古き幻想の紅い雪   作:珀靈雪魄

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皆様。明けましておめでとうございます。
今年も頑張って自己満足小説を書いていきますので、どうか宜しくお願い致します。



さて。第二部に入って早々何だという話なのですが、第6話を読む前に活動報告に目を通して頂きたいのです。
この小説の内容に関わってくる事ですので……。




 


第二部 〜移ろひゆくもの〜
第6話:鬼姫


───あれから幾星霜。

 

悠久の歳月を、私はただ己を鍛える事だけに費やしてきた。

 

もうあんな思いはしたくないから。

 

自分の力が足りなかったが故の悲劇は、もう嫌だから。

 

もう何年経ったか判らない程、昔の事。

それでもはっきりと憶えている、あの光景。

 

───地獄のような、紅い記憶。

 

牡丹も鋼楔も、恐らくは私の所為で死んでしまった事なんて何も気にしてはいないのだろう。

 

遠因とはいえ、人間に戦争を吹っ掛けたのは私だ。

その事に関しては、今でも後悔している。

 

それに責任を感じて狂ったように鍛え続けていた私は、やはり狂っていたのだろうか。

 

 

 

 

 

「うーん……」

 

何百、何千、何万、何億……だぁー、もー!

 

ほんとに何年経ったか判らん。

長生きすると時間感覚が曖昧になるって言うけど、あれ本当だったんだなぁ。

 

そんなに永い間に何があったのかを辿って時間を遡っていくという手もあるが、残念ながらそれは出来ない。

 

何故かと言うと、何も無かったからだ。

 

人間という種族を根絶させた人災。

あの原子爆弾は、今思うと明らかに規模がおかしかった。

何せ、辺りを見渡しても真っ平らな地形が続くだけだったからねぇ。

 

ああいう爆発の場合にはクレーターが出来る筈なんだけど、その中央からなら見えるであろう岸壁みたいな岩肌が見えなかったと。

それから考えると、超規模の爆風が超広範囲の地面を根刮ぎ抉っていったという結論に行き着く。

 

因みにシェルターだけは無事に残ってたよ。

……あれって何の素材で出来てたんだろう。

 

……いや、待てよ? よくよく考えたら、鋼楔の能力を使ったらあれ防げたんじゃね? ほら、五十~百枚の鋼鉄の板をミルフィーユ状にして。

あれ? ……いやいやいやいや、そりゃないって!

どーしよ。あれマジで私が落ち着いてりゃ未然に防げた事じゃん……何かもう嫌だ。

あれ? あの規模の爆発なら結局蒸発するんじゃない?

 

話を戻して。

私が『紅雪(くれゆき)』となってから、全く何も無かったのだ。

人間が消え去り妖怪も消え去り、私一人だけが延々と鍛錬していただけ。

鍛錬といっても、成果はイマイチで色んな妖術が使えるようになったくらいなんだけどね。

そんなに生きていてそれだけか、って? うっせーよ! 私は基本無能なんだよ!

 

まあそんな長い時間の中で、次第に草木が生えてきて、芽が成長して大木になったのを見た時には何かちょっと感動した。

 

また話が逸れた。

つまり、何が言いたいのかというと、退屈で死ぬところだったという事を言いたい訳だ。

違う。

 

人間がやっと現れたという事を言いたいんだ。しっかりしろ、私。

何だか最近ちょっとボケてきた。死のう。死ねない。

 

あれは、そう。まだ私が小指だけで岩石を砕く練習をしていた(結局出来なかった)頃の事だ。

何か空が凄まじい光を放ったかと思ったら、次の瞬間には人間がそこら辺にうじゃうじゃ沸いてきたんだ。

 

あれを見て考えた。すぐに結論が出た。

神がやったんだな、と。

でも、まだ断言は出来ない。

 

だから空いた時間で独自に調べてみたのだが、やはりと言うべきか。神様の仕業だった。

それどころか、以前よりも遥かに世界が広くなっていた。思い当たるのは、天地創造。

ほんとに万能だな、おい。

 

