My " revenge play" ~僕の『復讐劇』~ 作:血糊
僕はその復讐に命を捧げん。
a.m. 4:44
熱い。
体中傷だらけで痛い、というよりなぜか熱い。
でも、体の芯はとても寒い。
這いつくばっている体を起き上がらせようとすると、腹に激痛が走って血がごぼっと溢れてくる。
突然片足の感覚が消えた。その直後、腹の痛みよりもっと強い激痛と熱さが僕を襲う。
やめてくれ、死にたくないと言っても僕より小さなそいつはやめない。
ああ、両腕と両足の感覚が、四肢が無くなった。僕の血に塗れたあの銀色の剣に切り落とされてしまった。
そのうち体中の熱がどんどん冷めていった。まるで全裸で大雪の中に放り出されたような凍える寒さだ。
なんで、なんでこんなことをするんだ!?僕が君に何をしたって言うんだ!
そう言ったら、そいつは
「何惚けたこと言ってんだ?お前が何の罪も無い人々を快楽目的で惨殺してたんだろうが」
復讐と言いたいのか!?だからって何でお前が……
「ボク……じゃなくて俺は『復讐鬼』さ。五年の月日が経っても昔の恨みを忘れられず、むしろどんどん酷くなっていく位執念深くてとてもしつこい。そんな復讐鬼。だから」
そいつがさっきまで僕の持っていた鉈を振り上げる。月の光を反射してきらりと眩しく光った。
「君を犠牲者達よりももっと苦しめて、君の犠牲者達にやっていた殺し方で、君を殺すんだ」
僕の頭めがけて、鉈が振り下ろされた。
「……まあ、犠牲者云々よりも、ご近所の光浦さんを殺した復讐だけどね」
もしも彼が生きていたと言うのなら、きっと見てしまっただろう。
月の光の逆光を受けている彼女が仮面を外し、その顔にあまりにもそぐわない様な冷酷な表情を浮かべていたことを……
p.m. 3:24
私服の黒いパーカーを着てしっかりとフードを被りながら彼女は街中を歩く。
沢山の人々が通る街道のなかにその姿は溶け込んでいた。
そんな彼女の正体……まあさっきの話を目に通してる読者方なら大体察しているだろう。
その通り。彼女は『復讐鬼』。早い話がヴィランということだ。
彼女の『ヴィラン名』は赤谷海雲。
ヒーローへの復讐に狂った、冷酷で無慈悲な殺人鬼、とプロヒーローの中で言われている存在だ。
……自業自得なところに目を瞑りながら言ってるわけだが。
「えーと、まずは八百屋で白菜と葱を、魚屋で海老と貝と魚を、スーパーで肉と干し椎茸を買って、あと確か白味噌が切れてたって黒霧さん言ってたから……一時間は掛かりそうだな」
記憶の買い物メモの内容を呟きながらお店へ向かう姿は、まるでお使いを頼まれた娘の様に見える。
……初見で彼女が凶悪なヴィランだということに気づける人はほぼ居ないだろう。
彼女がお店に向かっている途中、なぜか沢山の人々が集まって道を塞いでいた。
「ちょっと。半額セールに間に合わなくなっちゃうじゃんか。何があったんですか?」
一人愚痴ってから近くの人に尋ねると。
「え?ああ、ヘドロみたいなヴィランが男の子を人質にしているのよ」
「ふーん……そうですか……ちょっと通してください」
と言いながら人ごみの中をすり抜けるように通っていく。
前へと出ると、さっきの人が言ったとおり確かにスライムがでかくなって汚くなったようなヴィランが彼女と同い年くらいの少年を捕まえているではないか。
「えー……セールが終わっちゃうからさ、速く通してよ」
そう言いながら、肩掛けバッグからあるものを取り出した。
取り出したもの……それはクロスボウだ。
彼女は同時に取り出した一本のボルトを装填して、ヘドロヴィランの目玉に標準を合わせる。
「さっさと寝てくれ。邪魔だ」
苛立ちを顔に浮かべながら躊躇無く発射した。
空気を切り裂きながら飛んでいく矢は、目標へと寸分違わず突き刺さる。かなり深く、グサッと。
「ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!??!?」
不意打ちのようなクリティカルヒットで激痛のあまり、ヘドロヴィランは溺れかけていた少年をいともたやすく解放した。
「はっ?え?今何があった?」
彼女とは距離が遠かったからか、突然自分を捕まえていたヴィランが苦しみだして解放されたことに少年は混乱していた、が。
「……おい、へドロ野郎……さっきの仕返し食らえやゴルァ!!」
