古き幻想の紅い雪   作:珀靈雪魄

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日常編はこれからも増えていくと思いますが、その内容としては……多分、色々とはっちゃけると思われます。
例えば外の世界の……おっと何でもないですよ?


日常編1:白嶺神社での短い一日

「ほい。到着っと」

 

誑子を伴った帰路。特に面白い事も変わった事も面倒事も無く無事に白嶺神社に戻ってこられた。

 

「……此処が御主人様の神社ですか……」

 

興味深そうに社を、登ってきた山道(何故か階段が作られていた)を、きょろきょろと見回している誑子。何も面白いものは無いだろうに。……さて、後は〇〇の見付けた後継者を確認しようか。

 

それでも……ひょっとしたら、あの人間離れした巫女ならば或いは生きているかもしれない──そう思って、私はヤツの名を呼んだ。

 

「……〇〇ー! いるー!?」

 

……返事が無い。ただの屍のようだ。

 

「いませんね……やっぱり──」

 

誑子が口を開いた瞬間。神社の方向から強烈な……私でさえも思わず息を呑む程の霊力と殺気を感じた。

それから間髪入れずに飛び出してきた人影──それは、少し大人になっていたものの、その強大な霊力の所為で見間違える筈も無い……〇〇だった。

 

何で生きてんの? って、それよりも早く止めないと!

誑子は〇〇の存在もその凶悪さも知らないからボサっとしてるけど、あの構えは間違いなく凶悪無比な破壊の一撃。初動から放出……更に直撃するまでの流れがとんでもなく速い。間に合うか……っ!?

 

誑子の前に躍り出てそのまま咄嗟に右手を伸ばして構え、無効化の能力を発動する。……さぁ、防ぎきれるか……?

 

「ぐっ……!」

「御主人様!?」

「紅雪様!?」

 

やっぱ無理。滅茶苦茶強い。

何が強いって、無効化の能力を発動したにも関わらず右腕が肩の所まで消し飛んだんだ。まあすぐに再生したけどね。

 

「ご、御主人様に何て事を!」

 

おお。あの誑子が怒りを顕にしてる。普段から大人しくてこんな風に感情的になるような娘じゃないんだけどなぁ……そこまで私を慕ってくれてるのか。何か嬉しいけど照れ臭い。

 

「お前こそ、何を紅雪様に近付いている。妖怪め」

 

底冷えするような低い声音で誑子を威圧している〇〇。

正直言って凄く怖えぇ……え? 〇〇ってこんなに威圧感に溢れていたっけ? こいつももっと大人しい良い娘だったのに……うーん。

 

「ご……御主人様も妖怪ですっ」

「何を戯けた事を。紅雪様は我が唯一の──」

「あー……ごめん。私も元は妖怪」

「え……っ?」

 

固まってる、固まってるよ。きっと神様だと思って信じていたものがその実嫌いな妖怪だったと知らされたからだろうねぇ。

あーもー……これからどうなるんだろ。正直に一から話したら解って貰えるかな? 無理だろうか。

 

「…………紅雪様なら、問題無いです」

 

暫く固まった後、その口から出てきたのはこんな台詞だった。……何と言う身贔屓。まぁ、いざこざが起こらないなら別にいいか。

 

「それと、こっちのは私の……従者みたいなものだから、無礼な真似はしないように」

「紅雪様がそう仰るのであれば。……申し訳御座いませんでした。紅雪様の従者の方とは露知らず……」

「え? ……あ、此方こそ申し訳ありません……つい熱くなってしまいました……」

 

掌を返したように謝罪をしてきた〇〇に、毒気を抜かれたように謝った誑子。それからは自然に会話していた。……何故か私が話題に挙がってたけど。

それにしても……一瞬で和解しやがったよこいつら。私としては手間が省けて喜ばしい限りなんだけど……こいつら、それでいいのか?

