悪辣な転生者に裁きを   作:フライング・招き猫

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第7話  四十院神楽

 

 

  IS学園 第8アリーナ

 

 整備室と隣接するピットに夏輝達は集まっており、美兎の到着を待っていた。

 すると扉が開き

 

 「おっ待たせー!! なー君の専用機の到着だよー」

 

 大型ターレにコンテナを積んで美兎とスコールが現れる。 ターレから降りた美兎がコンテナの端末を操作するとコンテナが展開して、中から灰色の武骨なISが姿を現す。 

 

 「これが俺の専用機・・・・・」

 

 「まだだよ、これは仮の姿。最適化と一次移行しないと本当の姿を現さないよ。なー君、それに乗ってみて。」

 

 「わかったよ美兎姉さん。」

 

 そう言って夏輝はISに乗り込み背を預ける。それを見て美兎はISと自分の持つ端末を繋ぎ、凄まじいスピードで端末を操作していく。2分程たったとき、ISに変化が起きる。虹色の光を放ち、その姿を変えていく。光が収まると、そこには白銀の装甲に6枚のスラスターを持つ完全装甲型のISがいた。

 

 「これこそ、なー君専用のIS【サイバスター】だよ。第4世代を越えた第5世代型ISだよ。」

 

 「「「「「「「第5世代?!」」」」」」」

 

 「そう、第5世代。スペックは勿論のこと、第4世代型の定義である展開装甲という可変機構による機能強化を必要としないIS、だから第5世代だよ。ちなみにサイバスターのデータを元に順次みんなのISを第5世代型にアップグレードする予定だからね。」

 

 「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」

 

 美兎の話に全員が言葉を失う。それもその筈、第4世代を通り越して第5世代型を作り上げたのだから、しかも他の面々の機体も第5世代にアップグレードすると言ったのだから。

 

 「さあさあ、時間が無いしテスト、テスト!」

 

 美兎に急かされて、夏輝はアリーナに飛び出していく。 表向き100時間となっている夏輝のIS搭乗時間だが、実際には既に1000時間を越えているのだった。

 最も夏輝に限ったことではない。美兎が更識家に来てからというもの、夏輝を始めとした6人はISの訓練に訓練を重ねており、全員が国家代表並の実力を得ていた。

 最も刀奈以外は世間の目を欺く為に、それを秘匿して過ごしていた。

 

 「スーちゃん、管制室に案内してちょうだい。かたちゃんとかんちゃんはなー君のサポートよろしく!」

 

 「わかりました、美兎様。」

 

 「「はい、美兎姉さん。」」

 

 刀奈と簪はISを展開するとアリーナに向かう。そしてスコールに先導されて美兎達は管制室に向かうのだった。 ちなみにスコールはIS学園の教員であるが、更識家のエージェントでもあるのだ。この事を知っているのは更識関係者以外だと轡木学園長のみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 1時間後、一通り訓練を終わらせた夏輝達はピットに戻ってきた。

 

 「なー君、どうだった?」

 

 「なんというか、今まで乗ってきた訓練機とは別物だね。振り回されっぱなしだったよ。」

 

 「それは馴れていくしかないよ。」

 

 美兎にそう言ってくる。夏輝はISを解除する、ISは光の粒子となって消えると夏輝の首にネックレスがさがっていた。

 

 「さてさて、私は今日は帰るね。サイバスターのデータ解析が済んで、アップグレードの準備が出来たら連絡するね。それじゃあバイビーー!!」

 

 美兎はターレに乗ってピットを後にする。

 

 「さて、それじゃあ生徒会室にいきますか。お客さんも来ることだし。」

 

 「お客さん? 誰が来るの刀奈姉さん。」

 

 「そこはお楽しみ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  夏輝達が、生徒会室につくと扉の前に一人の女子生徒が待っていた。その女子生徒に夏輝達は見覚えがあった。

 

 「確か君は四十院神楽さん。」

 

 「はい、1年4組四十院神楽です。以後お見知りおきを。」

 

 そう言って神楽は頭を下げる。 だが夏輝達はクラスメイトだから神楽の顔を知っている訳ではなかった。

 

 「とりあえず話は部屋に入ってからしましょう。」

 

 刀奈がそう言うので全員が部屋に入る。

部屋に入り、それぞれ椅子に座ると神楽が

 

 「改めて自己紹介させていただきます。皇室直属諜報護衛組織【四十院家】所属、四十院神楽と申します。」

 

 「四十院家の次期当主が、態々お越しとは恐悦至極です。」

 

 そう言って夏輝が頭を下げる。神楽が四十院家の立場で挨拶したので夏輝が対応する。

 

 「そんなに畏まらないでください、そちらも次期当主がおいでなのですから。」

 

