悪辣な転生者に裁きを   作:フライング・招き猫

13 / 29
 
 
 前話にて内容に一部不備がありました。御詫びいたします。 
 
 



第11話  開幕クラス対抗戦

 

 

 寮の一角に、外国から来ている生徒や代表候補生達が自国と連絡をやり取りする為の特別部屋がある。

 そして今、その部屋の中には鈴の姿があった。 壁のモニターには髪をシニヨンで2つに纏め、青いチャイナドレスを纏った女性の姿があった。国際IS委員会中国支部管理官の黄春麗である。

 

 『さて、凰代表候補生。大まかな報告は学園側からされている。全く、貴女はいったい何を考えて行動しているのかしら?』

 

 春麗からの鋭い視線が鈴を射ぬく。

 

 『そもそも、貴女は政府からのIS学園への入学要請を1度断ったのに、織斑百春が現れた途端にIS学園への入学を求めてきた。私が認めないと知ると政府高官の元に押し掛け直談判・・・いや脅し、無理矢理許可を出させた言語道断の仕業。』

 

 不機嫌そうな表情となり、更に鈴を睨む春麗。

 

 『なればこそ私は貴女に、懲罰の意味をかねての任務を与えました。ですが貴女は任務を何一つ達成させぬまま、自分の我儘を押し通す為に模擬戦を行い敗北し、専用機を破損させた。』

 

 画面越しでも春麗の怒りが伝わったのか鈴の顔色が青ざめていく。 そもそも鈴は春麗の事が苦手だった。元中国国家代表という肩書と実力もさることながら、その高潔なる精神が鈴にとって堅苦しい物だった。

 だからと言って、春麗に面と向かって何かを言う事は出来なかった。言葉には言葉で、力には力でねじ伏せられるからだ。 年齢故に引退し、後進に道を譲ったものの現国家代表ですら、全く手足も出ない程の実力者なのだ。

 

 『凰代表候補生、どうやら貴女には代表候補生としての心構えが足りないようですね。学園には私から連絡を入れておき、飛行機の手配はしますので、明日の朝一便で中国に帰国しなさい。私がみっちりと1から代表候補生としての心構えを貴女に説きます、良いですね!』

 

 「ま、待ってください。転入したばかりなのに帰国なんて!」

 

 『もし、嫌なら貴女の専用機並びに代表候補生の資格を剥奪して学園を退学してもらいます。どうしますか?』

 

 春麗にそこまで言われると鈴は何も言えなくなる。

 

 「・・・・・わかりました、帰国します。」

 

 

 

 

 

 

 

 翌日

 

 「これで朝のSHRは終える。それから織斑、少し話がある。」

 

 百春は千冬に呼ばれて廊下に出る。

 

 「織斑、お前に伝える事がある。2組の凰だが、今日中国に緊急帰国した。暫くは戻ってこれないそうだ。」

 

 百春は一瞬、何を言われたか理解出来なかった。

 

 「な、なんで!鈴が何で中国に?! 一昨日、IS学園に来たばかりじゃないか!」

 

 「凰は転入早々に幾つか問題行動を起こしてな、それで中国政府の方から呼び出しがかかったのだ。」

 

 「問題行動って?」

 

 「生憎と私の口から言う事は出来ん。」

 

 「それじゃあ、クラス対抗戦には鈴は出れないのか?」

 

 「出るも何も、凰は2組のクラス代表じゃないから問題は無い。兎も角、その事だけは心にとめておけ。そろそろ授業が始まるからクラスに戻れ。」

 

 そう言って千冬は足早に立ち去っていく。 一方、百春は予想外の出来事に混乱していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 学年別クラス対抗戦 当日

 

 アリーナの大型ビジョンには対戦組み合わせが発表された。

  第1試合 3組VS4組 第2試合 1組VS2組

 

  アリーナの観客席は満席となり、試合開始を待ちわびていた。

 

 「かんちゃん、どのくらいで勝つかな?」

 

