悪辣な転生者に裁きを   作:フライング・招き猫

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 後書きの補足設定の補足

 後書きの補足設定に書いてありますが、IS学園の保有しているISコアは32個です。保有している全ての機体にコアを装着しているわけではありません。

 学年別トーナメント等のイベント時には試合の終わった生徒の機体コアを取り外して、待機中の機体に付け替えております。



第6話  放課後

 

  

 放課後 1年4組

 

 授業が終わり、部活に行くもの、自主トレにいくもの、とクラスメイト達は動く。

 夏輝・簪・本音・黒江は生徒会室に向かう為に教室を出た。刀奈から放課後に生徒会室に来るように求められていたからだ。 だが、教室を出たところで

 

 「よっ! ちょっといいか?」

 

 軽薄そうな声で夏輝を呼び止める男の声・・・百春だ。千冬に止められているにもかかわらず、接触を試みる百春。

 

 「何か俺に用かい、織斑百春君?」

 

 夏輝が振り向き百春と顔を会わせた瞬間だった、百春の顔が驚愕に歪む。

 

 「い、一夏?!・・・・・・いや違う・・・・」

 

 百春は夏輝の顔を見た瞬間、それが一瞬だけ一夏に見えた。だが、良く見ると一夏とは別人だったので安心する。

 

 「あっ?! すまない、ちょっと知り合いに見えてしまってね。でもやっぱり違ったよ。でも、どうして俺の名前を?」

 

 「簡単だよ、この学園には自分以外では君しか男子生徒はいない。それで、もう一度尋ねるけど何か用事かな?」

 

 当然の事を言われて百春も納得する。

 

 「いや、その、この学園に二人しかいない同じ男性操縦者だから出来れば仲良くしたいなと・・・」

 

 「残念だけど、私は君と仲良くするつもりはないよ。君がISを動かしたお陰で、私は望まぬ進路をとらされた。こう言っては何だが、私は君を恨んでいる。」

 

 冷たい声で伝える夏輝。これは百春が接触してきた時に決めていた対応だ。織斑姉弟との接触はなるべく避ける為に。全ては夏輝を守る為に。だからこそ、クラスも同じにならないように学園長に頼んだのだ。

 

 「えっ?!」

 

 「それに私はあまり目立ちたく無い。只でさえ今回の事で注目を浴びている、それなのに二人で一緒にいれば余計に目立ってしまう。私は静かで平穏な学園生活を送りたいので。」

 

 そう言って夏輝達は、立ち去る。

それをただ呆然と見送る百春。

 

 (・・・・・・・あの態度から考えると転生者の線は無いな。同じ転生者ならここに来たことを喜んでいるはずだし、何より目立ちたく無いとか望まぬ進路と言っていたしな。となるとイレギュラーな存在ということか。それにしても更識か・・・・・楯無と簪を引き込むには邪魔な存在だな。何とか夏休み終わりまでに始末しないとな。)

 

 

 百春は夏輝を転生者ではなくイレギュラーな存在と思い、自分のハーレム生活を確実にするために夏輝の排除を誓う。

 何より百春は自分が貰った特典の1つ、絶対的な信頼を得る力を信じていた。 百春は催眠操作系や洗脳系ではなく、刷り込みによる信頼にしたのは、無理矢理従わせるのではなく信頼という絆により、自らの意思で百春の考えに協調したり、百春の行動を指示したり、協力することが、周囲に不信がられる事が無いと考えたからだ。

 しかし、百春は理解していなかった。結局は洗脳や催眠操作と何ら変わりの無い能力だということを。

 他人に信頼という名の首輪を着けて認識を改変して無理矢理従わせていることを。

 自分が絶対の自信を寄せる能力が自分を転生させた神の上位にあたる神により制約がかけられていることをいまだに知らない百春。そして何より夏輝がいることで、その能力が十全に発揮される事が出来なくなっていることも知らない。もう彼の思い通りに事が運ぶことはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室

 

 ドアをノックして室内に入る夏輝達。

 

 「刀奈姉さん、わざわざ放課後に俺達を呼び出してどうしたの?」

 

 「うん、1つは部活の件なの。IS学園では生徒は何かしらの部活に所属することが決められているの。本音は生徒会に所属しているから免除されるんだけど、三人はどうするのかなって思って。もし特に無ければ生徒会所属にしたいんだけど?もっとも簪ちゃんはクラス代表との兼ね合いがあるから、万が一の時の非常要員扱いになるけど。」

 

 「まあ、変に勧誘されたり客寄せパンダや見世物にされない為にも、それが無難かな。」

 

 「夏輝様が、そうなさるなら私も御一緒させていただきます。」

 

 「私もそれでいいよお姉ちゃん。」

 

 「よかった。で、もう1つは夏輝の専用機何だけど、美兎姉さんから連絡がきて完成したから明日の放課後に持って来るって。」

 

 「美兎姉さんが来るんですか?」

 

 「そう、来るって。」

 

 夏輝の疑問に刀奈が答える。

 

 「お姉ちゃん大丈夫なの?美兎姉さんがここに来ても、織斑先生がいるんだよ?」

 

