D-クロニクルズ   作:ホワイト・ラム

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ずいぶん久しぶりになりました。
書いてない内に、新しいカードが出ると、予定していた内容から少し変わってしまうのが最近の悩みどころ。


セカンドインパクト!/ニニィはそこに居る

図書館に併設されたカフェで、想護が2つのコーヒーを受け取る。

コーヒーと言ってもミルクと砂糖だけではなく、やれキャラメルシロップだの、やれナッツをまぶしたクリームだのが盛られて、豪華なコーヒーだった。

 

「はい、雪菜ちゃん」

 

「……いただきます」

一瞬のラグを挟んで、雪菜が想護の差し出したおしゃれなコーヒーを手に取る。

 

「はぁー、甘いのもは脳に行きわたっていく……」

ちらりとカフェの野外テラスに視線を送ると、無数の紙の束が散らばっている。

どれもこれも皆、想護が見たというサンジェルマンの孫娘のイラストが描かれているのだが……

 

「現段階で情報はゼロに等しいですね」

 

「うぐっ……」

 

「これでは性別すら分かりませんね」

 

「め、面目ない……」

度重なる雪菜の言葉に、想護が逃げる様にコーヒーに視線を落とす。

 

「四ッ谷さんも、地道に探すしかないって言ってましたし」

雪菜が小さくため息を漏らす。

 

「左右で色の違うソックスに、金色の長髪と青い目でしたっけ?

明らかに日本人離れした見た目ですね」

懐から取り出したメモ帳を雪菜が、確認する。

そこには想護の知りうる限りの、ニニィの全ての情報が詰まっている。

 

『あんな感じじゃない?』

コートニーが姿を現し、さっきまで想護たちの居たテラスを指さす。

そこに居た人物の姿を見て、想護が一瞬フリーズした。

 

「え、あ、あー!!」

そこに居たのはニニィ本人だった。

興味深そうに、想護の書いた似顔絵を覗き込んでいる。

 

「な、な、なんで!?」

 

「四ッ谷さんさんを呼んできます。

彼女の足止めをお願いします」

雪菜が素早く身を翻し、走り出す。

 

「え、あ、ちょっと!?」

 

『早く行きなさいよ、レディを待たせるなんて最低よ?』

コートニーに急かされ、想護も走り出した。

 

 

 

 

 

「ふーむ、ふむふむ……芸術的ってやつかナ?コレ」

ニニィが想護の書いた自身のイラストを指先で摘まんで、首だけを想護に向ける。

 

「はぁ、はぁ……に、ニニィ……ちゃん……今、丁度探して……」

息を切らせて想護がなんとか、言葉を紡ぎだす。

 

「ンッンー?それってデートのお誘い?

ざんねーん、ニニィ今日は気分じゃないんだー」

さっきまで想護の座っていたテラス席に腰を下ろす。

 

「けど、コッチなら全然オッケー」

ニニィが腰にぶら下げたデッキを取り出す。

 

「あっと、その……まぁ、一回くらいなら……」

何時もならばすぐに答える想護だが、常に高く跳ねる様なニニィのテンションに少し疲れ気味になっている。

仕方なしにデッキを取り出し、シャッフルする。

 

『ねぇ、アンタ。

ドコの出よ?』

コートニーが姿を見せて、ニニィに詰め寄る。

 

「うーん……キミとは違う世界、かな?」

ニニィはまるで当然の様に、クリーチャーであるコートニーの言葉に反応して見せた。

 

「違う、世界?」

想護が言葉を返す。

ニニィがデッキの横に超次元ゾーンを取り出して、数を数える。

 

『前に、ヨツヤとかいう眼鏡が言ってたわ。

意思を持ったカードがこの世界に来るって。

今、改めて見て分かったわ。

アンタ、クリーチャーともこの世界とも違う次元から来たのね?』

超次元ゾーンの更に横、ニニィは超ガチャレンジゾーンにもカードを置く。

 

「うん、そだよ。言ってなかった?」

あっけらかんとニニィが言い放つ。

 

「えーと、超次元とガチャレンジ二つともつかうヨ~」

シャッシャッと音を立て、自身のデッキをシャッフルする。

 

