2話に分けようと思いましたが、良い切り時が見つからなかった……
作者にはあるあるネタかもしれませんね。
「なるほど、これが……」
デュエルフィールドの真ん中で、四ッ谷がずれた眼鏡を直す。
全てのシールドを割られ、相手のバトルゾーンには攻撃可能なクリーチャーが残っている。
「ドキ……ンダム……Xで……攻撃……」
虚ろな目をした男の指示で、ドキンダムXがその手に持った槍を構える。
投げられた槍は空中で無数に分離し、対峙する四ッ谷へと向けられる。
四ッ谷は自身の身を守るシールド全てを失い、またブロッカーたちも封印されてしまっている、つまり四ッ谷はその身を守る手段を持っていない。
「ニンジャ・ストライク4!ハヤブサマル」
四ッ谷の手札から現れたのは、体に刃を持つ黄色いクリーチャー。
そしてその小さな体でドキンダムXの攻撃を受け止めた。
「ハヤブサマルでブロックだ」
「ぎ……ターン……終了……」
「そして私のターン。ドロー……呪文『ドラゴンズサイン』を詠唱。
手札のサッヴァークを出し、その能力でドキンダムXをシールドに送りつける。
ドキンダムの特殊敗北効果で私の勝利だ」
四ッ谷の勝利が決定した瞬間、対戦相手の男が崩れ落ちる。
「なるほど、『黒札 想護』の情報の通りだ」
人型のシミを残し消えた対戦相手を見る。
「四ッ谷さん!!」
対戦を見ていた雪菜が走ってくる。
「雪菜か……このパターンはもう何件目かな?」
「記録に有る限りで6件目です」
雪菜がメモ帳を取り出し確認する。
想護が初めて葉久野の作り出した奴隷兵と戦って以来早2週間。
だんだんと奴隷兵たちの数は増加してきている様だった。
「『ドキンダムX』……ドルマゲドンの配下のクリーチャーか……
おそらくドルマゲドンが大きく動き出したのだろうな。
やはり『彼』に戦線復帰してもらうしかない」
「四ッ谷さんそれは――」
雪菜が何かを言おうとして口をつぐんだ。
「切札は早いうちに使うべきだ。彼の実力は群を抜いている。
そして、彼の持つ能力もまた、この状況を変える事が出来るハズだ。」
決心した四ッ谷の顔を見て、雪菜は何もいう事が出来なくなってしまった。
病室のドアを想護が開ける
今日も今日とて、友人の中埜の見舞いだ。
「おーい、中……あれ?」
だが病室の中はすっかり空だ。
「トイレ……でも行ったか?」
意識不明から回復し、検査も終わりそろそろ学校に復帰という時期。
必要な物を買い求めに出かけている可能性も否定できない。
「お、想護。また来てくれたのか?」
「中埜!その人は?」
声を掛けられた中埜の後ろには、高校くらいの男子がいた。
スケッチブックを片手に少年が笑みを作り頭を下げる。
想護や中埜とほぼ同い年だろう。
「
「おー!マナ武装の人!」
一輝と呼ばれた少年が想護を指さす。
その動きはまるで小さな少年の様だった。
『ち、うるさいガキね』
「あー、ガキって言ったー!」
一輝がコートニーを指さした。
「な、君……」
驚く想護を前に再度一輝が笑った。
「はじめまして。僕はD-シーカーズの『如月 一輝』です」
想護は意外な人物から発される言葉に、眼を白黒させるばかりだった。
病院の敷地内にある娯楽室で、一輝がジュースを飲み干す。
「そっか、君が前に四ッ谷さんの言ってたもう一人の仲間なんですね」
「はーい、僕は雪菜ちゃんの次に仲間になったんです、よっと!!」
一輝がジュースの空き缶をゴミ箱に投げ捨てる。
想護がここに来た理由。それは中埜の警護の為だった。
活発化するドルマゲドンの動き、ドルマゲドンに接触した数少ない人間の生き残りとして何者かが中埜の口封じをしに来る可能性を懸念して、想護はここにやってきているのだった。
