間違った青春ラブコメの終わらせ方   作:富永悠太

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 ご無沙汰しております。ちょうど1年ぶりの更新です。すみません。
 なかなか更新できなかった理由は1話と2話を書いたのは13巻が出る前なので
その後だと原作の展開が頭から離れずどうにも難しかった事とHDDがぶっとんでデータが消えたことですね。

 14巻が発売する前に書かなきゃ意味ないよと超特急で書き上げたので色々拙い部分が多いと思います。
 ダイジェスト風でもよろしければご覧ください。


3話

 

 雪ノ下から話があると奉仕部に呼び出された。

 なんとなくいつものようにで定位置に座り、雪ノ下が煎れてくれた紅茶を飲む。

 

「転校することにしたわ」

 

「は?」

 

 何を言ってるのかわからなかった。危なく紅茶を吹き出すところだ。

 

「やっぱり不安なのよ。あなたに依存してるかもしれないとずっと考えながら付き合うことが」

 

 混乱した頭をなんとか平静に保ちつつ雪ノ下の言いたい事を整理するとこういう事らしい。

 

・依存を解消するには物理的に離れるのが1番

・気持ちを確かめるためにも私たちはしばらく離れたほうが良い

・転校を言い出したのは自分からで誰にも強制されてはいない

・転入先は県内の女子高で会おうと思えばいつでも会える

・しかし八幡とは会わない

 

「もちろん由比ヶ浜さん達とは会うわ」

「はぁ、……もう決めたんだな」

 

 本当に面倒くさい女だ。

 でもそんな女に惚れたからには受け入れなきゃいけないのか?

 

 再会は成人式の日だと言う。

 ある意味区切りとしては良いのか?

 

「これから3年近く会わないことになるわ。

 でも2人の想いが変わらなければ、それこそ本物でしょう?」

 

「3年は長いな……」

 

「ええ、長いわ。だからもし心変わりしたら、他の人に惹かれたら遠慮なく付き合えば良いわ。

 私もそうするから」

 

 邪気の無い笑顔で言われたら何も言えない。

 

「由比ヶ浜さんにはもう話してあるの。彼女の助けが無ければあなたに気持ちを伝えることなんて

 できなかった。うまく言えないのだけれど、譲られたような気がするのよ」

 

 俺の目をじっと見つめながら雪ノ下は堂々と宣言する。

 

「これは勝負よ。彼女があなたを振り向かせるか、私が繋ぎとめられるかの」

 

「わかった、降参だ。……成人式の日に会うなら連絡先交換しないとな」

 

「私達、連絡先も交換してなかったのね。順序が滅茶苦茶だわ」

 

「俺達らしいんじゃないか、知らんけど」

 

 なにか異種返しなようなものがしたくて、冗談めいた口調で何度か口にしたセリフを言ってみる。

 

「もし、万が一だがお互い心変わりしたらその時は友達に「それは無理」またそれかよ」

 

「だって私はあなたと友達になりたいわけじゃないもの」

 

「そう、だな」

 

「ええ。そうよ」 

 

 

 こうして俺と雪ノ下は奉仕部で出会ってから1年近く経って、ようやく連絡先を交換した。

 

 

「会えなくてもメールやラインで近況は報告するわ」

 

「電話はどうする?」

 

「そうね……緊急時以外は1ヶ月に1回にしましょう」

 

「了解」

 

 

 そろそろ帰ろうかと連れ立って扉をあけようとすると、雪ノ下がいきなり抱きついてきた。

 

「なっ」

「知ってると思うけど私、負けず嫌いなの。負けさせないで、ね?」

 

 そう言うと唇を塞がれた。

 

 そっと名残惜しそうに離れる。

 

「これは呪いよ。他の人とキスしたら比企谷くんは苦しんで死ぬわ」

 

 照れ隠しに早口で伏目がちにほほを染めてそんな事を言ってくる。

 

「反則だろそれは。色々な意味で」

 

 可愛すぎるその姿を見ながら微笑んだ。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 そして成人式の日。

 ありきたりだが、3年近い時間は長いようであっという間だった。

 

 

 

「その……久しぶりね」

 

「あ、ああ」

 

 久しぶりに見た雪ノ下雪乃はまたさらに綺麗になっていた。

 

「早速だけど、その……答えを聞かせてもらえるかしら?」

 

「俺の気持ちは変わらない。雪乃が好きだ」

 

「私も変わらなかったわ。好きよ八幡」

 

 

 お互い自然と抱きあってキスをしていた。

 

 

「タバコ、吸うとは聞いていたけれど」

 

「嫌か?」

 

「身体に悪いわ」

 

「やめるように前向きに善処いたします」

 

「それ、やめる気ないわね」

 

 

 手を繋ぎ歩き出す。

 

 こうして長い時間をかけて俺達は恋人同士になった。

 

 俺は思い出していた。

 

 『高校生活を振り返って』というテーマの作文を。

 

 奉仕部の部室で再提出の作文を書き直した時、俺は最後にこう書いた

 

「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」

 

 でも今思えば間違っていたって良いと思う。

 何も間違えず生きる事なんてできない。

 

 あの時、作文を書いた自分にこう言いたい。

 

 こんな面倒なやり方でしか答えを出せなかった俺の青春ラブコメはまちがっていたのだろう。

 

 でも間違えたとしても何度でも問い直せば良い。

 

 まちがえるのが青春だ。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「お先に失礼します」

 

「おっ比企谷、今日は早いな」

 

「今日、結婚記念日なんですよ」

 

「そういや去年の今頃だったな。いや結婚式で見たお前の嫁さん美人だったなぁ」

 

 うらやましそうに上司が言う。うらやましいか、やらんぞ。

 