「なるほど、つまり、君たちは意思を持つクリーチャーたちとは違うベクトルの侵略者という訳か」

雪菜に呼ばれた四ッ谷が姿を見せる。

 

「ノンノンノン!ニニィたちはそんな気無いヨ~

勝手にやって来たのが好きにやってるだけ」

ニニィが立ち上がり、腕でバッテンを作って見せる。

そのふざけた態度が癪にさわったのか、四ッ谷の視線が鋭くなる。

 

「貴様のその行いが、この事態を招いたのだぞ!!」

四ッ谷がニニィの前のテーブルを叩く。

想護の置いたコーヒーが、一瞬だけ宙を舞った。

 

「キミ、つまんないなー……

っていうかー、なーんかこの所、退屈なんだよネー」

 

「ッ!話を――」

四ッ谷が怒りに任せて、口を開きかけてやめる。

 

「無意味な行為だ……犯人とよべる者に悪意があれば、罪を償わさせる事も出来ただろう。

だが、自身の罪を自覚していない者に何を言っても、意味はない」

四ッ谷が自身にそう言い聞かせる様に、つぶやき眼鏡の弦を触る。

 

「うん、キミって本当にタイクツだネー。

ニニィ、そういうの()()

そう言った瞬間、周囲から色が消えうせた。

 

「これって!?」

想護はその色の消えた空間に覚えがあった。

先日の病院での騒ぎの時見た、広範囲のデュエルスペースだった。

 

 

 

「ソウゴー、ダメだよー?デュエルを受けちゃったんだから、油断しちゃダーメ」

 

「そうか、貴様にも狙いがあったと言う訳か……」

四ッ谷が苦々しくつぶやいた。

 

「想護、すまないが彼女を止めてくれるか?

デュエルが始まった以上、私達に出来る事は無い」

 

「え、ええ。任せてください」

想護が四ッ谷の声に応える。

 

 

 

 

 

「ニニィのターンだよ!ニニィは手札の『光神龍スペル・デル・フィン』をマナゾーンにおいて、呪文『白米男しゃく』を詠唱!」

ニニィの手にあるのは上面と下面で別々の効果が書かれたツインパクトカード。

上面はトリプルブレイカーを持つ大型獣、そして下の効果は――

 

「山札から一枚をマナゾーンにね、マナからカードの回収も出来るけど、今はしない。

ニニィのターンはこれで終了」

 

ニニィ 手札3 マナ4 盾5

 

「3ターン目にマナチャージ、なんというか、ずいぶん『普通』なんだな……」

想護が静かな立ち上がりに、意外そうに声を漏らした。

 

『今のトコは、ね。けど、アイツのマナゾーンのカードを見てればそうも言ってられないわよ』

前のターンに呼び出され、バトルゾーンにたコートニーの言葉を聴き想護がニニィのマナを確認する。

 

「い”!?」

その顔触れを見て、想護が小さく呻き声を出す。

 

「ニコルに、ヴィルにナイン……」

さっきのマナチャージで落ちたカードは、強力カードの代名詞でもある『ニコル・ボーラス』そして緑マナを発生させた『偽りの王 ヴィルヘルム』。

ぞろぞろと強力なカードのラインナップが見えてくる。

 

「マナを稼がせるのは危険だ!

俺は3マナ使用で呪文『フェアリーミラクル』を詠唱。

コートニーの効果で一気に2枚加速だ!」

想護の山札からカードが2がマナゾーンに追加される。

 

想護 手札3 マナ5 盾5 

 

「おー!コートニーの染色能力で、フェアリーミラクルを決めて来たネ~

うんうん、カードと心がつながり合ってるね」

楽しそうにニニィが二人の様子を見る。

 

「けど、君たちはダメダメ!」

両手の指を雪菜と四ッ谷の両方に指し示す。

 

「カードとの心の繋がりだと?そんな物は理想論だ!

我々『D-シーカー』はカードの力を悪用する者、または人間を乗っ取ったカードと戦いをしてきた!!

