悪辣な転生者に裁きを 作:フライング・招き猫
いつも誤字、脱字、並びに文章不備の修正の御協力ありがとうございます。
この場をお借りして御礼申し上げます。
学年別タッグマッチトーナメント戦も、無事に1回戦の全ての試合を終えて、3日目を迎えた。
百春&箒ペアと鈴&メフィルペア以外は、無事に勝ち進んだのだ。 百春は自分が負けた事が、納得出来ずにいたが、それ以上の予想外の出来事が起きた。
それは、初日の事だった。 夕食を終えて一人部屋となった自室に戻った時に、百春のスマホに着信があった。 相手は中学時代の悪友のひとり、五反田弾だった。
「もしもし、どうした弾? また女を紹介しろってか?」
『バカ!!そんな事を言ってる場合じゃねえよ!!』
何時もと違う話し方に百春は違和感を抱き
「どうしたんだよ?なに興奮してんだよ。」
『いいからよく聞け!さっきうちに鈴が来たんだよ。IS学園から逃げて来たって!』
「何言ってんだよ弾? 鈴なら学園にいるぜ、何より今日は学校行事に参加してたんだからよ。」
そこまで言って百春はあることに気づいた。
(・・・・・そういや、試合が終わってから鈴の姿見てねえな?・・・・・負けたショックで部屋に籠っているのか・・・でも・・・)
『いいから聞けよ!鈴のやつな、今日の試合で負けた事が原因で代表候補生を辞めさせられ、学園も退学させられて、中国に帰されるだと!』
弾の話に絶句する百春。百春の中で4月の出来事が蘇ったのだ。
『泣きながら帰りたくない、学園を辞めたくない、って言ってたんだけどよ。そしたら中国の役人とか警備員みたいなのが店に来て、連れていったんだよ!!』
弾の話に何も言えない百春。
『俺とじいちゃんが、止めようとしたんだけどさ・・・・・』
弾が言葉を濁す。
「どうしたんだよ弾!何があったんだ?」
『鈴のやつな、IS学園に来るために色々とやってはいけない事をやったみたいでさ。お偉いさんの心証が元々良くなかったみたいなんだ。その上、学園に通っている間にする仕事があったんだけど、全然してなかったんだってよ。それで等々・・・・すまねえ百春、俺達にはどうする事もでき』
百春は最後まで聞かずに電話を切り、部屋を出て走って千冬の部屋に向かった。
ドンドンドン、ドンドンドン
「ち、千冬姉、千冬姉!いるんだろ!!」
「喧しい!!寮内で騒ぐな!! そんなに怒鳴らなくてもわかる!」
扉を開けるなり、百春の頭を殴る千冬。 殴られた箇所を手で押さえ痛みをこらえて百春は
「そ、それより千冬姉!鈴が、学園を辞めさせられたって「織斑!静かにしろ! 説明するからこっちに来い!」わ、わかった。」
百春は千冬に連れられて寮の端にある特別談話室に入った。 ここは寮生の悩みとかを聴く部屋で防音が確りされているのだ。
「さて、織斑。お前はどこでその話を聞いた。」
「弾の奴からだよ。さっき電話があって!」
「そうか・・・・どちらにせよ明日にはわかる事だしな。仕方あるまい。だが、公表されるまでは他言無用だぞ、わかったな。」
千冬の迫力に弾の話が本当だと確信した百春。
「凰は今日付けで学園を退学し、そして中国に帰国させられた。これは中国本国からの命令と聞いている。」
「千冬姉!何とかならなかったのかよ!例えば特記事項第21で助けることは「無理だ」えっ?!」
「特記事項第21は、あくまでも一般生徒に適用されるものであり、中国代表候補生である凰には適用されない。」
「でも、鈴は代表候補生を辞めさせられたんだろ!なら?」
「凰は確かに代表候補生を辞めさせられた、しかし彼女は中国の代表候補予備生なのだ。つまり彼女は未だに中国所属のIS操縦者なのだ。」
千冬の言葉に何も言えない百春。
「今日は疲れただろう。部屋に戻って休め。」
千冬は話を終えると部屋を出て行くのだった。
アリーナ観客席
未だに百春は鈴が居なくなったショックから立ち直れていなかった。 一方、箒は最大のライバルが居なくなった事は嬉しいが、百春がショックを受けて塞ぎ込んでいるのが気になっていた。
