悪辣な転生者に裁きを 作:フライング・招き猫
1年4組
4時間目の授業が始まる時、スコールが
「さて、授業を始める前にクラス代表を決めさせてちょうだい。クラス代表というのはクラス委員長と同じ事をすると思ってちょうだい。そしてもう1つ大事な役割が、再来週に行われる学年別クラス対抗戦にクラス代表として参戦してもらう事。ここまでで質問は?」
スコールの言葉に誰も何も言わない。
「それじゃあ、自薦他薦は問わないわ。でも参考までに、このクラスには日本代表候補生の更識簪さんがいるわ。そしてウイング社の企業代表操縦者として布仏本音さん、布仏黒江さんがいるわ。さらに専用機持ちとして更識夏輝君がいます。ちなみに今の四人は実技試験で教員に勝利しています。」
そこまでスコールが言うと
夏輝・簪・本音・黒江の名前が次々と上がる。
「さて、名前が上がったのは四人。どうやって決めようかしら?」
スコールがそう言うと
「先生、もし可能なら私が引き受けたいのですが?本音は生徒会役員ですし、黒江のISは特殊で、こういった事には向かないです。となれば兄さんか私になるのですが、ここはよりクラスの勝利を確実にするために私に任せていただけないでしょうか?」
簪の発言に、暫くクラスに静寂が訪れるが、一人、また一人と拍手を始めると、クラスに割れんばかりの拍手が響く。 それは簪をクラス代表として認めた証でもあった。
「それじゃあ、クラス代表は更識簪に決定。そして更識さんをサポートするために更識君と布仏黒江さんをクラス代表補佐に任命します。」
スコールがそう言ってこの場を締めくくった。
昼休み
校舎屋上に夏輝達の姿があった。昼食を取ろうと学食に向かおうとしていたのだが、そこに刀奈から連絡があり屋上に来たのだ。
屋上にはレジャーシートが拡げられており、刀奈と虚が重箱を広げ待っていた。
「いらっしゃーい!今日はみんなの入学祝いに虚ちゃんと一緒に御弁当を作ったの!」
「わーーい!豪華な御弁当だーー!」
本音がいち早く飛びつく。
「本音姉さん、はしたないですよ。」
「恥ずかしい、あれが私の従者なんて・・・」
「まあまあ、あれが本音のいいところなんだし。」
「夏輝様、本音を甘やかさないでください。」
「まあまあ虚ちゃん、いいじゃないの!」
「御無沙汰しております。刀奈さん、虚さん。ところで、私もご一緒してよろしかったのでしょうか?」
御辞儀して刀奈と虚に挨拶するセシリアに刀奈は
「久し振りね、セシリアちゃん。遠慮しなくていいわよ。一杯作ったから。さあ座って座って!」
刀奈が進めて全員がレジャーシートに座り、昼食が始まる。
「ところでセシリア、1組のクラス代表は誰になったんだい?」
おにぎりを片手に夏輝の問いにセシリアはサンドイッチを口に運ぶのを止め、少し表情を歪めて
「それなんですが、その・・・・私と篠ノ之さんと織斑さんとで、来週の月曜日の放課後に試合をして決める事になりました。」
「「「「「「えっ?!」」」」」」
全員が驚く。
「いったい、何があってそんな事に?」
ウインナーを皿にのせながら刀奈が尋ねると
「まず、事の発端は織斑先生がクラス代表を決めるのに自薦他薦を求めた事です。」
「それはうちのクラスでもやったよ。」
右手におにぎり、左手に唐揚げを持ち、本音がそう言った。
「まあ、よくあるパターンですから。」
全員分のお茶を用意しながら虚が毎年どの学年どのクラスでも行われると言った。
「まず私がクラス代表に自薦しました。その後、クラスメイトの殆どが珍しさから織斑さんを推薦しました。それで終わりかと思ったところに織斑先生が篠ノ之さんの名前をあげて候補者が3人になりました。」
「「あの問題児の?!」」
刀奈と簪が驚く。
「どういう事だ?」
夏輝が聞くと
「実は、篠ノ之さんは日本代表候補予備生なの。でも合宿とか合同訓練の時とかの態度に問題があって。」
刀奈の言葉を継いで簪が
「やれ[遠距離攻撃は卑怯だ]とか、[攻撃を避けるな]とか、[銃なんか使わずに刀で戦え]とか、[刀こそ日本人の本分]とか、言って問題起こしている。でも模擬戦では、それが災いして誰にも勝てない。だから候補予備生の最下位から上がれない。」
「よく、代表候補予備生を辞めさせられませんわね?」
セシリアの疑問に刀奈が
「彼女を代表候補予備生に推薦したのは織斑先生なの。本当は代表候補生にしたかったみたいだけど、篠ノ之さんのIS適正Cが引っかかって候補予備生になったの。例え候補予備生からのスタートだとしても本人が努力して実力をつけていけば代表候補生にもなれたかもしれないけど、彼女は刀への拘りと言うか、剣道に拘り過ぎて前に進む事が出来ない。だけれども、推薦者が推薦者だけに辞めさせる事も出来ないの。」
「難儀だな。それでセシリア、それからどうなったの?」
