悪辣な転生者に裁きを 作:フライング・招き猫
アリーナ観客席
偽暮桜が出現した瞬間、百春は立ち上がっていた。
(そうだ!!思い出した!ラウラのVTS事件だ!ここで俺が乱入して偽暮桜を倒してラウラを助けるんだ! )
慌ててアリーナのピットに向かって走り出す百春。百春の突然の行動に驚き、慌てて立ち上がって百春を追いかける箒。
(ようやく、ようやく主人公としての見せ場が!見てろよイレギュラーの奴に、いい顔はもうさせない!俺が活躍して、ヒロイン達を一気に取り戻す!)
「待て!どうしたのだ百春!」
「アレは雪片を持っていた、暮桜だ! アレは千冬姉のものだ、あんな偽物が持っていい物じゃない!俺が、俺が倒してやる。」
並走する箒にキメ顔で告げる百春。
「どうやって倒すのだ?」
「そんなの、決まっ・・・・・あっ!!!」
突然、立ち止まる百春。そう百春は思い出した、肝心の専用機・・・スレードゲルミルを千冬に昨日預けた事に。
「そ、そうだ・・・・昨日、千冬姉に・・・・スレードゲルミルを・・・・・そ、そんな・・・・こ・・・・こんな時に・・・専用機が、専用機が無いなんて・・・」
通路で、ガックリと膝をつき項垂れる百春。
「も、百春! そ、そうだ!ピットに行けば、試合に出る者が使う訓練機があるはずだ!それを使えば!!」
百春に発破をかける箒。
「無理だよ箒、使用許可がおりないよ。勝手に使う事も出来ないし、何より訓練機の無断使用は不味いよ。」
結局、百春と箒は事件が解決するまで何もすることなく呆然としていた。
「なんで・・・・・なんで、無いんだよ・・・・・」
「百春・・・・・・」
「どうして・・・・こんなことに・・・・・・」
「・・・・俺は、主人公・・・・なんで・・・・なんで・・・」
さて、このVTS事件を受けて学年別タッグマッチトーナメント戦は中止された。
学園は直ぐにドイツに説明を求めた。するとドイツは一人の女性技師が独断で行った事と説明した。
女性の名はロイズ・レクセルズと言い、ドイツのIS技師でシュヴァルツェアシリーズの開発と整備を担当しラウラがIS学園に編入する直前にISの最終チェックを担当していたとのこと。
ドイツはその後の調査で、彼女はドイツでVTS研究の第一人者であったピレイル・ボーラセンの大学での教え子であった事を知るのだった。 ドイツには、かつて一部の政治家と科学者の独断と暴走により、非合法な研究所が密かに作られていた。
そこでは人体実験に遺伝子強化素体の製造と改造といった、血生臭い事が常に行われていた。ピレイルもそこに所属していたのだ。
その研究所の末路は、知ってのとおりだ。
ドイツにとってこの研究所は汚点そのものなのだ。この研究は政府全体の総意で行われた物でなく、一部の人間達の暴走によって、行われたあまりにも醜い所業。それ故にドイツは全ての関係者に厳罰を与え、2度とこのような事を起こさないように周知徹底を行った。
ちなみにラウラは関係者であっても、被害者としての一面が大きい為に処罰は免れ、寧ろ謝罪や賠償の意味を含めて様々な形で優遇されたのだった。
肝心のロイズなのだが、何故彼女が処罰を免れたのか? それは彼女が研究所に所属しておらず更にピレイルとの関係が余りにも希薄だったからだ。
彼女は確かにピレイルの教え子なのだが、教えを受けた期間が短く、大学の研究グループの名簿の初期にしか名前がなかったことで全くノーマークだったのだ。
では何故彼女が事件に掛かったのが直ぐに判明したかと言えば、彼女が最近になりVTSの有効活用を目的とした実験や研究を行おうとして、上司に幾度か注意を受けていたのだ。
本来ならその時点で、シュヴァルツェアシリーズの開発と整備から外されそうなものなのだが、彼女が余りにも有能であった為にギリギリまで見送られたのだった。
それでも上司は念のために上層部に報告し、上層部もこれを受けて監視対象にするか検討に入っていた。
だが、結局は出遅れて事件は起きてしまった。連絡を受けて直ぐにロイズの身がら拘束に動いたドイツだったが、その時には既に彼女は逃亡して行方不明となっていた。 ただ彼女の自宅や職場の引き出しに研究資料が多少残っており、そこにVTSに関する物もあったのだ。
これにより、ドイツは事件は彼女の独断によるものと発表し、彼女を容疑者に認定し、国際指名手配した。
そしてラウラに関しては、今回の被害者と認定されて処罰されないことになった。寧ろ被害者という事で見舞金が支払われ、更に特別休暇が与えられる事になった。
それと同時にドイツはウイング社に対してラウラの専用機の製造を依頼したのだ。 勿論、ドイツ政府内並びに国内企業からの反発はあったものの、学年別タッグマッチトーナメントでのウイング社の機体の活躍の映像により、そのポテンシャルの高さが証明され反対意見は一蹴された。
