古き幻想の紅い雪   作:珀靈雪魄

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今回はちょっと短いかもしれません。


第4話:再戦

「……よっ、とぉ!」

 

声と共に、脚を振り抜いた。

しかしその一撃は、相手の堅牢な装甲に敢え無く弾かれる。

 

今、私が相対しているのは、剛力の持ち主である鬼。

鋼楔その人だ。

 

 

 

何故、鋼楔と闘っているのかと言うと、話せば長く……ならないけど、私がベ〇ット(仮)を鍛えていた時に我慢しきれなくなった鋼楔が寄ってきたのが事の発端。

 

何でも、どうしてももう一度手合わせをしてみたかったらしい。

それを聞いて、女子供は殴らないんじゃなかったのかよ、と声に出した途端、急に腕組みをして唸り始めた。

 

私としては、鋼楔が本気でやり合いたいと言うのなら拳を交える事に吝かではないのだが。

 

試合をしたい。でも自分の流儀に反する。でもやり合いたい。と考えている様子がありありと見て取れたので、仕方無く助け船(?)を出した。

 

私の生い立ちを語ったのだ。

転生して吸血鬼になって今に至る。今こそ女になってるけど、生前は男だったのだ、と。

 

聞いたすぐは信じられないといった表情を浮かべていたが、想定内。

男だったんだから、女でも男だ。と自分でも何を言っているか判らない台詞をぶつけると、その適度に弱い頭脳に合ったのか、その手があったかみたいな顔に変わった。

 

そして、鋼楔が吹っ切れたところで、一つだけ頼みたい事があったので提案してみた。

その内容は、能力持ちじゃないからそれに合わせて能力を使わないでいてくれ、というもの。

 

それで良いなら、と快く承諾して貰って、今のこの状況になるという訳だ。

 

因みに、不老不死だから遠慮はいらない、と言ってみたら何かやる気が満ちてきた鋼楔であった。

 

 

 

前の戦闘の時に隠していた妖力を少し解放して、素早く立ち回りながら決して軽くない一撃を連続してぶち当てていっているのだが、やっぱり硬い。

 

顎や膝小僧などの急所は、他の箇所と比べて多少は効いている様な気がするが、微妙な違いだ。

 

そして向こうは、喰らったら即死する様な攻撃をばんばん飛ばしてくる。

肉弾戦でのふざけた戦闘能力の差を持ち前の速さでカバーしているのだが、結局の所ジリ貧だ。

 

流石にモロに喰らう事はしないが、当てずっぽうに放たれた一撃が私の身体を掠ったりはするのだ。

それだけでも肌が裂けて灼けるような痛みが走る。

自分で鈍器や刃物を使って自分を痛め付けた時よりも、当然の如くレベルが違う。

 

銀の杭ほどではないが、それでも痛いものは痛い。

そして蓄積された痛みで動きが鈍ると、狙い済ましたかの様に鳩尾や顎に拳が飛来してくる。

 

捌いただけで、受け流そうとした時に当たっただけで、骨に罅が入る程の衝撃だ。

 

しかし、擦過傷も罅も、吸血鬼としての再生力に蓬莱人としての再生力が上乗せされた超再生能力で瞬く間に癒えてゆく。

 

それでも、体力までは回復しない為にどんどん動きが遅くなっていく、というまさに負のスパイラル。

どうしろと言うんだよ、畜生が。

 

「はぁ……っは、まったく……っ!」

 

滴り落ちる汗も拭わずに、乱れに乱れた息を整えながら、懸命に拳を打ち込んでいく。

汗で服や髪が肌に張り付いて不快極まりないが、そんな事を気にしていられる余裕などありはしない。

 

振るわれる左腕を滑り込むように躱す。

その動きの途中で鋼楔への攻撃も忘れない。

その巨躯のがら空きとなった脇腹に、摺り抜けざまに足を地面に打ち付けて固定し、反動を利用して肘打ちを喰らわせる。

 

これも、そこそこの力を込めたものだったが、例によってほんの少ししか効いていないようだ。

 

