「蓮、何かあったらこの鍵を使いなさい」
そう言って父さんは鍵を渡してきた。
「これ、父さんの研究室の……いいの?」
「ああ、だがずっと籠って時間を忘れた、なんてことにならないようにな」
真剣な顔で父さんは言うが、
「大丈夫よ、蓮は英一さんと違ってちゃんとしてるから、英一さんとちがって」
母さんが呆れながら言う。
「あはは、研究してると時間を忘れるのは昔からの癖でね、悪いと思ってるよ」
苦笑いしながら言うが、その顔に反省の色はないようだ。
「悪いと思ってるなら直しなさい。いつも私と蓮で呼びに行かないと反応もしないんだから、だいたい「あー分かった分かりました説教はあとで聞くから今は蓮に」ハァ、そうだったわね」
母さんは溜息をつきながら、ネックレスをとりだした。
「はいこれ、ハスのネックレス」
「ハス?それって僕の名前の由来になった花だよね?」
僕は首を傾げながら聞いた。
「そうよ、よく覚えているわね。もしつらい時や諦めそうになったらそれ見ながら思い出しなさい、貴方は一人じゃない、私達はずっとあなたを見ているわ」
そう言った母さんの顔は悲しそうな顔をしていてなんだか不安になって、
「……帰ってくるよね」
「何言ってるの、あなた一人残してどっか行くわけないでしょ」
母さんは抱きしめながらそう言った。
「エヴァもうすぐ時間だ」
「ええ、そうねじゃ蓮すぐ帰ってくるからおとなしくしとくのよ」
「うん、いってらしゃいっ‼」
直後目の前が歪んで喋れなくなり体が動かなくなった。
父さん!母さん!そう言って手を伸ばしたが喉から声がでることもなく体は金縛りにあったかのように動かない。
だんだん歪みが酷くなり目の前見えなくなり立っているのかさえ分からなくなってきたがそれでも手を伸ばすのやめなかった。
行かないで!父さん!母さん!行ったら死んじゃう!とお、さん、かあさ、ん……
―――――――――――――
「はっはぁはぁ……」
くそっまたかハァ、今のは夢だ。
三年前父さん達は帰ってこなかった、帰りの飛行機で事故にあい死んだのだ。よく思い出せば父さん達は死ぬかもしれないことが分かっていたのかもしれない。それからよくさっきの悪夢を見るようになった。
「シャワー浴びるか」
ジュージュー チン
「パンが焼けたか」
皿にパンをのせ卵ウィンナーにおかずと、よし。
「いただきます」
父さん達が死んでから知らない人たちがよく来て親戚だの、かわいそうだの、言って俺を引き取ろおとしたがそいつらが、遺産目当てなのはまるわかりだった。一人だけ本当に善意で引き取ろとした人もいたが、そのときにはもう一人で暮らす事に決めていたから断った。
それからは二年ぐらい過ごしたが父さんとの思いでつらくなり一年前にアパートに引っ越した。
背は高かったので歳を誤魔化したらいけた。お金は遺産にはあまり手を付けないでネットオークションで自作したパソコンだったりを売って、その伝手で修理やプログラムで稼いでいる。
幸い俺には父さん達の遺伝なのか、運動は練習すれば大抵ことはできてしまうし、勉強も俺は完全記憶記録型と呼んでるが、見て聞いて感じたことは忘れない、ただ普段は普通より記憶力がいいぐらいで、思い出そうすれば思い出せる、というものだ。これらのおかげで勉強や運動や家事なども困らないし一人でできる。
父さんの鍵は一度も使ってない、あそこにはいくきがおきなかった。
今は15歳中学三年、高校生になるまであと三か月ぐらいだ。
「ごちそうさま」
身支度をして、眼鏡をかけ鏡をみれば映っているのクラスに一人はいそうな根暗だ。この眼鏡は度がはいっていない伊達メガネだ。
父さん達が死んでからはまわりとは距離をおくようにした。俺は小さい頃から感受性が強く感情が大まかに分かるそのおかげで父さん達からの愛情は確かに感じ取れたが、ただ死んでからの喪失感がすざましく、もうあんな思いをしないために、距離をおくようになった。
「よし、行ってきます」
ガチャ
キーンコーンカーンコーン
放課後
帰り道にスーパーによってそのまま河川敷に行き、
ピー!
指笛を吹いて数十秒後、猫、犬、鳥、はては兎まできた。
「あーまて、まてだぞ……よし」
それを合図に一斉に自分の餌のところに行った。こいつらは野良だ、兎や鳥がいるのは近くに山があって時々降りてくるからだ。
俺はたまに学校帰りによって餌を与えていたら、いつの間にか集まっていたのだ。
一人がいいといっても俺の心は、そこまで強くなかったらしい。だからといって人と関わるのは無理だ、そこアニマルセピラーを思い出してここでやっていたら、はまてしまった。
ただ心の片隅では依存かもしれないと思っている。失礼かもしれないけど動物達は本能よりなのか分かりやす感情だった、優しくすればなついてくれるし、人よりも付き合いやすい
「よし、ここまでなー、また来週じゃあな」
立ち上がって振り返ったらだれかこちらを見ていた。
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
挨拶しながら通り過ぎたが今の制服、金持ちが通う学校のだよな、ここら辺に豪邸だったり有名人の家は無かったはずだが、それに男物の服だったけどどう見ても顔から体つきまで女らしかったんだが、謎の男の娘、現る!みたいな噂がでそうだなー。
そんな事を考えながら帰るのだった。
退屈だけど不満はなく、人恋しいけど怖くて近づけない、そのまま何事もなく一人寂しく死ぬのかな。
そんな事を思いながら信号を待っていたら、
「っ」
今のは、誰かの嫉妬それに憎悪まずい!俺えの感情なある程度読み取れるが、誰かから誰かえの感情は特別強くなければ感じ取れない。好意的ななら公開告白なりなんなりだが、悪意は刃物沙汰もしくは人が死ぬかもしれない。
ドンッ
そんな音が聞こえ目をむければ黒髪ロングの女が道路に突き飛ばされていた。いつの間にか体が動いていた。
プップー‼キーー
このまま突き飛ばしても間に合わない、俺は女の人を体の中に抱くように抱きしめながら突き飛ばされた。
ドンッゴロゴロ、ゴロー
「キャー!」「救急車! 誰か救急車呼べ!」「おい! 大丈夫か!」「まじか事故、事故だ写真、写真」ざわざわ
「うっくっ」
くそっまわりがうるせっお前が救急車、呼べよ!それと人が事故ってるのに写真撮んじゃね!てかそれより女の人無事か?
「お……い……だい……じょ……うぶか」
女の人へ顔を向けながら聞けば泣きながら頷いた。
「そっ……か、おま……えが………ぶ……じ……なら……いい」
俺は笑いながらそう言った。
やばい目の前が暗くなってきたもうすぐ死ぬかも。でも最後に誰かを助けて死ぬんだ、父さん達も許してくれるだろ。
ピーポーピーポ
「ま―――をあ――も―――き―――――うし――――ら!」
サイレンと女の人の声が聞こえるが何言ってるか分かんねぇ。
本格的にやばいかもあっ眠くなって……きた……お……や……す………み…………
ジジジジジ
「はっ」
目を覚ましたら知らない天上だった……
人生でこのセリフを言うとは思ってなかったがここ何処だ確か俺、死んだはず。
そう思いながら起きてまわりを見渡せば、東京タワーが見える部屋に俺を入れて9人ぐらいの人と部屋の真ん中に、
黒い球があった