人間と妖怪が争っていた原因の一つに、あまりにも土地が狭かったというものがある。

人間側としてはもっと資源を入手したい、土地が欲しい、そんな欲求があって。

まあ妖怪側も土地は欲しかったんだけどね。

 

だから、今回の件は私にとっては得こそすれ困る要素など無い訳だが。

それでも、確か天地創造の際には神同士が何かギスギスしてたらしいな……。絡まれたくないなぁ。

触らぬ神に祟りなしだ。文字通り。

……大人しく散歩するか。妖力隠して。

 

そんなこんなで、今は新しく出来た村をぶらぶらしている。

今度は皆が皆、和服姿なので、着物を着ているという点については私が浮き過ぎる心配も無い。いい兆候だ。

……髪に関してはノーコメントで。

 

椅子に座って往来をぼやーっと見つめていると、何か重たそうな物(壺?)を持とうとして苦戦している人間の子供を見付けた。

周りの大人も特に手伝うような気配が無い。

 

「……ま、いっか」

 

別に干渉しても。

 

立ち上がると、その子供目掛けて一直線に進む。

そして声を掛けると、子供が此方を向いた。

ごく普通の、何の取り柄も無さそうな少女。

ただ、その眼が他とは違っていた。

 

眼だけではない。身体全体から濃密な力を感じる。

人間や霊の持つ力、霊力のようだ。

これは、凄いな。

というか神様、あんたら何を創ってくれてんですか。

おかしいよこれ。能力持ちの大人(人妖大戦時の)よりも濃い霊力とか明らかにインフレしてるでしょ。

あ、いや……能力は持ってんのかな?

 

舐め回すように観察しているとその少女が不審げな眼差しを寄越してきたので、内心の動揺を抑えて普通に接する。

 

「重そうだね。手伝おうか?」

「え……でも」

 

言いたい事は判る。

自分とあまり変わらないような背丈の同類(子供)に何が出来るんだ、と。そう言いたいんだろう。

残念、私は妖怪なんだよ。妖気消してるけど。

これくらいの荷物を持つ程度、造作もない。

 

「よっと」

 

ひょい、と片手で軽く持ち上げる私を見て、驚きにその顔を染めた少女。

まあ当然の反応だわな。

周りの人間からも訝しげな視線を感じる。

 

何だよー。女の子が重い物持ったら駄目なのかよー。

 

「んじゃ、家まで持ってくよ。案内して?」

「あ……は、はいっ」

 

暫く固まっていた少女だったが、我に返った瞬間慌てて私の後ろに着いてきた。なにこれかわいい。

 

 

 

道中、色々な話を聞いた。

お母さんが怖いだの、隣の家のお婆さんがボケてるだの、近所の友達と遊ぶのが楽しいだの。

そんな益体も無い話を、嫌そうな表情をしないように気を付けながら聞き続けるのは、一種の拷問だった。

……だってつまらないものはつまらないですし。

 

苦行を乗り越えた褒美か、一つだけだが有益な情報が得られた。

近くの山に、人を攫っていく鬼がいるという話だ。

山……鬼……あれ? 何か似たような経験が。

それはそれとして、折角鍛えたのだ。この力を確かめる為にその鬼とやらと一戦交えてみようじゃないか。

 

それから少女の家に着いて荷物を渡し、別れを告げた後に一目散にその山を目指した。

 

 

 

 

 

☆○☆☆○☆☆○☆☆○☆

 

 

 

 

 

「さーて、何処にいるんだろうか」

 

険しい山を特に何の装備も無く楽々登っていく白髪幼女。それが私を客観的に見た図である。

うーん……それにしても、何処にいるのだろうか。件の鬼とやらは。

さっきから強い妖気を感じるんだけど、それだけ。何処にいやがるか皆目見当も付かない。

 

……そうだ。捜すのが面倒臭いのならこっちに誘き寄せればいいじゃんか。

大戦以来人間を襲ってないから妖力の量はそのまま変わっていないけど、それでもそこいらの妖怪よりかは遥かに強い妖気を発せられるだろう。

 

さぁて、と。

持てる妖力全てを垂れ流して、寄ってくるのを待つとするか。

……でも、こんな見え透いた罠に引っ掛かってくれるだろうか。

 

