悪辣な転生者に裁きを   作:フライング・招き猫

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第23話  臨海合宿→2日目

 

 

 臨海合宿2日目

 旅館から少し離れた場所にある、岩場に囲まれた砂浜。

 

 ISを使っての屋外活動の実習。一般生徒組と専用機持ち組と2グループに別れて行われる。

 

 夏輝達は勿論、専用機持ちのグループにいる。だが、そこにはティナの姿もあった。

 

 「さて、お前達は今から国や企業が送ってきた新しい装備を使ってのテスト等を行って貰う。それぞれのコンテナの前に移動し、側にいる派遣されている技術者に従って進めるように。」

 

 千冬の言葉に従い、それぞれコンテナの前に移動する。

 

 「さてと、俺達はラウラの手伝いしかすること無いんだよな。」

 

 「私と本音さんは、セシリアさんの手伝いに行きます。」

 

 黒江と本音は、国際IS整備士1級免許を所持しているので、単独でISの整備を行う事が出来るのだった。

 

 百春と箒は、倉持から来ている技術者がいるコンテナの前にいる。

 

 そしてウイング社のコンテナの前には、一人の白衣を纏った女性・・・・美兎がいた。

 

 「さて、こうして顔を合わせるのは初めてだったね。私がウイング社のIS開発部門室長の更識美兎です。それでは、今回依頼を受けて製作しました第3.5世代型ISのゲシュテルベンだよ。」

 

 コンテナが開き、漆黒のISが姿を現す。

 

 「さあさあ、最適化と一次移行をするから乗った乗った!」

 

 ラウラは促されながらゲシュテルベンを纏うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ティナはアメリカの技術者達のいるコンテナの前に来ていた。

 

 「さてアメリカ代表候補生ティナ・ハミルトンさん。貴女に現時刻を持って専用機を与えます。」

 

 コンテナが開くと、そこには見馴れたファルコンがあった。いや、ファルコンに似ているが少しだけ形状が違っていた。特に背中のスラスターは可動式に見えた。

 

 「これはアメリカが開発した先行試作量産型第3世代ISトムキャットです。」

 

 「先行試作量産型ですか?」

 

 「そうです。ファルコンをベースにして性能を上げ、機能性のみならず操作性を重視した、量産を前提とした機体です。それでは最適化と一次移行の作業に入ります。搭乗してください。」

 

 ティナは言われるままにトムキャットに乗る。そして最適化の作業が始まる。

 しかし最適化の作業が終えようとした時だった。技術者の一人のスマホがなり、電話に出た技術者の顔色が見る見る青くなっていくのがわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 千冬達は倉持のコンテナ前に来ていた。だがそこにいた技術者は以前来た者ではなかった。

 

 「ん?担当者が変わったのか?」

 

 「・・・・・・・・はい、以前の担当者は一身上の理由により先月末をもって退職しました。私が新たな担当者になります。」

 

 「そうか、それでどのような装備をもってきたのだ?」

 

 「先ずは、お二人のISのメイン武器となります。仮装備させていた雪片弐式と雪片弐式改の代わりにお渡しする雪片参式です。ただし、それぞれ性能が少し変わっております。まず、織斑君の雪片参式白蓮(びゃくれん)は従来通りに疑似零落白夜を刃に展開させます、此方はSEの消費率を多少抑える事が出来ました。次に篠ノ之さんの雪片参式赤蘭(せきらん)は疑似零落白夜を斬撃として飛ばす事ができます。つまり、織斑君は近接での零落白夜、篠ノ之さんは射出での零落白夜となります。」

 

 「何故、別々に分けた?オリジナルと同じ零落白夜搭載の雪片で良かったのじゃないか?」

 

 「これは新しい雪片を作る為には、どうしても射出式零落白夜という機能の実戦データが必要なのです。」

 

 「その為に篠ノ之の雪片参式を射出型にしたという訳か。・・・・・・まあ、いいだろう。それで他には?」

 

 「後は、サイズと形状は違いますが脚部に追加で装着する機動制御ブースターです。」

 

 「なるほど、制御と加速を強化するためのものか。他には?」

 

