蒼きヒーロー 作:プリズムフォレスト
変態な友人に彼女ができたらしい。
最初にそれを聞いた時、俺は我が耳を疑ってしまった。
あいつが。あの変態が。毎日毎日女性の裸についてしか考えていないような脳内ピンク一色の一誠が。
けれど、どうやらそれは本当のことのようで、今も一誠は俺たちに向かって鼻息を荒くしながらどれだけ自分の彼女が可愛いか力説していた。
「でな!俺の彼女、天野夕麻ちゃんって言うんだけどすっげえ可愛いの!おっぱいもデカイしスタイルも良い!」
嬉々として一誠の彼女らしい、その天野夕麻が写った待ち受けを見せつけてくる一誠。
……横では一誠と同じく変態で有名な松田が血の涙を流している。
「くそおお!なんでお前にそんな可愛い彼女が出来るんだよ…!変態のお前にいいい!」
松田がそう言った時、ここの教室にいる誰もが思ったであろう。お前が言うな、と。
俺の友人、一誠と松田は学園内で変態
「はぁ…で?なんでそれを態々俺に言いにきたんだ?」
「いやぁ…ちょっとデートプランとか一緒に考えてもらえないかなぁって…」
アハハ…と気まずそうに頬をかく一誠。
まあそのくらいなら手伝ってやってもいいが、生憎と俺には恋愛経験は皆無だ。力になれることなどあるだろうか。
「恋人とかいたことすらないから分からんが、一応協力してやるよ」
俺がそう言うと一誠は目を輝かせ、俺の手を握ってきた。
ええい気持ち悪い、俺は男と手を繋ぐ趣味などないぞ。
「ありがとな!
「まあ…あんまり期待はすんなよ」
「おお!貴方が神か…!」
▼▼▼
俺、元浜悠は転生者である。
よくある二次創作やライトノベルなどである、神様転生をさせられた者だ。
といっても、死んだ覚えもなく、神様にすら会ってないため神様転生ではないかもしれない。だが、もし神様が手違いで前世の俺を死なせ、ここの世界に転生させたのなら一発ぶん殴ってやりたい。
理由としては、なぜ転生先がよりにもよってパワーインフレで有名な『ハイスクールDxD』なのかということが一つ。アニメの世界に行けるのであれば、もっと平和な『ごちうさ』だとか『ゆゆ式』だとかに行きたかった。
それと、どうやら俺にも特典とやらがあるらしい。だが未だ内容は曖昧にしか分からず、
分かることは、『流◼︎サー◼︎◼︎へのアクセス権』という穴が空いた単語だけ。
まあ一先ず特典のことは置いておくとして。
転生したキャラが主人公の一誠や白龍帝であるヴァーリなどの主要キャラではなく、所謂モブキャラだったのは良かった。だって戦いたくないし、痛いの嫌いだし。
…欲を言えば、全く関係のない学校に通っているモブが良かったのだが。
「まあ…勝手に転生させるような身勝手な神だしな…」
まだ見ぬ神様にため息を吐きながら、校舎内を歩いていると何やら人だかりが。
確かあの二人は…リアス・グレモリーと姫島朱乃だったな。学園内にて美人で有名な二人だ。その誰もを魅了する容姿に、恵まれたスタイル。確かに皆んながこぞって美人というわけだ。
だが、彼女らは悪魔だ。
……もう一度言う。悪魔だ。
『ハイスクールDxD』の原作について、あまり…というかキャラの名前以外全くと言っていいほど覚えていない俺でもこの二人が【悪魔】という種族だったことだけは覚えている。
「……ま、モブの俺には関係ないわな」
二人をチラリと見た後、人だかりのため向かおうとしていた教室に遠回りしていかなくては行けないため踵を返す。
……その時、二人に見られていたことなど気づくはずもなかった。
▼▼▼
翌日。
色々と自分なりに調べて、最近の若者たちがよく行くデートスポットや流行りの服装などを一誠に伝えると涙を流しながら感謝されてしまった。
そしてどうやら一誠も一誠なりに考え、デートプランを昨日の内に完成させたらしい。
…あれ?俺、調べる必要あった?
