悪辣な転生者に裁きを   作:フライング・招き猫

12 / 29
第10話  米中激突

 

 

 放課後

 鈴の事を頼むのを忘れていた夏輝と黒江は、SHRが終わると生徒会室に向かっていた。 簪と本音は一足先にアリーナに向かっている。 2人が生徒会室の前に着くと

 

 「どうして変更が認められないのよ!」

 

 部屋から怒鳴り声が聞こえてきた。何事かと思い、扉をノックしてから部屋に入る。

 

 「「失礼します。」」

 

 夏輝と黒江が室内に入ると、刀奈の仕事机に手をつき詰め寄るツインテールの少女の姿と、その少女を宥めようとする金髪の少女がいた。

 

 「凰さん、落ち着いて! それに私はクラス代表を代わってなんて言ってないし。」

 

 「落ち着ける訳無いでしょ! それに私がなりたいんだから代わってよ!!何でクラス代表の交代が認められないのよ!」

 

 「だから、落ち着いて説明を聞こうよ。」

 

 「説明も何も関係無いでしょ! たかがクラス代表の交代くらい返事1つで認めなさいよ!」

 

 興奮して支離滅裂となった鈴が刀奈に詰め寄るが、刀奈の背後に立っていた虚が1歩前に出て、

 

 「いい加減にしてください!」

 

 虚の低く凄みのある言葉に鈴の勢いが止まる。

 

 「ここは中国ではありません、IS学園です。中国では通じたかもしれませんが、ここでは貴女のわがままは通用しません。」

 

 虚はそう言うと、再び刀奈の背後に下がる。

 

 「さて、1年2組クラス代表のティナ・ハミルトンさんと転校生の凰鈴音さんでしたね。まず最初に原則としてクラス代表は任命されたら1年間は特段の理由が無い限り変更は認められません。その理由として、IS学園のクラス代表として任命された段階で国際IS委員会と加盟各国に、その生徒のプロフィールとデータが提出されます。」

 

 刀奈はそこで一旦言葉を切り

 

 「これは、クラス代表という立場はそれだけ注目を集める役目だと言うことです。その生徒の成績次第では代表候補生や企業代表もしくは国家代表の道が開かれる可能性があるからです。」

 

 そう言って刀奈は

 

 「ティナ・ハミルトンさんはアメリカ代表候補生序列第4位という肩書きをクラス全員から認められてクラス代表になりました。そのハミルトンさんに代わって貴女がクラス代表になる理由を述べてください。それにそれはクラス全員の総意なのですか?」

 

 「それは私が中国の代表候補生序列第4位で、更に専用機を持っているからよ!専用機の有無はアドバンテージとして大きいからよ!それにクラスの総意なんて必要無いわよ、私がクラスで1番強いんだから。」

 

 「それじゃあ認められないわね。だいたい専用機の有無は決してアドバンテージとして成り立たないわよ、それに貴女はハミルトンさんより弱いのだから。」

 

 「えっ?」

 

 一瞬何を言われたか理解できなかった鈴。だが、言われた言葉を理解した瞬間

 

 「あ、私が、こんな専用機を持っていないやつより弱いですって!そんなはず無いじゃないの、訂正してよ!」

 

 「なら試してみる?ちょうど第7アリーナを生徒会名義で予約してあるから模擬戦してみる?ティナさんは訓練機を使うけど、貴女は専用機を使ってもいいわよハンデで。」

 

 刀奈に言われますますヒートアップする鈴。

 

 「そんなハンデいらないわよ!私も訓練機でやってあげるわ!」

 

 「後で言い訳しない?」

 

 「しないわよ!そんなこと!!」

 

 「それじゃあ、決まりね。ハミルトンさんも良いかしら?」

 

 「そんな必要ありません、専用機を使ってもらっていいです。後で言い訳にされたく無いので。元々、彼女の申し出自体が気にくわなかったですし、何より専用機の有無で実力を低く見られるのも我慢ならなかったですし。」

