D-クロニクルズ   作:ホワイト・ラム

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さて、投稿ですね。
今回は自分の好きなカードをたくさん活躍させました。


その少女、不機嫌。

学校の終わり、放課後に成って想護が帰宅を急ぐ。

靴を履き替えた時、声が掛かる。

 

「想護クン――今日、部活行かないのでありまする、か?」

同じ卓上ゲーム部の先輩である藤御門が話しかける。

相変わらず、病的なまでに痩せた長身の影のある男だ。

 

「あ、先輩。すいませんちょっと行く所が有って……

実紅先輩にはよろしく言っておいてくれませんか?」

 

「部長サンに?しかたありますりませんな……

まぁ、上手くいっておきまする。

想護クンは心配なされぬよう――」

 

「ありがとうございます!」

相変わらず、何処で覚えたのか分からない公家っぽい口調をする先輩に見送られ走り出す。

そのまま自転車で自宅ではなく、駅の一角へ。

駐輪場に停めた後、バス停に向かう。

 

「今なら、まだ間に合う……よな?」

ちらりと携帯の時刻を見て、想護が話す。

 

『間に合うは間に合うけど……本当に行くの?』

想護の後ろに、想護にだけ見えるクリーチャー、コートニーが浮かび上がる。

 

「行くよ。中埜は助かったけど、まだまだ分からない事だらけなんだ。

知らないままって言う訳には行かないからさ」

そう言って、想護は数日前の事を思い出す。

 

『俺の名は、四ッ谷。

お前と同じ、魂を持つカードを所有する者だ。

事情を話したいが、今はそれどころじゃないな。

ここへ来い。平日6時までなら時間を用意してやる』

四ッ谷と名乗った男は、一枚の紙を渡してその場から去っていった。

想護は助けた中埜を病院に送った後も、ずっとそれについて考えていた。

 

「魂を持つカード……」

想護が思うのは、先日襲撃してきた男も言っていた単語『魂を持つカード』。

男曰くコートニーがそうらしい。

そして、あの男の持っていた、異様なまでの凄まじい力を見せたシャチホコ・カイザーもおそらくだが、そうであろう。

 

『次はー、神独(しんどく)図書館前ー、神独図書館前ー』

 

「あ、降ります!!」

想護が慌てて、ベルを押しバスを降りた。

 

『ここがあの男の寄越した紙に書いてあった場所?』

 

「ああ、そうだよ」

想護がポケットの中

神独(しんどく)図書館。想護が暮らす街の隣にある図書館で、古く多くの資料を持ち、カフェなどが併設されている中規模の図書館だが、想護にとってはあまりなじみのない場所である。

 

「……う」

扉を開けた想護が初めに感じたのは、図書館独特の閉塞感。

長くいると息が詰まるような、いかにも好きになれないという感じだ。

 

「来たはいいけど……どうすれば良いんだ?」

約束の6時までまだ、13分程度時間がある。

館内を歩いて、四ッ谷の姿を探す。

 

マンガ、歴史、心理、地理、小説、児童文学、図鑑、絵本、更にはカフェテラスと歩いてみたが、一向に四ッ谷の姿は見つからない。

 

「……相手が渡す紙間違えた可能性?」

 

『タダ、単純に想護がバカにされただけじゃない?』

 

「うぐっ!?」

想護が少しだけ思い始めていた事で、図星を突かれる。

 

「あの、図書館では大きな声での会話はご遠慮ください」

 

「う、ごめんなさい……」

想護を注意するのは、背丈の小さな少女。

眼鏡をかけて、長い髪を揺らしその手には分厚い本を何冊も抱えている。

身を包むのはここら辺では賢い事で有名な私立中学校の制服だった。

一目で分かる、如何にもな文学少女だった。

 

『はぁ、たまにいるのよね~、こういう「自分賢いデス」アピールするガキって。

ま、こんなのは中学当たりで、先輩にシメられて泣きを見るのよね』

注意された事に、いら立ちを覚えたのか、コートニーが悪態をつく。

 

「低俗なクリーチャーは、節度を弁えないので嫌いです」

 

「ああ、ごめんな――――え?」

反射的に謝ろうとした後に、想護がその異常性に気が付く。

この子は、たった今、()()()()()()()()()反応して見せた。

 

「四ッ谷さんの紹介の方ですね?」

眼鏡の下、少女の瞳が想護とコートニーを捉える。

 

「な、君が――」

 

「私の名前は倉科(くらなし) 雪菜(セツナ)。以後お見知りおきを――

もっとも、今日限りで会う事はないかもしれませんが……」

雪菜が眼鏡を触る。

 