 

 

 

そして、神社内部。卓袱台にて。

 

「さて……聞きたい事があるんだけど」

 

私の右隣に誑子。私の正面に〇〇がいる。そして私は、〇〇の目をじっと見つめて息を吸い、今一番の疑問をぶつけてやった。

 

「何で生きてんのさ!?」

 

卓袱台を叩く音と張り上げた声が静かな部屋に反響した。

〇〇は、たっぷり一呼吸置いてから私の目を見返して、厳かに告げる。

 

「……特殊な呼吸法のお蔭です」

「……はぁ?」

 

それから〇〇の話を聞いたんだけど……浅学菲才の身であるこの私にはその殆どが理解出来なかった。

何でも霊力を特殊な方法で練って身体の内側に保持して……とか、血流の代替として霊力で出来た何かを……とか、そんな感じの事を言っていた。……霊力を身体の内側にって、それ仙人じゃね?

よく解らない。解らないが、もはや人間を遥かに超越している事だけは解った。

 

「さてと。積もる話も色々あるんだけど……」

「…………」

「…………」

 

〇〇の超難解な説明を聞いた(すぐに頭から抜けた)後、その理解不能な超理論を脳が処理しきれなかったのか目を回している誑子と、そんな誑子を眺めて不思議そうにしている〇〇を交互に見てから、そう切り出す。

 

「ちょっと今から霊力で人間を装ってみるから、ちょっと判定してもらえるかな」

「霊力……ですか?」

 

何とか現実に復帰してきた誑子が首を傾げる。

 

「ん。神力は妖力だけじゃなくて霊力にも変換出来るみたいでねぇ……ちょっとあっちで練習してたんだよ」

 

因みに誑子にも諏訪子にも神奈子にも、誰にも見られないように計らって練習したからね。誰もこの事を知らない。

初お披露目って訳だ。

 

「んで、どう? 頼める?」

「はい。私は構いませんが……」

「私も同じく」

 

誑子と〇〇の了承を得た。

よし、やってやろう。

 

妖力を完全に隠して、神力のみの状態にする。それから神力を霊力に変換し、神力を隠す。

そして、霊力の量を調整して年相応の霊力量にする。

 

するとどうした事か。

これで、何処からどう見ても人間の姿だ。白銀の長髪で紅瞳の幼女というこの時代では突っ込みどころ満載の。……いや、この時代じゃなくてもか。

 

「凄いです、紅雪様。まるで人間のようです」

「本当に……食べちゃいたいくらいですっ」

 

何故か誑子の台詞に身の危険を感じたんだけど……気の所為かな?

それはそうと、結構高い評価を得られて良かった。何十年も練習して村に赴いたりもしたんだから、酷評されたらどうしようかと。

 

これなら安心して旅に出られるかな。

会わなきゃならない奴らがいっぱいいるしね。聖徳道士とか超人尼とか蓬莱人達とか。……まあ、今すぐに出発する訳じゃ無いんだけど。一応駄鬼にも挨拶しとかないといけないし……はぁ、駄鬼かぁ……憂鬱だ。

 

そういや、会わなきゃならない奴らで思い出したけど、私もある意味ぬえみたいなものだよねぇ……人間で妖怪で神で蓬莱人……正体不明にも程があるわ。

 

「……あ、そうだ。紅雪様」

 

考え事をしていると〇〇に呼ばれた。

 

「ん、何?」

「久々に、お手合わせ……願えますか?」

 

おおよそ神に向けるものではない好戦的な笑みを浮かべる〇〇。そんな顔を見せられたら私は……私は。

 

 

「やだ」

 

 

断りたくなるじゃんか。

 

「何故ですか」

「だってあんた絶対に強くなってるもん! 私は痛いのは嫌なんだよっ!」

 

〇〇のあの不可視の一撃。あれは鋼楔の全力の拳よりも、多分痛い。喰らわなければいいだけの話なんだけど……百年もあったんだ。

その百年で私は人間になりきる練習以外には基本ボケーっと自堕落な生活をしていただけだし、武力を行使したのは二柱の喧嘩の時だけだ。……対してこいつは毎日鍛錬していた筈……ひょっとしたら負けるかもしれない。でも負けたくない。

痛いのも嫌だけど、プライドが高いんだよ、私は。もしも自分の巫女に負けるなんて事があったら……。

 

「……駄目だ……それだけは駄目なんだ……」

「紅雪様……?」

「……はっ!? いや、何でもないよ。でも手合わせだけは勘弁して欲し──」

「ではお手合わせ、お願い致します」

「──何でっ!?」

 

意味が解らない。こいつは本当に私の巫女なのか? 神様にこんな不躾な態度を取る巫女なんてそうそういない……あー……霊夢とかそんな人がいたねぇ……。

博麗の巫女というのはこういった性質の人間が多いのだろうか。それとも霊夢や〇〇が特殊なだけかな?

