陽炎、抜錨します!から設定をお借りしてます。
深夜テンションで書いてます。増えるかもしれないし1話だけかもです。

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不知火、風邪を引く

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……暑い。

秋が終わり、冬に入った頃、目が覚める。

暑苦しい。おかしい。もう窓を開けて寝ても問題ないはずなのに。

汗もかいている。

 

窓の外は少しずつ明るくなってくる。おそらく朝の4時か5時ぐらいだろう。

布団から出て…入渠施設に行こう…シャワーを浴びて…朝のランニングを…

 

 

 

―――――――――――――――――――

ガタッガタタッ!!

「…んご…?」

人がすやすやと寝ている時に大きな物音を立てるのは誰だ。

音の近さからして、同じ部屋だ。今は朝の…5時か。こんな時間に誰だろう。

というかこの部屋には私と不知火しかいない。

寮室の扉にはしっかり「陽炎」「不知火」の名札がついているはずだ。間違えて入る奴は居ない。

つまるところ、音を立てるとしたら不知火だが、少なくとも騒音を出すような性格では…

 

「って不知火!?アンタどうしたの!?」

2段ベッドの上の段から顔を出すと、ベッドの横に落ちたまま動かない不知火が居た。

 

 

 

 

「し、しらぬいに…おちどでも…?」

「はいはい、おとなしく横になってなさい」

時間がたって昼手前の10時頃。

入渠施設で診察を終えた不知火をベッドで休ませていた。

医者いわく「典型的な季節の変わり目による風邪」だとか。2,3日で完全に回復するから寝ておけと。

大きな病気じゃなくて安心した。艦娘も人間だ。風邪ぐらい引くし大きな病気に掛かる可能性だって0ではない。

病気を持ち込まないという意味でも外部からの食料などの持ち込みなどが制限されているのだが、

食べ盛り、遊び盛りの駆逐艦は破りたくなるのも必然なのだ。私は悪くない。

…私のせいじゃないよね?

 

 

不知火が診察を受けた後、自分は一人、自分と不知火の訓練の不参加を申請する手続きを出してきた。

元々様々な手続きを乗り越えた先に訓練や出撃が出来るため、不参加ならそれはそれで書類と連絡の必要がある。

少し手間だが軍属だから仕方ない。大事なのは、その後の埋め合わせだ。

 

神通教官は「体調の悪い状態での訓練は危険です。治ったらその分がんばりましょう」と声をかけてくれている。

つまり戻ったら倍の訓練が待っているということで…

 

 

「…すみません、陽炎。不知火のせいで陽炎まで…」

「良いって良いって。アンタも頑張り過ぎなのよ。休んでもバチは当たらないってば」

不知火のおでこに乗せる濡れたタオルを取り替える。

霞が用意してくれた雑炊を少し冷ましつつ、不知火を見る。

「…アンタ汗かいてるわね。拭いてあげるから服脱ぎなさい」

「じ、自分でできます…」

「いーのいーの。お礼なんか良いから」

「人の話を…!はぁ…わかりました」

着替えを用意して、濡れたタオルで体を拭いてあげる。

うーん。この無駄のない洗礼されたボディ。

同性の人間でも惚れ惚れするスラッとした体型だ。凹凸が少なすぎる気もするが。

アスリートタイプというのであろうか。きっとお腹の脂肪とか気にすることはなかろう。

 

「陽炎、もう大丈夫です…あの、どこを見てるんですか?」

「ん、やっぱ不知火ってスラッとしてて羨ましいなって」

「…人の体を観察するのはやめていただけますか」

ただでさえ風邪で赤い顔が赤くなる。すまぬい。妹の成長を見るのが姉の役割なのだ。

「ただもうちょっと胸ほごっ」

「沈め…沈め…!」

猫パンチを顔に食らう。さすが不知火だ。風邪引いてても的確に痛い殴り方してきやがる。

 

 

…そういえば、こんな弱った不知火を見るのは初めてかもしれない。

いつも無表情で淡々と訓練を重ねる彼女は、駆逐艦の中でもトップクラスに成績が良い。

スタミナもあるしガッツもあるし。自慢の妹だ。血は繋がってないが。

文句を言うとすれば姉としての立場があんまりないところぐらい。

それだけ出来た妹が、ベッドから転げ落ちたり、フラフラになるのだ。

彼女もやはり人間なのだ。とわかってちょっと安心する。

「もっと甘えてくれると良いんだけどなー」

「声に出てますよ。陽炎」

「ふぉ!?」

まずいまずい。普段見れない不知火の姿を見て油断しているのかもしれない。

でもせっかくだから聞いてしまえ。羞恥心を押し殺しつつ頑張って問いただす。

 

「不知火ってあんまり私を頼ってくれないよねぇ」

「…陽炎が頼りなさすぎるからですよ」

「ごふぅ!」

「訓練でもヘマするし、寝坊するし書類を書き間違えるし…」

強烈な言葉の右フック、左フック、ストレートを食らう。物理的に殴られるより辛い。

「で、でもいつも美味しいもの取ってきたりするじゃん」

「いつもごちそうになってます。不知火は桃が食べたいです」

「よしきたまかせろ!10個ぐらいあればいい?」

「そんなに取ったらバレるでしょう…1個でいいです」

「あいよ!お姉ちゃんに任せな!」

「………………そういうところですよ」

「ん?なんか言った」

「いいえ。不知火は横になっていますので」

 

不知火の期待に答えないと。姉として腕の見せ所だ。

 

 

―――――――――――――――――――

次の日。

 

「…はぁ…」

「ごほごほ!ごほ!」

やはり陽炎も風邪をひいた。

風邪引いてるのに同室で寝泊まりすればそうなるのも当然だろう。

今日は別の部屋で寝てほしいと言っても同じ部屋がいい。面倒見たいと聞いてくれないのだ。

どうしてこういう時だけワガママなのか。結果風邪を移してしまった。

 

 

自分は動けるようになったが、それでもまだ体は重い。

「しばらく食事には困りませんが…」

大量に並べてある缶詰を見てため息をつく。張り切りすぎだこの長女。

桃缶にサバ缶にシーチキンに焼き鳥…缶詰だけで生活が出来る。これ以上やると憲兵送りだ。

一番近い缶詰を開けて、中身をフォークで突き刺し、私は陽炎の口に押し付ける。

「むぐむぐ…おいしい…」

「これ食べたらちゃんと寝てくださいね。陽炎」

「ふぁい…ごめんねしらぬい…」

「…別に。不知火は怒ってなどいません。呆れてるだけです」

「うう…」

「今日は不知火が看病してあげますからね」

「ほんと…?って待って不知火。それ何?」

「座薬です。定番でしょう」

昨日恥ずかしい姿を見られた腹いせと、早く治ってほしいという思いでとりあえず貰ってきた。

効果は高いが他人にされるのがめっちゃ恥ずかしい治療法。とりあえず長女で試す。

「ごめん待って…それだけは…それだけは許して…」

「痛みは一瞬ですよ」

「やだぁ!」

 

 

暴れる長女ともみくちゃになっているところを、姉妹艦が見舞いに来てあらぬ噂を立てられる。

不知火に落ち度はありません。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
ハーメルン初投稿です。ちょっと言ってみたかった。

友人が書いてる所見ると自分も書きたくなりました。出来上がったのがこちらになります。
かげばつ小説がもっと増えることを祈ってます。誰か私の代わりに書いてください。
タグ、文章の不備などあればご連絡いただけると凄く助かります。


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