貴様たちのした行為の尻拭いだ!!」

 

「ッ……カードとの共存なんて……」

四ッ谷が憤り、雪菜が本型のデッキケースを握る。

 

 

 

「へぇ……んじゃ、君たちはそのレベル止まりって、()()なんだよね。

カードの力を引きだせてあげれてない。

ただ、それだけなんだよー?」

ニニィがデッキからカードを一枚引く。

 

「にへぇ……!準備しなくちゃ、ネー!」

ニニィがたった今引いたカードを上空に投げる。

 

「ニニィはマナをチャージ!そして5マナ使用して――」

カードが青い粒子になって溶けていく。

 

「アハッ!起動し(起き)て!青のドラゴン!

0と1のデータの海から、生命と虚構の狭間から今、生まれ出でよ!!

オレガ・ライブ!!『code:1059(ヘブン)』」

 

バトルゾーンに現れたのは半透明の姿を持つ水のドラゴン。

だがその姿はまるで、荒いTVの画面の様にノイズが走っている。

 

「そしてGR召喚!何かな、何かな~?」

ニニィが指を鳴らすと、背後から巨大なガチャのマシンが姿を見せた。

そして機械が稼働し、一つのカプセルを吐き出した。

その中から出来て来たのは、流線形のボディに黄金の鉱石を背負う白亜のクリーチャー。

 

「おお!マーチスだね!」

 

『チッ、不味いわ。アイツは……』

 

『コォオオオオオ!!』

耳をつんざく声を発しながら『code:1059(ヘブン)』がマーチスをその身に取り込んだ。

 

「オレガ・オーラは不安定なカード、GRクリーチャーを核にしないと存在できない。

だけど、この子の力はバカに出来ないヨ~?

その前に……取り込んだ『続召の意思 マーチス』の能力発動だよ!

マナゾーンのカードが5枚以上で光が有れば、もう一回GR召喚!」

 

『クルォオオオオオン!!!』

『code:1059(ヘブン)』が再度嘶き、再びGRクリーチャーが姿を現す。

 

『…………』

それは、一枚の電子チップの様な姿をしていた。

チップの中央に赤い人の目の様な模様が見えた。

 

「なんだ、あのクリーチャー?」

見慣れぬ姿に、想護が口を開く。

 

「この子は『ソゲキ 丙‐一式』

効果はね――」

ソゲキを囲む様に、黒い弓の様な物が絡みつく。

 

「い”!?」

 

「ハンデス、だよ?」

ソゲキが想護に向かって、矢を飛ばす。

 

「さぁ、さぁ、自分の手札を選んで捨てて。

そうしないとその矢は何処までも追ってくるヨ?」

心底楽しそうに、ニニィが体を揺らす。

 

「お、俺は『パラスキング』を墓地へ!」

手札のパラスキングがソゲキの矢に穿たれ、墓地へと落ちる。

 

「マナゾーンのカードが5色って事は、どんなGRクリーチャーも使い放題って事か……」

想護が苦々しく、code:1059を見上げる。

 

「ニニィはこれでターンを終わり。終わり、だ・け・ど!」

 

「まだ何かあるのか!?」

 

「『code:1059(ヘブン)』の能力発動!

ターンの終了時に、もう一回GR召喚するヨ~!」

 

「もう一回だって!?」

その言葉を聞いた想護が顔面蒼白になる。

 

「本日三回目のGR召喚!何が出るかな~?」

三度ガチャが回され、カプセルが開かれる。

姿を見せたのは、小さな機械部品に青い影が絡みついたようなクリーチャー。

 

『…………ジぃ………』

そのクリーチャーは力なさげに、つぶやくと動きを停止してしまった。

 

「あっちゃ~『天啓(エナジー) cx-20』かぁ。

召喚時デッキからカードを3枚ドローできるけど、マナが6枚以上じゃなきゃ、動いてくれないんだよね……

ニニィはターン終了だよ」

がっくりと肩を落とすニニィだが、その場にはこのターンだけで3体のクリーチャーが並んでいる。

 

ニニィ 手札2 マナ5 盾5

 

「俺のターン、ドロー!俺はマナを溜めずに、ボアロジーを召喚。

マナを2枚溜める」

想護がボアロジーを召喚し、その能力で2枚のカードをマナに置いた。

 