 「相手は確か、イギリスの代表候補生で序列10位のマーガレット・ウォンだったな。」

 

 「はい、夏輝様。専用機は所持しておりません。それと典型的な女尊男卑主義者です。願わくば、余計な事を言って簪様を怒らせないことですね。」

 

 「・・・・・かんちゃん、怒ると怖いもんね。」

 

 アリーナのフィールドに2機のISが現れた。

片方は簪のザムジードで、片方はマーガレットのラファール・リヴァイブだ。

 

 「ふん! 姉のお情けで代表候補生の座と専用機を手にした出来損ないが相手か。」

 

 「「「ムッ!(怒)」」」

 

 マーガレットの言葉に夏輝達の表情が変わる。

 

 「しかも第3世代機なんて宝の持ち腐れ。だいたい、こんなネトウヨ、キモオタが蔓延る文明後進国の小さい島国には勿体ない物だわ。そうだわ、あなたの兄とか言う穢らわしい男の持っている専用機共々、コアごと私が貰って差し上げますわ。大人しく差し出しなさい。」

 

 この瞬間、マーガレットはアリーナ観客席にいた大半の生徒を敵に回した事に気づいていなかった。

 

 『夏輝さん。彼女の無礼な振る舞い、イギリス政府に替わってお詫び申し上げます。 身内の犯した不始末は身内でつけますのでご安心ください。彼女の発言は既に報告してありますので。』

 

 セシリアから秘匿通信が送られてきた。 その間も暴言は続いた。

 

 「だいたい、極東の猿が私に刃向かう事自体が無礼ですわ。」

 

 そんなマーガレットに向かって簪は左手の中指を立ててマーガレットに向ける。

 

 「なっ?! あなた、私を侮辱しますの!」

 

 簪は何も言わずにただ構える。

 

 「・・・・・・かんちゃん怒ってるね。」

 

 「・・・・・・・夏輝様、フォローお願いします。」

 

 「・・・・・・・・PG1/60エクシアで機嫌直るかな?」

 

 そうこうしている内に試合が始まる。

 

 「死になさい!」

 

 マーガレットはマシンガンを呼び出して連射する。だが、簪が右腕を前に突きだして手を開く。

 銃弾が全て簪の右手の直前で弾かれていく。

 

 「なっ?! そんな馬鹿な!」

 

 マーガレットは目の前で起きていることが信じられず、無闇にマシンガンを連射する。

 だが、全ての銃弾はことごとく弾かれていく。

マーガレットのみならず観客達も驚きの声をあげる。

 だが、タネを知っている夏輝達は平然と見ている。 

 

 「ザムジードに内蔵されている超震動システムを防御に利用しているだけなんだけど。」

 

 「空気を激しく震動させて、分厚い空気の膜・・・盾を作り銃弾を弾く。見えない盾で弾かれていく銃弾、パニックになるでしょうね。」

 

 「初っぱなから、あれを使うということは・・・簪はあの女の心をへし折る気だな。」

 

 マシンガンをひたすら乱射するマーガレット、だが銃弾はことごとく弾かれていく。そして1歩、また1歩とマーガレットに近付いていく簪。

 

 「何でよ!何で当たらないのよ! ヒィ?! く、来るな!来るなぁーー?!」

 

 マシンガンの弾が切れたののもわからずにひたすらトリガーを引き続けるマーガレット。先程の強気な態度から一転し脅えながら、簪が近付いて来るのを避けるかのように後退していく。やがてアリーナの壁まで追い詰められるマーガレット。背中が壁に触れたことでもう下がれない事に気づいた。それどころか、ザムジードの生み出す空気の盾を押し付けられて身動きが全く取れない状態となる。

 

 「ヒィ?! 動けない!イヤ、こ、来ないで!」

 

 「これで終わらせてあげる。」

 

 簪はそう言うと、左手をマーガレットの目の前で閉じて握りしめる。

 

 「超震動拳!」

 