 「・・・・・・先に断っておきます、これは副所長が作った物で我々開発部は一切関与していない物です。」

 

 そう言って技術者はコンテナを開ける。そこにはドラム缶程の大きさのドローンらしき物があった。

 

 「・・・・・・・先に聞くが、このドローンのような物は何なのだ?」

 

 「フリー・エレクトロン・キャノン(遠隔操作型・自由電子レーザー搭載型衛星砲)の試作モデルです。あくまでも試作モデルなのでドローン形態にしてあります。」

 

 「・・・・・・・・とりあえず幾つか質問するが?」

 

 「威力に関してですが、並のISなら一撃で落とす事が出来ます、無論命中すればという前提ですが。射程に関してですが、理論上は20kmまでは威力を保ったまま使用出来ます。 照準に関してはISのハイパーセンサーとリンクした専用のバイザーを通して行います。」

 

 千冬が質問してくる事を予測した解答をする技術者。だが、その表情は優れない。 その表情を見て千冬は察した、技術者もこの武装の馬鹿さ加減を認識している事を。それでも、上司からの指示故に断れずに持ってきて説明しているのだと。

 

 「これはあくまでも私の独り言として、聞き流してください。倉持技研では固定しての実験でした。ドローンでの発射実験は行ってません。これは副所長命令で行われませんでした。」

 

 流石に千冬も絶句した。それは兵器としての実証実験が行われていないことになるからだ。だが、技術者を責める事が出来ないのもわかっていた。

 

 「・・・・・・これは、そのまま持って帰ってくれ。私が拒否したと言え、文句は私に言えと。」

 

 「・・・・・・・ありがとうございます。」

 

 「とりあえず雪片参式とブースターの装着を頼む。」

 

 千冬に言われて作業にかかる技術者。それを横目に千冬は夏輝達の方に視線をやる。

 

 (あれが、ドイツがウイング社に依頼したらラウラの専用機か。)

 

 ゲシュテルベンを見ながら美兎に視線を移す。

 

 (・・・・・・・見れば見るほど外見こそ違えど、束に通じる雰囲気を持っているな。・・・・・だが束はあの時に死んだ、痕跡も確り残っていた。・・・・・・・だが心の何処かで未だに束の死を受け入れ・・・・・いや、納得していない。何故だ・・・・何故なんだ)

 

 美兎を見ながらひたすら悩む千冬だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、見られている事には気づいていながらも、全く気にしていない美兎は作業を続けていた。

 

 「ほいっと!これで完了したよ、どんな具合だい?」

 

 「・・・・・悪くない・・・寧ろレーゲンと同等・・いや、それ以上の感覚だ。何より凄く馴染む、ずっと使っていたような感覚だ。」

 

 「それもその筈だよ、その娘のコアは君が乗っていたレーゲンの物なんだから。馴染むのも早い筈だよ。」

 

 「機体が変われば、コアもリセットされると聞いていたが?」

 

 「基本的には合っているけど、パイロットとコアの親和性が高い場合は当てはまらないんだよ。例え機体が変わってもコアはパイロットの事を覚えていて、機体とパイロットが馴染むように働きかけるんだよ。」

 

 「そんな事が・・・・・・」

 

 「さてさて武装について説明するけど、バイザーに武装一覧表を呼び出してごらん。」

 

 ラウラは言われた通りに武装一覧表を呼び出して驚く。

 

 「えっ? AICがあるのですが?」

 

 「ドイツからデータの提供があってね、此方で解析して搭載させてもらったよ。ただ以前の物とは色々違うところがあるから説明するね。先ずは視覚照準によりポイントを指定し集中してAICを発動させる。すると指定した箇所を中心とした直径5mの球体としてAICを展開出来るの。1度展開すると集中しなくても10秒間は持続するわ。」

 

 それを聞いてラウラは驚く。AICの欠点として集中し続けなければ効果が切れてしまう事にあったからだ。

 

 「それだけじゃないよ。球体の大きさを収縮することで拘束力が増すわ。」

 

 美兎の説明を受けながらも、他の武装にも目を通していくラウラ。

 

 「わかりました。しかし、この機体は凄いですね。ここまでバランスの取れた機体とは。」

 

