャックポット・エントリー』!」
「来た!雪菜ちゃんの必殺呪文!!」
想護がテンションを上げる。
そうだ、この呪文はデッキから8コスト以下のドラゴンを踏み倒す強力呪文。
クリーチャーの踏み倒しは決してドギラゴン剣だけの特権ではない!
「私はマナゾーンにあるドラゴンの数だけ山札をめくります!
そして――っ」
山札から取り出したカードを見て雪菜の顔が曇る。
『来たのね、あの子の相棒が』
コートニーと想護は彼女の顔で全てを察していた。
「良いでしょう。貴方が暴れたいなら、私が付き合ってあげます!!
来なさい!!ボルメテウス・ブラック・ドラゴン!!」
ジャックポット・エントリーにより選ばれたのは悪魔の力を宿したドラゴン。
ゴゴゴ……ゴゴゴゴゴ!!
『ギィヤァアアアアア!!』
漆黒の鎧を軋ませ、口から炎を漏らし、瞳に敵意を滾らせ雪菜の本で出来た摩天楼を破壊しながらそのドラゴンは降り立った。
「ボルメテウス・ブラック・ドラゴンだと!?
こいつは大物じゃねーか!!思わぬ所で大当たりだ!!
テメェをぶっ倒して奪わせてもらう!!」
「あげれる物なら、あげても構わないんですが、ね……」
雪菜が胸を押えて苦しみだす。
だがそんな彼女を無視してボルメテウスは咆哮を上げる。
呼び出された漆黒の鎧を身に纏ったドラゴン。
悪魔の力を宿したドラゴンは、口から炎を僅かに漏らした。
『ぐぅるるるるるるる……ガァアアア!!』
ボルメテウスブラックは登場するや否や背中の砲門からエネルギーを打ち出し、ドギラゴン剣を焼き払った!!
「ブラック……ドラ、ゴンの登……場時、能、力です……ぐぅ!?」
「雪菜ちゃん!!無理しないで!!」
想護の言葉がフィールドに響く。
雪菜は未だにボルメテウスたちを制御出来ていないのだ。
体を乗っ取ろうとするボルメテウスに雪菜が抵抗している。
長くバトルゾーンに居させるのは危険だと、以前四ッ谷が言っていた。
「ちぃ!ドギラゴンが……だが、まだだ!こっちにはまだクリーチャーが2体居る!
それにお前、そのカードを操り切れていないな?
その様子じゃ、バトルゾーンにおいておけるのは数ターンが限度だろ?」
少年がボルメテウスを見ながら、にやりと笑った。
「そ、うですね……まだ私は、この子たちを、使いこなせません……
長い間フィールドに、置くのも、苦手です。
ですが!対策はしてあります!
イージスブーストでアパッチウララーを攻撃!
そ の と き に――!
革命チェンジ発動!!」
イージスブーストの攻撃と同時に、雪菜が手札のカードをイージスブーストを入れ替える。
「なにぃ!?テメェも革命チェンジを持てやがったのか!!」
「来てください!!
雪菜の手札から躍り出たのはライオンに跨る弓を構える戦士。
このカードも四ッ谷のミラダンテⅫあるいは少年のドギラゴン剣の様にファイナル革命を持っている。
「ファイナル革命発動!!このクリーチャーのパワー以下のバトルゾーンのクリーチャーを全てマナゾーンに置きます!」
プチョヘンザが弓を引くと、空中で矢が無数に分裂しバトルゾーンに降り注いだ!
『うら!?』
『むぅん!!』
アパッチウララー、〈BAGOON〉パンツァー、そして雪菜のバトルゾーンのコルティオールとボルメテウス・ブラックドラゴンがマナゾーンに置かれる。
「上手い!ボルメテウス・ブラックを自力でバトルゾーンから退かしたぞ!
それにプチョヘンザは自身のマナ以下のコストをもつ相手クリーチャーをタップインさせる。
手札のチュリスを封じたぞ!」
バトルゾーンにあるクリーチャーは雪菜のプチョヘンザのみ。
シールドの枚数は負けているが、ここで一気に逆転出来た。
「俺のドギラゴン剣が……」
少年がショックを受ける。
最強を誇ったカードが墓地に落ち、手札の詰めの一手として残したチュリスさえ封じられた。
だが、それでもなお少年は不敵に笑った。
「良いぜ、良いぜ!!コレくらいじゃなきゃ倒しがいが無いからなぁ!!
お前は俺が必ず食らう!」
少年の目に好戦的な危ない光が宿った。
多分全盛期のドギラゴン剣を知ってる人には、もっと凶悪に書いても良いと思ってる人多そう……