 

 

 

 

「こちらへ――」

雪菜に案内されて、図書館の一角へと足を進める両者。

図書館の壁に併設された本棚の前へ座る。

そして、本棚の一番下の一冊分空いた隙間に、自身のポケットからカードを取り出し本に挟んで、その一冊分空いた空間に差し込んだ。

 

ずず――ずずず――

 

僅かな軋みを発して、本棚が横にズレ向うへつながる階段が現れた。

 

「なんか、特撮の秘密基地みたいだ。わくわくする」

 

『相変わらず想護は考え方がガキね。一体今何歳よ?』

 

「お静かに、ここは図書館です」

再度の注意が雪菜から飛ぶ。

想護は居心地の悪さを感じながら、扉をくぐった。

白い階段を下りて地下へと進んでいく。

より強い閉塞感に、想護がなんだか気分が悪くなる。

 

「うへぇ……なんか、気分悪い……」

 

「そうですか」

想護の言葉を聞き流し、雪菜が行き当たりの扉に手をかける。

そこは丸い部屋に成っており、7つの扉が見えた。

部屋の中央には絨毯とソファとテーブル。

何処となく、リビングの様にも思えた。

 

「私の後ろの扉。その向こうに、四ッ谷さんが居ます。

けど――私には、貴方たちが四ッ谷さんに会っても意味が無いと思う。

だから、私は独断で貴方たちをテストする」

雪菜はソファに腰かけ、一冊の本を開く。

そこにはデッキが治められていた。

 

『本型のデッキケース?マジ?バッカじゃないの?』

明らかに機能性を無視した道具にコートニーがバカにする。

 

「あ、こら!」

 

「構いません。コレは私の趣味です。

理解の無いクリーチャー風情が勝手に言ってるだけです」

雪菜の顔がひきつっている。

横を見るとコーカサスも、いらだった表情をしている。

 

(あ、この二人相性悪いぞ)

想護が何かを言おうとする前に、雪菜がデッキを構える。

 

『想護ォ!デッキを出しなさい!この鉄面皮に吠ヅラかかせて、やるんだから!!』

 

「来なさい。教養の無いケダモノ」

想護がデッキを取り出した時、再度光に包まれる。

 

「ここは――」

目を開けると、想護の周囲にはジャングルが広がっていた。

それは否応なしに、先日の男との戦いを思い出させるものだった。

 

「なるほど、それがアナタの世界と言う訳ですね?」

雪菜が想護のデュエルフィールドを見て、声をだす。

 

「そっちは、それが君の『世界』ってやつか?」

雪菜が立つデュエルフィールドは本の山だった。

大量の本が積み上げられ、それこそ異様な量が積み上げられ、まるで摩天楼の町を見ている様な気分に成る桁外れの本の山だった。

 

「先攻は頂きます――マナをチャージ」

雪菜がマナゾーンにトップ・オブ・ロマネスクを置く。

 

雪菜 手札4 盾5 マナ1

 

「ん?ドラゴンか――」

 

『確かにドラゴンだけど、あれは……』

想護、コートニー両名が雪菜のマナに置いたドラゴンに注目する。

デュエルマスターズにおけるドラゴンは、主役級のカードが多数在籍する種族だ。

無論、一枚でゲームエンドまで持っていけるカードも多い。

今、マナに置かれたカードは残念ながらそういった、タイプではない。

だが、マナゾーンに置くカード、文明の『色』を確保する色基盤としてとても重要な価値がある。

トップ・オブ・ロマネスクその一枚に、火、光、自然の3色のマナを宿す。

この時点で、雪菜のデッキには3色異常のカードが入っている事が分かる。

 

「ちらちらと人のカードをみて、相談ですか?貴方のターンのハズですよ?」

 

「あ、ああ……わかってる。ドロー。

キリューをマナにターン終了」

想護もお返しとばかりに、マナゾーンに火、闇、自然の3色を持つキリューを埋める。

 

想護 手札5 盾5 マナ1

 

「ドロー、水晶邪龍 デスティニアをマナに」

 

「デスティニア!?」

雪菜のマナゾーンに置かれたのはまたしてもドラゴン。

だが問題は色にある。

デスティニアの持つ色は闇と水の2色。

先ほどのトップ・オブ・ロマネスクの3色と合わせると、雪菜のマナゾーンにはすべての色のマナがそろった事に成る。

全ての色のマナを使った戦い方。それは想護も非常に知った戦い方だ。

 

刹那 手札4 盾5 マナ2

 