 

「駄目……ですか?」

「駄目」

「お嫌……ですか?」

「嫌だ」

「…………」

 

私の所まで膝を進めてきて姿勢を低くし、上目遣いに覗き込んでくる〇〇。

 

「…………」

「…………」

「……あの、お二人とも……」

 

微妙な沈黙が居間を支配する。そんな中、誑子は、不安というよりも何処か呆れに似た感情で以て私達二人の様子を窺っていた。

 

「…………」

「……わーったよ! やりゃいいんでしょ!?」

 

結局、私の方が根負けした。……正直死ななきゃ安いと思う。私が痛い思いをするだけで〇〇の好感度が上がるなら安いもんだ。多分。

 

「紅雪様ならそう仰って下さると信じておりました……!」

 

嘘吐け。上目遣いでゴリ押ししただけの癖に。

 

「もうさっさと終わらせるよ」

 

はー……何でこんな事になったのかな? 当初の目的としては後継者を見付けてそいつに接触して色々と博麗の巫女に関する事を教えた序でにこの神社の名前を『博麗神社 』に正式に改名して──と、これでも色んな事を考えてたんだけどなぁ……。

 

 

 

 

 

☆○☆☆○☆☆○☆☆○☆

 

 

 

 

 

青かった空は徐々に茜色に染まっていき、斜陽が境内で殴り合う私達二人を照らしていた。

誑子は、百年程前に私が設置した賽銭箱の前の小さな階段に座って、この闘いを見守っている。

 

「……ちっ、やっぱし強くなってやがるよ」

 

悪態を吐きながら、風を斬って飛んでくる重い拳を往なす。それだけ……本当に掠った程度のものだというのに腕に衝撃が走り肌には赤い線が生まれる。

 

「……はぁっ!」

 

気合いを込めた打ち下ろしの右。それは捌ききれないと判断して咄嗟に跳び退く。

直後、直撃していない筈の地面がまるで爆発でも起きたかのように大きく抉れる。当然、跳んだ私の足許も無くなった為に予測していた着地は出来なくなる。

これも〇〇の霊撃だろう。しかし、全力の一撃ではない事は明白。もしも全力で放ったのならこの程度では済まない。少なくともさっきの五倍の穴は空いていた筈だ。

 

「──シッ!」

 

食い縛った歯の間から漏れる息。

バランスを崩した私の胸部を狙った貫手は、その手首を払う事で辛うじて逸らす。

腋の間を抜けて伸びきった右腕を確認すると、即座に足払いを掛ける。

 

本来ならば、〇〇が普通の人間だったならば、足を払われて転倒し為す術無く私の攻撃を食らっていただろう。

だが、こいつは普通の人間じゃあない。

 

「……っ!」

 

その場で、払いにかかった私の右足に向けて足払いを返してきたのだ。しかも右手で私の左肩を引っ掴みながら。

普通なら、妖怪と人間の力の差によって〇〇の方が押し負けて転ぶだろうが、何重にも重ねた霊力によって補強された〇〇の足は、存外硬くて重かった。それに、予想外の力で肩を腕側に引っ張られた。

 

「……しまっ──」

 

た。と言葉にする事も出来ないままに私の身体が横転する。真横に薙ぎ倒された私の喉にその手刀が押し付けられた。

 

「……降参降参。私の負けだよ畜生」

 

心底うんざりしながら負けを認める。というか認めるしかない。これ以上続けても組手の範疇なら私に勝ちの目は無い。……本気でやったら勝てるだろうけど、それをやるとこの辺り一帯を消し飛ばしてしまうかもしれないし、何よりも〇〇を殺してしまいかねない。