「はい、それから多数決で決めるのかと思ったのですが織斑先生が、IS学園ならISを使って決めようとおっしゃってクラス代表決定戦を行う事になったのです。」
「・・・・・・何を考えているのかしら織斑先生は?」
刀奈の疑問に虚が
「確かに、イギリスの代表候補生に日本の代表候補予備生、それに素人同然の男性操縦者、勝負は目に見えてます。」
「・・・・・それをひっくり返す、何があるのかな・・・考えられるのは専用機だけど・・・」
夏輝の言葉に刀奈が
「織斑君に日本政府の指示で専用機を渡す算段にはなっているみたいよ。開発元は倉持技研よ。」
「倉持って、まだISの開発と研究してたんだ?」
「か、簪お嬢様。流石にそれは・・・」
「しょうがないよお姉ちゃん、かんちゃん倉持嫌いだもん。」
「何があったのですか?」
「それが簪が丁度1年前、代表候補生の序列3位にあがった頃に倉持から専用機制作の打診が来たんだ。簪の専用機は元々ウイング社で作る予定になっていたのに、横槍をいれてきてね。国際IS委員会日本支部の仲裁もあって、とりあえずどんなコンセプトか見に行ったんだけど、これが酷い機体でね。簪が文句を言ったらウイング社とかの悪口を散々言い出した挙げ句に、代表候補生を降ろすと脅しをかけたんだ。」
夏輝の説明にセシリアも呆れる。
ちなみに、これを聞いた夏輝、刀奈は烈火の如く怒り、倉持に抗議に押し掛けようとしたのだが、その前に美兎が動き、簪に暴言を吐いた職員の事を徹底的に調べあげて、個人情報と共にこれまで行ってきた悪事(パワハラ・セクハラ・経費流用等)をネットに拡散し、その職員は解雇されることとなった。
「もし差し支えが無ければ、どのよう機体だったのかお聞かせ願いませんか?」
「機体名は【打鉄改式第参型】、剣一本だけを装備した高機動型のIS。」
簪の説明にセシリアが呆れる。
「剣一本って本当ですか?他に装備は?」
「無い。本当に剣一本だけ、コンセプトは暮桜の後継機。」
暮桜の名前を聞きセシリアは唖然とする。
「暮桜の後継機・・・そんな物を作ったのですか倉持技研は。ですが、それだと操縦者の技量に大きく左右されるのでは?」
「左右する処じゃない、操縦者の技量に殆どおんにぶだっこの機体。織斑先生並みの技量が無いと十全に扱えない。」
簪の説明を聞いてセシリアは
「余程、ブリュンヒンデの呪縛に囚われているのですね。」
「仕方無いわよ、倉持技研は暮桜に、それをベースにして作られた打鉄、2つの巨頭が存在する以上は、その呪縛からは中々逃れられないわよ。そうなると織斑君に渡されるのってまさか・・・・」
刀奈がそう言う。
「「「「「「まさかね・・・・・・・・・」」」」」」
倉持技研
「なあ、これが一人目の男性操縦者に渡される機体か?」
「あぁ、そうらしい・・・・・」
二人の男性の前にある、一機のIS。ただその姿は異様だった。
「でもさ、副所長は何だってこんなISを?普通に考えれば打鉄改式だろ?」
「さぁ、何でも突然この機体のコンセプトが浮かんで来たんだって。」
「まあ、確かにさ打鉄改式よりマシだけどさ・・・・・」
「剣一本よりマシだけど、これはこれで・・・・」
機体を前に絶句する二人。
「まあ、あのブリュンヒンデの弟が使うというし、いいんじゃないか?」
「そういや、もう一人の男性操縦者の機体は、どうなるんだ?」
「あぁ、そっちはウイング社が作るそうだ。」
「げっ?! それで副所長の機嫌が悪かったのか。」
「そういう事。うちで作るつもり腹積もりだったしな。」
「でも、何でウイング社に?」
「お前、知らないのか?二人目の男性操縦者は、あの更識の関係者だぞ。」
「更識って、ウイング社の開発室長の!」
「それだけじゃないよ、ウイング社その物を更識家が経営してるんだよ。」
「・・・・・それじゃあ、何処にもうちの入り込む余地無いじゃないか。」
「まあな。」
「それにしても副所長もやりたい放題だな。」
「仕方無いよ、篝火所長が例の一件の責任とらされて謹慎の上に、外部団体に無期限出向なんだし。」
「でもさ、例の一件も元々は副所長の指示だったんだろう。何で篝火所長が責任とらされるんだよ?」
「知らないのか、副所長が全ての責任を篝火所長に押し付けたんだよ。書類や何かを偽造してさ。」
「おい、それって?!」
「だけど、篝火所長も自分の監督不行き届きを認めてさ、反論せずに受け入れたんだ。」
「・・・・・・何か嫌になるな。」
溜め息をつく二人の男性。それを見続けるIS。
※この作品において、以下の独自に設定がございます。
ISは篠ノ之束が原型として作った雛型を元に各国で独自に開発が進みました。
篠ノ之束の失踪は第1回モンドグロッソの1年前です。
暮桜は、篠ノ之束が残していたISの設計図を元に倉持技研が作り上げた物。