今回は忘れていそうなあのキャラが再登場です。
雨降る町を引き裂く爆音があった。
ブルるるん!!ぶるるるるるるる!!
夜の街を爆音は鳴らし、バイクが駆ける。
雨を弾き、闇をライトが割き、排気ガスの残し走り去る。
出会った物は恐怖を覚え、横切られた者は不快感を覚える。
いずれにせよ。そのバイクに跨った男は深夜の町を我が物顔で進んでいく。
ブルゥンンンン!!ブルゥン!!
傘もささず歩道を歩く男のすぐ横をバイクが通りすぎる瞬間――
「こいつは、
男の口が開いたと同時に、一瞬だけクリーチャーがその爪を実体化させてバイクの前輪を切り裂いた!
グゥワッシャン!!
バイクはコンクリートの上を滑り、ドライバーは地面に投げ出され、町を我が物顔で暴走していたドライバーは一瞬で死に体へとなった。
そこへ、歩道を歩いていた男がゆっくりと歩いていく。
「お前には、コイツが合いそうだな」
男がコートを開くとそこには無数のポケットがあり、その全てにデッキが収められていた。
そのうちの一つを取り出し、手に持った。
「我らが王、ドルマゲドン様に仇名す害虫どもを始末しろ」
「ぐぅああああ!!!」
男がドライバーにデッキを押し付けると、男の傷がみるみるふさがっていく。
倒れたバイクもまるで時間が逆行するかの様に再生していく。
そして、カードが怪しく光り、ドライバーの目にも同じ光が宿る。
「命を与えてやったんだ。せいぜい働けよ?」
男の言葉に応えるよりも早く、ドライバーはバイクにまたがり何処かへ走り去っていった。
「せっかちな奴だ」
男はつぶやくと、再度雨降る町の中へ消えていった。
学校が終わり、想護は部室へと足を運ぶ。
学業の終了という解放感に、胸を躍らせる。
「部長ー、フジ先輩ー、いますかー?」
部屋を開けると何時もの二人が、早速テーブルを囲いカードを広げていた。
「むむむむむ……」
「ぬぬぬぬぬでありまする……」
真剣な顔、お互いのクリーチャーたち盤面に揃う。
「我のターン。マナをチャージして、『神月の脈城 オリジナル・ハート』をシールドに付けて要塞化させていただきまする」
「くぅ~!来たか!」
藤御門の戦略の核である、オリジナル・ハートがシールドゾーンに鎮座する。
「我は『メルゲイナー』で攻撃いたしまする!その時、バトルゾーンにゴッドである『神帝マニ』が居る為メルゲイナーのドロー効果が発動!
一枚ドロー!更にオリジナル・ハートの効果発動!
自身のクリーチャー攻撃時に手札から、『神帝』と名のつくゴッドをバトルゾーンへ!
『神帝アージェ』を選択いたしまする!
そしてオリジナル・ハートの効果を再度使用!ゴッドがバトルゾーン出たため更にドロー!」
藤御門のバトルゾーンに新たなゴッドが呼び出される。
そのたびにオリジナル・ハートは神帝を呼び出し、ドローをしていく。
4体そろえる事で、無限攻撃を可能とする神帝を揃えるのがこのデッキのコンセプトの様だ。
「むむぅ~!」
実紅のシールドが破られ、頬を膨らませる。
その様子からトリガーは来てくれなかった様だ。
「どうやら今回は我に勝機があるようでありまするな!
マニの攻撃時、再度オリジナル・ハートの効果!手札より新たな神帝『神帝スヴァ』をバトルゾーンへ呼び出しまする!先ほど出した神帝アージェとゴッドリンクいたしまする。
オリジナル・ハートの効果でドロー」
マニ、アージェ、スヴァと藤御門のバトルゾーンに、ゴッドが次々と集まっていく。
『勝負あったわね』
「フジ先輩の勝ちか……」
コートニーの言葉を肯定するように、想護が言葉を漏らす。
その時、割られたシールドをみてぱぁっと実紅が微笑んだ。
「シールド・トリガー発動!『スーパーエターナルスパーク』!」
「むむ、これは……我の負けですな」
藤御門のは自ら、スヴァをシールドゾーンに置き敗北を宣言した。
「特殊敗北効果……スヴァがバトルゾーンを離れた時、我は敗北いたしまする」
藤御門が降参と言いたげに、両手を上げる。
「お~、実紅先輩おめでとうございます。
今日は調子良いですね」
卓上ゲーム部の部長ではあるが、実は実紅の勝率は低い。
本人の性格なのか、それともデッキのせいか、はたまた運が足りないのか……
不思議な事に勝率は低いのだ。
もっとも、ゲームは勝利するだけが目的ではないし、負けてもゲームを楽しめるという才能は非常に大切だと想護自身は思っている。
「やっと勝てたよ~、昨日の放課後から続けて25連敗。