 「アリーナは生徒会で貸切状態で予約を入れてあるし、立ち会い教員にはミューゼル先生にしてあるから大丈夫。それに念のために織斑先生には明日の昼から用事で学園から離れてもらうように学園長に根回ししてあるから。」

 

 「もうそこまでしてたんだ。」

 

 あまりの準備のよさに呆れる夏輝達。刀奈の後ろで虚が申し訳なさそうに頭を下げている。刀奈の行動を止められなかったからだろう。

 

 「そこまで準備万端なら大丈夫か。それにしても美兎姉さん俺の専用機がどんなのか幾ら聞いても教えてくれないんだけど、何か聞いてる?」

 

 「いいえ、聞いてないわ。」

 

 「美兎様が、一人でずっと作っていましたので誰も詳細は・・・・」

 

 刀奈と虚の答えに夏輝は

 

 「結局、明日にならないとわからない訳か・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 職員室

 

 千冬は百春への特別指導の為にアリーナの予約状況を調べていた。

 

 

 さて、ここでIS学園のアリーナについて説明しておく。

 IS学園のアリーナは全部で9棟ある。そのうち1棟は教員専用の地下アリーナの為に生徒は使う事は出来ない。更に第8アリーナは企業や国が装備や専用機の引き渡しやテストをする為に優先的に使用することが決められており、生徒は当日の放課後にならないと使用可能になるのかわからない。

 また、アリーナの予約も専用機持ちや代表候補生に優先予約権が与えられている(それでも週に2回、後は一般生徒と同じ扱い)為に一般生徒のアリーナ予約の倍率はかなり高くなっている。

 

 アリーナは月曜から金曜まで午後4時から6時までの2時間と土曜の昼1時から6時まで訓練等に使う事が出来る。ちなみに土曜は2部制になっており前半と後半で使用が区切られている。

 そしてアリーナ1棟に対して最大6組(1組最大2名)まで使用することができる。

 無論、これもイベントや試験前では条件が変わってくるが概ね前述の通りに運用されている。

 更に言えば、訓練機の数にも限りがあるために最大人数でアリーナが使用される事はあまりない。

 

 

 

 (さて、来週の試合までにある程度の技量を身につけさせなければな。明日からのアリーナの予約状況は・・・・やはり埋まっているか・・・ならば第8アリーナを?!)

 

 アリーナの予約表を見ていた千冬は第8アリーナに予約が明日入っているのに気がつく。それも生徒会が代行申請した企業予約だった。

 

 (ウイング社の企業予約・・・しかも関係者以外立ち入り禁止の非公開使用か・・・・となれば更識の専用機受領か。何とか立ち会い教員になってデータを収集出来ないか)

 

 そんな事を考えてアリーナの予約申請書を確認する千冬。そこにはスコールの名前が既に書かれていた。

 

 (既にミューゼル先生が立ち会い教員に決まっているのか・・・・)

 

 その時、千冬にタイミング良くスコールが声をかける。

 

 「織斑先生、学園長がお呼びですよ。 あら?それは明日のアリーナの予約表ですね。」

 

 「えぇ、織斑の訓練の為にアリーナの予約状況を確認してまして。それよりもミューゼル先生、明日ウイング社のアリーナ使用に立ち会われるそうですね。」

 

 「はい、更識生徒会長から頼まれまして。それに更識君の専用機受領ですし、担任である私が立ち会いをした方が良いと言われまして。」

 

 「そうか・・・・・そうだ、学園長が呼んでいるのだったな、ありがとう。」

 

 そう言って千冬は学園長の元に向かう。

それを見送るスコール。 この二人、実は浅からぬ因縁があるのだ。

スコールは元アメリカ国家代表で、第1回モンド・グロッソに出場した事もあるIS乗りだった。 そして準決勝で千冬と対戦予定だったもののISの故障により棄権し、戦う事はなかった。そしてスコールは大会後に事故にあい国家代表を引退。そして昨年、IS学園の教員として採用されたのだ。

 ISの故障と事故については様々な憶測が流れており、その1つがスコールの力を恐れたもの達による陰謀であり、その陰謀を企てた人物の名前の一人に千冬の名前が上がっているのだ。

 だからこそ、周囲は色々な意味で緊張してしまうのだ。

 

 

 

 ちなみに学園長室に向かった千冬は明日の午後からIS委員会への出張を命じられるのだった。

 




 
 補足設定

 
 IS学園保有機体

 教員用ラファール・リヴァイブ 5機
 教員用打鉄改         5機
 教員用ファルコンカスタム   5機
 教員用ガーリオン       3機

 生徒訓練用ラファール・リヴァイブ  30機
 生徒訓練用打鉄           30機
 生徒訓練用ファルコン        20機
 生徒訓練用アルブレード        5機

 予備機体 ラファール
      ファントム
      菊花

 
 IS学園保有コア 32個

 ファルコン   アメリカ製量産型第2世代機
 ラファール   フランス製量産型第1世代機
 菊花      日本製量産型第1世代機
 ファントム   アメリカ製量産型第1世代機 

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