D-クロニクルズ   作:ホワイト・ラム

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さてさて、今回の事件は?


黒の力

「さぁ、前座は終わりだ。今回の真の目的を果たす」

 

「ニニィを倒せる積りかな~?」

刃鬼の攻撃に寄って、酷く荒れた病院の中庭。

そこの対峙するのはニニィと葉久野の2名の姿。

 

「さぁて、どうかな――!?」

 

「あれぇ~?」

二人が何かを察した瞬間、中庭にヒビが走った。

より正確に言うならば、ヒビの形に空間が裂けた。というべきかもしれない。

 

「ちぃ、時間切れか。やはりこれだけの空間を固定するのは無理があったか……」

半場予測していたと言った面持ちで、葉久野が小さく舌打ちした。

 

「あっちゃ~、なんだか不完全燃焼だねぇ」

二人が同時に背を向けると空間は完全に砕け散って消え去った。

その次の一瞬には、向き合っていた二人は影も形も無かった。

 

 

 

「戻って……きた?」

一瞬にして戻る雑踏。

現れる患者や看護師たち、想護はその音で自身が現実へと戻って来たのだとようやく理解した。

 

「一輝君?一輝君はどうしたんだ!?」

次々起こる自体に、想護は倒れたハズの友人を探しに走った。

 

『想護!アレ!』

コートニーが指さす先、一輝が倒れていた。

 

「一輝君!一輝君!!」

想護は必死になって、意識を失った一輝に語り掛けた。

 

 

 

 

 

図書館の地下、D-シーカーズのリーダー四ッ谷が想護の話を聞いて目を瞑る。

 

「そうか……一輝がか……」

話の内容は、ついさっき在った惨状について。

 

「俺の目の前で……一輝君が……」

 

「仕方ないさ。デュエルは1VS1のゲーム。

一度始まれば、外からの介入は不可能だ」

それ以上は何も言わせない。

四ッ谷の強い意思が感じられた。

 

「雪菜。すまないが、レコードをかけてくれないか?13番だ」

 

「分かりました四ッ谷さん」

横で黙って話を聞いていた、雪菜が部屋の隅にあるレコードを再生させた。

何処か、重く暗い音が鳴る。

 

「さて、今ここにいる君たちを私を含めた3人がD-シーカーズの戦力だ。

以前より言っているが、今再び言おう。

君たちに戦う義務はない。戦いで称賛される事もない。

私は止めはしない。見なかった振りをしても私は――」

 

「ふざけるんじゃない!!」

想護の怒声が響き、テーブルを叩いた。

 

「俺は友達の中埜を傷つけられた……

あったばかりだけど、一輝君も良い奴だった。

何より、俺の大好きなゲームを使って人を悲しませるのが一番許せない!

なんでだ、なんで普通に楽しめないんだよ!

こんなのかわいそうだ、カードも、プレイヤーもそんなの望んでないハズなのに!」

温厚な想護には珍しい、怒りに満ちた声だ。

 

「そうか……だが、綺麗事で済むなら、我々に出番はない――次はこちらも攻勢に出る。

奴らの目的がサンジェルマンの孫娘と分かった今、その先の更なる目標も見えてくるハズだ。

奴に聴いてみるか……」

 

「四ッ谷さん、まさか……」

雪菜が何かを察した。

 

「仕方あるまい、蛇の道は蛇だ」

苦虫をかみつぶした顔で四ッ谷が、厳重に封印された扉の鍵を手にする。

 

 

 

 

 

『くっくっく、揃いも揃って私に何か用か?』

D-シーカーズのアジトの最も深い場所に封印されているカード。

『ディアボロス』が声を上げる。

いつ聞いても、その声には怪しい魅力があふれている。

 

「サンジェルマンの孫娘が現れた。

ドルマゲドン一派は何を狙っているか、分かるか?」

 

『なにっ?』

四ッ谷の言葉にディアボロスが僅かに動揺した。

 

『なるほど、なるほど……サンジェルマン以外にも、こっちに来ている奴が居たのか。

そしてドルマゲドンの奴はソイツを狙う……

この世界に来ている次点で、プレイヤーとしても能力は文句のないレベルだろうな。

是非とも、我が使用者として欲――』

 

「無駄口を叩くな!!」

四ッ谷がディアボロスを封印しているガラスケースを殴る。

何時もこうだ。四ッ谷はディアボロスに対して異様な敵愾心を見せる。

 

『くっくっく……ま、それもこうして封印されている我には関係の無い話だ。

さて、話しが逸れたな。

おそらく、奴らの目的はカードだ。魂を持ったカード』

 