そんな中、アリーナの中央スクリーンに2回戦の対戦カードが発表された。
本来ならトーナメント表通りにする予定だったのだが、専用機持ち同士又は代表候補生同士の対戦で固まっていた。そこで急遽、学園上層部とIS委員会等が話し合いをし、対戦カードを抽選し直す事が決められたのだ。
『おおっと!1試合を除いて、代表候補生と専用機持ちのペアはバラけた。そして唯一の試合が、更識夏輝&更識円華ペアVSラウラ・ボーデウィッヒ&夜竹さゆかペアだ。しかも、しかも!このあと直ぐに行われます!!』
観客達は、その対戦カードに興奮するのだった。
「兄さん、どうやって戦う?」
「あのAICが、やっぱり厄介だよな。1回戦のを見た限りだと効果範囲は限定的で、前後左右と別れていれば何とかなるとは思うけど、断定は出来ない。とりあえずは俺が彼女と戦うから円華は夜竹さんを頼む。」
「わかったよ兄さん。」
「それから円華、万が一の場合はアレを使うからな。」
「それって私も使っていいのか?」
「構わないよ。」
「ど、どうしようボーデウィッヒさん?!」
さゆかが不安そうにラウラに聞く。
「夜竹・・・すまないが、勝ち筋が見えてこない。私一人では二人に勝つのは不可能だ。分断して個人戦に持ち込もうにも、お前一人でどちらかを押さえる事も難しいだろう。 となれば、勝つのはではなく負けないよう・・・せめて引き分けに持ち込めるように戦う事しか出来ない。かなり分の悪い賭けになるがな。」
「負けないように?」
「そうだ、お前の今後の糧にするためのも、それが最善だと私は考える。」
「私のため?」
「そうだ・・・・正直に言う。私はここに入るまで・・・いや、ここに入って暫くの間、殆どの生徒を馬鹿にしていた。ISに対する心構えのなっていない軟弱者やミーハーの集まりだと。だが、その内にそれは一部の者だけで大半は真面目に学んでいることに気づいた。」
そう言ってラウラはさゆかを見て
「しかも、中には磨けば光る宝石の原石のような才能の持ち主もいた。お前もその一人だ。今はまだ石ころと何ら変わり無いかも知れんが、お前が努力し続ければ、その才能は花開くだろう。それ故に私はその手助けをしたいのだ。」
「ボーデウィッヒさん・・・・」
「さて、その為にも装備を変更しなければならないな。万が一の為に手配していたアレを使うぞ。」
『それでは、お待たせしました。学年別タッグマッチトーナメント戦の2回戦の第1試合です。 まずはラウラ・ボーデウィッヒ&夜竹さゆかペア。1回戦ではボーデウィッヒさんの活躍もあり危なげない試合運びで快勝しました。今回はどのような戦いを見せてくれるのでしょうか?』
アリーナのフィールドにラウラとさゆかが現れる。 だが、さゆかの姿を見て観客達はざわめく。 さゆかのラファール・リヴァイブがかなりの重装甲となっていたからだ。
頭部にはフルフェイスの大型ヘルメット、背中には巨大なキャノン砲、両肩の追加装甲から伸びるガトリング砲の副腕、両脚には移動用のキャタピラが付いた脚部追加装甲、まるで戦車と言っても過言ではない程だった。
これまた3年整備科が[クアッド・ファランクス]を参考にして作った露漫武装の1つ[デストロイヤー]だ。
『さて、続きましては更識夏輝&更識円華ペア。こちらも1回戦では織斑百春&篠ノ之箒ペアを相手に完勝しました。今度は如何なる戦いを見せるのか、こちらも楽しみです。』
夏輝と円華が現れると歓声が一層大きくなる。
「兄さん、アレって・・・・」
「・・・・・・・円華、やっぱりアレを使うことになりそうだ。」
夏輝はディスカッターを円華はメガビームランチャーを構える。
ラウラはプラズマブレードをさゆかは両手にトンファーのような形状の銃を持っている。
『それでは、試合開始!!』
「いきます!!」
試合開始の合図と共に、デストロイヤーの装甲が開き中からミサイルが姿を現し放たれる。100発近いミサイルが夏輝達を襲う。
「いきなりかよ!」
「兄さん!!」
「行くぜ!!サイフラァァァッシュ!!」