 

 

……暇だ。

あまりにも暇なものだから、妖気の所為かゆらゆら揺らめく木々を眺めているんだけど……やっぱり、横着な真似なんかしてないで真面目に捜そうかな。

 

と、空も暗くなってきた所で妖力を辿って捜す方法に戻した。因みに、力はまた隠したよ。だってこの方が捜し易いし。

 

手許に妖術の炎を浮かべて灯り代わりに使う。

なるべく明るくする為に妖力を多く使っているけど、そこそこ広い範囲を照らせて使用妖力量に見合う程には便利なものだ。

戦闘や補助や、妖力の扱い方一つでがらりと変わるんだよねぇ。原理としては魔法と似たようなものなのかな?

 

その内、魔法も使えるようになりたいな……でも、魔力はどうしようか。

そう言えば吸血鬼って魔力もあった筈……私はどうなんだろう?

吸血鬼だとは思うんだけど……でも、日光に当たっても流水に当たっても何ともないから微妙だ。

銀が効くのは吸血鬼だけじゃないと思うし……。

その癖、爪は伸びるし羽根は生えてるし牙もある。

人食って美味いと……厳密には血が美味いと感じてしまった所は吸血鬼か。

 

……うーん。相変わらず自分の事は考えても解らん。

そもそも、転生時に全く別の世界に行ったって所からしておかしいし……何となく曖昧な存在だよね、私って。

 

放蕩癖のある人よろしく彷徨い歩いていると、どこからか強ーい気配を感じた。

お、やっとお出ましか?

 

何となく判る時って無い? ほら、ゲームで何か珍しい敵にエンカウントするのを感じた時みたいな。あんな感じ。

え? 無い? 嘘? あぁくそ、上手く説明できないな。

 

まあ、そうこう言っている内にその気配がどんどん近付いてきてる訳だが。

 

「……むぅ。この辺りの筈なんじゃがのぅ……」

 

草木を掻き分けて現れた古風な口調の鬼……また着物着てるし。

鋼楔といい牡丹といい私といい本当に和服好きだな、おい。

えぇと、結構背が高くて……胸でかくて……黒髪のポニーテールで……豊満な……額に二本の角があって……巨乳で……巨乳……乳……ちっ。何か腹立つ。

 

生前……もう憶えてないけど、生前ロリコンだった事だけは今も私の頭に残っているのだ。

それでもどういう訳か、もう心が完全に女になってしまったからなのかもしれないが、この幼児体型にコンプレックスを持ってしまっているのが現状。

 

本音を言うと幼児体型ではなく普通の背にそこそこ胸があった方が良かったというね。ロリコンであってもロリになりたかった訳ではない。

だから、巨乳の女を見ると無性に苛立つ。

そう、おっぱいは敵だ! 抹殺してくれる!

 

「こんばんは、死ね!」

 

一瞬で妖力を全開放。

瞬動術さながらの瞬間移動を披露した後、それを確認する暇すら与えずに拳を振り抜いた。

速度は兎に角鍛えたから、ほぼ確実に反応しきれないだろうね。多分、射命丸文でさえも。

 

案の定、反応出来なかった鬼の腹にその拳は吸い込まれるように接近し、肉を打つ音とともにまともに入った。

さあ、どうなっているか……?

 

「ぐっ……成る程、お主がこの妖気の持ち主か」

 

あんまし効いてない。

ま あ わ か っ て た 。

だが、今の私は一味も二味も違うぜ? ふふふ。

 

まず、突き出した右腕を引く動きと同時に左腕を相手の脇腹に持っていく。

勿論、鉄菱で脇を抉るように殴る。

その次には、引いた右腕を使って脚を掴み、払う為に左手側に思い切り寄せる。

そして、バランスを崩してコケかけている鬼の右脇腹に、更に右手で鉄菱を叩き込む。

それから左足を鬼の右足の内側に交差するように差し込む。そのまま右手で鬼の右の二の腕を掴んで右に引く。

次いで左手の側面を延髄に打つ。

相手の身体が前に傾いだところで、右手と左足を戻してすれ違うように移動。すぐさま右肘を背中に打ち付ける。

 

それを流れるように行う事で、相手を完封するという、努力の末に編み出した型だけど……どうせあんまり効いてないんだろうなぁ……はぁ。

 

「……面白い。久々に本気でいかせてもらうとするかのぅ」

 

え? まだ全力じゃなかったの? うへぇ、マジ勘弁。

 

即座に離れて、妖術主体で戦う事にする。

思えば、それが駄目だったのだろう。

 

「え?」

 

離れたと思ったら、急速に鬼に向けて引き寄せられていく私。何なの? 能力なの?