 そう言って神楽も頭を下げる。

 

 「それで、いったいどういった御用件でしょうか?」

 

 「私をはじめIS学園に在籍している四十院家の者8名、更識夏輝様の指揮下に入れてさせていただきます。」

 

 突然の申し出に全員言葉を失う。 それでも夏輝は何とか口を開く。

 

 「えっと、いったいどういった了見で、そんな事を・・・」

 

 夏輝はあえてストレートに尋ねた。

 

 「・・・・今から10年前、四十院家は一組の母娘を保護しました。しかし母親は重症で意識不明、娘は幼く何が起きたか全く理解していませんでした。そして半年前、奇跡的に母親は意識を取り戻し全てを話しました。母親の名前は影森桜、娘の名前は玲美。」

 

 神楽の話に全員が理解した。四十院家は影森滅亡の真実にたどり着いた事に。

 

 「そして桜の話の裏付けを密かに行い事実であることを突き止めました。四十院家では皇族の方々を御守りする為にも、過激な思想を持つ者たちを排除して誠に日の本を思う者たちによる政を実現させる事を決断しました。」

 

 あまりにも壮大な計画に言葉を失う夏輝達。しかし、よくよく考えれば有り得る事なのだ。更識家と同じく日本政府の暗部という立場で活動しているものの、四十院家の真の主は皇室なのだ。政府と皇室を天秤に掛ければ皇室をとるのは当たり前なのだ。

 

 「・・・・・・・もしかして、皇室への介入が酷くなっているのかい?」

 

 夏輝は四十院家がそう決断した背景に政府からの皇室への介入があると判断した。

 

 「・・・・・・・・えぇ、それはそれは身の程を弁えない輩が色々と皇室の方々に対して難癖とも言える発言に不必要な介入をしてきまして。それをお耳に入れずはね除けるのに、どれ程心砕いているか・・・・」

 

 笑顔でそう告げる神楽からはえもいわれぬ迫力が醸し出されている。思わず引いてしまう更識の面々。

 

 「・・・・・・・・・そ、それで何故、IS学園内で更識の配下になる事に。」

 

 夏輝はこれ以上聞くのは不味いと感じ、慌てて話題を戻す。

 

 「四十院家にはIS開発のノウハウがありません。今の時流においてISは絶大な存在感を持ちます。そして更識家は独自の技術でISを開発しています、となれば協力を求めるのは当たり前かと。」

 

 「なるほど、この学園における指揮権と引き換えにISを、という事ですか・・・・・ですが、それだけでは少々弱いのでは?」

 

 「勿論、そう思っております。先程のは1つ目の引き換え条件です。2つ目の条件として此方を。」

 

 そう言って神楽は制服のポケットから電子キーのついた金属ケースを取り出してテーブルに置いた。そしてキーに人指し指を押し当てた後、数字を入力する。ロックが解除されて金属ケースの蓋が開く。中に入っていたのは。

 

 「!! これはコア!」

 

 そうISコアだった。しかもナンバーが刻んである以上はオリジナルコアに間違いない。しかし、夏輝達は四十院家がISコアを所有しているとは聞いていない。ならばこのコアの出所は

 

 「このコアは半年前に、当家が殲滅した日本の闇マーケットの違法組織が秘匿していた物です。押収したコアは2個、その内の1つです。それをお渡しいたします。」

 

 「コアの無断所有並びに譲渡は禁じられていますが?」

 

 「押収したコアは2個とも、刻まれていたナンバーから本来はIS委員会にあるはずの物でした。」

 

 「つまりIS委員会から横流しされた物・・・・・」

 

 「はい、あるはずの無いコア。それに果たしてそのような規則が適用されるでしょうか?」

 

 「かなり乱暴な理論ですが、わからなくもありません。これを当方に渡すのが2つ目の条件ですね。」

 

 「そして最後の条件が私自身です。現時点を持って四十院神楽は更識家の傘下に降る事をお誓いします。」

 

 「つまり四十院家の次期当主が更識傘下になるとうことは、貴女が当主になった時、四十院家そのものが更識傘下に降るということでよろしいのですか?」

 

 「はい、その通りです。皇室を護る為には当家の力だけでは足りません。ならば力ある者の下に付き、その力を持って皇室を護る。その為ならばどのような事でも。」

 

 同年代ながらも、その気高くも潔い覚悟に圧倒される夏輝達。

 

 「わかりました。本来なら現当主である更識楯無が決める事ですが、若輩ながらもこの更識夏輝が貴方の申し出をこの場にてお受けいたします。」

 

 夏輝の言葉に神楽は立ち上がり頭を下げる。

 

 

 

 

 

 倉持技研

 

 電話口で一人の男性が頭を下げながら電話に応対している。

 