そしてそれと同時に、四ッ谷からもう一人の仲間が合流する事も伝えられていた。
一輝は先に病室へ行き、そこで中埜と意気投合したらしい。
「ねぇ、君は一体どういう風に仲間になったの?だって――」
想護が言いかけた言葉を飲み込んだ。
『場合によっては死ぬかもしれない』
そんな残酷な真実を、四ッ谷は彼に教えない訳がない。彼もまた、重く苦しい理由を抱えているのかもしれない。
そんな疑問が想護の中に渦巻いた。
「その子が四ッ谷さんの言ってた相棒だね?」
「ん、ああ……コートニーだよ」
『んで?あんたの相棒は?』
想護の後ろにコートニーが姿を見せる。
「僕の相棒はこの子たちみんなさ!」
「みんな?」
想護の疑問に答える様に、一輝がデッキを取り出す、すると――
『ぱっぱらぱー!ぱーぱーぱー!』
『ゲラゲラげらっちょ!』
『ご紹介いたしまーす』
『はじめましてよの~』
複数のカード達が次から次へと魂を持って姿を現した。
「な、これみんな……!」
視界を埋め尽くさんばかりのジョーカーズクリーチャーたちに想護が目を白黒させる。
「僕のスケッチブックは少し変わってるんだよ」
一輝が自身の脇に抱えるスケッチブックを見せる。
そこにはたくさんのジョーカーズのクリーチャーが書かれていた。
「このスケッチブックに掛かれたジョーカーズたちはみんな魂を持つカードとして、僕の手元にやって来てくれてるんです」
「そんなバカな!?」
思わず出た言葉に、想護が自身の口をふさぐ。
(書いたクリーチャーたちが本物になるって事……じゃないよな?)
『前にあのディアボロスが言ってたわね。
魂を持つクリーチャーを呼び出す灯台の様な役目をする男』
「たしか……サンジェルマンだっけ?」
「その通り!そして、このスケッチブックはそのサンジェルマンみたいに、クリーチャーを呼ぶ道しるべなんだ!」
納得したと共に、想護はこの少年の存在をなぜ四ッ谷が秘密にしているか分かった。
彼はジョーカーズ限定とは言え、自由に魂をもつカードを呼び出す力を持っているのだ。
それだけじゃない。彼は無数のカードを抱えながらも、雪菜の様に取り込まれず全てと共存しているのだ。
彼は正に四ッ谷の用意した切札と言えるのだろう。
「今、大きな事件が動き出してるんでしょ?」
「ああ……結構大きな規模で、ね」
想護の言葉を受けて、一輝がスケッチブックを握る手に力を籠める。
「けど安心してよ僕と僕のジョーカーズがみんなを守って見せるからね!
あ、そうだもう一つ言っておきたい事が、このスケッチブックはサンジェルマンっておじいさんじゃなくて――――」
一輝が何かを言おうとした瞬間、病院が闇に包まれた。
そして、想護と一輝の両人がほぼ同時に全身に凄まじいプレッシャーを感じた。
「ここか?例のヤツが目撃されたのは?」
病室の入口で、大柄な男が虚ろな目をした男に話しかける。
「…………」
虚ろな目――奴隷兵は小さくうなづいた。
「ようやく追い詰めたか。さぁ、狩りの始まりだ」
葉久野が一枚のカードを掲げる。
ブッツン!
小さな異音を立てて、病院の電源が切れる。
「なんだ、停電!?」
『違うわ、ここ……デュエルフィールドよ』
何かを察したコートニーが口を開いた。
その事実を示すかのように、コートニーが実体化して見せる。
病院の中の、僅かな喧噪までも消えてあたりはシンとしている。
「敵が攻めて来たって、事ですよね?
みんな!準備を!!」
『『『『『おー!』』』』』
一輝の言葉に、スケッチブックの中のジョーカーズたちが一様に声を上げる。
どうやら戦闘準備はばっちりの様だった。
「けど、なんでここに――」
想護が考えるよりも先に、一輝は走り出していた。
「そんなの後々!敵さんがこっちに来たんなら、向かうのみさ!
