さて、ストレンジャーファーストコンタクト編はここまでです。
次回から、詳しくストーリーが語られる予定。
想護の目の前、赤いジャケットの男が肩を揺らす。
最初は小さく、しかし次第にその揺れは大きくなっていく。
「くか、くひひ、くかかかかかかか!!あ~っはっはっは!!
ひぃっひ!ひぃっっひっひっひ!!ひゃははははは!!
圧倒!!圧倒的!!圧倒的すぎる軍勢だな!!」
男 手札1 マナ6 盾4
異様な色の宇宙の中心に立つ男の前には、エイリアンクリーチャーが4体。
一体はこの状況を作り出した、多色のドラゴン『天下統一シャチホコ・カイザー』
死んだ仲間の魂を使い、超次元ゾーンからクリーチャーを呼び出す能力を持つ。
二体目は超次元クリーチャーとなったシャチホコ・カイザー、『激天下!シャチホコ・カイザー』こいつはターンの初めに墓地からコスト3以下のクリーチャーを呼び出す能力を持つ。
三体目は『エイリアンマザー』自身のエイリアンクリーチャーが破壊される時に、代わりに破壊を肩代わりする力を付与させることが出来る能力を持つ。
そして最後に残るのは、全身が真っ赤な6本腕のドラゴン。『レッド・ABYTHEN・カイザー』が鎮座している。
コイツには、バトルゾーンに出た時の能力も、仲間を蘇生する能力も、攻撃したときに相手を妨害する能力も持っていない。
だが、相手に攻撃以外で『選ばれた』瞬間、相手のマナをすべて破壊する能力を持っている。
これは、事実上選ぶことが出来ないという事である。
ほおっておけば、無限にクリーチャーを呼び出す能力に、選ばれない能力、更に破壊を肩代わりする力まである巨大な軍勢。
己の勝利を確信した男の口角が吊り上がる。
「なぁ、サレンダーしちまえよ……こんなんじゃお前に勝ち目なんてねーだろ?」
強者ゆえのおごりか、男がニヤついてこちらを見る。
「まだだ、俺の友達に手を出したお前を俺は絶対に許さない!!」
想護 手札0 マナ7 盾5 クリーチャー『
「粋がるねぇ!いいぜ、あがいて見せろよ!!
次のターンがお前の人生ラストターンかもなぁ!!」
男の言葉に、想護が息を飲む。
男のバトルゾーンのクリーチャーは4体。
シャチホコ・カイザー、エイリアンマザーはシールドを2枚奪う
超次元のシャチホコ・カイザーは通常ブレイクだが、それでも想護の盾は全て割られてしまう。
そして、トドメを指すのは選んではいけないクリーチャーの『ABYTHEN』。
2度目の攻撃までに、トリガーが引けなければ想護は敗北する。
手札は0、このドローで何らかの手段で男のクリーチャー処理出来るカードを引けなければ勝利は遠くなる。
ごくり――
想護は息を飲んだ。その音は不思議なほど想護にとって大きく聞こえた。
そして、静かにデッキの上に手を乗せる。
「俺のターン!!ドロー!!」
想護の手札に来たカード、それは……
「っぅ!…………ガイゲンスイをマナゾーンへ…………」
手札も、バトルゾーンのクリーチャーも無い想護にはそれしかできなかった。
たったそれだけが、今の想護に出来た唯一の事だった。
想護 手札0 マナ8 盾5 バトルゾーン0
「んだよ……オメェ!魂持つカードの所有者だろ!?
んだよ……んだよ!なんなんだよ!!
はーっ!こいつはトンだ期待外れだ!!
少しはあがくと思ったんだが、こんな下らねぇ終わりかよ……」
「くそっ……! くそぉ……!」
悔しさのあまり、想護は拳を握りしめた。
「もういい。死ね、ガキ」
男のターンが始まった。
男は、超次元のシャチホコ・カイザーの能力で墓地から熱湯グレンニャーを呼び出した。
「ドロー……つまんねー、戦いだぜ。
進化、天下統一シャチホコ・カイザー。
いけ」
進化クリーチャー。それは召喚酔いがないクリーチャー。
男はさらに、詰めを深く高めてきた。
パリィン!!
「ぐぅああああああ!!!」
シャチホコ・カイザーの爪が想護に襲い掛かる。
5枚あるシールドの内2枚が砕けて想護の手札に加わる。
「トリガーは!?ない!!」
「だろうな、お前、
再度襲い来るシャチホコ・カイザーの爪。
「うぁああああああ!!!」
3枚残ったシールドが最後の1枚になる。
「トリガー……トリガー来い!!来てくれぇえええええ!!」
超次元のシャチホコと、エイリアンマザー。
その2体を除去出来れば、ABYTHENカイザーの攻撃は受けきれる。
その2体を除去できるカードは確かに存在する。
それは『古代遺跡 エウルブッカ』。
タップされていないクリーチャーを2体までマナにおけるトリガー。
逸れさえひければ、この状況を生き残ることが出来る――!!