 

 どうやらティナも鈴の態度が気にくわなかったようだ。 ティナの言葉を聞き、鈴は顔を真っ赤にしてティナを睨む。 

 

 「それじゃあアリーナに行きましょうか?夏輝達もいいわね。」

 

 「「わかりました更識会長。」」

 

 夏輝達の返事を聞き、初めて夏輝達に気づいた鈴とティナ。

 

 「あっ?! えっと、もしかして4組にいる二人目の男性操縦者の更識夏輝君ですか?」

 

 「そうだけど?」

 

 「初めまして、アメリカ代表候補生序列第4位のティナ・ハミルトンと言います。よろしくお願いします。」

 

 そう言ってティナが握手を求めてきたので、握り返し

 

 「こちらこそよろしく。」

 

 「へー、あんたが二人目ね~。百春と違って地味で平凡で弱そうな男。」

 

 鈴の言葉に刀奈と虚と黒江の顔つきが一瞬だけ変わり怒りの表情が出るも、直ぐに元に戻す。

 

 「そうだ、ついでにあんたも私と戦いなさいよ。百春の踏み台として相応しいか見極めてあげるから。」

 

 再び3人の顔に怒りの表情が浮かぶ。

 

 「凰さん、そこまで大口を叩くならハミルトンさんの試合の後で模擬戦をしましょうか夏輝君と。負けても文句言わないでね。」

 

 「ふん!代表候補生の私が素人に負けるはず無いじゃない。笑わせないで!」

 

 嘲る笑みを浮かべる鈴。

 

 「まあいいわ、それじゃあアリーナに行きましょうか。」

 

 そう言って生徒会室を出てアリーナに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第7アリーナ。

 夏輝達、更識関係者のみで訓練するために生徒会権限で特別に予約したアリーナだ。 そのアリーナの中央で専用機【甲龍】を纏う鈴と訓練機ファルコンを纏うティナ。

 

 『それではただいまより、ティナ・ハミルトンと凰鈴音の模擬戦を国際ルールに従って開始いたします。制限時間は20分です。 それでは試合開始!』

 

  鈴は青龍刀の双天牙月を両手に構えてティナに向かっていく。対するティナは右手にガトリングガンポッドを鈴に向かって射ちながら後退加速で距離をとる。弾丸は甲龍の装甲に当たり激しく火花が散る。

 距離を取られて双天牙月の届かない距離になった、ならばと瞬時加速で、ティナに向かっていく鈴。だが次の瞬間だった。 

 

 「これでも[バンバンバンバン]きゃあ?!」

 

 突然、甲龍の装甲のあちらこちらで爆発が起きて、弾き飛ばされる。 突然の事に鈴は何が起きたのかわからなかった。 一方管制室で見学している夏輝達は何が起きたのかわかっていた。

 

 

 「上手いね。凰さんがわからないように、小型の空中機雷を散布しながら後退加速で下がり自分の方・・・機雷のあるポイントに誘導する。」

 

 「それだけではありません。凰さんの目を機雷から欺く為に、ガトリングガンポッドの弾丸も火花が大きく散る物にしてあります。訓練機でありながらも、その性能差を感じさせませんね。」

 

 刀奈と虚がティナの戦い方を誉める。

 

 

 

 「クソッ! 嫌らしい手を使ってくるわね。本当ならクラス対抗戦まで温存しておきたかったけど、こうなったら仕方ないわ!喰らいなさい龍砲!!」

 

 甲龍の肩部ユニットの一部が開く。何かを予感したティナは左腕にバリスティックシールドを呼び出し構える。

 直後、シールドに衝撃がはしり後方に飛ばされるティナ。

 

 「へーー、初見で龍砲を防ぐなんてやるわね。でも、防ぐだけみたいね。ここからはずっと私のターンよ!」

 

 チャンスと思った鈴は龍砲を連射する。だが鈴は気づいていなかった、ティナがずっと何かを観察している視線を。

 

 

 

 