「新しい仲間を呼ぼうとしているのか」

四ッ谷が目を細める。

 

『半分は正解だ。だが、もう半分は違う。

この世界とクリーチャーの住まう世界を繋げるカード、二つの世界の理を破壊するカード……

ああ、そうだ。そうだったなぁ。あの頃から、ドルマゲドンは【あのカード】を欲しがっていな物なぁ』

 

「何のカードだ」

 

『知りたいか?知りたいよなぁ?我が教えれば、お前たちは血眼になってそのサンジェルマンの孫娘とやらを探すものなぁ?』

口の中で飴を溶かす様に、猫が獲物を嬲るようにもったいぶってディアボロスは、そのカードの名を告げた。

 

『呪文【オール・デリート】だ。奴は、おそらくそのカードを狙っている。』

 

「『オール・デリート』……?」

想護がディアボロスの言葉を口内で再生させる。

そうだ、言われてみれば分かる。

ドルマゲドンの使う配下のドキンダムと最も相性の良いカードだ。

だが――

 

「魂を持つ呪文などあるのか?」

四ッ谷がディアボロスに尋ねる。

 

『「魂を持つ」と言えば、確かに間違いだ。だが――

【念】が籠れば別だ』

 

「『念』だと?また、訳の分からない事を……」

 

『呪文とはいわば一度きりの使いきりの装置。

だが、何度も何度も強い思いを込めた呪文は、魂を持ったカードが現実で力を持つように、呪文も現実での力を持つのだよ』

 

「クリーチャーの様に力を持つ呪文……それも【オール・デリート】が!?」

想護は考えうる最悪の状況を理解して、立ち上がった。

 

手札、盾、場、墓地。ありとあらゆる物を消しさる最悪の呪文。

それが『オール・デリート』だ。それを逃れられる唯一の例外は封印されているドルマゲドン達だけ。

もし、もしも使われれば――

その呪文は、この世界を無に帰してしまう可能性が十分にある。

 

『サンジェルマンの孫娘とやらが、絶対に持っているとは言えんが、可能性は十分にある。

その証拠に、ドルマゲドンは今、血眼になって探しているハズだからな』

そこまで聞くと、四ッ谷は静かに立ち上がった。

 

「四ッ谷さん?」

想護が背中に言葉を投げる。

 

「当面の目標は決まった様だな。

黒札、雪菜聞いてくれ。

私達D-シーカーズの目標は魂を持つカード【オール・デリート】の確保と封印だ!

その為の重要参考人物として、サンジェルマンの孫娘との接触を試みる。

各自、情報を共有して事に当たれ!【オール・デリート】さえ手に出来れば、状況は一気にこちらに傾く!」

四ッ谷が二人に言い聞かせる。

 

「黒札。今、もっとも正確な情報を持っているのはお前だ。

サンジェルマンの孫娘の似顔絵を作りたい。

少し、手伝ってもらうぞ?」

四ッ谷が鉛筆と画用紙を差し出してくる。

 

「え、絵ですか?」

 

『最初に言っておいてあげる。想護の画力は幼稚園児未満よ』

冷や汗を流す想護を補足する様に、コートニーが口を開く。

 

「チッ、使えませんね」

 

「面目ない……」

雪菜の舌打ちを聞いて、想護が申し訳なさそうにうなだれた。

 

 

 

 

 

ドルマゲドンの鎮座する異空間。

その空間が今、びりびりと肌を刺す様に震えていた。

 

(こいつは、ヤベェ事に成ったな)

瓦礫の端でホムラがドルマゲドンの様子を見る。

ドルマゲドンの前には、白い軍服の大男――葉久野が跪いている。

 

『ハクノよ、ハクノよ!!貴様!!サンジェルマンの孫娘を見つけておきながら、逃がすとは何事だ!!』

異空間にて、ドルマゲドンが怒号を上げる。

その怒りに空間そのものが震え、周囲に浮いているドキンダムたちも一様に槍を振り上げ威嚇する。

 

「申し訳ありませんドルマゲドン様……

しかし、邪魔者を一人始末し、凡その潜伏場所のめぼしを付けました。

すぐさま、私の作り出した特別な奴隷兵を向かわせました。

今なら、逃げ切る前に、捕獲が可能なハズです……」

 

『急げ!急ぐのだ!!我は二つの世界を壊し!!

そこに王として君臨するのだ!!我に、我に理を壊すカードを!!

【オール・デリート】のカードを差し出すのだぁあ!!!』

グラグラと空間が揺れる。

 

「は、ははぁ!ただいま、ただいまご用意いたします!