そして今まで、この手の依頼や要請を悉く断っていたウイング社が、この依頼を受けた事で世界中に激震が走った。 この裏には黒江から美兎へのお願いがあったのだが、それは身内にしか知りえない事であり、受注理由は謎のままであった。
IS学園 アリーナ医務室
ラウラが目を開けて最初に目にしたのは、ベッドの横で椅子に座り、うとうととするさゆかの姿だった。
「あら?気がつきましたね。」
ラウラに声をかけたのは白衣を纏った女性だった。
「貴女は?」
「私はIS学園常駐の医師でテュッティ・ノールバックと言います。ところで、体の具合はどうですか?」
「体がまともに動かせません。少しでも動かそうとすると痛みます。」
ベッドの中で少し動かし、顔を少し歪め自分の体を自己診断を下す。
「今の貴女は全身筋肉痛になっています。筋肉断裂の1歩手前というところです。暫くは絶対安静です、わかりましたか?」
「わかった。ところで何が起きたのだ?」
「・・・・・・箝口令が敷かれてますが、被害者である貴女には知る権利があると思いますので、私の独断で話しますが・・」
「わかっている。聞いた事を誰にも洩らさない。」
「VTSはご存知ですね?」
「はい。・・・・・まさか?!」
「はい、貴女のISに仕込まれていたようです。ですがドイツが先程、この件は国や貴女の意思で行われたのではなく、一人の女性技師の仕業と報告してきました。詳細はまた後日報告してくるそうですが、貴女が何らかの罪に問われる事は無いそうです。」
テュッティの話にラウラは一人の女性・・・ロイズの顔が浮かんだ。
(・・・・・確かに以前から、何処か怪しい雰囲気を持っていた女性だったな。)
ラウラは以前からロイズの事を本能的に警戒していた。言動も去ることながら、ラウラを・・・家畜やモルモットを見るかのような目付きが、気になっていたのだ。
「兎も角、貴女は安心して休んでください。今から鎮静剤も処方しますので飲んでくださいね。」
「わかった。ところで・・・・」
そう言ってラウラはうたた寝をするさゆかに視線をやる。
「彼女、貴女が目を覚ますまで付き添うと言ってきたの。それだけじゃないわ、貴女の世話人を買ってでたわ。理由を聞いたら、パートナーだから・・・パートナーに選んでくれたから、だそうよ。」
そう言われてラウラは、何か暖かいものが浮かびあがってくるのを感じた。だがそれは覚えのあるものだった。 かつて自分が率いる部隊[シュヴァルツェア・ハーゼ]のメンバーと心を通わせ本当の意味で仲間となった時と同じだった。いや、さゆかだけではなかった。夏輝と円華にも同じような物を感じた。
(確かクラリッサが言っていたな、戦いを通じて仲良くなった者を仲間を
そんな事を思い出しながら、ラウラは目を閉じるのであった。
学年別タッグマッチトーナメント戦が中止になった事は色々と影響を及ぼした。
先ずは、見学に来ていた国や企業の重鎮。彼らは有能な人材のスカウトや自国の人間の活躍、自社製品の評価が目的である。 その為には一試合でも多くして欲しいのだ。それが、中止となれば不満続出となった。
これに関しては、2学期にそれに替わるイベントを開催することで、納得してもらった。
次に生徒達である。これは自分達を国や企業へのアピール機会の減少したことで不満が出た。しかし此方も2学期にそれに替わるイベントを開催することで納得してもらった。
そして残りの日程である。学年別タッグマッチトーナメント戦の為に1週間・・・6日間の日程を用意した。しかし、実際に消化したのは3日間のみ。そこで学園は急遽協議した。
その結果、翌日はフィールドと訓練機の整備の為に臨時休校とし、残りの2日間は前倒しで授業を行う事にした。
臨時休校となった、その日。
夏輝達の姿はウイング社にあった。
ウイング社には実験用に使われるアリーナが2つある。 一般的に使われるのは、本社に隣接する共用アリーナで、此方はウイング社のみならず、申請すれば他社も使用することの出来るものだ。 そしてもう1つが地下に存在する秘密アリーナだ。此方は夏輝達が使う専用アリーナとなっている。
そして今、地下アリーナのフィールドにシャルの姿があった。今のシャルは黒髪のショートカットに紅い瞳になっていた。美兎特製のナノマシンにより外見が変化していたのだ。更に眼鏡をかけており、以前の雰囲気はまるでなかった。
『それじゃあシャルちゃん、展開してみて。』
管制室にいる美兎からの指示にシャルは従って
「おいでナハト!!」
首のペンダントが耀き、青と白を基調とした完全装甲型のISが現れる。簪のザムジードに近い重装甲型のISだ。
『昨日に比べてどうだい?バランサーを調整して重心を少し前にしたんだけど。』
「纏った感じは、問題無いと思います。」
『OK~!それじゃあ、少し歩いてみようか?』
シャルは言われた通り歩き出す。アリーナを1周したところで美兎が
