古き幻想の紅い雪   作:珀靈雪魄

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今回はほのぼの回です。



前回、書くのを忘れていた事がありました。

☆○☆が4つ並んでいるものは、話を区切る為のものです。
★●★が4つ並んでいるものは、視点変更です。


第3話:妖怪の副大将

───永琳が月へと出立したのは、一ヶ月程前の事。

その間、特にする事も無かったので、山に篭って修行(という程大したものでもないが)をしていた私、雪。

 

名前を付けてもらったんですよ。デュフフ。

 

こんな軽口(?)を叩ける様になった私は、気合いを入れて特訓をしている。

 

例えば。

樹木を手刀で圧し折ってみたり、貫き手で熊の土手っ腹に風穴を空けてみたり、地面を殴りつけて地鳴りを起こしてみたり。

果ては、自分の身体の数倍もある巨岩を回し蹴りで破砕してみたりもした。

 

そんな事を続けていると、妖怪としての元々の力もある所為か、鬼(萃香ぐらいの)と比べても遜色無い程の筋力が身に付いてしまうものだ。

 

そこ! 脳筋言うな!

私だって頭が悪い事くらい自覚してるよ、畜生!

力ばっかり上がって知識が身に付かないのは、もう仕方が無いや。

この膂力のみで鬼なんざ捻り潰してやんよ!

 

勿論、力が上がるというのはいい事ばかりではない。

それに比例して喧嘩を吹っ掛けてくる好戦的な妖怪が後を絶たなくなるのだ。鬱陶しい事この上ない。

これは、喧嘩を売る気も無くなる程の力を身に付けろ、と。そういう事か。

 

最初の内は私も楽しかったのだが、三十戦あたりから面倒になってきていた。

対人戦──この場合は対妖戦と言うべきか──によって技や速さも鍛えられていくので、その所為で無駄に強くなってしまった。

その為に、私に張り合える程の力を持っている妖怪が少なくなってしまっているのも、この退屈な状況に拍車を掛けていた。

 

今では私一人相手に、十人集まってなお簡単に戦闘不能にされてしまう他の妖怪達。

情けないったらありゃしない。というか学習しろよ。

 

そう言えば、そろそろあいつが来る頃だなぁ……。

 

「おーい! 雪ー! 今度こそ打ち倒してやる!」

 

噂をすれば何とやら。噂をしていた訳ではないが。

血気盛んなバカっぽい声が聞こえてきた。

最近、毎日毎日飽きずに私に挑んでくる身の程知らずのバカ妖怪である。

 

何か最初に名乗りを上げていたが、覚える価値が無かったので忘れた。

 

……何だったっけ?

 

表記すると片仮名になる様な響きの名前だった事は憶えているのだが……。

確か、バ……何とかさん、だったような気が……?

 

あ、そうだ。バカだ。

 

 

閑話休題。

 

 

これでも、この妖怪同士の喧嘩グループ(?)に私が介入するまでは一番強かった妖怪である。

が、それだけ。

私に比べると弱すぎる。

 

修行中の私を見付けて話し掛けてきたところで、こいつの命運は尽きていたのかもしれない。

 

最初の試合は、酷いものだった。

 

いきなり殴りかかってきたこいつを蹴り飛ばしたら、あっさり吹っ飛んでいってたまたま後ろにあった木にぶつかって気絶したのだが……兎に角酷かった。

衆目に晒された状態でそんな喜劇を演じて見せた、見事なまでのバカである。

男の癖に情けない……。

 

それを切っ掛けに様々な妖怪から言い寄られる(主に喧嘩、喧嘩、喧嘩)事になった私。

 

……いや、いいんだけどさ。

私って、女としての魅力無いのかな……。

 

「おい! 無視すんなよ!」

 

と、生前男だったのに女としての悩みでナーバスになっていた私を現実に戻してくれたのは、バカの元気な声だった。

 

……うん。お陰で減気になったよ。有り難う。

 

「───で? 何しに来たの?」

 

聞くまでも無いが、目的を聞いてみる。

 

こいつの思考回路は実に単純だ。

一に喧嘩。二に食事。他の欲求は睡眠欲ともう一つしかない。自己顕示欲もあるかな?