 

「ふぅ……有り難う御座いました!」

「はぁ……私ってこんなに弱かったっけ?」

 

鋼楔達(あいつら)とやり合ってた頃の勘というか、実戦の勘はまだまだ取り戻せそうにないや。

〇〇は村を襲いにくる妖怪を撃退しているから場慣れしているだろうし、ブランクがある私に勝利は初めっから無かった訳だ。

 

「お疲れ様です、お二人とも」

 

手を叩きながら、石階段の上に座っていた誑子が此方に歩いてくる。

 

「あー疲れた。……精神的に」

 

身体はこの程度では疲れはしない。化け物だもの。

隣に目を向ける。〇〇は全く疲れていないようだ。身体的にも精神的にも。人間なのに。

 

「では……夕餉の仕度を致しますので、少々お待ちになって下さい」

 

誑子の言葉に空を見上げれば、赤かった空も黒く染まってきている事が判った。

 

……そう言えば、こいつらどっちも料理上手かったけど……ちょっと料理対決とかさせてみたいなぁ。

 

「誑子さん。此処は私達の住居なのですから、私に任せてはもらえませんかね?」

「……いえいえ。ここは私にお任せ下さい」

 

そう思ったところで図らずもその状況が生まれた。

心做しか火花が散って見える。

 

「じゃあ私が審査するから、二人で対決してみたら?」

 

二人を煽る。すると想定通りに二人はヒートアップしていき、二人して調理場に駆けていこうとしたので呼び止めた。

 

「あーあー、ちょい待ち。……ほれ」

 

神力を使って境内に特設の調理場を二つ設けた。大体の食材も揃えてあるので万全の状態だろう。

そして、誑子も〇〇も私の入れ知恵で知っている筈のない料理を作れるようになっている。勿論、この時代には無い筈の調理器具も扱える。

 

これはどうなるか愉しみだ。折角だから駄鬼も呼ぼう。

 

少し多めに作ってくれ、と、その旨を告げてから私は一飛びに駄鬼の住まう山へと向かった。

 

 

 

 

 

★●★★●★★●★★●★

 

 

 

 

 

ここ百年、紅雪の姿を見ていない。

しかし、噂だけは妖怪づてに聞いている。

 

何でも、強大な神同士の争いの際に立ち会っていたのだとか。それだけに留まらず神格化したらしい。麓の村に紅雪の神社の巫女がいた。

 

あやつは人の身には余る力を持っている。

何度も村に攻め入ったが、悉く追い返される。鬼であるこの妾が。

 

───全く以て愉しき事よ。

 

人間で喰らえば(ひしゃ)げて散る筈の妾の拳を、何やら面妖な力で受け止め、それだけでなくその力で攻撃にも転ずる。

 

あの重き一撃。剛の躰を持つ妾でさえも意識が飛びかける。純粋な強者との死闘はやはり面白い。(しび)れる程の快感を得られる。ここ数年は村に行ってない。しかし、また暫しの時を経て拳を交えん。

 

紅雪を抱くのはまた別の意味で快感を得られるが……そう言えばそろそろ懐が寂しくなってきた。またあのぬくい身体を抱き締めたい。

 

「おーい、駄鬼ー? 生きてるー?」

 

───噂をすれば何とやら。噂をした訳ではないが。

 

この愛らしい声を忘れる筈もない。紅雪が我が住処を尋ねてきたようだ。

さて、のんびりとはしていられない。さっさと酒を呑ませて酔わせてやろう。

 

そうと決まれば、不意打ちで仕留める。

 

 

 

 

 

★●★★●★★●★★●★

 

 

 

 

 

駄鬼の住処に立ち入った瞬間。殺気とはまた違った悪い気配を感じ取った。十中八九、私を手込めにする為に色々と画策している事だろう。相変わらずの変態だった。

 

さぁて、お出ましだ。

 

神力による簡素ながら強固な防護結界を全方位に張り、何処から駄鬼の攻撃が飛んできても対処出来るようにする。

 