けど、想護さんはさっきの中埜さんの警護をお願いします。
他の奴らは僕が退治しておくからさ!」
気が付けば一輝は既に先に進んでいた。
「嵐の様な人だな……」
『けど、アイツ。強いわよ』
コートニーが珍しく掛け値なしで称賛の言葉を口にした。
「俺は中埜のトコへ行かないと!」
想護は人気のなくなった廊下を走り、友人の元へ向かった。
「よっし!トドメぇ!」
一輝が6人目の奴隷兵を倒し病院内をかける。
皆が皆、出会った瞬間に勝負を仕掛けてくる。
だが、一輝の実力には皆遠く及ばない。
なぜなら――
「ほぉ……如月 一輝か。
神独第一高校2年の特別進学クラス在席。幼少期より高い頭脳と芸術性により多くのコンクールを総なめ。
今年の風景画コンクールでは4作品出品中その全てが、別部門で金賞を受賞。
尚且つ、将棋連盟より今若くして最もプロに近い棋士として注目されている人材。
現在高校2年時で国立大学や、海外の芸術系大学からの推薦が多数寄せられている。
どれもこれも、輝かしい歴史ばかりだな。
まさかここで目に出来るとはな?」
「アンタだれ?」
病院のエントランスで、待合室の椅子に足を組んで葉久野が座っていた。
一輝を見て凶悪に笑みを作った。
「なに、俺の可愛い奴隷兵を作るにも材料が必要でな?
せっかく材料にするなら、優秀な方が良いだろ?
幾らか目星はついていたが……お前は特に欲しかった材料だ」
「へぇ。悪いけど僕は興味の無い事はやらない主義なんだよね!」
二人が同時に、デッキを取り出した。
ダゴォン!!
「なんだ!?」
鈍い音がして、病院が揺れる。
想護がバランスを崩し、音のした外を見る。
「あれは――!」
病院の中庭で、一輝と見た事もない男が戦っていた。
「呪文!『ジョジョ・ジョーカーズ』を詠唱!
デッキから4枚を確認して、その中のジョーカーズクリーチャーを一体手札に。
僕は『ヤッタレマン』を手札に加えるよ」
『ファーファー!!』
手札に加えられた『ヤッタレマン』応援をする。
「なるほど。それが貴様の相棒か?
いや、違うな。この感じは?そうか!
お前はデッキ全部が魂を持つカードか!」
「一人でなに勝手に納得してるんだよ?
ま、あたりなんだけどさ?」
一輝がターンの終了を宣言する。
一輝 手札5 マナ1 盾5
「俺は手札から呪文『ピクシー・ライフ』を詠唱」
葉久野のマナが一枚増える。
先手を取っていた葉久野はこれで3マナとなった。
葉久野 手札3 マナ3 盾5
「マナのカードは、『永遠のリュウセイカイザー』に『イージス・ブースト』……大型ドラゴンデッキの予感。
なら、望は早期決着!
僕は手札から『タイク・タイソンズ』を召喚!」
『いえぇーい!』
バトルゾーンに出るのは、顔面の数字の掛かれた体操服の5人組。
5人で扇を作り、場を盛り上げる。
「僕はターン終了だ」
一輝 手札4 マナ2 盾5
「ドロー。呪文詠唱『白米男しゃく』山札の一枚上をマナゾーンへ。
回収は無しだな。ターン終了を宣言する」
葉久野 手札2 マナ5 盾5
「今はお互いがお互いに、準備段階か……
けど、このターンが終われば、ジョーカーズたちは一気に動くハズだ」
想護の予想は、当たっていた。
「僕のジョーカーズたちを見せてやろうぜ!
ドロー!マナをチャージして、『メイプル超もみ人』を召喚。マナをチャージ。
そして、『タイク』で攻撃!その時、ジョーカーズチェンジを発動!
タイクをマナゾーンへ置いて、代わりにマナゾーンから『天体かんそ君』へチェンジ!
タイクの能力で山札の一枚目をマナゾーンへ!