バカの中の大多数を占めているのが、喧嘩に対する欲求である。

そして、わざわざ私の所にやって来てまでしたい事と言えば、一つしかなかった。

 

案の定、こんな答えが返ってきた。

 

「リベンジしに来たに決まってんだろ!?」

 

……ほらね。毎回毎回、よく飽きないよねぇ。本当に。

 

「あー……うん。はいはい」

「何だよその目は!? ……吠え面かかせてやるからな! 今に見てろ!」

「あー……うん。はいはい」

 

私のやる気の皆無な返事を以て、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

「うおぉぉぉお!」

 

裂帛の気合い(笑)と共に直線的に走ってきて直線的に拳を振りかぶり、直線的に殴ってくる。

 

……よくこれで最強気取ってられたな。

 

軽く身体を反らしてバカのバカ丸出しの拳を避けると、そのがら空きの頭を狙って、更にバカにする(頭脳的な意味で)つもりで蹴りを放つ。

 

だが。

 

「甘いな!」

「へぇ?」

 

今までのバカとは思えない身のこなしで、私の蹴りを、私の懐に潜り込む形で躱す雑魚。

 

しかし。

 

「うわっ!?」

「……っ!?」

 

慣れない動きをしたからか、何も無い平坦な場所にも関わらず躓き、私の方に倒れ込んできた。しかも、まだ蹴りの姿勢から戻っていなかった私の右脚を掴んでだ。

流石にこんな事態まで想定してなかった──こんなハプニングを想定出来る奴がいるなら、是非ともお目に掛かりたいものだが──私は、為す術も無く押し倒されてしまった。

 

「いってぇー……って」

 

私の方がいてぇよ、バカ!

脚を思いっきし広げられたんだぞ!?

あんなヨガやってる様な奴ほど身体柔らかくねぇんだよ!

 

「……何さ?」

 

想定外の事態に憤っていると、バカが私(の一部分)を凝視したまま固まっているのに気が付いた。

声を掛けてみる。不審そうな声になったのは仕様が無い。

 

「……お前って、はいてないの?」

「……は?」

 

いきなりそんな突拍子も無い事を言ってきたので、バカの見ているところに目を向けてみる。

 

するとそこには、袵や上前下前といった箇所が腰まで捲れ上がった私の着物があった。

そして私はこのバカ野郎に脚を無理矢理(まだ離してなかった)広げられていた。

更に付け加えると、着物である事を意識している故に、下着の類を着けていないのだ。

勿論、下も穿いていない。

 

つまり、どういう事か。

具体的に言うと、脚の付け根の……。

 

「……う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!? お前、殺す! 殺し尽くす!!」

 

目の前で目を見開いているバカ……もとい、変態の間抜け面に強烈な蹴りを喰らわす。

 

「待っ……おぶっ!」

 

我ながら、真っ赤な顔で怒鳴ってもいまいち迫力に欠ける。寧ろ、可愛いと思われてしまう可能性が高い(勿論、これは自意識過剰などではない)為、外見や雰囲気以外の方法で威圧するしかない。例えば、暴力だ。

 

それでなくても、こんな所を他人に見られるという羞恥に耐えられるほど私は擦れていないのだ。

冷静さを欠いて徒に暴行を加えても、何らおかしくはなかった。

 

「あんたが!」

 

顔面を下駄で思い切り蹴られて怯んでいるバカの顎を、追加で蹴り上げる。

 

「悪……げふっ!?」

「忘れ去るまで!」

 

それから直ぐ様起き上がり、体勢を整える。

そして、宙空を舞っている変態野郎の鳩尾に拳骨を振り下ろす。

 

「すま……ぐはっ!」

「殴るのを!」

 

地面に叩き付けられたバカを踏み付ける。

 

「がはっ……ごほっ……!」

「止めない!!」

 

とどめに、憎きこの野郎の金的に痛烈な打撃を見舞わす。

声にならない声を上げて悶え転がって死にかけている変態を見た事で、漸く溜飲が下がった。

 

 

 

それから少しの間を置いて、やたら不自然な挙動のバカ(まだ痛みは引いていないらしい)と私の間には、気不味い空気が漂っていた。

 

それと言うのも、流石に私もやり過ぎたと思っているので、あまり大きな口を叩けないのである。

さりとて素直に謝る事は出来ないので、ただ黙っているしかないのだ。

 

そして向こうも悪いと思っているらしく、俯いている私に、バカの癖に黙って気遣わしげな視線を寄越したりしてくる。何だか腹が立つ。

 