 「それじゃあ、一通り武装のチェックを始めようか?」

 

 美兎がそう言った時だった。

 

 「た、大変ですが!!織斑先生、ミューゼル先生!!」

 

 真耶が、タブレットを持って走ってきた。

 

 「どうした山田先生?」

 

 千冬とスコールは真耶に近づいていく。

 

 「こ、これを!!」

 

 タブレットを二人に見せる真耶。それを見て驚き顔を歪める千冬、逆に無表情となるスコール。

 

 「ハ、ハワイ「山田先生!」あっ?!」

 

 真耶が何かを言おうとするがスコールが遮る。それからはハンドサインを交えながら小声で話始める。

 それを遠目で見ながら夏輝は

 

 「美兎姉さん。」

 

 「ちょっと待ってね~。」

 

 美兎がタブレットを操作する。そこに刀奈と虚がきた。

 

 「おやおや~・・・・・なんか、馬鹿な事を仕出かした連中がいるみたいだね~。」

 

 そう言って美兎はタブレット夏輝達に見せる。

 

 「美兎姉さん、これって・・・・・」

 

 「みんなよく聞いて。たぶん、IS委員会から特務が与えられると思うよ。こっちでコアネットワークを使って対応してみるけど、あんまり期待しないでちょうだい。私の勘だけど、ネットワークから切り離してる可能性もあるから。」

 

 美兎がそこまで話をしたところで千冬が

 

 「全員、作業を一旦中断して急いで旅館へ戻り各自、教員からの指示があるまで部屋で待機だ。許可なく出た者は厳罰に処す、いいな! それから専用機持ち、並びに代表候補生は此方の指示に従って集合せよ。」

 

 そう指示を出す。教員達も千冬の指示に従い生徒達を誘導していく。

 

 専用機持ちと代表候補生は千冬の元に集合するのだった。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間を遡り、3時間前のハワイ沖

 

 アメリカの原子力空母エンタープライズは極秘実験を行おうとしていた。

 アメリカがイスラエルと協同開発した軍用IS[銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)]の稼働実験だった。

 パイロットのナターシャ・ファイルスの顔色は優れなかった。 彼女は福音が開発された当初からのパイロットで、最初の内は競技用ISとして開発が進められていたものが、突然軍用ISとして変更された事に憤りを感じていた。 

 アラスカ条約に違反しているにも拘わらず、軍用ISを開発する政府に対して思うところがあった。 それでも国に所属している以上は拒否する事は出来なかった。

 

 

 

 「よっ、どうしたのナターシャちゃん?」

 

 「リカルド。」

 

 そんなナターシャに声をかけたのは、今日のテストに参加するFー18のパイロットの一人、リカルド・シルベイラだった。

 

 「まあ気持ちはわからんでも無いが、軍属である以上はどうしようも無いぜ。」

 

 「わかっているさリカルド。頭では理解している・・・しかし、気持ちは割り切れない・・・・・」

 

 「仕方ねえな、この任務が終わったら何時もの店に飲みに行こうぜ。うちの連中が奢るからさ、何ならイーリスも呼んでさ!何なら後輩も呼んでもいいぜ。」

 

 そう明るく笑うリカルド。それを見て少しだけ笑顔をみせ

 

 「そんな事を言ってもいいの?私もイーリスも飲むわよ。それに後輩達も飲むわよ。」

 

 「かまわないさ、こんな時は! 何なら酔いつぶれてもいいぜ。ナターシャちゃんなら俺が朝まで介抱してやるぜ。」

 

 その瞬間にナターシャのビンタがリカルドの左頬に炸裂するの。

 

 「あんたは、何時も何時も!セクハラよ!!」

 

 「おっ、やっと何時ものナターシャちゃんに戻ったな。」

 

 左頬を押さえながら涙目でリカルドが言う。それを聞いてはじめてリカルドの思惑に気づいたナターシャは

 

 「全く、何時も何時も・・・・そうね、今日のテストで私に勝ったら考えてあげるわ♥」

 

 「ほぉーーいいぜ、乗った。これは今日は絶対に勝ちに行くぞ!」

 