「田中さん。新婚引き止めちゃ悪いですよ」

 

「ああそうだな。お疲れさま」

 

「お疲れ様です」

 

 ナイスアシストだ中村。

 

 

 俺は大学卒業後、とある出版社になんとか採用され編集者になった。

 

 材木座も夢をかなえてライトノベル作家となり、なんの因果かうちの会社から出版している。

 今まではとある先輩が材木座を担当していたが、会社を辞めるため今度俺が担当になることが決まった。

 編集者は結構入れ替わり激しい。その先輩編集者は別の出版社に移るらしい。

 

 それはともかく俺は結婚した。結婚して1年だからまだまだ新婚気分が抜けない。

 

 自宅マンションに着きインターフォンを押し、帰った事を告げる。

 

 出迎えてくれるこの瞬間がたまらなく好きだ。

 

 ガチャっとドアが開く。

 

 

 

 

「おかえり! ヒッキー!」

 

 

 

 

 花が咲くような笑顔で出迎えてくれた。

 

「そのクセ直らないな。もうお前もヒッキーだろ?」

 

「えへへ」と俺の妻がいつものように照れ笑いをする。

 

 俺は1年前、由比ヶ浜結衣と結婚した。

 

 今は比企谷結衣だ。

 

 

「それにしても良かったのか? 洒落たレストランで祝っても良かったんだぞ」

 

「ううん、いいの。おうちで2人きりで祝いたかったし」

 

「そっか」

 

「そうだ」

 

 

 結衣は料理がかなりうまくなった。

 ガハママにそうとう特訓させられたらしい。

 今は安心して食べられる。ありがとうお義母さん。

 

「それに、……来年からは2人きりじゃなくなるし」

 

「え?」

 

「それって、もしかして」

 

「うん。今日病院行ったらおめでただって!」

 

「マジか! あっ大丈夫か? ソファに座ったほうが」

 

「いきなりおおげさだ! もう、まだまだ大丈夫だよ」

 

「そっか……そのなんていったら良いかわからないけどその、嬉しい。ありがとう」

 

「うん。あたしもすごく嬉しいよ! あたしとヒッキーの赤ちゃんだもん。絶対かわいいよ」

 

「お義父さんやお義母さんには報告したのか?」

 

「ううん、まだ。ヒッキーに1番に言いたくて」

 

 可愛いことを言う妻の頭をなでる。

 目を瞑りされるがままになる結衣が可愛い。

 

「あっそういえば病院行く前にゆきのんから連絡きてね。今日本に帰ってきてるんだって」

 

「そうか」 

 

 雪乃とはあれから社会人1年目までは付き合っていたが色々あって別れた。

 

 雪ノ下の家からも俺からも離れて、今はアメリカに渡り仕事をしている。

 

 ある意味、彼女が自立した女性になれた結果なのだろう。

 

「ね、ゆきのんのことまだ好き?」

 

「んなわけないだろ」

 

「たまーにだけど、あたしを1番に愛してくれるならゆきのんの事好きなままでも良いのになって考えちゃうんだ」

 

「あほ。俺がそんな器用な人間なら高校の時あんなに悩まずにすんだろうに」

 

「あはは。それもそうか」

 

なんとなく抱き寄せてキスをする。

 

「お腹さわっていいか」

 

「うん。でもまだ何も変わらないよ?」

 

「……みんなでしあわせになろうな」

 

「うん。愛してるよヒッキー」

 

「俺もだ。……愛してる」

 

 これからも俺は間違う度に何度も問い直し続けるのだろう。

 

 家族と一緒ならたいていの事は乗り越えていけると楽観的になれる。

 

 俺の青春ラブコメはこうしてしあわせな終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 






 なんとか14巻発売前に完結する事ができました。
 前回13巻が出る前に書いた2話あとがきでガハマさんが全力で動かないと
八幡と雪乃は付き合えないと書きましたが、13巻の最後で全てガハマさんに委ねられました。
 ガハマさんが動く状況は完璧に整ったので八雪で終わる可能性が高いと思います。

 ただし原作者様もぶっちゃけ八幡同様ひねくれているので、八雪で本編終わってエピローグで八結ENDとかやるかもと思いつき後半を書きました。
 
 それでも原作は八雪ENDですんなり終わる可能性が高いとは思いますが、個人的には八雪でも八結でもどちらでも良いと考えています。
 どんな終わり方をするのか色々考察して楽しめるのもあとわずかです。
 少しさびしいですね。

 13巻は驚きましたね。ラスボスだと思ってたママのんが八幡にデレてるし。
 あれだと雪乃と付き合うとなっても「比企谷さんなら良いでしょう」ってあっさり認めそうです。

 はるのんが葉山と重度の共依存関係だと暗に示され、変に共依存にこだわる理由がわかり
 雪ノ下家の問題ってのも今まではるのんがさも深刻そうに仄めかしてただけで特に何もなかった。
 はるのんの言動は八幡達と読者に対するミスリードというか、彼女はあくまでかき回す役割だった感じですね。

 これでディスティニーランドで雪乃が「救いたい」って言ってたのははるのん(+葉山)だとわかったけど14巻で決着つくのかな?
 アニメ3期放送時にアンソロとサイドストーリー(14.5巻?)発売だとニュースで見たからそこで補完しそうですね。

 99.9%無いだろうけど夢オチだけは勘弁してほしい!
 気がついたら病院のベッドの上で高一の事故直後に見た夢だったとかね。
 登場人物の名前の多くが回文ばかりなのが夢っぽいとか。
 回文関係ない八幡と小町そして材木座だけが現実でも存在するというオチは嫌だw


 ではお目汚し失礼いたしました。

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