「……あの、さ」

 

この静寂を破ったのは、バカの方だった。

 

「……何?」

「あー……この事は誰にも言わないから」

「当たり前でしょ」

「……悪い」

 

私が即座に返答すると、バカは答えに窮したかの様にかりかりと頭を掻いて、一言、謝ってきた。

 

いや……謝るべきなのは私の方なんだけど……どうしよ。都合が良いしこのまま乗ってみようかな。

 

「……もういいから、早いとこ消えて」

「ああ……悪かったな。んじゃ」

 

拒絶を滲ませて(演技ではない)帰るように告げると、もう一度謝ってから私に背を向けて歩いていった。

 

……やっと終わったか。

 

ふぅ、と浅く息を吐いて、バカの背中を見つめる。

 

この場所からは、もう離れる予定だ。

さっきの出来事で、バカと顔を合わせ辛くなったというのもあるが、この辺りからはそろそろ離れようと前々から思っていたのだ。

 

これで最後だろうから、此方も素直に謝った方が良かったかな、などと考えて、軽く首を振った。縦に、ではなく、横に。

 

……やめとこう。

 

羽根を出し、身を翻して、バカとは反対方向に飛び立った。

 

こことは違う、都市とは離れた所に向かう為に。

 

 

 

 

 

☆○☆☆○☆☆○☆☆○☆

 

 

 

 

 

一旦、荷物(主に食料)を取りに住処まで戻ってきたのだが、思ったより備蓄が少なくなってきていた為、さほど持てなかった。

 

まあ、丁度良いと言えば丁度良いのだが。

 

持てる分を袋(買い物をした際に貰った)に詰めて、住処と言うには荒れた岩窟を岩を積んで塞ぎ固める。

 

これで、用意は完了したので、今度こそ此処から離れる。

 

 

 

飛んで飛んで辿り着いたのは、鬱蒼と茂った良く判らない森のある山だった。

 

麓にあるのは街。

 

流石にあの大都市程ではないが、それでも充分に大きいものだった。

これも永琳って奴の仕業なんだ! とか何とか。そんなどうでもいい事を考えながら新しい住処を探す。

 

幸いな事に、最適な塒を大した時間も掛けずに発見出来た。

 

崖になっている所があって、そこに突き出ている細すぎて危ない道を壁伝いに歩いていくと、かなりの広さの空洞に着くのだ。

その危険極まりない道も私は通らなくて済む為、絶好の場所だった。

 

間取りとしては、広大な空洞の横に細長い道が続いており、その奥には広すぎなくて狭すぎない、丁度寝室として使えそうな手頃な空洞が二つある。

風があまり通らないので、冬場には凍えずに済みそうな感じだ。

余った空洞は食糧を貯めておく場所として活用出来そうで、無駄が無い。

 

暑い時には風通しの良好な広間で寝ればいいし、街の様子も一望出来て、最高の物件(?)だ。

 

早速、寝室の隣にある倉庫に荷物を置くと、この山を見て回る事にした。

 

 

 

そこら辺にいた妖怪の話を纏めると、この山は妖怪の溜まり場になっているらしい。

 

それと、山頂辺りにこの山一帯の妖怪を纏めているボス的存在がいるらしい。

因みに、私の新たな住処は山の中腹に位置している。

 

曰く、そのボスは馬鹿力で、まさに鬼の様な存在だという。

頭頂部に一本の角が生えているらしいのだが……まさか、本当に鬼だったりする?

 

その話を聞いた私は、嬉々として山頂に向かっている。

 

やっと強そうな奴と力比べが出来るのだ。

あのバカ妖怪みたく弱かったら承知しない。

 

まあ、私には勝てないだろうがな!

 

そして、山頂に着いた。

 

 

 

 

 

☆○☆☆○☆☆○☆☆○☆

 

 

 

 

 

───全力で前言を撤回する……っ! 私の阿呆!

 

山頂に到着した私を出迎えてくれたのは、何やら凄まじい威圧感を放っている巌の様なお方だった。

そしてイケメン。

身長も2メートルくらいあるよね!? ガタイ良すぎだろ!

 

……やべぇ。勝てる気がしない。

しかも、何か睨み付けてきてるし!

何これ? これが殺気ってやつ? いやいや、そんな生易しいもんじゃないよね!?