そしてかんそ君の能力!デッキの上3枚を見て、一枚をマナ、一枚をデッキの下、最後の一枚をデッキの上に戻す」
「トリガーは無しだ。受けるぞ」
何もせず、葉久野の盾が一枚割られる。
「僕はターン終了だ」
一輝 手札3 マナ6 盾5
「すごい!攻撃しながら一気に2マナも増やした!さっきのを含めると一気に4チャージだ
チャージならあっちのデッキにも負けてない!」
想護が一気に逆転したマナ数をみて、声を荒げる。
「マナを整えたか。ならば切札も手に入れた頃だろう。
なら、コイツの出番だな。
俺は『ドルツヴァイ・アステリオス』を召喚」
「行け。マッハファイター。
『天体かんそ君』を破壊だ」
バトルゾーンに現れた甲虫を思わせる、クリーチャーが一瞬で姿を消す。
そして、一瞬遅れて『天体かんそ君』を背後から、その角で刺し貫いた。
『ぐぁ……』
かんそ君のレンズが割れ、本体がガラス片をまき散らして爆発した。
「能力発動。ドルツヴァイがバトルに勝利した時、俺のマナを倍に増やす」
葉久野のデッキから6枚のマナが浮かび、一気に12マナまで加速した。
「さて、準備は整った。楽しめ。お前のラストターンだ」
葉久野 手札1 マナ12 盾4
「ラストターン……だって?
終わらせない。終わらせはしないさ!
僕だってD-シーカーズの一人。
クリーチャーと人が共存出来るって事を証明する為にいる!!
お前の様な、クリーチャーを人を悲しませる道具にする奴なんかに、絶対に負けない!!ドロー!」
「さっきのターン、デッキの一番上に何か仕込んでた。何が来るんだ!?」
想護が固唾を飲んでみる。
その時、一輝を包む様に風が吹いた。
「まずはヤッタレマンを召喚!そして軽減を含めて6マナ発生!!吹き荒れろ風!!うなれ大地!!
目の前の敵を全て打ち抜け!!召喚!!『ジョリー・ザ・ジョニー』!!」
風はやがて砂嵐に、そして何処かから蹄の音が響いてくる。
『はいよぉ!!シルバー!!待たせたな!!』
姿を現すのは機械の体の赤い帽子をかぶった、ガンマン。
銃の様な馬に跨り、2丁の拳銃を構える。
「いっけぇ!『メイプル超もみ人』!奴の盾を奪うんだ!」
『あ、ひーら、ひら!』
揺れながら、もみ人が葉久野の盾を一枚破壊する。
「トリガーは無い」
「ジョニーで攻撃!その時、手札のアタックチャンス呪文『ナッシング・ゼロ』を発動!――盾のブレイク数を2増やす!」
無色クリーチャーの攻撃時に使える呪文『ナッシング・ゼロ』が放たれる。
このカードは山札の上から3枚を見て、ゼロ文明の数だけクリーチャーのブレイク枚数を増やす。
更に――
「ジョニーがシールドをブレイクした後、相手にクリーチャーと盾が残っていなければ、僕はゲームに勝利する」
『俺たちにの前に立ったことを後悔させてやるぜ!』
ジョニーの拳銃の弾が、3枚ある葉久野の盾を全て割る。
そして、その攻撃は曲がりドルツヴァイの眉間を打ち抜いた。
「これで、終わりだ!!」
再度曲がってきた銃弾が葉久野を狙う。
キィン!
葉久野に命中する瞬間、6枚目のシールドが現れ葉久野を守った。
「シールド・トリガー。『ライブラ・シールド』お互いに盾を一枚増やす呪文だ。
攻撃の終わりに盾が一枚、残ってる。
つまり、能力は不発だ」
「くっ、だが、まだこっちには盾が6枚……
次のターンで……」
「ああっ、倒しそこなった!
けど、以前有利は変わらないハズ。
そう、相手の寿命が1ターン伸びただけだ……」
想護は自身に言い聞かせるように、つぶやいた。
「無駄だこのカード一枚。たったこのカード一枚でお前に地獄を見せてやろう」
葉久野が手札のカードをマナに置く。
1つ、2つ、3つとマナがタップされていく。
そしてその数は8つを超え9つを過ぎそして10枚目のマナをタップし、最後にたった今置いた11枚目のマナがタップされた。
「11マナ使用!膨大なる大地の力を吸い上げ、強大なるその力を見せつけろ!!
開け!
召喚!『「必勝」の頂 カイザー「刃鬼」』!」
葉久野が一枚のカードをバトルゾーンにだす。
その瞬間、圧倒的なプレッシャーが想護を襲う。
『ギュァアオオオオオオ!!!』
白い体に黄金の爪、手に持った大剣を振りかざし咆哮を上げる。
パリン!ピシっ!パキン!