そして、迫る拳。

鍛えたとは言っても打たれ強くはないので、まあ、その、何だ。ははっ、私終わったわ。はい、お疲れさん。

 

 

 

 

 

「……はっ!?」

 

……何か、私って気絶ばっかしてない? 気の所為?

 

「起きたか。目覚めはどうじゃ?」

「おかげさまで最悪でございますよ、まったく」

 

うぇえ、腹痛ぇ……。

 

「お主が先に仕掛けてきたんじゃろうが」

「……まあそうなんだけど」

 

ですよねー。……それもこれも貴様の余分な脂肪の塊の所為だぞこの駄肉! あ、鬼だから駄鬼か。

よし、こいつの名前は駄鬼で決定。最高の名前だ!

 

「んで、その見た目からすると鬼だよね?」

「うむ。妾の名は鬼姫(おにひめ)黒百合(くろゆり)。お主の言う通り、鬼じゃ」

「また変わった苗字だねぇ」

「まぁ、麓の人間がそう呼んでおるから使っておるだけじゃ。呼ぶ時は黒百合で良い」

「ん。じゃあ宜しくね、駄鬼」

「何故に!?」

 

何故にって、ねぇ? そのまんまの意味じゃん。

 

「その無駄な脂肪を身に纏っている鬼だから、駄肉と鬼を合わせて駄鬼。簡単でしょ?」

「ふむ。お主は確かに可哀想な身体をしておるな」

「ははは、オーケー表出ろ。今度は油断せずにブチ殺してやるから」

「ほほう、油断という言葉で逃げるか。いつでも掛かってくるがよい」

「上等だ。その駄肉を消し飛ばしてやんよ!」

「ふっ、ははははは! よかろう。お主が勝ったら何でもしてやろう。じゃが、妾が勝ったならば、お主には抱き枕になってもらおう」

「抱き枕……だと……?」

 

考える。

 

抱き枕=あの鬱陶しい乳が押し付けられる、という事だよな? 間違いなく。

 

想像してみろ。その地獄を。

 

…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ!? 駄目だ! そんな事になったら私の精神が死んでしまう!

よし、殺そう。二度と動けなくなるまで焼き尽くそう。

脂肪はよく燃えるだろうなぁ。

 

「受けて立つ! そしてさようなら!」

 

両手に妖力の炎を纏う。

そのまま腕を振る動きと合わせて妖炎を放つ。

 

「オラァ! 丸焼きじゃあ! その余計なものを焼いてやる!」

 

言葉が勢い付くのに呼応してか、炎が激しさを増す。

周りの木々に燃え移り燃え上がり、更に外側の樹木に燃え移り広がっていく光景は、山火事の様相を呈していた。……って、実際に山火事じゃん。

 

「何が余計なものか! お主のような絶壁には言われとうないわ!」

 

気で自身に迫る火炎を吹き飛ばしながら、言葉を返してくる駄鬼。

 

絶壁……絶、壁……!?

 

「あ゙ぁ゙? そんなに死にたいのか?」

「はん。お主如き小童では到底妾は殺せんよ」

「子供扱いすんじゃねぇ! これでも永く生きてるってーの!」

「そこでムキになるから餓鬼だと言うのじゃ」

 

正論です。はい。

いやさ。それでもさ、やっぱりムカつくじゃん?

私は、人に見下されるのが、大ッ嫌いなんだッ!

 

「……圧縮圧縮、妖気を圧縮ぅ!」

 

持ち上げた右手。掲げた掌に全身に巡る妖力を集める。

ここからは爆弾にぶつけたものとは違う。集めた妖力を圧縮、更に集めて圧縮。それを繰り返す。

あの時の妖力量のままだが、技量はあの頃とは比べ物にならない所まで行き着いている。

無限大の妖力を掻き集めて極限まで圧縮し、今、必殺の!