夏輝がディスカッターを頭上に掲げると、ディスカッターを中心に蒼い光の波が放たれ、アリーナのフィールド全体に広がる。ナノマシンを利用した、サイバスターの広域型拡散波動兵器[サイフラッシュ]である。
ミサイルが着弾していないにも関わらず次々と爆発していく。
いや、それだけでなく
「な?! ダメージを?!」
「ボーデウィッヒさん?!」
サイフラッシュの光に触れた事でISがダメージを受けたのだが、同じように触れている筈の円華のヴァルシオーネRがダメージを受けていない事に更に驚く。
「一体、どんなカラクリだ。だが、このままでは!!」
そう、言ってラウラは瞬時加速で夏輝に接近する。
「ハァァァァーーー!!」
「セェェーーーーイ!!」
プラズマブレードとディスカッターがぶつかり、せめぎ会う。
「何やら面白い事をしてくれたな。」
「そりゃどうも。」
「出来れば1対1で戦いたかったな。」
ラウラはそう言うとさゆかに一瞬だけ視線をやる。
そこには円華と戦うさゆかの姿があった。
さゆかに向けてメガビームランチャーを射つ円華。
キャタピラを使い地面を滑走しながら、多少被弾しながらも回避し続けるさゆか。そして、ガトリング砲で反撃を試みる。それだけでなく、背中のキャノン砲も撃つ。
「やるわね。貴女は少なくとも織斑百春よりは強いわ。だから、この技を贈るわ。」
ガトリングの銃弾を回避し、キャノン砲の砲弾をメガビームランチャーで撃ち落とす円華はさゆかをそう評価した。 円華はメガビームランチャーを収めると、両手を胸の前で交差してショルダーアーマーに掌を向ける。
「それじゃあ、いくよ!クロォォスソォォサァァァァッ!!」
右肩から青い円盤、左肩から赤い円盤が生まれ、さゆか目掛けて放たれる。2色の円盤は複雑な軌道を描きラファールの・・・デストロイヤーのキャノン砲やガトリング砲を次々と切り裂いていく。デストロイヤーのパーツは原型をとどめていなかった。
そして円盤は円華の元に螺旋を描きながら戻り球体となる。その球体を右足で頭上に蹴りあげると
「魔球・ミラージュボール1号!」
その球体を右腕でジャンピングサーブで打ち出す。
球体は加速しながらさゆかに命中する。
「きゃぁぁぁぁーーーーーー。」
さゆかはそのままアリーナの壁まで飛ばされて激突する。
『ラファール・リヴァイブ、SEエンプティー!夜竹さゆか、試合続行不能。』
夏輝と競り合いながらラウラは
「夜竹が負けたか・・・・よく戦ったな。しかし、こうなると不利だな。それでも夜竹の為に最後まで戦わせてもらうぞ!!」
ラウラはそう言って距離を取ろうと、した瞬間だった。突然、ラウラの動きが止まる。
(・・・・汝、力を望むか?)
(何だこれは?)
(・・・・汝、強者の力を求めるか?)
(いったい何を言っているのだ?)
(・・・・汝、世界最強の力を欲するか?)
(だいたい誰だ、お前は?何を言っている!)
(・・・・汝、更なる力を、無敗の力を、最強の剣を欲するか?)
(いったい何なんだ!試合の邪魔をするな!!夜竹の為に・・・さゆかの為にも私は己の力で戦うのだ!!)
(・・・・VTS・・・誘導発動・・・失敗・・・・)
(・・・・・・・・・VTS・・・・強制発動!!!)
「うぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっ!!!」
突然、ラウラが苦しそうな叫び声をあげる。
次の瞬間だった。ラウラのIS[シュヴァルツェア・レーゲン]から突如として紫電を発する。そして装甲が形を失い融解していく。
「何?」
「兄さん?!」
「ボーデウィッヒさん!!」
やがて原型が無くなり液状と化し、ラウラを包み球体となる。そんな中、ラウラは必死になって足掻いていた。
(止めろ!止めるんだ!!私は望んで無い!!!)
(・・・・受け入れろ、それが運命だ)
(嫌だ!そんなの認めん!!)
(・・・・無駄だ。お前は、この為に作られたパーツなのだ)
(違う!私はパーツではない!!私は、私はラウラ・ボーデウィッヒだ!!!)
