悪辣な転生者に裁きを   作:フライング・招き猫

5 / 29
第3話  発覚

 

 

 織斑家のリビング

 その日、百春は祭日と言うことで遅めの朝食をとっていた。 一夏を追い出してからというもの、百春はご機嫌だった。

 

 「さて、今日は鈴とのデートだし、遅れないようにしないとな。」

 

 原作通りに、今のところ進んでいる。一夏がやっていた役割を百春がしている事以外は。いや、一夏がしていなかった箒との結婚の約束や鈴との交際等、ある意味自分で原作の流れを壊しているのだが、本人は大丈夫だと思っていた。

 

 「あと、3年か。そうすればハーレムが!」

 

 その時、テレビの画面が乱れ始めた。

 

 「なんだよ、故障かよ!仕方ねえな、千冬姉に頼んで新しいの?! な、なんだ!」

 

 画面が切り替わり突然、束の姿が映し出されたのだ。

 

 「た、束さん!なんで、なんで束さんが?!」

 

 束が映った事で驚く百春。

 

 (そういや俺、束さんとあんまり面識が無いな。千冬姉と一緒に2、3回会っただけだったな。でも原作でも幼少期に頻繁に接触したという描写がなかった気がするし、まあいいか。)

 

 百春の中では千冬の弟であり箒の好きな相手だから、贔屓されていたという認識だった。

 画面の中の束の話を最初は聞き流していたが、

 

 「えっ?! 今何て言った!!宇宙に行く?! なんで!!」

 

 突然起きた事に混乱する百春。事態はどんどん進んでいき、宇宙船に乗って宇宙に飛び立っていった。

 

 「ちょっ、ちょっと待って!何でこんな事に!これじゃあ、俺の専用機が! いや、それどころか箒の専用機も!」

 

 やがて画面が替わって地球が映し出される。 そして衛星らしきものからミサイルが発射されるのが判った。

 

 「おい、何してんだよ! 何でミサイルが! で、でも大丈夫だよな、あの大天災の宇宙船だし・・・・・」

 

 だが、百春の思いもむなしく画面が突然砂嵐となり音声が途絶えた。 そして暫くして先程までやっていた朝の情報番組になっていた。

 

 「う、ウソだろ。こんな事って・・・・どうすんだよ。」

 

 結局、百春は鈴が家に尋ねてくるまで茫然自失となって立っていた。

 そして夕方になって帰宅した千冬から束の死亡が確認されたという事を聞かされるのだった。

 

 「ち、千冬姉。箒はどうなるんだ?」

 

 「おそらく重要人物保護プログラムから開放されてご両親共々、この町に戻ってくる事になると思う。」

 

 百春はそれを聞き複雑な気持ちになった。箒が帰ってくるのは嬉しい。だが、来るべき日になったとき箒がIS学園にいない事が決まってしまったからだ。何故なら箒のIS適正値はC。IS学園の合格ラインに無いのだ。そもそも原作では、箒は重要人物保護の元でIS学園に入学させられたのだ。つまり、それが無ければ箒はIS学園に入学できないのだ。

 

 (どうにかして、箒をIS学園に・・・・そうだ代表候補生になれば!)

 

 百春は自分が思いついた方法を実践するために動く事にした。 自分の転生特典がきっと力になると思い。

 だが、百春は知らなかった。自分の転生特典に何時の間にか制約がかけられていることに。そして、それを知らないばかりに、後に自身の悲劇を生むことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は流れて世間的には束が死んで3年後の冬

 

 東京都内の有名進学高校に既に推薦での入学が決まっていた夏輝はIS学園の一般入試を控える本音と黒江に勉強を教えていた。 勉強の合間に既に推薦入学を決めている簪とISの模擬戦もしていた。美兎から百春がISを起動させて全世界一斉に適正試験が開催される事を聞かされていたので夏輝は準備を怠らなかった。

 

 「ねえ兄さん、本当にその百春って男はISを動かすの?」

 

 「美兎姉さんが言うからには本当なんだろう。」

 

 「ふ~ん、そうなんだ。」

 

 そこに噂をしていた美兎が現れて

 

 「ヤッホー、ついにできたよ。量産型第3世代機が。」

 

 「どんな機体何ですか?」

 

 「刀奈ちゃんのガッデス、簪ちゃんのザムジードとは違うコンセプトの物だよ。宇宙用に開発している機体の技術をマイナーダウンした物を搭載した機体だよ。操作性と機動力を強化した汎用型のIS【ガーリオン】。」