だが――
「そんな……」
想護の手に来たのはコートニーとボアロジーの2枚。
探し求めたカードが、今になって漸くやって来た。
しかし、それはあまりに遅すぎる到着だった。
「な?言ったろ。お前は『持ってない』ってよ」
ABYTHEN・カイザーを持つ男はそう言い放った。
この状況。たとえ最後のシールドがトリガーだとしても、ABYTHEN・カイザーを除去しても意味など無い。ただ敗北するのが1ターン遅れるかどうかの違いに過ぎない。
「エイリアンマザーで最後のシールドを攻撃!!」
ゆっくりスローモーションに成る世界で、想護は宙に浮かぶ犠牲者たちをみた。
その中に、友人の中埜の姿を見つける。
彼を探してここまで来た。彼のデッキをバカにした男が許せなくて、デュエルを受けた。
だがここまでの様だった。
「ごめんな、中埜――」
想護の最後の盾が破られる!!
「行くぜ!!ABYTHEN・カイザーでトドメだ!!」
6本腕のドラゴンが宙を舞う!!
想護の命を奪おうと、その巨大な口を開く!!
『まだ、諦めるんじゃないわよ!!このバカ想護!!』
手札のコートニーが、姿を見せエイリアンマザーの攻撃で吹き飛んだ最後のシールドのカードを手にする!!
『悪いけど、最後の1枚はトリガーよ!!』
「はぁ?クリーチャーがカードを使うのかよ?
いや、今更どんなトリガーが来ようと、関係は無いだろ!!」
『それはどうかしら?時間を止めなさい!!「終末の時計 クロック」!!』
「なにぃ!?クロックだと!?」
男が驚愕し、バトルゾーンに現れるのは一言でいえば、時計のコスプレをした男。
体の中心から、長針、短針の2本の針が生え、手のひらの浮かんだ時計の様な物を握りつぶすと時が止まった。
「ぬぅ!」
クロックはその名の通り、時間を止めるクリーチャー。
トリガーした瞬間、そのプレイヤーの残りの行動は全てなかった事に成る。
つまり、あるはずの無かった想護のターンがもう一度始まるのだ。
男 手札1 マナ7 盾4
「ちぃ!テメェのターンだ!!さっさと始めろ!!」
男の怒号により、放心状態だった想護が正気に戻った。
「クロック……そうだ、すっかり忘れてた……」
想護は自身が恐怖のあまり、このカードを忘れていたことを思い出した。
このカードは中埜が3枚目、4枚目を欲しがっていたカードでもあり、もともとは彼が使っていた青単に影響され想護も真似して入れたカードであった。
『まさか、アイツが守ってくれた。なーんて、メルヘンチックな事、言わないいわよね?』
手札のコートニーが、ジト目でこっちをにらんでくる。
「いうわけ、無いだろ!?男だぞ相手!!」
『どーだか?想護があまりにモテないから、手短な男で済ませようとしないか内心かなりヒヤヒヤして……』
「やめろぉ!!」
「うるせぇ!!俺はさっさと始めろと言ったんだぜ!!
今度こそ、テメェのラストターンだ!!
お前も、アイツらの仲間入りするんだよ!!」
想護の言葉を男がかき消す。
そう、想護のピンチは未だに終わらない。
盾は0、クリーチャーも0。
それに対して相手のクリーチャーは5体。
圧倒的不利な状況。生き残るのはほぼ絶望的な状況。
「ふぅー……わかってる。このターンアンタを倒さないとヤバイんだよな」
破壊されて時、仲間を呼ぶクリーチャー。
破壊を肩代わりさせれるクリーチャー。
相手に選ばれる事の無いクリーチャー。
それらが、男の勝利を絶対的な物にしている。
「だが、突破できないことは無い」
想護が息を吸う。
心を落ち着け、デッキに手をかける。
「こっからはギャンブルだ……俺かお前か、勝利を手にするのはどっちだぁ!!
ドロー!!」
想護がデッキの上からカードを引く。
そして――
『ようやく来たみたいね』
コートニーが微笑んだ。
「まず俺は、ボアロジーをマナゾーンへ!!
これで俺のマナは9!!
そして、来い!!俺の相棒 薫風妖精 コートニー!!」
バトルゾーンに出現するのは想護の相棒にして、男が『魂を持つカード』と呼んだコートニー。
『さぁーて!漸くバトルゾーンに出てこられたわ!
散々でかい口きいてくれた、その見た目通りデカい口したドラゴン共にヤキいれてやるわ!!』
酷く挑発的な、ことばを発してコートニーがバトルゾーンに降り立った。
その力を発して、マナが5色に輝きだす。
「はっ!そいつは、序盤のマナチャージ要因だぞ?
今更なんの意味がある!?」
「あるに決まってるだろ!!
俺のデッキのカードをバカにするんじゃない!!」
再度タップされる7つのマナ。
それは、このターン想護が引いた切札のマナコスト。
「闇を纏いすべてを切り刻む悪魔の龍よ!!
戦場をその力で恐怖に染め上げろ!!