すぐさま横跳びで回り込んで鋼楔の裏拳を回避し、着地と共に右拳を鳩尾にぶち込んでやろうとしたその瞬間、鋼楔が口許を吊り上げて嗤った。

 

「ちぃっ……罠か!」

 

間に合わない。流石の私も跳んでいる間に方向転換をしたりは出来ない。

羽根を使って飛んでも、加速する前に捕まる。

仕方が無い。受けるしかないか。

 

地に足が着いた瞬間には目の前に迫っていた砲弾の様な拳に対し、せめて威力は殺すべく真後ろに無理矢理にでも思いっ切り跳躍する。

あんなもんまともに喰らったら死ぬっての!

 

「ぐ……ぁ……」

 

衝撃は削れるところまでは削った。それでもなお拳を受けた腹が鈍く痛む。

その痛みは、直接打撃を喰らった腹部程ではないにしろ、全身に伝播して身体のバランスを崩す。

 

結果、後ろに跳んだ私は上手く着地出来ずにその場に仰向けに倒れてしまった。

頭打つところだった。危ない。

 

「お前は、全力を出さないのか?」

 

周りの妖怪達が固唾を呑んで見守る中、そんな事をほざきながら挑発してくる。

 

出す訳ねぇっての! そんな事して負けたら恰好悪いし。

 

「そうか……」

 

何を察したのだろうか。こけてしまった恥ずかしさから相手の姿をまともに見られない私には声音でしか判断出来ないが。

 

そこで、地面を蹴る音が聞こえた。

そしてその次の瞬間には、鋼楔が目の前に迫っていた。

 

「……っ!?」

 

反射的に真横に転がる。

 

直後。その凶暴なまでの拳が、轟音を立てて私の間近に突き刺さった。

地面が揺れている。

目を向けると、地が穿たれていた。

 

……殺す気か!? そうしてまで本気でやり合いたいと言うのか!? 上等だ、やってやんよ。

 

「後悔だけは、しないでよ?」

 

身体の痛みや疲労の一切を意識からシャットアウトする。

今まで自分の限界まで力を出した事は無かったから、どうなるかは判らない。

……でも多分、何日かは寝込むと思う。

後悔するな、なんて自分にも言える事だ。まったく。

 

ふらつきながらもその場に立ち上がり、妖力を最大限に解放する。

 

ギャラリー(配下の妖怪達)が怯んでいるのが視界に映るが、余計な思考は絶つ。

 

ぐっ、と力を溜めると、思い切り地を踏み締めて鋼楔に食らい付く。

そのまま腕を振り上げて、目の前の腹に、鳩尾に力任せに拳骨を叩き込む。

 

「ぐっ……!?」

 

初めて聞いた、鋼楔の呻き声。やっと攻撃が通った事が、何だか嬉しい。

だがそれも、余計な考え。

 

すぐに頭から切り捨てると、私の一撃の衝撃で少し後ろに押されてバランスを崩している鋼楔の顎に、力を込めた強烈なアッパーカットを見舞ってやる。

 

───効いた。いける、いけるぞ! これは!

 

妖力の量は、妖怪の身体能力に直結する。

どうやら多ければ多い程、それに比例して地力も増すらしい。限度があるのかどうかまでは解らないが。

 

鋼楔の拳が私目掛けて飛んでくる。

だが遅い。身体を捻って回避して、カウンター気味に鋼楔の腹に攻撃を通す。

 

「ぐ……がぁッ」

 

拳を握る時、中指だけを前に突き出す形で握り込んでやった。鉄菱と呼ばれるものだ。

これは効いただろう。

 

数歩よろめいた鋼楔だったが、その数歩目で足を固定して持ち堪える。

 

「う、ぉぉぉおおおおおおっ!!」

「……ぐぅっ!?」

 

そして、それだけで辺りを破壊出来そうな音響兵器さながらの咆哮を上げて此方に突貫してきた。

躱そうとするが、まともに動けない。三半規管を狂わされた。

 

何だよこの声!? ジャイアンも真っ青だよ!