 左のストレートが腹部に決まる。顔を歪ませ苦しむマーガレット。 だが、それでは終わらない。

 

 「あーたたたたたたたっ!ほぁたあ!!」

 

 左右のラッシュが繰り出される。サンドバックの如く殴られていくマーガレット。そしてとどめとばかりに決められるアッパーカット。 アリーナの天井まで飛ばされ、そのまま地面に激突する。絶対防御のお陰で外傷は殆ど無いものの激突した時の衝撃で、どうやら気を失ったようで全く動かない。

 

 『ラファール・リヴァイブ、操縦者意識消失! 勝者、更識簪!』

 

 その瞬間、観客達から割れんばかりの拍手が贈られる。

 気絶したマーガレットは担架で運ばれていくが、誰も心配しているようには見えなかった。

 ちなみに、これがマーガレットが目撃された最後の姿だった。

 

 

 

 

 アリーナ医務室

 マーガレットは医務室に運ばれた直後に意識を取り戻した。 直ぐに医務室だと気づいて自分が負けた事を認識した。次にマーガレットの目に写ったのは側に立つ2人の女子生徒・・・セシリアと2年生のサラ・ウェルキンの姿だった。

 

 「おや、気がつきましてねウォンさん。」

 

 「オ、オルコットさん。ウェルキン先輩・・・・も、申し訳ありません。あのような無様な姿を晒して敗北してしまいまして。次こそ「次はありません。」えっ?どういう事でしょうかウェルキン先輩?」

 

 マーガレットは自分を見つめるセシリアとサラの眼差しが険しい事に気づいた。

 セシリアがポケットからICレコーダーを取りだし再生する。 

 そこからは先程の試合前のマーガレットの発言が流れてくる。 だがマーガレットはそれが何を意味するのかを理解出来ていなかった。自分の言った事は正しいと思っているからだ。

 

 「さて、ウォンさん。代表候補生の規約を覚えていますか? 代表候補生の発言は常に国家の発言となることを。 代表候補生たる者、人種差別・性差別をしてはならない。代表候補生は他国のことを無闇に誹謗中傷してはならない。それにお忘れですか?イギリスでは女尊男卑の思想は禁じられていることを。イギリスは男女平等の理念を掲げていることを。」

 

 サラがそこまで言って漸くマーガレットは自分の発言がどれだけ不味かったのかを気づいた。

 

 「マーガレット・ウォン代表候補生。貴女に本国からの決定を伝えます。現時刻をもって貴女の代表候補生の資格を剥奪し、IS学園を退学しイギリスに強制帰国してもらいます。間もなくイギリス大使館の職員が迎えに来ます。帰国後に更なる罰が下されると思いますので、心しておいてください。」

 

 サラがそう言うと、マーガレットの代表候補生の身分証カードを目の前で真っ二つに割る。 そう言って2人は医務室を後にする。

 

 医務室を出た所でサラが

 

 「さて、セシリア。貴女には1年生のイギリスからの留学生と手分けして全てのクラスに謝罪をお願いします。愚か者の尻拭いをさせて本当に申し訳無いけど、流石にそのままにしておける事案ではないから。日本政府とIS学園には本国からの謝罪がされるとは思いますし。」

 

 「わかりましたサラ先輩。」

 

 

 

 

 

 

 アリーナピット

 百春は試合の準備をしながら、鈴の事を考えていた。

百春は千冬から鈴の事を聞いた後、知り合った女子生徒達に色々聞いて貰って鈴が帰国した理由を知った。

 

 (いったい、何で鈴が中国に戻る事に・・・何でクラス代表になってないんだ・・・こんなの原作にはなかったはず)

 

 そんな事を思いながらも百春には懸念があった

 

 (・・・・確かこの後も、何かが起きるはずだったんだけど思い出せない。というか、この先の出来事があんまり思い出せない。どうなっているんだ。原作知識が・・・・)

 