「で? 鬼ってのは正々堂々正面からやり合うのが好きなのかと思ってたんだけど?」

 

後ろから近寄ってくる気配に振り返らずに言い放つ。

 

「それは偏見というものよの」

 

今度こそ振り返ると、不意打ちがバレて諦めたのか肩を竦めるばかりの駄鬼が歩いてきていた。

 

「……化かし合いも鬼の領分だ、って?」

「そこまでは言っておらぬじゃろう。それは化け狸や妖狐なんぞの方が余程突出しておるわ」

 

マミゾウさんや藍しゃまの事ですね、わかります。

……ってか、妖狐はいるだろうけどこの時代に化け狸はいたんだろうか。解らん。そもそも狸を見た事が無い。でも狐は見た事ある。

 

「それはそうと、生前の料理に興味は無い?」

「生前の、とな?」

「ん。揚げ物だとかハンバーグだとか。スイーツもあるよ」

「ふむ……」

 

顎に手をやって視線を上に向けた駄鬼。軈て、私に視線を戻して、

 

「無論、ある」

「だよねぇ」

 

ニヤリ、と口角を歪めて笑みを浮かべる駄鬼に倣って私も同類の笑顔を見せる。初めてこいつと考えが一致した。やっぱり肉と油は最っ高だねぇ。……こっちで食べるのは初めてだけど。

 

「んじゃ、さっさと行きますか」

「うむ」

 

……妙に乗り気だな。酒だけは呑まないようにしておこう。念の為。

 

 

 

 

 

「あ、御主人様。お帰りなさい」

「丁度出来たところです──って、お前は」

 

にこにこと嬉しそうに寄ってきた〇〇が、駄鬼の姿を認めた瞬間驚きにその目を見張った。

 

「久しいの。十年振りか」

 

対する駄鬼は目を細めて愉しげに嗤った。

……え? 何なの? こいつら知り合い? ……あ、そりゃそうか。駄鬼は村を襲いに、〇〇は村を護りに。二人が会うのは道理と言える。

 

「で、駄鬼?」

「何ぞ?」

 

どんだけの回数戦ったのかは判らないけど、私が気になるのはその勝敗。やっぱり〇〇の方が強いかな?

 

「四十七回ほど拳を交えたのじゃが」

「で?」

「……一勝、二十六引き分け、二十敗」

「…………」

 

これは、その、うん。聞いた私が悪かった。

でも、こんなに酷い結果だとは思わなかったんだもん。聞いたって仕方無いじゃん。

 

「紅雪様が誰かを連れてこられるのは知っていたが、まさかお前だとは思わなかったぞ」

 

何やら楽しげな雰囲気。私に接する時もこんな感じの方がいいのになぁ……。

 

料理そっちのけで会話に興じているご様子の二人。

 

「……でな、紅雪の……が……でのう──」

「後でその話詳しく──」

 

……うん。私は何も聞いていない。

 

 

 

 

 

「ふぅ……美味かったー」

「死してから久しく食べていないからか、どこか懐かしさを感じたのぅ」

「それを言うなら私なんて一億年は食べてなかったよ」

 

食後。肉と油と甘味、その他を堪能した私達は、採点をしながら雑談をしていた。

因みに私は誑子の方に点を入れた。やっぱり百年も付き合っているからなのかな、いつの間にか私の好みを熟知してやがったよ。まったく……どうしたもんかね。

 

「んじゃ、発表するよ」

 

誑子と〇〇の二人を視界に入れて、私と駄鬼は堂々と手持ちのボードを掲げた。

 

結果は──

 

「誑子1、〇〇1で引き分けだね」

 

まあ判ってたけど。さっき話してた時にチラッと見えてたから。

 

「そうですか……」

「引き分け、ですか……」

 

暫く結果を噛み締めるようにボードを見つめていた二人は、何を思ったのか互いに握手を交わした。

 

多分、恐らくだけど。認めあったんじゃなかろうか。

それならそれで、私は嬉しい。これなら安心して置いていけるしね。

 