 「この試合、ハミルトンさんの勝ちだな。」

 

 夏輝の言葉に簪が

 

 「そうだね。でもあれで序列第4位だなんて、中国の代表候補生はレベルが低いの?」

 

 「彼女の技量は決して低い訳じゃ無いわよ。ただ、専用機という驕りと、相手が自分より格下と思いこんで慢心しているのが災いしているのよ。どちらにせよ相手の技量を見抜くのも代表候補生として必要なスキルではあるけどね。」

 

 簪の感想を聞いた刀奈がそう解説する。

 

 「どうやらハミルトンさんは凰さんの分析が終わったようですわ。」

 

 「狙いを~定める時には~視線が、そこにいくよね~。そして~射つ時に左の奥歯を~噛み締めるよね~。」

 

 虚が告げた後で、本音がそう言う。既に管制室にいる面々は鈴の癖を見抜いていた。

 

 「さて、鳳さんの癖はハミルトンさんも気づくとして、その後はどうするかな?」

 

 

 

 

 

 「ほらほらほらほら! 大口叩いていたけど、結局その程度? 専用機の力を思い知ったか!」

 

 (・・・・・さて、そろそろ良いかな。)

 

  ティナはシールドで龍砲の連射攻撃から身を守りながら観察して、鈴の龍砲を射つ時の癖を見抜いた。

 それを利用して避けるのは簡単だが、ティナはあえてその手段を使わずに別の方法で龍砲を無効化することにした。 まずは右手のガトリングガンポッドを一旦収納し、手榴弾を4つ程出して鈴に向かって投げる。 

 

 「グ、グレネード! クソッ!!」

 

 慢心で反応の遅れた鈴は、慌てて龍砲でグレネードを迎撃する。1つ、2つ、とグレネードを破壊する。

 

 ドガァーン ドガァーン

 

 だが、3つめは照準が合わずに外れて甲龍の左足の装甲に、4つめは間に合わず右手に持つ双天牙月に当たる。左足の装甲、そして右手の双天牙月が破損する。

 

 「きゃあ?!、双天牙月が!! えっ?」

 

 ドガァン ドガァン ドガァン ドガァーン

 

 だが、それだけで終わらなかった。突然鈴の真下で幾つもの爆発が起きて、土埃混じりの爆風が鈴を襲う。

 ティナが鈴の真下、アリーナの地面に向けて手榴弾を投げて爆発させたのだ。そして立ち込める煙と土埃が鈴の周囲を覆う。

 

 「視界が! 熱源センサーON、って何これ?!」

 

 周囲を煙で覆われた為に、視界が全く効かないので熱源センサーでティナの居場所を探知しようとしたが、煙自体がかなりの熱を持っていた為に全く役にたたなかった。鈴は直ぐにセンサーを切る。 この時、鈴は気づかなかった、甲龍の装甲に大量の土埃が付着したことを。

 

 鈴は下手に煙の中から飛び出さず、その場に止まる事を選んだ。 

 

 (恐らく、私が煙の中から飛び出してくるのを待ち構えているはず。なら、この場にとどまって逆に迎え射つ)

 

 鈴は龍砲の発射準備をする。だが、肩部ユニットの龍砲は空気の圧縮は行っていない。鈴とて馬鹿ではない、この状況で空気の圧縮をしても煙を巻き込んで、不可視という最大の利点を失う事を理解している。 

 だからこそ、あえて両腕の龍砲を起動して煙を巻き込んだ、囮として使う為に。

 

 やがて、煙がはれると鈴から少し離れた場所で2つのロケットランチャーを両肩に構えるティナの姿があった。 直ぐさま、鈴は両腕の龍砲を射つ。すかさず両肩ユニットの龍砲を起動させる。 だが、そこで鈴は気づいた。

 

 「かかったわね!これで・・・・えっ?! なんで!!」

 

 甲龍の装甲に付着していた土埃を巻き込んで色のついた圧縮空気に。 そうティナはこれを狙っていた、鈴の癖から予測して避けることも出来たが、あえてそれをせずに策を用いた。