「うわっ!?」
クリーチャーの声に反応してガラスが割れる。
想護はとっさに体をかばう。
「刃鬼の能力発動。お前のシールドの数だけ、つまり6回ガチンコ・ジャッジだ」
「不味い、このデッキは――」
一輝の表情が一瞬曇る。
ジョーカーズデッキは相手と比べて明らかにクリーチャーの全体のコストが低い。
つまりガチンコ・ジャッジの勝率は限りなく低くなってしまう。
「裁け!ガチンコ・ジャッジ!」
刃鬼が手をかざすと、一輝と葉久野のデッキから5枚ずつめくれた。
「……くそう」
「俺は4勝。刃鬼の効果でその数の分だけ手札、マナ、墓地から種族『ハンター』を持つクリーチャーを踏み倒す。
一体目『永遠のリュウセイ・カイザー』
二体目『閃光のメテオライト・リュウセイ』
三体目『
四体目『不敗のダイハード・リュウセイ』」
刃鬼の咆哮により呼び出された
皆が皆、絶大な能力を持つ者ばかりだ。
「さて――狩るか」
最初に飛び出したのはメテオライトだった。
手にもった光を纏った剣を振るかざすと、一輝のジョーカーズたちに向かって振り下ろした。
全てのジョーカーズたちが、その剣の光を浴びて倒れる。
「メテオライトの登場時能力。相手のクリーチャーを全てタップする」
「みんな!?大丈夫か!!」
一輝が倒れる仲間を心配する。
「仲間などに頼るからこうなるのだ。
小さく、弱く、矮小で、無意味で、ちり芥に過ぎない仲間にな」
葉久野が手を振り下ろし、指示を出す。
その瞬間、
「仲間などと繋がる必要はない。
たった一人の強者と、それに従う搾取される者。
それだけが有ればいい」
『ふぁぁ!?ふぁぁああああ!!!』
その落下地点はリュウセイの能力により、無防備な姿をさらす一輝のヤッタレマン。
ドぐぅあーん!
土埃が舞い、
『たす……け……て……』
下半身を踏みつけられたヤッタレマンが手を一輝に伸ばす。
「ああ、ヤッタレマン!!」
「殺れ」
冷酷な葉久野の指示の元、ヤッタレマンが
『ふぁぁあああああ!!!!』
断末魔を残して、ヤッタレマンが墓地へ送られた。
『グルルルぁ!!』
攻撃時の効果で、ダイハードが一輝の盾を一枚焼き捨てる。
だが悪夢は終わらない。
「ガチンコ・ジャッジだ」
「う、くぅ……」
両者のデッキがめくられる。
だが、先ほども言ったようにデッキ構築上その結果は火を見るより明らかだ。
「勝利だ。『
葉久野のクリーチャーはリュウセイのおかげで皆、このターンに攻撃が可能となっている。
トリガーさえ恐れなければ、勝利してもおかしくはない。
だが――
「俺はターンを終了だ」
「え?」
葉久野の言葉に一輝が声を上げる。
『アイツ!!』
その態度にコートニーが怒りをあらわにする。
コートニーはこの時、葉久野が何をしようとしているのかを理解していた。
「
『ぐるるるるるるる!!!』
『いやだぁー!!たすけ――ごっぶ!?』
野太い爪がもみ人を突き刺す。
一輝の方へ投げ捨てられた屍が、一瞬だけ手を伸ばして消える。
「あ、ああ……」
再度
「攻撃、ジャッジ、勝利、追加ターン。
攻撃、ジャッジ、勝利、追加ターン」
葉久野は決して、一輝を攻めはしなかった。
ただ延々と勝てるジャッジを繰り返し、まるで見せしめの様に一輝のジョーカーズたちを破壊していった。
『あ、あいぼう……お前はあきらめるんじゃ――ぐぅあああああ!!!!』
最後にジョニーの頭が、
「みんなが……」
一輝は何も出来ずに、目の前でジョーカーズたちがなぶり殺しにされるのを見ているだけだった。
「ターンを返してやる。クリーチャーをだせ」
「え……?」
「次の一発でお前は確実に死ぬ。
だが、クリーチャーを召喚する限り先にそっちを破壊してやる。
少なくともデッキのクリーチャーを全て犠牲にする限り生き残ることが出来る」
葉久野のバトルゾーンにはリュウセイカイザーが居る。
どんなクリーチャーを出そうにもタップされて出てしまう。
そうなれば、次はそのクリーチャーが破壊される事に成る。
「あ、あう……」
一輝が震える。
目の前に明確な形を持った『死』がその身を狙っている。
だが、自身のクリーチャーを見捨てれば、ほんの少しだけ生きながらえる事が出来る。
一輝が手札のクリーチャーに手をかける。
そして――
「そうか、それがお前の答えか」
一輝何もせずに、ターンを終わらせた。
そして、デッキをかばう様にその前に立ちふさがった。
「俺は、仲間を売らない!」
「潰せ」
葉久野が刃鬼に冷酷な命令を下した。
忠実なるドラゴンは、その言葉に何の疑問も持たずに飛び上がった。
「一輝君!!」
想護の声が聞こえたのか、一輝が一瞬だけ想護の方を見る。
そして――
ザッシュ!!