どんな旅になるか解らない以上、危険な目には遭わせられない。それが大切な奴なら尚更だ。

だから黙って旅に出る。決行は今夜だ。既に駄鬼には二人の足止めをしてもらえるかどうか、打診して了承してもらってある。

 

心残りは無い。

 

そしてもう夜になっていたから、後は就寝の時間を待つのみ。

駄鬼には駄鬼に与えた部屋で私の話をさせて二人をその部屋に留めるという役割があるので此処で別れる。

 

「……じゃあ、抜かりなく」

「わかっておる。ではの」

 

二人は駄鬼に着いて歩いていった。作戦通りに。

んじゃ、ちょっとだけ部屋で時間を潰しますかね。後は書き置きを。

 

 

 

 

 

☆○☆☆○☆☆○☆☆○☆

 

 

 

 

 

静寂。皆が寝静まったような静かな静かな夜。……でもほんの少しだけ話し声が聞こえる。

駄鬼は上手くやってくれているようだ。また今度会ったら一回ぐらい一緒に寝てやってもいいかな。礼代わりに。

 

んじゃあさようなら。また幻想郷が出来た時に会おう。

特に誑子には私の式神になってもらうつもりだからね。

 

 

 

簡素な書き置きだけを残して私は白嶺神社から去った。

 

 

 

 

 

『さて、これを見ているって事はもう私がいない事に気付いたってところだろうけど……幾つか言っとかないといけない事があるからちゃんと読んでね。

 

まず〇〇は、此処「白嶺神社」を「博麗神社」に改名する事。それから、あんたには「初代博麗の巫女」を名乗って後継者を見付け出してもらう。人選とかは完全にあんたの判断に任せるよ。

んで、里に襲撃してくる妖怪を退治する事。これは今もやってるだろうから問題無いよね? でも、それじゃ意味が無いんだ。そこで試練を与える。目標は、後継者となる人間が一人である程度の妖怪を退治出来るように育て上げる事。出来れば力技じゃなくて、霊力を宿した札だとか針だとかを使わせる事。どうしても技巧面での才能に欠ける場合は力技特化も已む無し。

それで、あんたが完璧だと思えるまでにその後継者が育ったら、「博麗の巫女」の座とこの教えを後継者に託してあんたは遁世する事。それで試練は終わり。後は繰り返させる。

不老不死が世に広く知れ渡ると碌な事にならないからねぇ……なるべく人目に付かない所に住んでね。

私も旅を終えたら会いにいくから。それまで頑張ってね。

 

んで次は誑子。

あんたは取り敢えず死なないで元気にいてほしい。それと、今でも十分なんだけど……出来たらもっと家事や雑務に特化してほしいなー、なんて。

ほら、私って戦闘以外何も出来ないからさ。ゆくゆくあんたを式神にした時には色々と私の補助をしてほしいんだよ。

どうだろう……千年くらいかな。それぐらい経ったら必ず戻ってきてあんたを式神に……いや、家族みたいなものかな? 家族として迎えるから。それまで待っていてほしい。

 

一応、黒百合。あんたにも。

あんたに関しては何にも心配してないよ。ただ、その山でずっと妖怪達を統治していてほしい。もしも命令を聞かずに里に向かう妖怪がいたとしても〇〇やその後継者に退治させるけどね。

それと。これから世は移り変わっていくから色んな人間が出てくると思う。例えば力では勝てないからと卑怯な手段に訴えたりする奴も出てくるだろうと思う。それで人間に幻滅したとしたら、同じく人間に幻滅した妖怪達と地底に移り住むように。

山にしろ地底にしろ誑子と同じく千年後くらいに会いにいくから。んじゃ、頑張ってね──駄鬼。

 

これで今言いたい事は全部。後はまた会った時にでもゆっくり話そうか』

 

 

 




そう言えば、紅雪のテーマとか一応書いておいた方がいいんですかね?

レミリアお嬢様の二つ名から取って「永遠に幼い」。紅雪がいつまで経っても幼いのはこのテーマに則っているからです。微妙に老け込んだ台詞が多くても本質は見た目相応の幼児ですよ。



……それにしても、何だか書き方が安定しないなぁ……。
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