間違った青春ラブコメの終わらせ方   作:富永悠太

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1話

 駆けつけた俺は部室で雪ノ下と話すことになった。

 

「なぜ来たの?」

 

 その質問にはあえて答えず質問で返す。

 

「学校側がプロム中止を決定したんだって?」

 

「・・・・・・ええ」

 

「そして俺には伝えるなと平塚先生に頼んだらしいな」

 

「今回はあなたにも由比ヶ浜さんにも頼らず一人でやると決めたもの・・・・・・」

 

「ここから巻き変えす案はあるのか?」

 黙ってうつむく雪ノ下を見ながら踏み出すことを決めた。

 

「お前からの依頼な・・・・・・最後を見届けるのは良い、でもその前の諦めたいってなんだよ」

 そう、それはプロムではなくあの水族館の帰りに受けた依頼。

 目を見開く雪ノ下を見ながら言葉を続ける。

 

「今回も諦めるのか?」

 

「・・・・・・それとこれは別よ」

 

「同じだろ。母親に対峙するのは」

 ずっと違和感を覚えていた。

 

「諦めることが前提なんて雪ノ下らしくない。」

 

「私らしくって、あなたが私の何を知っていると言うの?」

 極寒の眼差しで睨みつけてくる。

いつもならひるむが今回だけは譲れない。

 

「お前は軽い挑発に負けて脱衣ゲームですら受けてしまうくらい負けず嫌いだ。

 そういう所は姉の真似でも誰の真似でもなく、紛れも無く『雪ノ下雪乃』のものなんじゃないのか?」

 

「それは・・・・・・」

 

「なんで負けることが前提なんだ。最初から諦めていたら勝てる訳がないだろう?

 押して駄目なら諦めろは俺の座右の銘だ。俺の真似か?」

 

「っ・・・・・・違うわ。比企谷くん、あなたは私の質問に答えてないわ。なぜ来たの?」

 

「もう一つ依頼を受けていたからだ。・・・・・・いつかお前を助けるって、そのいつかが今だと思った」

 

「そう・・・・・・でも」

 最後まで言わせたくなくて勢いで言ってしまう。

 

「なあ雪ノ下、お前の家族のことを教えてくれ」

 

「え?」

 

「お前は嫌かもしれないが、交渉相手が実の親というのはアドバンテージにもなる」

 

「今まで家族の問題だとか心の中で言い訳ばかりして雪ノ下の事情を何も聞こうとしなかったし

 話題にもしなかった。俺たちは肝心なことを・・・・・・色々なことをずっと誤魔化し続けてきたんだ」

 

「それにお前は俺に頼らず一人でと言うけど、俺でも由比ヶ浜でも誰でも使いまくって、成し遂げて

 見せるのが本当の成長なんじゃないのか? ずっとボッチで人を寄せ付けなかったお前が、人を上手く

 使えるというのは何よりも成長の証になると思うぞ」

 

 陽乃さんは俺に頼るのは意味がないみたいなこと言ってたけど、あの人は平気で嘘もつくだろう。

 上手く誘導させられたのかもしれん。あの人の意図はよくわからんからな。

 

「それに最後まで見届けさせたいなら近くに居させてくれよ。遠く離れたところからじゃよく見えねえよ」

 

「ふふ、比企谷くん・・・・・・あなたでもそんな事言うのね」

 

 

 気が付いているか? 雪ノ下。

俺たち奉仕部は個別に依頼を受けるとろくな事にならない。

依頼を受けるなら3人じゃなきゃ駄目なんだよ俺たちは。

 

「春には平塚先生が他校に異動になる可能性が高い。最悪奉仕部は春に廃部になる。

 もしかするとこれが奉仕部としては最後の依頼になるかもしれないんだ。

 最後の依頼を一人でっていうのはずるいだろ、しらんけど」

 と照れ隠しにそっぽ向きながら言ってみる。

「子供みたいなこと言うのね。あきれたわ」

 そう言いながらも今日はじめて雪ノ下はやわらかな微笑みを見せた。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「夢か・・・・・・2年以上前のことなのによく覚えているな」

 

 最近、当時を思い出す事が多いせいかあの頃の夢を見る。

確かあの後、家族のことを聞いたんだったか・・・・・・少し胸糞の悪くなる酷くくだらない話を。

 

 雪ノ下とその家族に決定的なミゾが出来たのは、そのくだらない事がきっかけだった。

雪ノ下が小学生の時、有力者だかの家族が集まるパーティーがあった。

そこで酔った勢いもあったのだろうが、雪ノ下さんのお嬢さんとうちの息子を許婚にとかいう話が出た。

そうすると色々な人間が家も家もと言い出して、婚約者候補というよくわからんものに落ち着いたそうだ。

半ば冗談半ば本気のような婚約者候補選びが始まった。

 

 まあほとんどの人間は余興のつもりだったんだろう。

雪ノ下のお嬢さんは2人いる、どちらが良いか別室で自分の子供に選ばせた。

 

 その結果、全員が陽乃さんを選んだ。

 

 そこには葉山も居た。葉山も陽乃さんを選んだ。

結果的にいじめを助長してしまった当時の葉山と雪ノ下の関係を考えると

消去法で選んだだけなのかもしれない。

 

「それでも、俺は選ばない、なにも。」

 みんなの葉山隼人を辞められない葉山が、マラソン大会の時に言っていた言葉を思い出した。

 

「・・・・・・雪乃ちゃんは、また選ばれないんだね」

 花火の時はその言葉の真意がわからず、その後は両親に選ばれなかった妹のことを慮って

言っていたのだと思い込んでいた。

 

 やっと点と線がつながった感じがした。

 

 小学生の女の子には酷な結果だ、プライドの高い雪ノ下は酷く傷ついただろう。

それがあったからこその留学と一人暮らしかと腑におちた

あの母親が高校生の一人暮らしを反対しつつも最後に折れて認めたのは、負い目があったからだろう。

よく考えれば中学生の留学を許した理由もそれかもしれない。

 

 ただそんな事がわかっても交渉の材料には弱かったが、なんとか交渉のテーブルにつくことはできた。

途中あの母親が娘の隣にいる俺の悪評にターゲットをしぼって崩しにかかってきた。

主に悪名高い文化祭、そしてどこから聞きつけたのか修学旅行の嘘告白だ。

 

 やはり平塚先生が言った通り、俺のやり方では本当に助けたい誰かに出会ったとき、助けることが

出来ないのかと自分を呪った。過去の自分の行いがまわりまわって自分に返ってくるなんてな。

 

 誤解も解だと嘘ぶく前に少しでも誤解を解く努力をすべきだったのかと、後悔しても遅い。

 

 そんな時助けに入ったのはなんとあの相模と葉山だ。

 

 俺の悪評は自分の依頼から始まったんだと、全部洗い浚いぶちまけた。

 

 それからも揉めに揉めたが、なんとかプロムの開催にこぎつけることが出来た。

 

 

 

 

 

「明日も早いしもう寝るか」

 

 約束の日はもうすぐそこまで迫っている。




 最後は駆け足になってしまいました。

 かつての敵やライバルが土壇場で味方になり、ラスボスを倒すのは王道ですよね。
相模や葉山が最後に助けてくれる気がします。
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