 そして鈴は、その策に嵌った。 全く思いもしなかった事態に鈴は動揺する。 それが大きな隙を生んだ。

 

 「これで!」

 

 ティナは鈴に向けてロケットランチャーを射つ。 放たれたロケット弾は圧縮空気ごと、甲龍の両肩ユニットに命中し破壊する。 間髪入れずティナは射ち終えたランチャーを手離すと、ロケットランチャーを新たに呼び出して再び射つ。

 

 「キャァァァーーー!!」

 

 ロケットランチャーの直撃を受けた鈴はバランスを崩して地面に落下する。 落下の衝撃で一瞬意識が飛びそうになるも鈴は何とか堪えて、起き上がろうとする。

 しかし、そんな鈴に瞬時加速を使ったティナが迫る。

 

 「さあ、チェックメイト!」

 

 ティナはそのままキックを放つ。瞬時加速で威力の増した爪先部分の衝角が鈴の腹部に決まる。

 

 「グフッ!!」

 

 絶対防御が発動し、SEが一気に0になる。

 

 『甲龍、SEエンプティー。勝者、ティナ・ハミルトン!』

 

 ティナのキックを受けた後、鈴はそのまま地面に仰向けで倒れこむ。 絶対防御が発動して腹部への外傷や内臓への重大なダメージは受けなかったものの、衝撃は緩和することができず鈴は気を失った。 気を失った鈴は大事をとって保健室に運ばれることになった。

  ちなみに鈴は、キックを腹部に受けた影響で暫くまともに食事をすることが出来ないのであった。

 

 

 

 保健室

 30分程で意識を取り戻した鈴。保健医の診察で内臓に多少ダメージを受けているものの、他は問題無いと言うことだった。

 そんな鈴の側に2組の担当教諭であるレベッカ・ターナの姿があった。 既にレベッカは夏輝達から状況説明を受けていた。

 

 「さて凰、私はお前に言ったはずだよな。クラス代表の交代は認められないと。 なのに今度は生徒会に直談判とは何を考えている!」

 

 レベッカに叱られる鈴。

 

 「全く、転入早々問題行動ばかりしやがって。兎も角、クラス代表はティナ・ハミルトンで変更無し。その実力は体で理解しただろう。 昨夜の寮での騒ぎと今日の行動も含めて、反省文10枚の罰を与える。それからお前の専用機【甲龍】だがダメージレベルCで交換修理には最低でも1週間はかかるそうだ。既に中国には交換パーツの発注が行われている。」

 

 レベッカからそこまで言われて初めて鈴の顔色が変わる。 中国に交換パーツの発注がされていると言うことは、破損した理由も報告がされているという事になるからだ。

 

 「中国政府から言伝てを預かっている。今日19:00に連絡するそうだ。確かに伝えたぞ。」

 

 そう言うとレベッカは保健室を出るのであった。

 

 保健室を出て暫く歩いた所で、レベッカの前に千冬が姿を現す。

 

 「おや、どうしました織斑先生?」

 

 「・・・・・ターナ先生、凰に処罰を与えたとか?」

 

 「早耳だね・・・何か文句でも?」

 

 「・・・・・・それに中国政府にも報告したとか。」

 

 「専用機があそこまで破損した以上は、交換パーツの申請を中国政府にする必要があるからね。」

 

 「・・・・・・・・・・」

 

 「言っておくが、ブリュンヒルデの名前を使っても撤回は出来ないからな。」

 

 「・・・・・・・・・・・」

 

 「あんたは、自分がブリュンヒルデと呼ばれる事を嫌ってはいるが、無意識の内にそれを利用して様々な無理を押し込んできた。だが、この際に言っておくが、ブリュンヒルデというのは名誉称号であって、何の権力も権限もない。今のあんたは1、教師でしか無いんだ!」

 

 そう言ってレベッカは千冬の横を通りすぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。