 

躱す事が出来ないのなら、迎え撃つしかない。

耳が癒えてきて正常に動けるようにはなったが、もうこっちも限界なのだ。

力を振り絞り、すぐさま構えて、カウンターを狙う。

 

力を込めて、その時を待つ。

三歩目、四歩目、五歩目……今だ!

 

「が、あぁあっ!」

 

苦悶の声を上げたのは、鋼楔ではない。

拳をまともに受けて吹っ飛んでいる私のものだった。

 

失念していた。

リーチが違い過ぎるのにクロスカウンター狙ってんじゃねぇよ、この馬鹿!

二の腕らへんにまでしか手ぇ届かねぇっての!

 

岩の壁に強かに背中と頭を打った私が吐き出したのは、そんな台詞ではなく、空気と血だった。

 

意識が白濁した後、一気に暗転する。

これは、即死だわ。うん。

 

 

 

幸い、間もなく意識は回復したのだが、体力が尽きかけているから動けない。

やべぇ……本当に動けなくなるんだな、これ。

あー、しかも頭が回らないし。

 

「お、お嬢!?」

 

鋼楔の拳で半死、叩き付けられて半死、丁度一回死んだ私に駆け寄ってきてくれたのは、一部の妖怪達だった。

 

……うわぁ。何だよ、私の事が気に入らないんじゃなかったのかよ。

いや、嬉しいのは嬉しいよ? 指導した甲斐があったってもんだし。

 

それより、お嬢って何だ、お嬢って。

呼ぶならお嬢じゃなくて副大将と呼んでくれ。それか名前で。

 

言おうにも、声が出ない。

弱々しい呼気で返事をするが、伝わる筈が無い。

 

そして、何故か身体を揺さぶってくる部下を見たところで、また私の意識は真っ暗になった。

 

あ、寝る前に一言。いや二言ぐらい。

疲れて死にかけてる奴を揺さぶんな! 余計に疲れるんだよ! 安静にさせてくれよ!

 

 

 

 

 

★●★★●★★●★★●★

 

 

 

 

 

───危なかった。

 

それが、本気を出した雪と闘っての感想だった。

 

まさかあそこまで力が跳ね上がるとは思ってもみなかった為、油断をしていたのだ。

試合に於いて油断や慢心を挟んで闘うのは失礼にあたる。

まったく、我ながら失礼な事をした。

 

……そういう点では、確かに後悔する事になったな。

 

それにしても。あれは、効いた。

一つ一つの攻撃が、骨や内臓に響くのだ。

そして、あの妖気。一体どれ程の妖力を保有しているのか。

少なくとも、自分よりも多いのは確かだ。

 

妖力の量や質は、身体能力にそのまま繋がる。

そして、能力持ちは妖力の質が高いのだ。

何らかの能力を持っている妖怪が、能力を抜きにしても種族としての平均的な力を上回っている理由は、そこにある。

 

雪は、妖力の量は多い。だが、質は自分の方が高い。

今回は俺の力の質が勝っていただけだ。

だから、もし雪が能力持ちだったなら、此方が敗れていたであろう。本当に恐ろしい妖怪だ。

基本的には量より質の世界だが、その圧倒的なまでの保有量で質との差を覆さんとした妖怪。

 

これ程までの妖怪というと、牡丹ぐらいしか見た事がない。

あれは質と量を兼ね備えている妖怪だ。それでも勝てたのは、元々の種族の差か。

 

そもそも、雪の妖力の量はどうなっているのだ。

ただでさえ、最近の人間共はよく解らない技術の所為で妖怪を恐れる事がなくなってきているのに。

それどころか、山に攻め入ってくる者まで出てくる始末だ。

 

今までは何とか撃退出来ているが、それでは意味が無い。そもそも攻めてくるという事は恐れていないという事。

 

妖怪は、人を脅かさなければ存在出来ない……妖力は、人に怖いと思わせなければ弱くなっていくものなのだ。

それと年齢を重ねる毎に、若干質も高くなり、保有出来る妖力の量も多くなる。

 

そんな中で、一体何故あれ程の妖力を……。

実は、想像も付かないぐらいに長寿で恐ろしい妖怪だったりするのか?