自分の個性を使い、ヘドロヴィランを盛大に爆破した。
「まさに因果応報、ってやつかな。どんまーい♪」
表情が台詞を裏切っている。いや、口元は笑っているのだが、目が全く笑っていないのだ。
ヘドロヴィランを見る目が、まるでゴミを見るような目で見ているのだ。まあ確かに
気絶したヴィランの横を通り抜けて目的地へと向かおうとする彼女をある者が呼び止めた。
「おい、さっきはアンタが助けてくれたのか?」
「え、違うけど。ボクはあのヴィランが道を塞いでたから眠らせようとしただけ」
「眠らせる……?」
「さっき撃ったのは麻酔ボルト。即効性のね」
「ふーん……なんでそんなのを持ってるんだよ」
「君が知ったって全然意味無い?それじゃ、バイバイ」
「え―――ッ!?待て、お前は……!」
彼の言葉を待たずに彼女はそこから走り去っていった……
「おい、怪我は無いか!?」
「……ああ。大丈夫」
「ほっ……さっき。は助けられなくて本当にすまなかった……それにしても今回は助かっちまったな、あいつに」
「?知ってんのか」
「ああ、奴は赤谷海雲。かなり危険なヴィランだ」
「……は?ヴィラン、だと?」
「信じられないだろうけど、マジだからな。奴がクロスボウ持ってたのは相手を殺さないように無力化させるためさ」
「なんで無力化させるんだよ」
「自分が絶対に殺さないといけない対象以外は絶対に殺さないっていうような変わった美学があるみたいなんだよな……なんか変わった奴なんだよ。でも殺す対象が上位のプロヒーローばかりでな、かなりの実力者をいとも容易く仕留めてる辺り、かなりやばい奴だよ。だから、助けてくれた恩人だとしても奴には絶対関わるんじゃねえぞ……いいな?」
俺に駆け寄って安否を確かめに来たそのプロヒーローが念のためとしての忠告をしてきた。
その真剣な顔は本当に心配してくれてるんだろうと分かる。
でも、その忠告にに意味は無い。
「いや、どっちにしろ関わらなきゃいけないっつーことは変わらねぇよ」
「おい今の話聞いておきながら何言ってんだ」
「……だって、あいつは―――」
昔死んだはずの幼馴染とあまりにも酷似しているからだ―――
p.m. 6:25
「畜生……セール間に合わなかったぁ……」
とぼとぼ帰る、帰り道。
彼の幼馴染は両手に沢山の買った商品を詰め込んだポリ袋を持って、人生のどん底に叩きつけられた人のような顔をしながら―――実際本当に叩き落されたことはあるが―――今の我が家へと向かっていた。
今彼女が通っている街道は、夕暮れ時だからか沢山の人々が通っていた。
そんな中に人生に絶望した顔で歩いている少女を見かけたら、大体の人の反応は……まあ大体分かるよね。
「(なんだろう……沢山の人たちに注目されてる……)」
そのうち何人かが話しかけてきたりした。彼女にとっては困惑しかなかったが。
「(あ、そろそろ急がないと、黒霧さんたちを心配させちゃう。急がないと―――あれ?)」
走ろうとした矢先、突然視界がぼやけた。
体が一気に重くなる。意識が朦朧として、思わず荷物を落としてしまった。
「(いけない、落としちゃ―――)」
そして、感覚の全てが黒へ染まった。
p.m. 8:16
ヴィラン連合アジトにて。
「妙に遅いな、海雲の奴」
「そうですね……何かあったんでしょうか。もう8時を過ぎてしまいましたし、残り物で何かを作りましょうか。鍋は明日にでも」
「分かった。じゃあ、ちょっとあいつ探してくる」
「もしものことがあったとき、一人ではどうしようもありませんよ?探すなら夕食を食べてからでお願いします。何、あの子のことですから大体のことが起こっても何とかできるでしょうよ」
「……確かにあいつのことだから存外、ケロッと帰ってくるかもしれないな。ところで、黒霧。何作るんだよ」
「野菜炒めです。残り物であるのは貴方が大っ嫌いな野菜ばかりですから」
「えっ」
「残 さ ず 食 べ て く だ さ い ね ?」
「…………はい」
束の間の平和。
畳のにおいがする。
起き上がってみれば、酷く頭痛がする。
周りを見渡せば、襖に障子、掛け軸などがある。
おそらくここは和室という部屋なのだろうが、見たことが無い。
「……ここどこ?」
赤谷海雲―――またの名を緑谷出久―――は全く知らない所で目覚めた。
誘拐?連行?いいえ保護です。
和室にて目覚めた
次回は脱出?