「5文明を揃えるデッキか……やりにくいな……

俺のターン!!手札のガイゲンスイをマナにおいて、薫風妖精コートニーを召喚!」

想護のバトルゾーンに、想護の相棒のコートニーが降り立った。

そしてその能力により、マナの色が5色に輝いた。

 

『全く、5色デッキとか、真似してんじゃないわよ!!』

 

「真似?誰がどんなデッキを使おうが関係ないハズです。

まぁ、そのデッキは貴女の能力に頼った『偽装』に過ぎないんですが」

 

『言ってくれるじゃない……!』

ギリリとコートニーが歯ぎしりをする。

 

想護 手札4 盾5 マナ2

 

「さて、5色揃えば、やる事は一つですね」

 

「ああ、そうだな」

 

「私は呪文、フェアリー・ミラクルを発動」

想護も愛用する呪文、フェアリー・ミラクル。

マナゾーンに5色の文明が有ることを条件に、山札から2枚マナに置く加速呪文。

 

刹那 手札3 盾5 マナ5

 

「俺も行かせてもらうよ。フェアリーミラクル。

山札から2枚をマナに、けど――」

想護もマナを増やし、これで5マナ。

だが、刹那の方が先攻という特性上、1ターン先に動く事が出来る。

更にコートニーを召喚していない分、手札の消費が一枚押さえられている。

互角に見えて、このデュエル。雪菜の方が一歩だけ有利になっている。

 

想護 手札3 盾5 マナ5

 

「さて、始めますか――マナをチャージ。

呪文、ジャックポット・エントリー」

 

「ジャックポット!?」

雪菜の唱えた呪文は6コストの呪文。

その呪文は、少し前に流行った強力な呪文で――

 

「ジャックポット・エントリーの効果でマナゾーンのドラゴンの数だけ山札を見ます。

私のマナにあるドラゴンは、トップ・オブ・ロマネスク×2デスティニア、バベルギヌス、バルガライザーの5枚。

よって、デッキの上から5枚を確認」

雪菜のデッキが5枚めくられる。

そして、その中の一枚を指さす。

 

「確認した中から、コスト8以下のドラゴンをバトルゾーンに呼び出せる。

私は…………ボルメテウス・ブラック・ドラゴンをバトルゾーンへ!!」

 

『ギィヤァオオオオオオォオオオ!!!』

雪菜のバトルゾーンに、背中に砲門を備えた黒ずんだ鎧を身に纏った漆黒のドラゴンが降り立った。

 

「ボルメテウス……ブラック!!」

 

『ギィガァアアアアアアアア!!!』

雪菜のデュエルフィールドの本を叩き潰し、口から炎を吐いて暴れる。

 

『ちょっと!?これ、やばいんじゃ――』

 

「うるさい!!ボルメテウスブラックの能力!!

コートニーを選んで破壊!!」

 

『ガァルルルルルル――ラァアアア!!』

ボルメテウスブラックが、背中のブラスターを発射し、コートニーを破壊する。

 

『この――トカげ―――――』

 

「コートニー!!」

 

『私は……はぁ、はぁ……ターンを、終了……です』

目に見えて異常を見せ始める雪菜に、想護が焦る。

 

雪菜 手札2 盾5 マナ6

 

「おい?どうしたんだよ!!なんか、何か様子がおかしいぞ!!」

想護が声をかけるが、雪菜は反応さえしない。

 

「あれが、いけないのか?

ボルメテウスブラックドラゴンが原因なのか?」

 

「そうだ」

想護の疑問に答えたのは、四ッ谷だった。

いつの間にか、想護のバトルフィールドの中に立っていた。

 

「雪菜は私が最初に見つけた仲間だ。

だが――彼女は上手く魂を持つカードを扱いきれない。

この様に、逆に振り回されてしまうんだ」

 

「そんな――」

 

「雪菜!!そのデッキの使用は禁止したハズだ!!

今すぐデュエルを中止するんだ!!」

四ッ谷の声が、デュエルフィールドの中に響く。

だが雪菜は首を横に振るばかりだ。

 

「ちぃ――すまないが、雪菜の相手を頼めるか?

こうなったら、最悪、雪菜が倒れるのを待つしかない。

時間を稼いでくれ。倒す必要はない。このままいけば自爆する。

時間切れを目指すんだ」

 

「わかった。俺はボアロジーを召喚!

マナをチャージ……よし!反撃のサイレントスパークが落ちたから、2チャージ。

ターン終了だ」

 

想護 手札2 盾5 マナ8

 

「わ、たしの――ターン!!

召喚!!スペルサイクリカ!!」

雪菜が呼び出したのは、クリスタルの体を持つドラゴン。

そのドラゴンの持つ能力は――

 

「墓、地のコス……ト7以下の、呪文を、唱え……その後、手札に!