 

 刀奈のガッデスはナノマシンを利用して水や氷雪を作り攻防に利用する第3世代型IS。簪のザムジードは高周波を利用した震動を攻防に使う第3世代型ISだ。それ以外にも虚には火を利用して戦うグランヴェール、本音には機体の損傷を修復し、エネルギー補給機能を備えたノルス・レイ、そして黒江には宇宙用ISの試作型アステリオンが既に渡されている。

 

 「それで発表は何時に?」

 

 「なーくんの入学が決まってからかな。」

 

 どうやら美兎は何やら画策しているようだ。

 

 「そうそう、なーくんの専用機も完成間近だから待ってね!」

 

 「ちなみに俺のはどんなの?」

 

 「そ・れ・は・出・来・て・か・ら・の・お・楽・し・み!」

 

 夏輝の質問に美兎はイタズラっぽく笑って出ていくのだった。

 

 

 

 そして、ついにその時がきた。時は3月の始め

 

『繰り返します。先程、世界初のISの男性操縦者が発見されました。発見された男性操縦者は織斑百春君、15歳。都内の中学校に通う男子中学生で、あのブリュンヒルデ織斑千冬さんの弟さんとの事です。この事を受けて国際IS委員会は全世界で同年代の男性に対してISの適正検査を行う事を決定しました。繰り返します・・・・・・』

 

 

 

 

 

 それから1週間後

 

 『臨時ニュースをお伝えします。先程、都内の中学校で行われた男性に対するIS適正検査で2番目となる男性操縦者が確認されました。男性の名前は更識夏輝君、都内の中学校に通う男子中学生で、現日本国家代表を勤めます更識刀奈さんの弟にあたるそうです。繰り返してお伝えします・・・・・・』

 

 それを見ながら美兎が

 

 「予定通り、それじゃあ色々と仕掛けますか!」

 

 

 

 

 IS学園 職員室

入学式まで、あと1週間に迫っている職員室では教員達が慌ただしく働いていた。本来今の時期は既にクラス分け・寮の部屋割り・年間行事の日程等も決まり、後は生徒の入学を待つだけとなっているはずなのだが、今年はそうはいかなかった。

 3月に世界初となる男性操縦者が立て続けに二人も見つかったからだ。 IS学園への入学は最速で決まったのだが、それからが大変だったのだ。

 世界各国から自国の代表候補生と同じクラスに、寮で同室に、はたまた別のクラスにしろ、という要請が、更に女性権利団体からは、IS学園に入れるな、死刑にしろ、刑務所に入れろ、研究機関でモルモットにしろ、といった要請が連日連夜入ってくるのだ。

 教員が総動員で事態の対処にあたった結果、クラス編成は何とか目処はつき、寮の部屋割りも一部を除き決まった。 それでも例年に比べて仕事のスケジュールが押しているので、教員達に休む暇はなかった。

 

 

 そんな中、千冬は二人目の男性操縦者の事を考えていた。 当初千冬は二人目が見つかったと聞いた時、百春の比較対象として貶める相手が出来たと思っていた。

 しかし、それが更識家の次期当主と知り断念した。

いや、それだけでは無かった。比較するにはあまりにも高い壁だったのだ。百春は優秀だ、文武両道に励み、それなりの成績を残している。 だが、それが霞んでしまう程、夏輝の成績が凄まじかった。

 

 (やれやれ、学園長の言うとおり別のクラスにして正解だな。ISに関しては兎も角、それ以外のところで明確な差をつけられているのではな。だが、ISとなれば話は別、私が百春に指導すれば立場は逆転する。ここはIS学園、ISでの成績が物をいうのだからな)

 

 そんな事を考えつつ、千冬の目に一人の女子学生の内申書が入る。

 

 (それにしても、百春に頼まれて箒を日本代表候補生に推薦したが、やはり代表候補予備生止まりか。適正値Cが大きく響いたか。操縦技術や知識、武道の腕前は私の保証が上手く効いたが、適正値だけはな・・・・)

 

 百春に頼まれて千冬は箒を代表候補生に推薦したのだ。千冬の推薦という事もあり無試験での候補生入りになるかと思われたが、身体測定の際に出たIS適正値がCというのが災いして候補予備生になってしまったのだ。 それでもIS学園には入学することが出来たのが不幸中の幸いだった。

 

 そんな事を考えていた千冬に同僚教員の山田真耶が声をかけてきた。

 