現在チューニングを済ませた奴隷兵を病院に向かわせました。

魂を持ったカードを追いかけさせております、何卒、何卒もうしばらくの我慢を……!」

 

『待てぬ!我は待てぬぞ!!急ぐのだ、急ぐのだハクノよ!!』

ドルマゲドンの叫び声と共に、葉久野はその空間からはじき出された。

 

「ぐぅ!?」

はじき出された衝撃で、葉久野が廃墟の床を転がる。

 

「よぉ、ずいぶんお疲れじゃないか?」

倒れて視線の先、ホムラが葉久野を見下ろしていた。

 

「ずっと隠れて見ていたな?ふん、まぁいい。

今回も作戦は問題なく進行中だ。

貴様は、適当なデュエリストでも狩ってドルマゲドン様の餌にするが良い。

何もしないよりはマシだ」

 

「ち……その上から目線、気に食わねーな?」

 

「なんだ、お前は噛みついて良い相手かどうかも理解出来ないのか?

少し、教育が必要な様だな?」

葉久野、ホムラ両名がデッキを構える。

 

 

 

 

 

「ぶー!また負けたぁ~!

ぐや”じ~」

カードを放りだして、実紅がソファに倒れ掛かる。

狭い部室には不似合いな部長専用ソファーで、実紅が機嫌を悪くする。

ぽいぽいと、上履きと靴下を脱ぎ捨てソファーで丸くなる。

 

「部長サン、そんな短気を起こしてはなりませぬよ?

戦いとは時の運になりますりますゆえ」

インチキ公家口調で、藤御門が口元を扇子で隠す。

 

「想護君も最近出てくれないしな~

飽きちゃったのかなぁ?」

 

「部長サン、そんな事ありまするませんよ。

想護クンは静かな顔をして、本物のデュエル好き故、何が有ってもやめるなどという事はありえないと、我は思いまする」

 

「…………それなら、次想護君が帰って来た時、ビックリするようなデッキを作ってく!

ふっふっふ……かわいそうな想護君……私の新デッキの生贄になってもらうんだからね……」

怪しげな笑みを作り、実紅が自身のカードボックスを漁り始めた。

 

「さて、我は少し昼寝でも……この、しばしの平和をかみしめて……」

藤御門は座った体制のまま、小さく寝息を立て始めた。

 

「フジくーん!起きて!!!」

 

「わっとっと?いかがなされました?我、少しウトウトし始めた所でありました故に……」

 

「欲しいカードが無いから買いに行くよ!ほら立って!部長命令!」

ビシッとソファーの上に立ち、指をさし藤御門に宣言する。

 

「……またでありますりますか~?仕方ないでありまするね……

はい、部長さん靴下と上履きを履いてくださいまするよう。

裸足で行くつもりでするか?」

 

「うん、分かったー」

 

「部長サン、スカート気を付けてくださいませ。

下着類が見えておりまする」

 

「わーん!エッチ!部長権限!!フジ君目を瞑ってて!」

 

「はいはい、わかりもうした」

手のかかる妹を見るような気分で、藤御門が目を瞑った。

大きな事件など、みじんも知らない二人は平和な時間を過ごす。

 

「おや――?」

実紅から視線を離し、校舎の外を何気なしに見た時、藤御門の目が細くなる。

 

「部長サン……我、少し先に行き申しまする」

 

「え、フジく――」

藤御門はそのまま歩き出した。

 

 

 

がりッ……カリ……ぴきっ……

 

まるでホラー映画のワンシーンから抜け出してきたような女が、校舎の前をうろつく。

生徒も先生も殆ど居ない午後の校舎だ。

その女を咎める者は誰ひとり居ない。

 

「ドコ?カードの所有者、ドコ?」

 

カリ……カリかり……ピキッ

 

女は苛立たしげに、自身の指の爪を噛む。

爪が割れ、血が滲んでも気にした様子は一切無い。

長い髪から覗く目だけが、血走り周囲を目ざとく確認する。

 

「ドこ?ドコ、どこ、どこどこどこどこ?この近くに、居る」

 

カリ…カリ、コリ、ぺり、パキッ……

 

「逃がさない、逃げ出させはしない、捕まえる。ドルマゲドン様に差し出す。

だから、出てこい……出てこい、出てこ――」

 

「おやおや、ずいぶん五月蝿い来客でありますりまするね?

不審者という奴でありまするますか?」

女が声の方向を剥く。

夕日をバックに、ゆっくりと校舎の中の階段からやせ型の男が姿を見せる。

何かが可笑しいのか、月の掛かれた扇子で口元を隠す。

 

「みぃつけた!」

 

「違い申しますな、其方が我に見つかったのであるまするよ」

二人は互いに、デュエルスペースを広げた。

 

 

 

 

 

「わ、わ、私のターン!!!『『俺』の頂ライオネル』で攻撃!