来て、ジャックポッ……ト・エント、リ……!!」

再度唱えるのは、やはりジャックポット・エントリー。

マナのドラゴンが増えた事により、今度は6枚が山札の上からめくれる。

 

「来て……ボルメテウス……蒼炎、ドラゴン!!」

 

『きぃいいいいいいいいい!!!』

再度現れるのは、2体目のボルメテウス。

今度は青い鎧を身に纏った、赤いドラゴンだ。

 

「雪菜!!何を考えてる!!その2体を同時に使うなんて、自殺行為だ!!

今すぐ中断するんだ!!」

四ッ谷の表情が、更に鋭くなる。

ボルメテウス・ブラック・ドラゴン。

ボルメテウス・蒼炎・ドラゴン。

この2体からは、この前戦った男の持つシャチホコ・カイザーと同等かそれ以上の力をひしひしと感じる。

間違いなく、この2枚は――

 

「魂を持つカードってやつですね?」

 

「そうだ。雪菜のデッキには3枚の魂を持つカードが入っている。

だが、その力は大きすぎて雪菜には操り切れない。

無理に使えば、カードに意思を奪われ――」

 

「ブラックでシールドをブレイク!!

蒼炎で追撃!!」

雪菜の命令で、2体のボルメテウスが想護のシールドを4枚破る。

破られたシールドは通常手札に行く。

だがボルメテウスの名を冠すカードたちの前ではそうはいかない。

 

「シールド滅却」

 

「くそっ……」

想護の盾は手札に行かず、直接墓地へ送られる。

当然シールドトリガーも発動せず、手札も増えることは無い。

2体のドラゴンが吐く炎は、やすやすとシールドを焼き尽くす。

その炎は飛び火し、雪菜のデュエルフィールドすらも焼いていく。

 

「くそ、くそっ!」

想護は圧倒的ピンチに追い込まれている。

増えない手札。シールドトリガーを破壊するドラゴン。

このターンで決めないと、確実に次のターンでやられる。

 

「俺のターン!!

イメンブーゴを召喚!!能力でボアロアックスを装備!

マナゾーンから、マッカランファインを召喚!!マナ武装5でイメンブーゴをスピードアタッカーに!!

ダブルブレイク!!」

ボアロアックスを装備した、ボアロジーが雪菜のシールドを2枚割る。

 

「攻撃時に、マナゾーンから逆転王女プリンを!!

能力でイメンブーゴをアンタップ!!イメンブーゴで再度攻撃!!

マナゾーンから、ボアロジーをバトルゾーンに!!」

再度発動する、ボアロアックスの効果によりボアロジーがバトルゾーンから現れる。

現在、雪菜の盾は3枚。

イメンブーゴの攻撃で2枚、マッカランファインのおかげでスピードアタッカーとなった、マッカラン、ボアロジー、プリンの3体。

一体ならば、トリガーで除去されても、トドメまで行ける計算だった。

だが――

 

「シールドトリガー。カーネル」

 

「うぐ!?」

カーネル。それはブロッカーを持つトリガーのドラゴン。

そして相手を一体選び次のターンまで、アタックとブロックを封じる能力を持っている。

それは、想護の攻撃を完全に封じた事を意味していた。

 

「ボアロアックスを龍解……た、ターン、終了……」

 

想護 手札1 盾1 マナ9

 

「わ、私のターン……ボルメテウス、ブラックで最後のシールドを滅却!!」

想護の最後のシールドが滅却される。

これで、想護を守る物は無くなった。

 

「っ……!」

 

「蒼炎で――とど……」

 

ドシャ!

 

雪菜は、攻撃を指示する途中で倒れた。

四ッ谷の言う様に、『時間切れ』になったのだろう。

雪菜のてから、ボルメテウス・サファイア・ドラゴンがこぼれ落ちる。

それと同時に、デュエルフィールドが消えていく。

 

「雪菜……なぜ、こんな無茶を……」

四ッ谷が雪菜を抱きかかえる。

 

「これが、魂を持つカードと関わった者の末路だ。

何時か、君もそのカードを持つ限りこうなる。

カードに食われるか、カードを狙ってきた奴らに消されるか、そのいずれかだ。

今、そのカードをここで手放せ。

私が、君を読んだのはそれが理由だ」

四ッ谷が想護と、その後ろにたたずむコートニーに向かって言い放った。




最近ボルメテウスが、パックに収録されて上機嫌な私です。
もっぱら呪文の方ばっかり使ってますが……
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