 「織斑先生、先生が席を外している間に倉持技研の方から電話がありました。」

 

 「ありがとう山田先生、織斑の専用機の事だね。」

 

 「確か、IS委員会からの指示で専用機が与えられるんですよね。」

 

 「あぁ、データ取りが主な目的だろうがな。」

 

 束がいない以上は百春の専用機を企業に頼まなければならないのだ。

 

 「そう言えば、そろそろウイング社の記者会見が始まりますね。」

 

 そう言って真耶は職員室に設置してある大型テレビに視線をやる。つられて千冬もテレビを見るのだった。

 

 「でも凄いですよねウイング社は、僅か3年で日本国内で有数のISメーカーになるんですから。」

 

 「あぁ、3年前に突然出来た会社が半年後に発表した第2世代機【アルブレード】。あの汎用性には驚かされた。打鉄やラファールが霞んでしまった。」

 

 そのウイング社が記者会見を行う、いったい何を発表するのか、いやがうえにも注目してしまう。

 

 『本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。 御存知の方もおられるとは思いますが、自己紹介をさせて頂きます。私はウイング社、IS開発部門室長を勤めます更識美兎と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。』

 

 テレビの記者会見場に現れた紺色のスーツの上に白衣を纏った美兎が挨拶をして御辞儀する。

 千冬は美兎を見る度に束を思いだして仕方なかった。周囲に対する対応や言葉遣い、礼儀作法、どれひとつとっても束とは正反対なのだが、その作りだす物に何か束に通じる物を感じたのだ。 

 

 (やはり一芸というか、あの類いの物を作り上げる人種というのは似たような雰囲気を持つのだな。)

 

 千冬は美兎と束が別人と認識していた。

 

 『さっそくですが、本日お集まりいただいたのは理由がございます。御存知の通り、わが社はISの開発をしており既に6機の第3世代機を作り上げております。そしてそのノウハウをフィードバックした結果、この度量産型第3世代ISの開発製造いたしました。それでは、御覧ください、わが社が作り上げた量産型第3世代IS【ガーリオン】です。』

 

 美兎の紹介と共に記者会見場の屋根が突如開き、そこから全身装甲型のISが飛来して美兎の側にゆっくりと降りてきた。

 

  突然現れたISにどよめく会場、一斉に焚かれるフラッシュの嵐、矢継ぎ早に繰り出される質問、美兎はそれらを遮り

 

 『さて、先ずは皆さんにこのガーリオンのスペックについてご紹介いたします。先ずは・・・・・・・』

 

 美兎のガーリオンの説明がテレビの中で続く中、IS学園の職員室は鎮まりかえっていた。それほど迄に衝撃の内容だった。

 

 「お、織斑先生・・・・りょ量産型の第3世代機って・・・」

 

 「これは世界中が荒れるな。殆どの国では、まだ試作段階のコンセプト機が殆どだ。なのにいち早く量産型を作り上げた、となれば業界のみならず国の力関係にも大きく影響を及ぼすぞ。」

 

 そこに別の職員が、

 

 「織斑先生、学園長がお呼びです。至急学園長室に来てくださいとの事です。」

 

 「織斑先生・・・・」

 

 「タイミングからみて、あれの事だろう。」

 

 溜め息をつきながら千冬は学園長室に向かう。

 

 

 

 「織斑です。」

 

 学園長室の前についた千冬はドアをノックして来訪を告げる。

 

 「どうぞ、入ってください。」

 

 「失礼します。」

 

 千冬はドアを開けて一礼して入室する。部屋の中央にある椅子に此方を正面にして学園長である轡木十蔵が座っていた。だが、室内にいたのは十蔵だけではなかった。その右側のソファーに特徴ある水色の髪の少女が座っているのがわかった。そしてそれが誰かは千冬には直ぐにわかった。

 

 「緊急のお呼び出しとの事で参りましたが?」

 

 千冬は刀奈がいることを尋ねずに十蔵に呼び出した用件を尋ねた。

 

 「織斑先生も、これは御覧になっていましたね。」

 

 テレビの画面ではガーリオンによるデモンストレーションが行われていた。

 

 「はい、それが何か?」

 

 「今しがた更識生徒会長から、ある申し出がありました。」

 

 「更識からですか?」

 

 「はい。」

 

 千冬は十蔵に促されて、刀奈の反対側にあるソファーに座る。千冬が座ったのを見て刀奈が口を開く。

 