アタックチャンス――『極頂秘伝ゼニス・シンフォニー』

じじじじじじじじ、自分の手札から、ぜぜぜぜ、ゼニスを召喚扱いでバトルゾーンに!!

お、おおお、おいで!!しししし『『獅子』の頂きライオネル・フィナーレ』!!

無色の道を行く獅子たちよ!私に『我道』を捧げなさい!!」

女がバトルゾーンに出したのは、白い獅子をイメージさせる2体のクリーチャー。

 

「『フィナーレ』の能力で、盾をををを全て、て、て手札に!

『ライオネル』の効果で、ぜぜぜぜ、全部シールドトリガー!!

トリガー!トリガー!!トリガー!!!トリガー!!!!」

女のバトルゾーンにクリーチャーたちが並んでいく。

 

「トリガー!新世紀ヘヴィ・デス・メタル!

トリガー!超絶の名シャーロック!

トリガー!偽りの王モーツァルト!

トリガー!『終焉』の頂オーエン・ザ・ロード

トリガー!『創成』の頂きセーブ・ザ・デイト」

女のバトルゾーンには次々と強大なクリーチャーたちが並んでいく。

藤御門のクリーチャーは全滅し、巨大なブロッカーが脇を固め、ワールドブレイカーのスピードアタッカーまでいる。

 

「ほぉ、ずいぶんと思いきりましたな」

藤御門の盾がライオネルに寄って破壊される。

 

「しかし、我には届きませぬ、なぁ?」

扇子で隠す口元、その下で確かに藤御門の口が三日月の様に吊り上がった。

 

「シールドトリガー発動!『ヘブンズフォース』手札からコストの合計が4になる様にバトルゾーンへ。

我は『堕魔ドゥ・シーザ』と『堕魔ドゥ・グラス』をバトルゾーンへ!」

藤御門の手札から湧いたのは、小さな2コスのクリーチャーたち。

しかし、このクリーチャーの種族は『魔導具』

 

「闇夜よりも、なお黒き月よ。闇を纏い光を飲み込め。開け――無月の門よ」

バトルゾーンの2体のクリーチャーと、墓地の魔導具2枚が魔法陣を作り出す。

そして、黒い月を描きだすと魔法陣が燃え上がり、闇の炎が不死鳥を形を作った。

 

「召喚――デ・スザーク」

闇が襲い掛かった。

 

 

 

 

 

「フジ君ー!どこー!」

自身を探す実紅の前に、ひょっこり姿を見せる藤御門。

 

「おやおや、部長サン、お待たせしてすいませぬな」

 

「あー!フジ君いた!イッタイ何処へ行ってたの!?心配したんだからね!!」

小さな部長はどうやらお怒りの様だ。

 

「申し訳ありませぬ、実は我、昨夜からお腹の調子が今一つでありまして……」

申し訳なさそうに藤御門が腹に手を当てる。

 

「えー、何か変な物でも食べたんじゃない?」

心配そうに実紅が藤御門の顔を覗き込む。

 

「悪い物?ふむ、ふむ……困り申した、何も心当たりがありますりませぬ……」

 

「うっそだぁ!忘れてるだけで、絶対変なの食べてるよ!」

 

「むむむ、拾い食いには気を付けないといけませぬな」

かかかと藤御門が笑って見せた。

 

「そう、拾い食いには用心ですな」

藤御門が一瞬だけ、空を見た。

 

「フジ君なにか見えるの?」

 

「いいえ?ただの星空でありまするよ」

そう言った、藤御門の目にはとある物が見えていた。

 

 

 

「はなせ、せせせせせ、はなせ!!」

内蔵がつぶれる感覚がする。

掴まれた体が、炎で焼かれる。

女は今、デ・スザークの掴まれ空へと引きずりだされていた。

 

『きぃいいいいいいい』

悲鳴のような鳴き声を上げ、デ・スザークは女を空中で離した。

体が自由落下を始めた瞬間、鋭い嘴が腹に突き刺さる。

 

『キィるるるるるるる!!』

デ・スザークが喜びを声を上げる、地上には自身をこんな目に合わせた男がこっちを見ていた。

 

「き、さまぁああああ!!!」

女の叫びは体ごとデ・スザークの腹の中に収められた。

 

「さ、部長サン、カードショップへ参りましょうか?」

女は何処か楽しそうにする、男の声を朦朧とする意識の中で聞いた気がした。




割と敵味方ばっさばっさ死んでく……
おかしいなぁ……こんな予定では……
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