悪辣な転生者に裁きを   作:フライング・招き猫

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 この作品に登場するスレードゲルミルには本来装備されていない武器がありますので御注意を。


第8話  クラス代表決定戦

 

 

 夏輝達がIS学園に入学して1週間が経過した。

夏輝達は今、IS学園の第1アリーナの観客席にいた。これから始まる1年1組のクラス代表を決める試合を見学するためだ。 観客席は1年生のみならず上級生も駆けつけており、満席となっていた。

 

 「夏輝様、どなたが勝つと思われますか?」

 

 黒江の問いに夏輝は

 

 「セシリアが2戦全勝で決まるだろう。」

 

 「兄さんも、そう思う?」

 

 「代表候補予備生で訓練機で参加の篠ノ之、専用機が与えられるものの素人同然の織斑、どう考えてもセシリアの優位は変わらない。」

 

 簪も同じ事を考えていたのか夏輝の考えに同意する。

 

 「あっ!セッシーと篠ノ之さんが出てきたよ。」

 

 本音の言葉通り、専用機ブルーティアーズを纏ったセシリアと訓練機打鉄を纏った箒が姿を表す。

 

 試合が始まると一方的な展開となった。 距離をとりライフルで狙撃していくセシリアに対して、刀だけを持ってガムシャラに突進する箒。 だが近づくことはかなわずセシリアのライフルで狙い撃ちにされていく。

 

 「珍しい、何時もなら飛び道具は卑怯とか、剣を使えとか、言っているはずなのに。」

 

 簪が戦いをみながらそう言う。

 

 「おそらく織斑先生に釘を刺されているんじゃないかな。あれでも代表候補予備生だし、対外的問題で。」

 

 何時もの言動を公の場で・・・しかも世界各国から生徒が集まっているIS学園のアリーナでされると不味いと千冬も思ったのだろう。

 結局、箒は成す術もなくセシリアに一方的にやられて負けたのだった。

 

 「圧勝でしたわね。しかも第3世代兵装を使うことなく。」

 

 「でもくーちゃん、使うことなくと言うより使う必要すらなかったんじゃない。」

 

 黒江の感想に本音がチャチャをいれる。

 

 「15分間の補給整備タイムの後に第2試合だね。兄さん、やっぱりセシリアの勝利は揺るがないよね。」

 

 簪の問いに夏輝は

 

 「まあ、あのセシリアが油断や慢心するとは思えないしね。ただ織斑の専用機というのが少し気になるんだよね。 学園に未だに仕様書が出されていないんだよね。」

 

 それを聞いて黒江が

 

 「それって学園の規約に違反してますよね。全ての専用機持ちは所持している専用機の仕様書を学園に提出するという。」

 

 「そうだ、だけど織斑のはまだそれに当たらないんだ。何故なら専用機が昼休みの段階ではまだ届いていなかったからね。」

 

 「ちょっと待って兄さん、まだ専用機が届いていなかったの?当日になっても?」

 

 「聞いた話だけど、専用機に不具合が見つかって最終チェックのスケジュールがずれたらしいんだ。試合前になって漸く届いたみたいなんだ。」

 

 簪の疑問に答える夏輝。

 

 「でも、それって最適化と一次移行間に合うのかな?」

 

 本音の言葉はもっともだ。普通ISの最適化と一次移行は最低でも30分はかかるものだ。セシリアと箒の試合が10分もかかっていない、そして補給整備タイムが15分、合わせても30分には満たない。

 即ちまだ終わっていないということになる。

 

 「終わるまで試合開始を延ばすのでしょうか?」

 

 「いや、アリーナの利用規約と試合規定の関係上、さっきの試合が早めに終わったとしても試合開始は延ばせない。」

 

 黒江の疑問に答える夏輝。そこに簪が

 

 「ということは、終わらない内に試合に出すと?」

 

 「何か小細工を弄して時間稼ぎしない限りはね。」

 

 夏輝がそう言った瞬間だった。

 

 『お知らせします。アリーナのシールド発生装置の点検の為に試合開始時間を5分遅らせます。』

 

 

 

 

 

 

 

 時間を戻してセシリアと箒の試合開始直前のピット。

漸く百春の専用機が到着したのだった。

 

 「お待たせしました。織斑百春君の専用機です。」

 

 倉持技研から来た女性職員が説明する。その女性に千冬が文句を言う

 

 「何故、こんなギリギリの納品になったのだ!」

 

  「織斑先生、それよりも最適化と一次移行の作業を急がないと。」

 

 真耶に言われて渋々引き下がる千冬。コンテナが開きISが姿を現す。

 

 「織斑、さっさと乗れ。」

 

 「は、はい!」

 

 百春は慌ててISに乗り込み背を預ける。 女性職員がタブレットを接続して作業を始める。

 

 「どれくらいで終わる。」

 

 「最適化と一次移行を合わせて30分程かかります。」

 

 それを聞いて千冬は

 

 「今から始まる第1試合の試合時間が30分、それに補給整備タイムが15分。何とか間に合うな。」

 