 

破滅『ザトラツェニェ』

 

全身を一個の砲台と変えて差し出した右腕の砲身から、紅の光線が発射される。

黒き雷が辺り一帯を穿ち、それを纏う深紅の大蛇が標的である駄鬼を喰らわんと迫る。逼る。

 

どうだ! この凄まじく痛い厨二ネームは! ……まあ、普通に恰好良いし、某吸血鬼姉妹の姉の方の壊滅的なネーミングには程遠い。

あの域まで達する訳にはいかない。色々な理由で。

 

「……それは洒落にならんぞ!?」

 

流石に危機感を覚えたのか、駄鬼が騒ぐ。

 

知るか。灰燼に帰せ。

 

「えぇい! 使いとうはなかったが、そうも言っておれん!」

 

……何だ? まだ何か隠してやがったのか?

不味いな……これを防がれると打つ手が無くなる。

二撃目を撃つ余裕は……ある。けど、ここは余裕を持っておいた方が良いな。それでも、追撃の準備だけはしとくか?

 

万全の態勢で紅壁の向こうを注視する。

しかし、予想外の事とは得てしてこういう時にこそ起こるもの。

 

次第に薄れて光線の先が視界に映るようになった。

そこにあったものは。

 

「……鎖……?」

 

駄鬼の身体を覆って大きな鎖が広がっている。

それはいいんだけど、あの広がり方からすると……喰ったよな? あのビーム。

……え? どうリアクションとればいいの?

いや、あれを受け止められたのは単純に凄いけどさぁ。

 

そして、私に向かって四方八方から迫り来る巨大な鎖。

絡め取って何するつもりだよ! ……まさかナニするつもりだったり? それは御免被る!

見た所、あれは妖術の類だな。それなら私の能力が生きる。

 

私の能力『無効化する程度の能力』は、少々ややこしい能力である。

無効化と聞くと、色んなものを無効化出来るんじゃないかと思うだろうけど、それは違う。

……実際私もそう思っていたけど。

 

物理攻撃。これには確定で能力が利かなくなる。

妖術といった類の攻撃なら無効化する事が出来る。

魔法や霊撃は未確認だが、恐らく防ぐ事が出来る筈だ。

かと言って、能力や概念までも無効化出来る訳では無いのだ。

 

まあ、概念にまで及んだらチートの領域に全身を突っ込む事になるけどね。

え? 今でもチート? そんなこたぁない。

これでチートなら、某永遠と須臾の罪人さんとかどう説明するんだよ。

 

「……何じゃと?」

 

私の身体に当たった瞬間に霧散した妖術の鎖を見て、駄鬼の顔色が変わる。

そして、すぐに納得したような表情になった。

 

「……そうか。能力じゃな?」

「教える訳ないじゃん。……でもまぁ、ご明察とだけは言っとくよ」

 

ふむ、息を吐いて。それから妖力を右手に集中させ始めた駄鬼。

……あぁ。これ一発で決めようって話ね。はいはい。

 

「ふ……っ」

 

二発目を撃てる分の妖力を、同じく右手に収束させる。

すると、意図が伝わった事が判ったのか、駄鬼がニヤリと口元を吊り上げて笑う。

 

「来るがよい」

「はいはい……っと!」

 

地面を踏み鳴らして急加速。

駄鬼の眼前に到達すると同時に踏み込み、十分な助走の下に勢いが増した拳を打ち込む。

そして駄鬼も、それと合わせるように鬼らしい気迫で以て拳を打ち込んでくる。

 

そして衝突。

結果は……相討ちに終わり、二人仲良く気絶した。

 

 

 

「……ったく。鬼って種は、どんな馬鹿力だよ本当に」

「……お主が言うと、嫌味にしか聞こえんぞ」

 

そして闘いを終えて駄鬼と打ち解けてしまった私は、自己紹介をした。

 

「……転生、とな?」

「ん。……まったく意味が解らんと思うけど」

「そんな事はないぞ?」

「何でさ」

 

それから暫く勿体ぶった素振りを見せた後に、更に一呼吸置いてから、駄鬼はとんでもない発言をして下さった。

 

「妾も、転生したからじゃ」

 

……はい?