激しく蠢く漆黒の球体。やがて、その形を変えていくのだった。
その姿は
「兄さん、アレって・・・・」
「暮桜か・・・・そうなると、アレはVTSか。」
「VTSって確か、開発・研究が禁止されているシステムだよね。」
「そうだ。操縦者の命を奪う危険のある、禁断のシステムだ。」
貴賓室
ドイツ高官達は突然の出来事に驚いていた。
「何だあれは?」
「何が起きている!」
「アレは、もしや!」
「まさかVTSか!!」
「何故、あんなものが!!」
「?! まさか、あの女が!! 直ぐに本国に連絡を!あの女を、ロイズ・レクセルズを拘束せよ!!」
アリーナ管制室
「な、なんですかアレは?」
「不味いわね。アレはVTSよ!」
真耶の疑問に答えるスコール。
「何であんなものがラウラのISに!!」
千冬は激昂するのだった。
「織斑先生!非常事態です。教員部隊の出動を!」
スコールの要請に千冬は無言で応じるように管制室を飛び出す。
「更識君、聞こえる!」
『聞こえますミューゼル先生。アレは、VTSですよね。教員部隊の出動は?』
「今、出動準備に掛かったわ。あと5分程で出動するわ。」
『・・・・間に合わないかも知れません。』
「わかっているわ!だからお願いがあるの。」
『言わなくてもわかります。ラウラを助けます。』
「ミューゼル先生?!」
「ボーデウィッヒさんを見殺しにする訳には行かないわ。それに彼等なら!」
アリーナフィールド
ラウラを取り込んだ漆黒の暮桜・・・偽暮桜は剣を構える。だが、そこで異変が起きる。 偽暮桜の腹部が異様に盛り上がった瞬間だった、中から突き破り右手が現れた。ラウラの右手だろう、しかし装甲部分が液状となり右手を押し込めようと絡み付く。
「円華!奴の気を引いてくれ!俺がボーデウィッヒを引き摺りだす!」
「わかった兄さん!!」
夏輝は偽暮桜の元に飛ぶ、そして円華はクロスソーサーで右手の近くの装甲を削っていく。
「更識君、更識さん!ボーデウィッヒさんを、ボーデウィッヒさんを助けて!!」
さゆかが叫ぶ。 そんなさゆかに夏輝が声をかける。
「夜竹さん、ボーデウィッヒに呼び掛けて!!」
「頑張って、頑張ってボーデウィッヒさん!ボーデウィッヒさん、頑張って!!」
さゆかの声に答えるかのように右手がもがく。
(・・・・・頑張・・・・・って・・・・・・)
(・・・・・受け入れろ、お前はパーツなのだ)
(違う、私はラウラ・ボーデウィッヒだ!)
(・・・・・頑張って・・・・って・・・・・)
(・・・・・受け入れろ、力で求めよ)
(嫌だ!そんな力いらない!)
(・・・・・・頑張・・・・・って・・・ボーデウィッヒ・・・)
(パーツとなり、最強の兵器となれ)
(私は人間だ!兵器ではない!!)
(・・・・頑張って・・・・・って、頑張ってラウラ!!!)
(さゆか!!)
その瞬間、ラウラの視界に光が溢れる。
ディスカッターで偽暮桜の剣・・・雪片を受け止めて、左手でラウラ右手を掴み引っ張る。
「頑張って、頑張って、頑張って、ラウラァァァーーー!!!」
さゆかの叫びに答えるように偽暮桜から一気にラウラが抜け出した。 夏輝はそのまま偽暮桜を蹴り飛ばし、さゆかの元に行く。
「夜竹さん、ボーデウィッヒさんを頼む!」
ラウラをさゆかに預けると、さゆかは
「よかった・・・・よがっだ・・・・よがっだよラウラァァァーーー。」
ラウラを抱き締めて泣き出す。夏輝はそのまま偽暮桜に向かう。偽暮桜はラウラが居なくなった事で、動きが鈍りはじめた。 合流した夏輝と円華はディスカッターとディバインブレードを構え、夏輝は左手を円華は右手を前に突き出して
「円華、合わせろ!」
「わかった兄さん!」
二人は偽暮桜の左右に別れ、斬りかかる。
二人は偽暮桜の周囲を高速で飛びまわり、連続で斬りつけて行く。 そして
「決めるぞ円華!」
「わかった兄さん!」
再び左右に別れて、同時に瞬時加速で偽暮桜に向かっていき同時に交差して斬りつける。
「「神祇無窮流剣術、合技、歌舞伎十八番、参会名護屋、暫!!」」
二人が離れた場所で剣を振るうと、偽暮桜は砕け散っていく。