けど、26戦目は勝ったね!」
「に、にじゅ、ろく……」
引きつった笑みを浮かべる想護に対して、ソファーの上でVサインを作り、上機嫌で笑う実紅。
想護は改めて、負けてもゲームを楽しめる実紅の才能に感謝した。
「それより想護クン――『彼』の話聞けましたか?」
「ハイ!以外と元気そうでした!」
昨日の放課後、ホームルームの終わった想護の携帯に連絡が入った。
それはホムラとの戦いで敗北した、親友中埜の携帯からだった。
内容を確認した想護は病院へと急いだ。
「よぉ、想護……元気か?」
「バカ野郎!こっちのセリフだよ……」
久方ぶりに目覚めた親友との語らいに、想護は大きく喜びを感じた。
そして、病院の面会時間が終わるまで、二人でたくさんの事を語ったのだった。
「想護クン……良かったでありまするな」
藤御門が目を細めて、カラカラ笑う。
「やっと、日常が帰って来たって気がしますよ」
「彼は他の部活のメンバーゆえ、あまりここに来ませぬが……
なかなかの実力者故、また戦えるのを楽しみにしておりまするよ」
昨日の勝ちに気を良くしたのか、藤御門が珍しく好戦的な笑みを見せた。
「あ!そう言えば、昨日何だかんだ言って、デュエマはしなかったな……」
再会がうれしすぎて、逆に忘れていたと、想護がつぶやいた。
その時――
ぴりりり
想護の持つ携帯の着信音が鳴る。
表示されたのは『四ッ谷』の文字。
「あ、ごめん。呼び出し来たみたい。
先輩たちすいません。俺ちょっと出てきます」
そう言って想護は部室を後にする。
『黒札 想護聞こえるか』
「四ッ谷さん……どうしたんですか?
またクリーチャーが?」
初めてかかって来た四ッ谷からの着信に、想護が驚く。
『いや、実は君に来て欲しい所がある。
今から時間は大丈夫か?』
「来て欲しい所?別に構いませんが……
合流は何処に――」
『「ここで構わない」』
「いい!?」
電話と現実。同時に同じ声が聞こえて想護が振り返る。
「私はこの学校の卒業生なんだ。
OBとして侵入は簡単に出来る。
さ、急ごう。校門前に車を止めてある」
「ええ……」
いつの間にか校舎内にいた四ッ谷に振り回されながらも、想護はついていく事となった。
それから四ッ谷の運転する車に乗せられ、数十分……
「ついたぞ。ここが目的地だ」
「ここって……」
『昨日も来たじゃない』
四ッ谷が車を止めたのは、コートニーの言葉通り昨日も来た中埜の入院している病院。
「目的も同じだ。ドルマゲドンとの接触して尚も命のある貴重な証言者だ。
話を聞いていきたい」
廊下を歩きながら四ッ谷が話す。
「けど、何で俺を?」
「君は彼と知り合いらしいじゃないか。
初めて会う私だけよりも、友人である君がいた方がリラックスして話せると思ったのだ」
「…………はぁ」
何処までも合理的な、四ッ谷の言葉を聴きながら中埜の部屋の扉を開けた。
「よ!中埜」
「想護、また来てくれてのか……
後ろの人は?」
病室の中の中埜はマンガを読んでいた。
意識不明中に出たのを想護が昨日貸し与えたのだ。
「あ、えっと……」
「彼のバイト先の先輩だ。
気にしないでくれたまえ」
あらかじめ用意されていたと思われるウソを並べ、四ッ谷が作り笑いを浮かべる。
『コイツ、実は一番胡散臭いんじゃない?』
コートニーが隣で毒を吐く。
「実は2、3君に聞きたいことが有る」
「聞きたい事?」
中埜がマンガを閉じる。
「君が意識を失う日。何を見た?」
「意識……俺が?意識を……?」
四ッ谷の言葉を聞いた瞬間、中埜の様子がおかしくなる。
「君はデュエルをしたハズだ。
あの男――セキグチ ホムラとだ」
証拠写真を叩きつける様に、四ッ谷がホムラの写真を取り出す。
その瞬間、中埜の表情が強張った。
「うぁ、あ……」
「君があの時使ったデッキだ。
どのように戦ったか、覚えているか?」
更に四ッ谷が中埜の使ったというデッキを取り出す。
「おれは、はぁ……はぁ、俺ははぁ……」
一気に汗が吹き出し、呼吸も荒くなる。
自身の胸の手を当てて、苦しそうに息を吸う。
「中埜?どうしたんだよ、一体!?」
すぐにその異常に気が付いた想護が反応する。
「……あっ、俺は……うぁ……うわぁああああああ!!
いやだぁあああ!!!そのカードはもういやだぁああああ!!!」
中埜が手を振り上げ、四ッ谷の持ってきたデッキを叩き落す。
カードが病室に散らばった。
突如として中埜のが錯乱状態になる!!