 無論千冬とて、箒が試合時間一杯戦えるとは思ってもいない。それでも半分位は持つだろうと思っていた。 射撃能力は兎も角、近接戦闘能力に関しては千冬も一目を置く腕前である。 ただし箒は武術を極めんとする者にとって必要な[心・技・体]のうち心を大きく欠いているので、一流になることはない。千冬もそれを認識しているからこそ、釘は刺しておいた。

 

 しかし、試合は千冬の予測を裏切り箒は10分も持たずに敗退してしまったのだった。

 どう考えても時間が足りない、そこで千冬は管制室にアリーナのシールド発生装置の点検を命じた。

 そしてギリギリで最適化と一次移行が終わり、百春のISが真の姿を現した。 だが、その姿を見て千冬は言葉を失った。全身装甲に加えて、背面部に装着された2つの巨大なドリル、角のようなものがついた頭部、あまりにも異質な姿故に。

 

 「な、なんなんだ・・・このISは?」

 

 「えーーと、スレードゲルミル? 何だこれ?」

 

 百春もまた戸惑っていた。てっきり白式だと思っていた専用機が全く違う物なのだから。

 ちなみに百春は前世においてロボット物には殆ど興味がなかった為に自分が今纏っているのが何なのか全くわかっていなかった。

 千冬は百春に武装のチェックをするように言おうとするが

 

 『まもなく試合開始時間です。選手はアリーナに入場してください。』

 

 アナウンスが入り断念する。 百春はカタパルトからアリーナに飛び出していく。

 

 「おい。何なんだあのISは! ふざけているのか!」

 

 「いえ!ふざけてなんかいません。あれが倉持技研の副所長が設計開発したIS[スレードゲルミル]です。」

 

 そう言って女性職員は仕様書を渡す。それを受け取り中を見る千冬。

 

 「スペックは確かに第2世代機を上回っているな。武装は・・・・・・・何だこれは?!」

 

 

 

 

 

 アリーナ

 既に補給と整備タイムを終わらせたセシリアがアリーナにいた。

 すると反対側のカタパルトから1機のISが飛び出してきた。その異様な姿に眉を潜めるセシリア。

 

 「織斑さん、それが貴方の専用機ですか・・・・何と言いますかジャパニメーションに出てきそうな姿ですわね。」

 

  (セシリアの言う通り多分、前世のアニメとかに出てたロボットだと思うけど俺知らないしな。ん?!)

 

 ディスプレイに武装一覧が標示される。

 

  ( アイソリッドレーザー、スプリットミサイル、ドリルインフェルノ、ドリルブーストナックル、斬艦刀・・・色々あるな。ブレオンの白式よりましか・・・零落白夜が無いのはあれだけど・・・・でも何で白式じゃ無いんだ?)

 

 百春がそんな事を思っていると、開始を告げるブザーが鳴るのだった。

 

 「さあ、いきますわよ!」

 

 セシリアはレーザーを百春に射ちながら空中を飛び回る。 百春は対応が遅れて次々と被弾していく。

 

 「くそっ!! なら、此方もお返しだ。アイソリッドレーザー!!」 

 

 「「「「「「「えっ?! えーーー?!」」」」」」

 

 スレードゲルミルの目の部分から放たれるレーザー。 

その奇抜な武装に当の本人も含めて驚く。

 肝心のレーザーはセシリアには当たらなかった。

 

 「何ですか!その奇抜な武器は!」

 

 「俺も知らねえよ! ならこれだスプリットミサイル。」

 

 「そのくらい問題ありませんわ!」

 

 ショルダーアーマーの内側から無数のミサイルが発射される。だが、セシリアは後退しながらミサイルを次々と迎撃していく。それだけでなく迎撃の合間を縫って百春にもレーザーを放っていた。百春の動きを牽制するために。

 

 「くそっ!! 何で当たらねえんだよ! こうなりゃ、斬艦刀!!!」

 

 ショルダーアーマーのパーツの一部がパージして剣の鍔に変形する。百春の目の前にくると柄が伸びる。だが、それは胸元から足下まで届く異様な長さだった。

 

 (何だ? えらく長い柄だな、斬艦刀って名前だけど槍なのか? えーーー?!)