 「今回、量産型第3世代機の発表と共にIS学園にガーリオン3機を無償譲渡いたします。教員用の機体としてお使いください。」

 

 刀奈の申し出に言葉を失う千冬。それも仕方無い事だ、今しがた発表された最新型を全世界に先んじてIS学園に無償で納入するというのだから。

 

 「更識さん、単刀直入に聞きます。何故ですか?」

 

 「答えは簡単です。更識家の次期当主である弟の更識夏輝の安全をより確実な物にするためです。そのためならば、量産型第3世代IS3機は決して高くはありません。」

 

 刀奈の話を聞き、千冬は納得した。次期当主である夏輝の安全を最大限に確実な物にする為には、教員が警護や非常事態に使うISに不安が残っているのだと言うのだ。それも仕方無い事だ。現在学園にある殆どの機体が第2世代の打鉄やラファール、下手すれば第1世代機になるのだから。

 

 「これはあくまでも、教員用として譲渡される物です。間違っても生徒への貸出は厳禁とされていただきます。それから校外への持ち出しも基本的に厳禁とさせていただきます。よろしいでしょうか?」

 

 「わかりました、詳しい内容は書面で契約を交わす事でよろしいでしょうか?」

 

 「わかりました。」

 

 「さて、織斑先生。このガーリオン3機ですが、教員全員で一度試乗した後、扱う教員を前もって決めておいてください。」

 

 「わかりました。」

 

 千冬は十蔵の言わんとすることを理解した。使用者を事前に決めておく事で非常事態における。搭乗機争いを無くそうというのだ。そしてもう1つ、千冬は外されているという事を。千冬は非常時における総指揮をとる、現場監督に任命されているからだ。

 

 「それでは私はこのあと所用がありますので、ここで失礼します。」

 

 そう言って刀奈がソファーから立ち上がり一礼すると部屋から立ち去ろうとする。

 

 「まて、更識。1つ、いや2つ殆ど聞きたい事がある。お前の弟はどういう感じの男なのだ?」

 

 千冬は刀奈を呼び止めて、夏輝について質問した。千冬はどういう訳か刀奈を苦手としていた。掴み所の無い性格、そして千冬とは違う意味でのカリスマ性を持つ刀奈は多くの生徒や教員から支持を得ている。ただどういう訳か千冬に対してはかなり辛辣な態度をとることが多い。クラスの担当教員では無かったものの、受け持った授業で何度かやり込められた事があった。

 ちなみに1個上の学年に在席する虚にも千冬はやり込められていた。 それ以来、千冬は刀奈と虚を苦手としていた。

 

 「夏輝ですか?そうですね、月並みの言葉で言えば優等生ですね。文武両道、性格は温厚、だけど決して甘いだけでなく、時には厳しさをみせます。私から今の段階で説明出来るのはこれくらいですよ。」

 

 「・・・・・わかった、2つ目は更識夏輝には専用機が与えられるのか?」

 

 「はい、既にウイング社が制作に取りかかっています。美兎姉さんが張り切っていましたね。今までで1番の傑作を作ると。それから、夏輝は適正が判明してからウイング社でISの勉強と訓練を積んでいます。現段階での搭乗時間は既に100時間を越えてます。」

 

 その答えに千冬は驚く。適正が判明してから3週間しかたっていない。なのに既に1年生一学期の合計搭乗時間を上回っているからだ。

 

 「ちなみに私は今日から3日間付きっきりでコーチをすることになってますので。それでは失礼します。」

 

 そう言って刀奈は部屋を出る。

 

 「が、学園長、これはあまりにも差ができています。何故、更識にあのような許可を!」

 

 千冬はこの一件に十蔵が絡んでいる、いや十蔵が許可を与えたのはわかった。

 

 「何を言っているのですか織斑先生、私は弟さんがIS学園に入学が決まった時点、すなわちIS適正がわかった2日後に織斑先生に言ったはずですよ。ISに関する勉強と訓練の為に国際IS委員会日本支部に預けてはと。ですが、織斑先生は入学してからでも訓練は間に合うし、勉強も参考書を渡しての自習で十分と仰ったじゃありませんか。」

 

 十蔵の言葉に絶句する千冬、確かにそう言った記憶はあった。だが、その時はまだ夏輝という存在が確認されていなかったからだった。自分の失態に千冬は自責の念を抱いた。

 今からでは何もかもが手遅れだ。今からでは日本支部での訓練は間に合わない。せめてもの望みは百春が参考書の勉強をしっかりとしている事だけだ。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。