『いいみたいだね。それじゃあ解除して戻ってきて。』
シャルはナハトを解除して管制室に向かう。夏輝はそれを見た美兎に尋ねる。
「美兎姉さん、あれがシャルの専用機[ナハト]?」
「そうだよ。シャルちゃんの
「・・・・・それはいいけど美兎姉さん、少しやり過ぎじゃ?」
モニターに写し出されたナハトの武装を見て呟く刀奈。そこには30を越える武装が内蔵、外付け、拡張領域に収められていた。
「それがさ、シャルちゃんこれ全部を自由自在に使いこなしたんだよ…まさに万能と言っていいね。」
「・・・・・並列思考が出来てるんだ。」
「並列思考というよりは、脳の瞬間的な処理能力と処理速度が桁違いなんだよ。」
簪の呟きを訂正する美兎
「それが高速切替の秘密ですか。」
虚が驚く。
「それで刀奈姉さん、シャルの編入手続きは?」
「終わっているわ。来週の月曜日に3組に編入するわ。ウイング社のテストパイロットにしておくわ。」
夏輝の質問に答える刀奈。そして簪が
「でも何故3組に?4組はダメだったの?」
「流石にこれ以上、専用機持ちを同じクラスにするのは少し問題があってね。だからと言って同じ1組も不味いし更に言えば、1組と合同授業の多い2組も除外すると、3組しか無いから3組にしたの。」
刀奈の説明に納得する簪。
「そう言えば、1年生は毎年7月に臨海合宿が行われるのですが、それに関して今議論されているらしいです。」
虚が思い出したかのように言う。それを聞き円華が尋ねる。
「どういう事だ?」
「今年は1年生のイベントで2度もトラブルが起きましたから、中止や延期といった選択肢を含めて開催するか検討することになったそうです」
「そもそも臨海合宿で何をするんだ?」
虚の説明を聞き再び質問する円華
「2泊3日の日程で、初日は自由行動なんだけど行き先は毎年同じ場所だから海水浴やビーチスポーツをしたり遊ぶの。それで2日目に野外におけるISの機動訓練や高速機動訓練、そして専用機持ちには国や企業から届くパッケージや新装備のテストがあるの。」
刀奈の説明に夏輝が
「毎年同じ場所だと、万が一の事態が起きやすいんじゃ?」
「それに関しては大丈夫よ。宿泊施設はうちの関係施設だから従業員の身元は勿論の事、施設も万全にしてあるから。それからテストする場所は1週間前からIS学園から人員を派遣して不審物探索に監視カメラやセンサーの設置、立ち入り規制をすることになっているわ。」
刀奈が答える。
「・・・・でも、今年は何かが起きそうな気がするな。」
この時は、夏輝の言葉が現実になるとは誰も予測していなかった。
????????
「それでは、VTSの実験は失敗という事ですねロイズ」
「申し訳ございませんフォーラン様。」
「例のゴーレムの件も含めて、あの方はお怒りですよ。」
「ほ、本当に申し訳ございません。」
「・・・・・ところで、ゴーレムの研究の方は進んで?」
「はい、現在はゴーレムをベースにして作り上げた無人機動兵ナグロッドの開発に成功しました。ただ、ISと比べますと性能は劣ります。」
「構いません。ようは、大量の無人機による一時的な制圧や牽制が目的です。あくまでも本命は、ISなのですから。それでISの方はどうですか?」
「やはりコアに関しましては、解明出来ない未知の部分が多く量産の見通しはたっておりません。外側を動かすだけの機動デバイスは出来ておりますが・・・・・」
「そのような物は、あの方は欲しておりません。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ロイズ、我々の目指す新世界創造の為にはISが必要です。しかしコアの数が限られている上に大半のコアは国が管理しており、入手はかなり困難です。肝心の篠ノ之博士が亡くなった以上は自力での開発が急務なのは解ってますね。」
「はい・・・・・・・・」
「貴女は引き続きコアの研究開発の続行を。私は彼女に命じてコアの回収を進めていきます。」
「わかりましたフォーラン様。」
「それから、何者かが最近嗅ぎまわっているようです。現存する張り子を一旦破棄し、新たな張り子を作りますので、張り子への出入りや通信は禁じます。」
「わかりましたフォーラン様。」
さて、ときどき登場します3年整備科の武装に関しては、幾つかモデルとなった物もありますし、オリジナルの物もあります。漢女棒は鉄○メイスとか。
ラウラの専用機に関して
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ガーリオントロンペ
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レイブレード
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ゲシュテルベン改