刃鬼の爪が地面毎一輝を巻き上げた。
一輝の体が宙を舞い、重力に従い地面に倒れた。
「か、一輝君!!」
想護は居ても立っても居られなず、病院の玄関に向かって走り出した。
「う、あう……」
辛うじて一輝には意識があった。
自身の目の前に、愛用しているスケッチブックが落ちていた。
「ああ、汚れちゃ……う……拾わな……きゃ」
他に気にする事が有るのだろうが、そのどんなことよりも一輝にはスケッチブックが大切だった。
体を引きずり、手を伸ばす。
「みんな……無事……か……」
「ふん」
グシャ!
一輝の目の前で、何物かがスケッチブックを踏みつける。
「か、は!?」
視線を上げた先には葉久野が立っていた。
「俺たちの計画にイレギュラーが有ってはならない。
だから、消えて貰おうか」
葉久野がポケットからライターを取り出し、スケッチブックに投げつける。
小さな炎は一瞬にして燃え広がった。
「あ、あ、俺の……俺の、仲間が!!みんなとの繋がりが!!」
「無様無様。天才とは言え所詮こんな物か」
燃え行くスケッチブックがその隙間から一枚のカードをこぼした。
それは消えゆく扉が最後に残した一輝へのメッセージに思えた。
だが――
「ほう、使えるカードだ。貰っておくぞ」
そのカードすら葉久野は奪っていく。
「アイツ!!どこまでやれば気が済むんだ!!」
その姿を、玄関についた想護が見ていた。
一切の躊躇もなく、非道な行いをするこの男に想護はうすら寒い物を感じた。
まるで、前に戦ったドキンダムの使い手の様なただひたすらに冷酷な行い。
本当に人間なのか?とすら思った。
「さてと、思わぬ収穫が有ったな。だが、まだ目的は達成していない。
出てこい!!ここにいるのは分かってる!!
俺は貴様を捕獲しに来た!!」
葉久野の言葉が響く。
「出てこい……?
俺の事か?それとも中埜か?」
想護の中で焦りが募っていく。
倒された一輝、病室にいるであろう中埜、そして目の前の強大な敵。
「……やるしかない、俺がやるしか――」
想護が走り出そうとした瞬間。
「
想護の肩に置かれた手。
そのその先には――
「君は、確か……」
「ん~?おー!この前のキミか!
偶然だねぇ?それともニニィに会いたくてストーキングでもしてた?」
赤と青のオッドアイに、金色の髪に左右で色も長さも違うロングの靴下。
微妙に外国係った口調に、その派手な恰好。
想護には見覚えがあった。
「ニニィ……?」
ニニィが悠然と、葉久野へ向かい歩いていく。
絶望へ向かうがその足取りは酷く軽やかで。
葉久野が凶悪な笑みを浮かべるが、周囲を奴隷兵が囲もうが一切の躊躇もない。
まるで散歩にでも出た様な足取りで、葉久野の前に歩み出る。
「へい、ユー!気に入らないから潰しても良いよね?」
「やってみろ!サンジェルマンの孫娘!!」
二人が同時にデッキを構える。
「ニニィが、サンジェルマンの孫娘……?」
想護はたった今聞いた言葉を、理解できずに立ち尽くしていた。
実力さが有ると、最後みたいになりません?
小学生くらいのプレイヤーと戦う時、『いい勝負』に持ち込むのって、難しいですよね。
まぁ、偶に強い子に当たって、普通にやられるんですけども……