 『ISの納入が遅れるとは、何故だ!』

 

 「ですから先程から申し上げている通り、システム上の不具合が発生し、それの解消を行っており少なくとも最終チェックを含めて2、3日はかかると。」

 

 『何故今頃になって不具合が見つかるのだ!既に最終チェックを終えて納入するだけではなかったのか!』

 

 「その最終チェックの段階で不具合が発見されたのです。幸いにもプログラミング上の物なので部品交換等の作業は必要無いのですが、修正作業と修正後の再チェック、それからもう一度最終チェックを行います。それを終えるのに2、3日かかると。」

 

 『そもそも何故、打鉄改式ではなく新たな機体なのだ?』

 

 「それもお話しした通り、打鉄改式第肆型は武器と機体とのバランスが未だにとれておらず、とてもじゃありませんが素人を搭乗させる物ではありません。少なくとも近接戦闘術・・・剣に精通していなければ扱えません。それに比べれば今回開発した機体は副所長曰く、多少癖はあるものの防御能力は高い上に機動力もあり、素人でも扱い易い武器を登載しているそうです。」

 

 『肝心の副所長が何故応対しない?それに仕様書も未だに届いていないが?』

 

 「副所長は今、不具合の修正作業に集中しております。仕様書に関しては最終チェックが終わり次第お送りします。」

 

 『・・・・・・わかった。ところで先程打鉄改式の話で剣に精通していなければ扱えないと言っていたが、どれ程の腕前が有れば使える?』

 

 「明確な基準を示せる訳ではありませんが、代表候補生の剣道初段者が扱いきれなかった以上は、最低でも剣道の二段の腕前は必要かと。」

 

 『・・・・・・私に一人心当たりがいる。可能ならその者にテストさせたい。』

 

 「わかりました。それでは織斑君の専用機の最終チェックと稼働データの解析が終わり次第、打鉄改式の調整に入ります。」

 

 『なるべく早くしてくれ。』

 

 そう言って千冬は電話を切る。 会話が終わり応対していた男性は受話器を戻すと椅子に座り込み大きく溜め息をつくのだった。 それを側にいた女性が慰める。

 

 「災難でしたね。ブリュンヒルデからの電話を取るなんて。」

 

 「お前、知ってて出なかっただろう。」

 

 「だって、発信先がIS学園でしたから。」

 

 「くそっ!貧乏くじ引いた。」

 

 「でも本当の事言わなくて良かったんですか?」

 

 「言える訳無いだろ!副所長が思いついた新しい武器を搭載する為に調整が遅れているなんて。そんな事言ったらブリュンヒルデだけじゃなく副所長からも責められるじゃないか。少なくとも今は誤魔化せたんだ。後の責任は副所長にとって貰うさ。」

 

 「・・・・・・・・それにしても、副所長は本気であんな物を搭載する気ですかね?雪片弐型より始末の悪い武器だと思いますけど。」

 

 「言うな、開発部の連中が全員頭を抱えているんだから。只でさえ打鉄改式と変わらぬキワモノなのに、それを更に酷くするんだから。とりあえず、パワーアシストとオートバランサー、機体重心の調整を最優先でやっているようだから何とか使えるようにはなるみたいだけど・・・・」

 

 「・・・・・ねえ、何をしてるの?」

 

 女性は男性が机の上にある私物を片付けているのを見て聞く。

 

 「見ての通り片付け。俺、今日付けで退職するし後宜しく。」

 

 「えっ?! 聞いて無いけど!」

 

 「今言った。お前も辞めるなら早めに決断した方がいいぞ。沈む泥船にいつまでも乗っていたら大変だぜ。」

 

 男性はそう言って私物を鞄に納めると、

 

 「それじゃあ、時間だし。」

 

 そう言って男性は鞄を持って部屋を後にする。女性は、慌てて男性を追い

 

 「ちょっと待ってよ。辞めてどうするの?」

 

 「ウイング社の採用試験を受ける。」

 

 「えっ?!本気?」

 

 「本気も本気、ここに居たってどうにもならないし。それなら駄目元でウイング社の採用試験を受けてみることにしたんだ。」

 

 男性はIDカード等を人事部で返却し、退社用のカードを貰い社員通用口に向かっていく。

 

 「それじゃあ、後は宜しく!」

 

 男性はそう言い残して立ち去っていく。その場に残された女性は

 

 「・・・・・・・あの~、退職の手続きをしたいのですが?」

 

 人事部の職員にそう告げるのだった。

 




 
 夏輝の専用機は予想された通り、サイバスターでした。
 ちなみに、この作品に出てくる魔装機並びに魔装機神はオリジナルには無い武器等が装備されていますので悪しからず。
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