 そう言ってリカルドはナターシャの唇に軽くキスをして立ち去るのだった。 突然の事に呆然としていたナターシャだが、キスをされた事に気づいた途端に顔を真っ赤にして叫ぶのだった。

 

 「リ、リカルド!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 愛機のFー18のコックピットで準備をしながらリカルドは、相方のトーマスに声をかける。

 

 「トーマス、準備出来たか?」

 

 「此方はOKだぜリカルド!それよりさっきの話は本当?」

 

 「あぁ、この任務が終わったらナターシャちゃんとイーリスと飲みに行くぜ。ただし、俺達の奢りだがな。その代わりに後輩の候補生を連れて来るように頼んであるからさ。」

 

 「それは何とも魅力的な話だな。俄然やる気が出たぜ。」

 

 「さてとそろそろ準備が・・・・・・ん?何だ、トラブルか?」

 

 リカルドの視線の先には福音の周囲で慌てる整備士や技術者の姿があった。

 

 「ちょっと様子を見て来るぜトーマス。」

 

 少し気になったリカルドはそう言ってFー18のコックピットハッチを開けて、機体から降りて行く。 

 福音の方に歩いて行きながらリカルドは近くにいた技術者に聞く。

 

 「おい、何があったんだ?」

 

 「そ、それが福音を起動させている最中にプログラムエラーが出たとパイロットから連絡が来たので調べようとしたのですが、外部からの操作を受け付け無くて、パイロットもISを解除しようとしているのですが、そちらの操作も全く受け付け無いそうです。」

 

 「なに?! それで、どうするんだ!」

 

 「今、外部にある緊急用の操作パネルを使って解除を試みています。」

 

 技術者がそう言った瞬間だった。福音が接続されていたコードを引きちぎり、動きはじめた。

 直感で何かを感じたリカルドは近くにいた技術者を押し倒しながら臥せる。 その瞬間だった。

 

 「WOooooooーーーーー!!」

 

 福音の翼から無数の光が放たれる。光は周囲にいた整備士や技術者だけで無く、整備中だったヘリ、さっきまでリカルドが乗っていたFー18、そしてトーマスのFー18を射ち抜いた。整備士や技術者は放たれた光で一瞬で蒸発し、ヘリや戦闘機は爆発するのだった。

 

 「がぁぁぁぁぁぁぁぁーーー。」

 

 間一髪避けたリカルドだったが、その背中にはレーザーが通り過ぎた時の熱や、戦闘機やヘリの細かな破片が落ちてきた。幸いにもパイロットスーツのお陰で大きな怪我や火傷は免れたのの、それでも爆風による打撲の痛みがリカルドを襲うのだった。

 

 何とか顔を上げると、福音は浮かび上がっていた。

 

 「ナ、ナターシャ?!」

 

 リカルドの声も虚しく、福音はエンタープライズから飛び立っていったのだった。

 

 「く、クソ!」

 

 痛みを堪えて立ち上げるリカルド。周囲を見てみれば、そこは地獄絵図と化していた。リカルドは咄嗟に押し倒した技術者に視線をやると、破片による切り傷はあるものの、命に別状はなさそうだった。

 自分のFー18の方を見れば、原形を留めておらず、燃え上がっており整備士が消火作業に取りかかっていた。そしてトーマスの機体も同じ状況だった。

 

 「トーマス・・・・・・」

 

 レーザーが直撃したらしくコックピットは跡形もなかった。 

 

 「クッソォォォォーーー!! 待ってろよナターシャ!!!」

 

 リカルドは痛みを堪えて、まだ無事な機体の方に走って行くのだった。

 

 

 

 

 




 
 本作品におけるアリーナについて

 本作品においてアリーナには開閉式の天井が存在します。
 アニメ等では天井がありませんが、この場合ですが雨が降った時はどうするのか?という疑問から始まりました。 アリーナのSEは雨が当たった時に減少するのでは?例え減少しなくても、雨の中で生徒は授業や訓練を行うのか? 
 設定で特に語られていないので、本作品ではそれらの状況を回避するためにドーム型にしました。

 これに対して色々と意見等があると思いますが、本作品の設定として何卒お許しを。


 
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