 

酷く狼狽している私を睥睨しながら、鬼の様な鬼が口を開く。

 

「誰だ、お前は」

 

うわぁぁい!? 敵意MAXだよこの人!

声が重い! 響く! 怖い!

 

「あ……はい。あのですね。えーと、その……雪、と申しましてですね……えー、本日は、手合わせをお願いしたく……」

 

しどろもどろになりながらも、何とか用件を伝える。

ここまで来たのだ。逃げるなどという選択肢は存在しない。

 

「……ほう?」

 

ニヤリ、と獰猛な笑みで以て私の言葉に答えてくれた。

 

……笑わないで下さい。マジで怖いです。

助けて神様! ヘルプミー!

 

小便は済ませていないが、神様にお祈りはしたし、部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備も完璧に出来ている私は、なけなしの勇気を振り絞って鬼さんと対峙する。

 

……気持ちでは負けてるけど、戦闘はどうかな?

 

と、精一杯鬼さんの真似をして獰猛な笑みを浮かべてみる。

 

さて、そうと決まれば先手必勝。

幸いにも鬼さんはまだ動いていない。

 

私の速さに着いてこい!

 

一瞬で距離を詰め、鬼さんの腹に一発強めの打撃を入れる。

トゴォ、という重い音と共に綺麗に決まるが、あまり効いていないようだ。意外、といった様に僅かに目を見開くだけ。

 

しかも硬いし!? 手が痛いんですけど!

くそ! 鬼と比べても遜色無い筋力を身に付けた、とか言ってた馬鹿は何処のどいつだ!

私だった。

 

鬼さんの拳を避けて、脇腹に回し蹴りを叩き込む。

やっぱり全然効いていない。

しかも、さっきの拳。あれは当たったらただでは済まなかっただろう。良くて四散するくらいか。

 

直ぐ様飛来した肘をいなし、背後に回り込んで首に手刀を当てる。

まるで効いていない。

 

ふざけんなよ! 樹木ぐらいなら容易く両断出来る程の威力はあるんだぞ!?

 

鋼の様な肉体に四苦八苦していた私は、次第に身体が重くなってきた事に気付いた。

間も無く身体が動かなくなる。

 

「……あれ?」

 

重い足を見る。

鉄の様な鋼の様な塊が張り付いていた。動かない。

手を見る。

足と同じだった。

首にも巻き付いてきた。固定されて動けなくなる。

 

……何かの能力か?

 

鬼さんがゆっくりと歩み寄ってきた。

断頭台でギロチンが落ちるのを待っているかの様な感覚だ。経験した事無いけど。

 

ああ! 鬼さんが目の前に! 怖い怖い怖い怖い!

鬼さんが拳を握り締め、振りかぶり―――

 

そこで、遂に我慢出来なくなって、きゅっと目を閉じる。

しかし、予想に反して一向に衝撃が来る気配が無い。

しかも、身体も軽くなった。

 

そっと瞼を持ち上げる。

すると、此方に顔を寄せて笑っている鬼さんがいた。

近い。

 

「……何で止めたのさ」

 

何処か不機嫌そうな私の問い掛けに、フッと鼻で笑ってからこう言った。

 

「俺は女子供は殴らない主義でな」

「あ……そ、そう」

 

やだ、かっこいい……ってなるか、ボケ!

誰が子供だって? ああ?

 

「まあ、冗談はさておき」

 

冗談だったのかよ!

 

「お前は、なかなかの力を持っているな。頭は俺よりも良さそうだ。……どうだ? 俺と此処で妖怪を治めないか?」

「……何それ、プロポーズ?」

「ぷろぽーず?」

「何でもない。私は別に構わないよ」

「そうか」

 

嬉しそうに鬼さんが笑った。

 

……そういう意図が無い事は判ってんだけど。

何か、顔が良い所為で様になってやがる。

 

「んで? 鬼さんの名前は?」

「ほう、よく鬼だと判ったな?」

 

その角と体格見れば誰でも判ると思う。

でも、知らない人妖の方が多いらしい。

 

「……鋼楔だ」

「コウセツ? 変な名前だねぇ」

「知らん。下の人間共が勝手にそう呼んでいる」

 

麓の人間が書いたという報告書らしきものを見せてもらった。

 

山の頂にいる妖怪。

鋼を纏わり付かせて動きを封じてくる為、我々はこれを鋼楔と呼ぶ事にした。

 

……ふむふむ。鋼の楔、ねぇ。

私程ではないけど、安直な名前だ。

それに、鋼? ……鋼楔の能力は東方で言うとどうなるのだろうか。

 

鋼を操る程度の能力、かな?