……流石にそれは無いな。あのなりだ。

 

なりと言えば、どうやら雪という妖は……元は人間の男だったらしい。

転生、と言っていたな。そんな事があるものなのか。

 

だが、あの妖力量は……。

その転生と何か関係があるのか? 今のところはそう考えた方が自然か。

 

それは置いておくとして。

……雪をどうするか。

 

過労が原因らしい。死んだように眠っている雪に目をやって、思案する。

 

そんな折、岩窟の出入り口より懐かしい声が聞こえた。

 

「久方ぶりですね、鋼楔」

 

間違いない。この声は牡丹だ。

 

「……久しいな。てっきり死んだものだと思っていたが」

「あら、失礼な現大将ですね」

 

目の前で蓬色の長髪を揺らして笑っているこれも、嘗ては妖怪達を纏める大将の座に着いていたのだ。

 

妖怪にしては珍しく、武器を扱っている。

確か、牡丹は……弓矢を扱っていたか。刀を振るう事も出来るらしいが、正直そちらは期待出来ない。

 

刀を腰に帯びて、矢筒を肩から掛けており弓を手に持つその姿を見て……やっと出てくる気になったのだな、と実感する。

 

「ふん。妖怪の制止を振り切って引き篭っていたお前には言われたくない」

「そうですね。……でも、やっと吹っ切れたんですよ。雪という妖怪に会って」

 

聞き覚えのある……というかすぐ近くで寝転がっている幼女の名前が出てきて、首を傾げる。

 

そして程なくして、あの森に行った時の事か、と思い至った。

牡丹に会わせる為に連れていったのだが、上手く遭遇したようだ。

 

「雪なら、そこにいるぞ」

「え?」

 

目を真ん丸にして──どうやら、部下達が雪を取り囲むように位置している所為で見えなかったようだ──驚いている牡丹の視線を、妖怪だまりの方に向けさせる。

 

そこには、血塗れで死んでいるように見える雪の姿があった。

 

「どうやらこいつは不老不死らしくてな」

「死んでいるようにしか見えませんが」

 

ただ寝ているだけだ。

 

「体力が尽きたらしい」

 

牡丹を連れて、配下の妖怪達をどけてから、改めて雪の様子を観察する。

 

全身の傷は完全に癒えているが、血が至る所に張り付いている。

しかし、何故か着物と髪には付いていない。

 

呼吸は弱い。死ぬ程疲れているというやつか。

 

「何でまた、このような状況に?」

「手合わせをしたらこうなった」

 

答えると、呆れた目を此方に向けてくる牡丹。

何かおかしい事でも言ったか?

 

「貴方に付き合わせたんですか? ……まさか、全力を出すなんて大人げない事はしていませんよね?」

「全力でやったぞ」

 

これまた正直に答えると、どういう訳か愕然とした表情をしている。おかしい奴だ。

出てきて早々、体調でも悪いのか?

だが、あの事は付け加えておかねばなるまい。

 

「こいつは、強かったぞ」

 

そう。この俺をして危なかったと言わしめた。雪は、見た目や言動によらず猛者なのだ。

 

「……貴方がそう言うとは……」

 

今度は、さっきとはまた違った意味で驚いている牡丹。こんなに表情がころころ変わる奴だったか?

 

「それよりも、早く雪を連れて行って休ませてやれ。……流石に女の看病など出来ん」

 

雪は戦闘前に、女でも男だ、と言っていたが、それが気を遣ってのものだという事くらいは判る。

……雪がどう思っているかは知らんが。

 

そして「何処に?」と訊いてこないところを見るに自分の住処はちゃんとあるようだ。

ならば、雪の事は牡丹に一任するとしよう。

 

「では……って、軽いわね」

 

いとも容易く担げてしまい、素の声が出てしまっている。……そう言えば、何故あんなに丁寧な言葉を使っているんだ?