やがて時は過ぎ、一誠が心待ちにしていた放課後。
一誠はホームルームを終えた途端、俺たちに挨拶をして小走りで教室を出て行く。
「なあ…なんで一誠に彼女が出来て俺たちには出来ないんだ…?」
「さあ?やっぱ顔じゃないの?あいつ黙ってればイケメンだし」
「くっそー!やっぱり世の中顔かよ!」
「ま、お前も変態な部分を直したら少しはモテるんじゃないか?」
「何!?それは本当か!?」
「…多分」
「おい!」
嘆きまくっている松田を適当に流しながら、先程満面の笑みで出ていった一誠のことを考える。
何か嫌な予感がする。
それはほんの少しの感だったが、なぜか気のせいだと割り切れない感だった。
「……よし」
尾行するか。
「くしゅん!」
「あれ?一誠君、もしかして風邪?」
「いやいや、大丈夫!」
元浜の杞憂など露知らず、一誠達は
一誠の予定では今頃お洒落なカフェで談笑でもという予定だったのだが、他ならぬ彼女のお願いだからと予定を変更してこの公園を訪れていた。
それにしても人が少なすぎる。
確かに今は日も落ちかけ、外の暗さは夜のそれになっている。
だが、それにしては少なすぎだ。
人っ子一人いない。それが、現状だった。公園へと向かう道のりも、公園へ入ってからも、この噴水のある広場まで来るまでも。
「ねえ一誠君」
「あ、え!どうしたの?」
急に話しかけてきた夕麻に対し、少しだけ不信感を抱きながら答える一誠。心なしか、周辺が薄ら寒く感じる。
「あのね…今日のデート、楽しかったよ」
「夕麻ちゃん…!うん、俺も楽しかったよ!」
「それでね…最後に私の言うこと一つだけ聞いてくれるかな…?」
上目遣いで問いてくる夕麻に顔を赤くする一誠。それに一誠は首を縦に振ることで答える。
「そっか…じゃあ、言うね…」
空気が変わる。
「一誠君」
夕麻の背中から黒い翼が広がる。
「————死んで」
次の瞬間、一誠は光輝く槍にその身を貫かれていた。
▼▼▼
「一誠ぇぇぇ!!!」
目の前で友人が貫かれ、思わず大声で叫んでしまう。
何か嫌な予感を覚え一誠の後をつけていたら、あの女が一誠の腹を槍で貫いた。
その非現実的な出来事が目の前で現実になっている。
「あらぁ?おかしいわね…確かに人払いの結界を張っていたのだけど…」
もう本性を隠す気もないのかこちらを薄く睨みながら近づいてくる。気づけば着ている服も制服から露出の多い服へと変貌していた。
「なんで…一誠を殺した…」
「邪魔だったからよ」
「……は?」
天野夕麻はそれがさも当然かのようにあっけらかんと答えた。
邪魔だったから殺した?ただ、邪魔だったから俺の友人の一誠を殺したのか?
「……おい」
それは、自分でも驚くほどの冷たい声。
一誠は、こんなクズのせいで殺されたのか。
何かが蠢く。
蒼く、輝く、ナニカが。
「何?貴方もどうせ死ぬんだし、最後くらい話を聞いてあげる」
【———————】
鼓動が早くなり、目の前が真っ白に染まる。
そして、それと共に頭の中に何かが響いた。
そうか、これが俺の————
「なあ、一つ話を聞いてくれないか?」
「ええ、いいわよ。早く話しなさい」
今なら分かる。
これほど神様に感謝したことなど今まで無かった。
ありがとう。これで、一誠の仇を取れる。
「…………死んでくれッ!」
【Trance code:
機械音と共に蒼い鎧が身を包んでいく。
それは美しいほどに蒼く、恐れを抱くほど鮮やかであった。
形容すれば、さながら夜空に光る"流星"のよう。
「覚悟しろよ天野夕麻。俺の友人を殺した報いだ。しっかり受け取ってくれよ?」
蒼き流星が、唸る。