…………えーと?

……………………。

 

……何と言う事でしょう。

 

「……マジで?」

「マジじゃ」

 

そこまで言うなら……。

 

「そんな装備で大丈夫か?」

「大丈夫だ、問題無い」

 

エル〇ャダイネタが答えられた、と。

ほんとはこれで判ったんだけど……面白そうだから、もっとしようかな。

 

「もっと熱くなれよ、でお馴染みの?」

「松〇修造じゃな」

 

こいつ……まさか、ニコ厨か?

じゃあ、質問の内容を絞ろう。

 

「ド〇ルドの靴は何センチ?」

「ハンバーガー四個分くらいじゃな」

 

ほう。もうこれ確定だな。

よし、最後に。

 

「スキマ妖怪と言えば?」

「……? 何じゃそれは」

 

……おい。何でここだけピンポイントで抜けてんだよこの野郎。何で東方だけ抜けてんだよ……。

はぁ……何かちょっと憂鬱だわー。どのキャラが好きかとかそんな話がしたかったのにさぁ……。

某ネーミングセンスが絶望的なカリスマに溢れた吸血鬼姉が好きって事を小一時間語りたかったのにさぁ……。某無邪気だけど狂気に満ちてる吸血鬼妹が好きって事を……某無表情だけどお面で感情を表す付喪神が好……。

 

……はぁ。まぁいいけどさー。

転生者って事は判ったしさぁー。

別に何とも思ってねーしー。ふん。

 

「……まぁ、判った。転生者同士これから宜しく」

「む? ……うむ」

 

……はぁ。

 

「ところで……何ゆえそんなに不機嫌なのじゃ?」

「……何でもないよ」

 

気を取直して。

 

「んで、転生したって言ってもいつなのさ」

「うーむ……三万年程度かのぅ?」

「何だ。最近か」

 

私の言葉に反応して訝しげな目をしている駄鬼。

……何かおかしな事でも言ったか?

 

「それで最近……お主はいったい何年生きておる?」

「知らん。億ぐらい」

「億……じゃと……!?」

 

あ。そうか。十分異常か。

 

「まーぁ色々とあってねー。曖昧な存在なのさ」

 

そもそも種族判んねーし。

吸血鬼じゃないとしたら、一番有力なのは一人一種族の某スキマ妖怪みたいな存在?

 

それに。

 

「……まぁ色々と狂ってるしねぇ」

「ん? 何か言ったか?」

「いーや、何でもないよ」

「…………」

 

さて。これからどうしようか。

 

「紅雪よ。折角じゃ……妾の住処に泊まっていかぬか」

「いきなり何さ」

「何となくしっかり寝ていないような気がしてのう」

 

……鋭いな。

駄鬼の言う通り、人妖大戦から碌に何も食べてないし(食べなくても死ななくなってるから)、碌に寝ていない。

 

お言葉に甘えたいところなんだけど……ねぇ?

あの時に抱き枕とか言ってたから凄く不安で不穏で。

 

……まぁ、いらん事してきたら焼けばいいか。

 

「んじゃあ泊まってきますよ」

「そうか」

 

そして、駄鬼の住処であるという洞窟に向かう道すがら、転生前のネタで十分に話し合った。

 

……本当は、寂しかったんだろうね。

こんなに他人と話した事なんて、あれから無かったし。

 

 

 

───まぁ。この出会いは大事にしていこう。

 

 

 




・キャラの特徴・

・名前:鬼姫黒百合(鬼姫は称号みたいなもの)
・性別:女
・種族:鬼
・性格:大雑把ながら結構鋭い

額に二本の角が生えている黒髪ポニテのグラマーさん。
着物だけど、柄には敢えて触れないよ。
齢三万のBBA……げふんげふん。
両刀使いではあるが、どちらかと言えば百合思考。
そして、紅雪と同じく転生者。

※能力は第7話で語ります。
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