 

  「な、何ですか?! そのブレードは!!」

 

 百春が柄をつかんだ瞬間、刀身が伸びるのだが、その刀身もまた、柄とかわらないくらいの異様な長さだった。 柄と刀身を合わせれば、百春の身長の倍はありそうだった。

 

 「こ、これが斬艦刀・・・・・な、なんて刀何だ?!」 

 

 スレードゲルミルのおかげか、巨大な斬艦刀を手にしてもバランスを崩す事なく立っていられた。

 

 「よし、いくぞ!! あっ?! 不味い!!」

 

 そう言うと百春は斬艦刀を左薙ぎの構えでセシリアに突進していく。 斬艦刀をセシリア目掛けて振り抜く百春、だがここで予想外の事が起きた。 

 握りが甘かったのか、柄から左手が外れて右手だけで振り抜くかたちになった。 しかし右手だけでは斬艦刀を制しきれず、右手からスッポ抜けそうになり慌てて右手で柄とを確りと握る。ギリギリ柄頭のところで止まるが、今度は体勢が崩れて斬艦刀の軌道が下向きに変わる。

 

 「きゃあ! そんな?! 間合いが伸びて軌道が変わるなんて!!」

 

 胴目掛けての左薙ぎを予測していたセシリアにとって、突然の出来事に回避が間に合わず左足に剣先が当たる。

 だが、これがセシリアに火をつけた。彼女は真剣に戦ってはいたが、全力で戦ってはいなかった。

 

 「行きなさい!ブルーティアーズ!!」

 

 4基のビットがセシリアの周囲に展開される。 それを見ても百春は

 

 (しめた! これで勝てる、セシリアはビットを動かしている時は動けない、その隙に!)

 

 斬艦刀を握りしめてビットの動きを注視する。だが、ここで待たしても百春にとって予想外の事がおこる。

 

 「はっ?! なんで・・・動いて・・・

 

 ビットと共にアリーナを縦横無尽に飛び回り百春を狙撃するセシリア。

  ビットとライフルからのレーザーは百春を襲う。

斬艦刀の刀身を盾にレーザーから身を守るも、防ぎきれずにダメージを負っていく。

 

 「こうなりゃヤケのヤンパチ! ドリルブーストナックル!」

 

 百春はスレードゲルミルの攻防遠近一体型の第3世代兵装のドリルブーストナックルを使う事にした。

 右側に装着されていた巨大なドリルがパージされて左腕に装着される。そして激しく回転するドリル、百春が左腕を突き出すと腕のパーツが肘の部分から離れ、セシリア目掛けて放たれる。

 

 「そんなの当たりませんわ!えっ?! まさか、ブルーティアーズと同じ思念誘導型?・・・・いえ、この反応は自動追尾システムですわね。」

 

 ドリルブーストナックルをかわしたセシリアだったが、避けたドリルが方向を変えてセシリアを追ってくる。 だが、その動きは機械的でありセシリアにとって容易く避けれるものであった。しかしセシリアは敢えてそれをギリギリで避け、更にビットでの攻撃を緩慢にする事で百春に追い詰められているように印象付ける。 そして百春はまんまとそれに引っ掛かるのだった。

 

 「よし!このまま終わらせる!」

 

 斬艦刀を盾にレーザーから身を守っていた百春は、斬艦刀から右手を離し、右手にもドリルを装着する。 

 ドリルが激しく回転すると、百春はそのままセシリアに突進する。

 

 「いっけぇぇぇぇーーーー!!」

 

 ドリルブーストナックルに追われて百春の方に向かってくるセシリアに百春の一撃が迫る、だがその百春の思惑とは裏腹に、それを見たセシリアは笑みを浮かべた。

 

 「かかりましたわね!」

 

 直前でセシリアは瞬時加速を使い、上に向かって飛び上がる。

 

 「き、消えた?! あっ!!」

 

 突然、目の前からセシリアの姿が消えた事に驚く百春、だがそれで終わりじゃなかった。セシリアの変わりにドリルブーストナックルが眼前に迫ってきたのだ。

 ドリルブーストナックルはコースを変える事無く、また百春は避ける事が出来ず衝突する。

 

 「ぐわぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!」

 

 そのままアリーナの地面に落下し衝突する百春。

 

 「スレードゲルミル、SEエンプティ!! 試合終了、勝者セシリア・オルコット。」

 

 百春は地面に衝突した衝撃で気絶したようで、全く動かなかった。 セシリアはそれを一瞥してピットに戻っていく。

 

  百春と箒の試合は百春が気絶したままだったので箒の不戦勝となった。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、セシリアは千冬に寮長室に呼び出されていた。

 

 「織斑先生、どういった御用件でしょうか?」

 

 「うむ、クラス代表の件だ。試合結果からみればオルコット、お前に優先権があるのだが・・・織斑にその権利を譲って貰えないだろうか?」

 

 「何故でしょうか?」

 

 「簡単な話だ。織斑は立場上、常に結果を残し続けなければならない。その為にはより多くの経験を積ませる必要がある。クラス代表という立場はある意味もってこいなのだ。」

 

 「確かにクラス代表になれば、試合は勿論の事、アリーナの使用やISの貸出等に多少なりとも優先権が与えられる事になり経験を多く積むことになりますわね。」

 

 「そう言う事だ。どうだ、譲ってはくれないか?」

 

 「織斑先生が、そう言われるのでしたら織斑君にクラス代表の座をお譲りします。」

 

 「すまないなオルコット、助かった。」

 

 「いいえかまいません。それでは失礼します。」

 

 そう言ってセシリアは寮長室を後にした。

 

 

 

 翌日、1組で百春のクラス代表就任が発表された。

 

 

 

 

 




 

 
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