 百春は転生した時には明確に覚えていた原作知識が、最近朧気になっていることに気がついたのだ。

 俗に言うヒロインズの名前以外の登場人物の名前は思い出せない。エピソードも殆ど思い出せないのであった。  幼少期に見たアニメの内容が年月が過ぎる毎に記憶から徐々に薄れ曖昧になっていくのと同じ事が起きているのだ。 

 それが百春に僅かな恐怖心をもたらしていた。原作知識という優位性が無くなってきていることが。

 

 (と、兎も角、試合に勝たないと)

 

 何とか気持ちを切り替えて試合に挑もうとする百春。

スレードゲルミルを纏いアリーナに向かう。 

 

 

 

 

 

 アリーナに出た百春。既に対戦相手のティナは待機していた。 ティナは先日、鈴と戦った時と同じくファルコンを纏っていたが、胸部に追加装甲、脚部にミサイルポッド、顔にバイザーを装着し細部にカスタマイズが施されていた。 公式行事の試合に使用する機体は事前に申請し認められればある程度のカスタマイズは可能なのだ。

 

 百春は対戦相手のティナを見ていると、心の底からフツフツと怒りが湧いてくるのを感じた。

 

 (・・・・・アイツがいなければ・・・アイツがすんなり鈴にクラス代表の座を譲っておけば・・・・)

 

 筋違いの怒りなのだが、百春にはわかっていなかった。

 

 『それではただいまより、学年別クラス対抗戦の第2試合を始めます。 それでは、試合開始!』

 

 開始の合図と共にティナはガトリングガンポッドを百春に向けて連射する。百春は回避するも、回避する場所を先読みしたかのように銃弾が降り注ぐ。

 

 「アイソリッドレーザー!」

 

 銃弾を浴びながらも百春はレーザーを放つ。だが、ティナに簡単に回避される。 

 

 「スプリットミサイル!」

 

 銃弾が途切れた隙を狙ってミサイルを撃つが、ティナも脚部に装着されているミサイルポッドからミサイルを放つ。 中間地点でミサイル同士がぶつかり爆発する。

 

 白煙が立ち込める。百春は後退しようとした時だった、白煙の中からティナが百春に向かって飛び出してきた。 両腕の手甲部分から伸びる大型のコンバットナイフと両足爪先の衝角を使って百春に格闘戦を仕掛ける。

 

 まるでダンスのように変幻自在に繰り出されるナイフの斬刺と蹴技は百春に確実にダメージを与えていた。

 

 (クソッ! 斬艦刀が出せない!それに出したとしても・・・・)

 

 訓練したお陰で百春も斬艦刀の扱いに慣れたのだが、斬艦刀には致命的な欠点があった。その巨大さ故に細かい取り回しが難しいという。 即ち、密着された状態での格闘戦には不向きなのだ。 

 無論、百春とて対応策はこうじていた。

 

 「ドリルナックル!」

 

 2つの巨大なドリルがパージされて両腕に装着される。高速回転するドリルをティナに向けて振るう。それを軽くかわすティナ。

 

 (チッ、何で当たらないんだよ!)

 

 百春は喧嘩の経験はあるが格闘技の経験は無い。ドリルを両腕に装着して戦う以上は何らかの格闘技を修得する必要がある。だが百春はそれをしていない、自分に与えられた身体能力を過信している為、そんなの必要無いと思っているからだ。自分なら直ぐに出来ると思っているから。

 

 大振りのドリルを蝶のように舞って回避し、合間を縫って蜂のように攻撃を続けるティナ。 徐々に追い詰められる百春。

 

 「アイソリッドレーザー!スプリットミサイル!」

 

 至近距離からレーザーとミサイルを撃つ百春、巻き込まれないように距離をとるティナ。

 

 「よし!いまだ斬艦刀!!」

 

 ティナが離れた事でドリルを戻して斬艦刀を呼び出す百春。 だがその瞬間

 

 

  ドガァァァァァァーーーン 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。