いいや、それよりも。

 

「……復帰する予定はあるのか?」

 

これだけは聞いておこう。

 

「……さて、どうでしょうね?」

「おい」

「ふふ……この子次第です」

 

腕に抱いている雪の顔をちらと見て、悪戯っぽく笑って言った。

この様子だと、あの事については完全に吹っ切れたんだろうな。本人が言っていた通り。

これは、期待しても良さそうだ。

 

「では、またいずれ」

「ああ」

 

それだけを交わすと、踵を返して外に出ていった。

 

「大将。今のは……?」

 

黙っていた部下達(新参)が、そう問うてきた。

 

「俺の前任者だ」

「やっと出てきてくれたんですね……」

 

今度は、牡丹が総大将だった頃からの古参がしみじみと呟いた。

 

あいつが来てから良い事が立て続けに起こっているな。

雪を選んだ俺の目に狂いは無かったという事だ。

 

と、ほくそ笑んでいると部下に変な顔をされた。

 

 

 

 

 

★●★★●★★●★★●★

 

 

 

 

 

「……うー」

 

頭痛ぇ。何も考えられねぇ。というか身体動かねぇ。

 

そんな三重苦を抱えている私は、ついさっき目が覚めたところだ。

 

あの時何をやってたんだっけ?

……あー、そうだ。鋼楔と殴り合ってたんだった。

んで、その後どうしたっけ?

……んー、全力でやってぶっ倒れたよね。

 

で? ここは何処なんだろうね?

……ゔぇー。って、ほんとに解らねぇし。何処だここ?

 

辺りを見渡す。

何か小洒落た洞窟だな、おい。

 

「気が付きましたか?」

 

ん? ……この声は、牡丹かな?

って、あの森から出てきたのかな。

 

「んぅー……ぼたん?」

 

うお。自分でも驚くほど上手く喋れないんだけど。

何これ。結構寝てた筈なんだけどなぁ。

 

「6日間もの間、眠っていたんですよ?」

「……マジか」

 

……これは、寝過ぎでこうなったのか。

疲れて寝て、起きたら寝過ぎで疲れる。……全力なんて出すもんじゃないね、まったく。

 

というか、出しておいて何だけど全力って出せるものなんだ。すげぇな、妖怪。人間の身体じゃこうはいかなかった。

 

まあ、その結果がこれなんだけどね。

 

「……うわ!?」

 

起き上がってそのまま立とうとしたら、眩暈がして転んだ。

我ながら絶不調。

 

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、問題ない」

 

はっ! ついついあの答え方をしてしまった。

……いやぁ、生前に培った知識が無意識に口から出てくるんだよねぇ。

 

「とても問題ないようには見えないんですが」

 

そんな私の馬鹿な返答にも律儀に対応してくれる牡丹。

うーん……優しいねぇ。さて、起きるか。

 

「よ……っと」

 

立ち上がり、足や手をぶらぶらさせて身体の調子を確かめる。また眩暈がした。

というよりも……。

 

「腹減ったー……」

 

寝起きはあまり空腹を感じないらしいが、知ったこっちゃねぇ。私は腹が減ってんだよ。

 

「いきなりですね……何か適当なものを作ってきますから、大人しく待っていて下さいね?」

 

意外。牡丹って料理出来たんだ。

私はせいぜい肉(熊とか猪とか)を仕留めてから丸焼きにしてかぶり付く事くらいしか出来ないのに。

 

「……何ですか? その目は」

「いや、料理出来たんだなぁ、って」

「失礼な。そのくらい誰でも出来ますよ」

 

え? そうなの? 私は出来ないんだけど?

 

「まさか……出来ないんですか?」

「うるさいよ。悪かったね、出来なくて」

「鋼楔でも出来るんですが……料理」

「何……だと……!?」

 

その衝撃的な言葉を聞いて、私は膝から崩れ落ちた。

やばい。暫く立ち直れないかも。

 

 

 

「美味いし……」

 

出された食事(和食だった)を摂った私は、そう呟く事しか出来なかったのであった。




実は料理が出来る鋼楔。
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