「中埜!?中埜!!しっかりしろ!!」
「退いてください!処置をします!」
誰かが呼んだのか、それとも偶然近くにいたのか看護師たちが入って来て中埜を押える。
鎮静剤か麻酔を打たれて中埜が大人しくなる。
想護はその間何も出来なかった。
「PTSD……
追い出されあ病室の外、冷静に四ッ谷が分析する。
「そんな、中埜……」
想護がショックを受けて視線を下にずらす。
そこにはさっきの騒ぎで散らばったのか、一枚のカードが落ちていた。
「アストラル・リーフ……」
それは嘗て、中埜が良く使用していてカードだ。
想護とも多く戦い、買った、負けた、様々な戦いを楽しませてくれたカードだ。
コートニーの様に魂を持つカードではないのかも知らない。
だが、多くの戦いを共にした「相棒」だったハズだ。
「アイツ、デュエルが大好きだったのに……
殿堂解除された時なんて、気が狂うほど嬉しそうだったのに……」
「ドルマゲドンに食われかけたんだ。命が有るだけで十分に幸運と――」
ドォん!
想護が四ッ谷の襟を掴んで壁に叩きつける。
四ッ谷は大して反応もせず、冷めた目で想護を見ていた。
「黒札 想護、君が私に八つ当たりするのは勝手だ。
気の済むまでいくらでも付き合ってやろう。
だが、ここは病院だ。静かにしたまえ。
そして――自身のイラつきをぶつける相手を間違えるな」
「アイツは!自分を大好きだった物を……大好きだった物を……物を……」
想護の手から力が抜けていく。
気が付かなかった。あるいは気が付かないフリをしていた。
「戻って無かった……すっかり元通りだと思ったけど、戻ってなんていなかった!!」
想護が強く唇をかみしめる。
その手には、おそらく2度と使われることの無い、中埜の切り札
「前を向け黒札。そこでオマエがそうしていても決して事態は好転しない。
今、この瞬間も奴らはドルマゲドンに食わせる生贄を求めている。
お前とお前の親友の大好きだった物を手段にしてだ」
しずかで淡々とした言葉、だが想護は四ッ谷もまた拳を強く握ている事に気が付いた。
「四ッ谷さんも好きなんですね……デュエルが」
「ああ、もちろんさ。私が最も愛しているゲームだ」
想護はゆっくりと四ッ谷の襟を離す。
その時――
『想護!近くに魂を持つカードが近づいてる!しかもスゴイ速さよ!』
「何!?」
突如コートニーが姿を現し、想護に伝える。
「ほぅ。その5色を操る術に関係があるのか……
そのクリーチャーは、他のクリーチャーを探す能力があるのか」
四ッ谷が興味深そうに話す。
『近づいてくる……この病院目当て?』
コートニーの言葉を聴いた想護が走り出す。
後ろから掛かる四ッ谷の声を無視して、ただひたすらにコートニーの導くままに病院を飛び出し走った。
「コートニー!どっちだ!!」
『病院を通り過ぎてる……あっちよ!!』
「分かった!」
コートニーの指示に従い、想護が町の中を走る。
走って、走って、更に走って、気が付けば小道の入り込んでいた。
ぶぅん!!
「バイクの音!?」
『多分コイツがクリーチャーよ!』
想護とコートニーが走っていく。
「…………えっと、アナタはだーれ?
ニニィ、ナンパはお断りって言うか……」
金髪の女の子が追い詰められていた。
「デュエルだ」
行き止まりのその先、一人の男がもう一人の女の子を壁際に追い込んでいた。
男の姿は異常だった。
擦り切れボロボロの黒い服に、エンジンオイルが飛び散ったようなシミが何か所もついている。
何日も髭を剃っていないのか、無精ひげまで生やし身なりは良くは見えない。
「おい!お前!!何をしてる!!」
想護がその男に向かって叫ぶ。
「……魂を持つカード……それも、こんなに強く……だが……」
男は尚も、追い詰め女の子に詰め寄ろうとする。
「待てったら!!」
想護が強引に男と女の子の間に入り込む。
「わーお!かっこいー!ヒーローみたいだね!」
「あー、もー!君も君で逃げて!!」
茶化す女の子を想護が押して逃がす。
外国から来たのか、それとも彼女の趣味なのか。
左右で色の違うハイソックスに、金色の髪で、更に瞳はカラコンでも入れているのか、赤と青のオッドアイだった。
いろいろと派手な見た目をしている。
「せんきゅーボーイ!ニニィ君に感謝だよ~バァイ!」
ニニィと名乗った彼女はそのまま小道の奥に逃げていった。
「おら!俺が相手だ!かかってこい!!」
「……やむなし……目標を変更……する」
男が懐からデッキを取り出す。
「禁断……発動!」
男のデッキの一枚目は文字の読めないカードだった。
そのカードが光を放った瞬間、想護はデュエルゾーンに飛ばされる。
「な、なんだ、ここ……?」
そこは無限に広がる荒涼とした大地。
そしてその奥に鎮座する巨大な墓にも見える物は――
「ドキンダムX……展開……」
ドルマゲドンの一端を担うカードだった。
なぜか書いているウチに思った以上の鬱展開に……
うーん、不思議ですね。