召喚!!凶英雄 ツミトバツ!!」
バトルゾーンに姿を見せるのは、トラを2本脚にしたようなドラゴン。
模様にも見える爪を鳴らし、その瞳に今日の獲物を品定めする。
『いきなさい!トラ!!』
『ラァアアアアア!!』
ツミトバツが全身から、闇を噴き出しながらシャチホコ・カイザーに躍りかかる。
「ハァン!そんな能力、セイバーして……」
『きぃしゃぁああああ!!!』
シャチホコ・カイザーを犠牲にもう一体のシャチホコ・カイザーを守ろうとする。
だが……
「ぎゃぁあああ!!」
「ぐぅああああ!!」
男のクリーチャーが全て苦しみ始める。
それは一体だけにとどまらない。
決して触れられる事の無いハズの、ABYTHENカイザーまでもが体が砕け始めた。
「なぜだ!?セイバーがあるはず、ABYTHENカイザーは選ばれるはずは!!」
目の前でボロボロになっていく、自身のクリーチャーたちを見て男は焦る。
こんなはずはない。
こんな、事はあり得ないとばかりに冷や汗をかく。
『知らないの?ツミトバツはね、マナゾーンに闇のマナが7つあればアンタのクリーチャー全部のパワーをマイナス7000するのよ』
「そんな、馬鹿な!?」
「消え去れ!!エイリアン共!!」
想護の言葉が合図となり、男のバトルゾーンから闇がはける。
そしてそこには、無敵を誇ったエイリアンたちはみないなくなっていた。
「俺のターンは終了。形勢逆転、だな?」
想護 手札2 マナ9 盾0
「まだだ、まだ俺は……」
「やめとけよ。あんた、持ってないから」
想護はさっき男に言われた言葉を、そっくりそのまま返した。
その言葉を体現するように、男は……
「ち、畜生!!こんなモン!!」
男は手札のカード、シャチホコカイザーと、ファルピエロを叩きつけた。
進化元が居なければ、シャチホコカイザーは無力な存在となる。
「あ、ああ……ああ……」
気力を失った男は、ひざをついた。
そして次の瞬間――
『終わりね、あんた』
目の前に立つのは、コートニー。
その背後に立つのはイメンブーゴ。仲間を呼び、すべての盾をブレイクした様だ。
男のシールドは全て叩き割られ、トドメをさすばかりとなっている。
『あの犠牲者たちを解放しなさい。
そうすれば、今回だけは見逃してあげるわ』
「させるか、させるかよ……!!」
男が落ちたシャチホコカイザーを拾う。
『な、あんた!?』
「こい、来いよぉ!!」
シャチホコカイザーを空中に投げた瞬間、空が割れた。
一瞬シャチホコカイザーが割ったのかと思ったが、そうではない事が分かった。
『なにアレ……』
割れた空、そこからはヒトガタのクリーチャーたちが大の字に成って球体になった、巨大な物体が姿を見せたのだった。
その球体はシャチホコカイザーを取り込み、飲み込んだ。
『シャチホコカイザーを餌にアイツを!?』
「お前の相棒だろ!?なんてことを!!」
「さぁてぇな!!負けた雑魚に興味はねーよ!!
予定変更だ!!アイツを使ってテメェらごと飲み込んでやらぁな!!」
男はそう言って、自ら開けた穴に飛び込んでいった。
『ぐぅおオオオオオオ!!』
怪物は、こちらの存在に気が付きこちらに向かって落下し始める。
『逃げるわよ、想護!』
「逃げるっていったって……どうやって、何処に……」
「こっちだ!!こっちにこい!!」
慌てるしかない状況で、一人の男の声が響いた。
白地に水色のラインが走ったコートを身に着ける男が、扉から手招きをしている。
扉の外には、元の風景が見える。
『ああ、もう!怪しいけど、アイツを信じるしか、無いわよね!!
行くわよ、想護!!』
「まて、コートニー、中埜がまだだ!!」
そう言って想護は扉の反対方向、空中に浮かぶ中埜の所へ向かって走り出した。
「やめろ!!自殺行為だ!!」
「こいつを助けるのが、目的だったんだよ!!
今更引けるか!!」
ひび割れ行く空間、その中で想護は中埜に向かって走り出した。
『バカ!戻りなさい、想護!!』
それとほぼ同時に、男が作った空間が爆発した。
「間に合わなかったか?」
先ほどのコートの男が、周囲を見回す。
「いや、なんとかなったさ……」
ショップの床に倒れていた、想護が気絶した中埜を肩に起き上がる。
「そうか、まずは生存おめでとうと言おうか。黒札 想護」
「あんた、なんで俺の名を?」
男が発した自身の名に、想護が驚く。
「俺の名は、四ッ谷。
お前と同じ、魂持つカードを所有する者だ」
男、四ッ谷はそう言った。
数か月前から、プロットは出来ていたんですが……
四ッ谷にミラダンテ使わせる予定が、まさかの殿堂に……
すこし、ストーリーを修正しましたね。