 

あんなに細かく操れるのだから、そこそこ長く生きている妖怪なのだろう。

妖力は長く生きれば生きる程、高まってくるものだ。

そして、能力は妖力に比例して強さが変わってきたりする。他の霊力神力といった力の場合は知らないが。

ソフトとハードの関係に似ている気がする。

 

強さが変わってくるというか、妖力が弱い状態だと、使える能力に制限が掛かったりする感じか?

 

……結構難しい。

 

因みに、妖力は抑える事が出来る。

私自身も半端ない妖力を保有しているが、最小限に抑えてあったりする。

こいつの妖力は素か? 抑えてあるのか?

 

そんな事を考えて唸っていると、ひょい、と抱き上げられた。

 

「軽いな」

「そりゃこの身体だからね。で、何やってんの?」

「今から妖怪同士の集まりがあるから連れていく」

「そう。で、何で私を抱いてんの?」

「何となくだ」

「さいでっか」

 

どうやら離してくれそうにない。

抵抗しても無駄なのは解りきっているので、仕方なく抱かれて行く事にした。楽だけど複雑な気分。

 

 

 

そして、鋼楔に抱っこされて向かった先は、他の妖怪が集まっている、集会所、みたいな場所だった。

妖怪、しかも鬼の癖にちゃんと統率出来てんのな。

 

抱っこされている私を見た妖怪の一人が、鋼楔に声を掛けた。

 

「大将。コイツは何ですかい?」

「今日から副大将になる奴だ」

 

鋼楔がそう言った瞬間、声を掛けた妖怪と周りにいた妖怪が一斉に声を上げて笑い出した。

今にもその場で転げ回りそうな勢いだ。

 

「これがですか?」

「俺は食べ物かと思ったよ」

「確かに、美味そうだよな」

「ヒャッハー! 幼女だー!」

「大将も冗談を言ったりするんですね」

 

さっき言ってたぞ。

それに、何か変なテンションの奴が一人いなかったか?

それはそうと、すっげー腹立ってきた。

 

「鋼楔」

「何だ?」

「こいつらぶっ潰していい?」

「いいぞ」

 

やっと降ろしてくれた。

鋼楔の許可も貰った事だし、いっちょやるか!

 

手始めに、抑えていた妖力を解き放つ。

笑い転げていた妖怪共の顔が強ばった。

 

次に、目の前にいた妖怪の首を掴む。

そして羽根を出して、首を掴んだまま空に浮かぶ。

 

苦しげな声を出していたので、大きく振りかぶって地面にぶん投げる。

 

轟音と共に地に叩き付けられた妖怪は、ピクピクと弱く痙攣していたが、知ったこっちゃない。

 

後は、恐怖に固まっている妖怪達を片っ端から殴っていくだけの簡単なお仕事。消化試合だ。

 

三十分掛かったが、比較的楽に鎮圧出来た。

 

 

 

妖怪大将と私以外に立っている者がいなくなっている。

 

「やりすぎだ」

「こいつらが悪い」

 

言葉の割には愉しそうな鋼楔を見て、後ろの屍の山(生きているし意識もある)を指差す。

 

「……で? まだ文句ある?」

 

振り返って、死にかけの妖怪達を睨め付ける。

反射的に竦み上がった妖怪の群れからは、「ありません」としか返ってこなかった。

よしよし。これで力の差を身体にすり込めたな。

 

こうしておかないと、自分より弱い(と思っている)奴が副大将という事に不満というか反感を覚えて、つまらない反乱を起こす馬鹿が出てくるから面倒なのだ。

 

「こいつが副大将でいいな?」

 

満場一致で、私はめでたく副大将になったのであった。

 

 




・キャラの特徴・

・名前:鋼楔
・性別:男
・種族:鬼
・性格:大雑把。何も考えていない。

2メートルという長身のイケメン。
何故か袴を羽織っており、手足には鎖を着けている。
馬鹿力だけど頭が弱い為、鋼楔だけで妖怪を治めていた頃の戦闘は専ら力押し。
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