『ちょっと!!想護!何してるのよ!!むざむざ何もしないでターンを返すつもり!?』

コートニーが劇を飛ばす。

 

「今は、今はチャンスを待つしかないんだ。

けど、必要なマナは揃った。次のターンから一気に逆転だ」

 

想護 手札2 マナ7 盾5

 

 

 

 

「四ッ谷さん、彼女の動き。どう思いますか?」

じっとデュエルを見ていた雪菜が隣の、四ッ谷に話しかける。

 

「あの『code:1059(ヘブン)』というカード……

あれが切札の様に見えるが、どうにもマナゾーンにあるカードとシナジーが薄い気がする。

あのカード自体は知っている。相手の墓地の呪文を唱える能力を持っている為、あのような超次元とGRを同時に使用するデッキは頷ける。

ただ単に、アドバンテージを稼ぐための物なのか?

それともサンジェルマンの孫娘が純粋に、事故を起こしているだけなのか……」

眼鏡を触りながら四ッ谷が、つぶやいた。

 

 

 

 

 

「へぇ~、ソウゴは次のターンに賭けてるんだ。

偶然だね!ニニィは次の次の次に賭けてるんだよ」

 

『はぁ?一体何を言ってるの?』

コートニーが理解できないとばかりに、声を漏らす。

 

「じゃ、終わりを呼ぼっか?」

ニニィが自身の手札をマナに置く。

 

「手札のカード、『聖霊龍騎(せいれいりゅうき)サンブレード・NEX』を自身の効果で召喚コストを2軽減するヨ~

そうした場合、ソウゴは自身の山から盾を一枚増やせるけど、どうすル?」

ニニィの場に2本の巨大な剣を持った、龍が姿を見せる。

 

「俺は――」

 

『当然貰うわ!』

想護の意見を遮り、コートニーが口を開いた。

 

「盾、追加でイイ?」

 

「あ、ああ、もともとその気だったし」

想護の決定で、盾の枚数が一枚増える。

 

(一体何の積りなんだ?わざわざ相手の盾を増やすなんて、そこまでして一体何を考えているんだ?

呼び出したからには、意味があるハズだ……)

 

「サンブレード・NEXの効果発動だヨ!

このカードはバトルゾーン出た時、手札を一枚捨てる。

そして、カードを2枚ドロー!サンブレードで攻撃時、手札から革命チェンジ!」

 

 

 

「革命チェンジですって!まさか、ドギラゴン剣!?」

雪菜が以前の戦いを思い出し、声を荒げる。

 

「いや、たった今彼女の捨てたカード……

場合によっては、もっと危機的状況になり得る」

 

「え?」

 

 

 

『色は赤と白、バスター?ヘンザ?それともダンテ?』

コートニーが革命チェンジ先を警戒する。

サンブレードが大剣を振り上げた時、大地から巨大な植物のツタがその身を覆った。

そして――

 

「ぶっぶー、全部ハズレー!

ニニィが呼び出すのはー、この子ー!!

D2M2 ドグライーター」

 

『ぎゃぁおおお!!』

呼び出されたのは、食虫植物を思わせる歪なドラゴン。

片やデータの集積体、片や変異した植物の怪物。

2体の異質なドラゴンがニニィのバトルゾーンにならんだ。

 

「ドグライーターの能力発動~

手札のカードを一枚捨てて、墓地からD2フィールドを展開!!」

 

「D2フィールドだって!?」

 

「異なる世界を繋ぐ扉たちよ、今こそここに集え。

生と死を超えよ。

次元を超えよ。

データの海を越えよ。

未来を超えよ。

全ての世界を繋ぐ力よ、ここに集まれ!!!

展開!!D2フィールド!!『並替と選択の門(ソーティング・ゲート)』!!」

 

「なんだ、一体なんなんだ、このカードは!?」

想護の目の前、4つの巨大な扉が姿を現した。

 

「カウントダウンだよ。ソウゴがニニィに負けるまでの。

さぁ、耐えて見せて?抗って見せて?

4つの世界を繋ぐ扉に、ね」

ニニィが再度心底楽しそうに、笑みを見せた。

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