アクセル・ワールド ――もうひとつの世界――   作:のみぞー

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第12話 倉崎 楓子の《弱点》

 

 

 3人が降り立ったのは《草原》のステージだった。

 名前の通り見渡す限りが黄金色の草原で、時折頬を撫でる穏やかな涼風が金色の絨毯をそよそよと揺らしている。

 空も《黄昏》ステージとはまた違う柔らかい夕焼け空で、その光が照らす全景を眺めているとマサトたちに流れる(遺伝子)がなんとなくノスタルジックな気分にしてくれるのだった。

 

「うーん! いい空気ね、このまま時間いっぱい3人でお昼寝っていうのもいいんだけど……」

 

 炎の体を持ちながらもなぜか周りの草を燃やすことのない《フレイム・ゲイレルル》の言葉につい頷きそうになるドラゴニュート。しかし結局その言葉に同意することはしなかった。なぜならマサトもBBプレイヤー、まだ見ぬ挑戦者と戦えるほうがよっぽど楽しそうだと思ったからだ。

 

 その挑戦者はドラゴニュートからおおよそ15メートルは離れた場所に佇んでいた。これは彼女とドラゴニュートの対戦開始位置が近すぎたせいだろう、その場合対戦者同士は最低でも10メートル以上離れることとなっている。

 ルルがドラゴニュートの近くにいる理由は今回彼女が対戦者ではなく《ギャラリー》としてこの場にいるためだろう。

 

 

 ドラゴニュートがチラリと対戦残り時間を確認すると、なにを勘違いしたのかルルがぼそりとドラゴニュートに耳打ちしてきた。

 

「《スカイ・レイカー》よ」

「え?」

「彼女の名前、どうせ読めなかったんでしょ」

 

 別に彼女の名前を見たわけじゃないんだけど……。

 しかしドラゴニュートはルルの言葉に肯定も否定も返さなかった。ルルの言葉は間違えであったが、ドラゴニュートはどうせ読めないのだから対戦相手の名前を見なかっただけなので、ルルの助言はあながち的外れじゃなかったからだ。むしろ大いに助かったともいえる。

 

「むっ、ありがとうくらい言いなさいよ。……まあいっか、レイカー! 遠慮なく掛かって来ていいわよ~!」

 

 手をブンブン振りながらレイカーに合図するルルの姿を見てドラゴニュートもその重たい金属の巨体を揺らしながらレイカーの元へ走り出す。

 それを見たレイカーも腰を落として足を開き、マラソンランナーが走り出す一歩手前のようなタメ(・・)のポーズをとる。

 そして空気を叩き揺らすかのような爆発音のあと、ドラゴニュートの目に人形程度の大きさにしか映っていなかったレイカーの姿が――

 

 

 ――すぐ目の前に現れた――

 

「な、ンだってぇー!」

 

 なにが起きたのかわからないまま、ものすごい衝撃。そのあと感じる浮遊感。通常の1000倍に加速しているこの世界ですらゆっくりと感じる一瞬のあと、再び感じる衝撃にドラゴニュートは柔らかい草をなぎ倒しながら数メートル転がってしまうのだった。

 

 信じられないことだった。

 自分ですら重過ぎると感じるこの体を吹き飛ばす攻撃を繰り出せるなんて……。ドラゴニュートはその攻撃の正体を突き止めるため顔を上げ、レイカーの姿を探す。

 

 居た。いや、その姿は探すまでも無く見つけることが出来た。今なおドラゴニュートの耳を打つ轟音、レイカーはその音源でもあり、そして華麗な姿を遮るものなんて何一つ無いのだから。

 

「飛んでる……」

 

 レイカーは背中に背負うジェットパックから炎を吹き出しながら今もなおドラゴニュートの頭上を緩やかに弧を描きながら旋回していた。

 ルルのように空中を浮遊しているのではない、カエル型やバッタ型アバターのように大ジャンプをしている途中でもない。レイカーは強化外装を使って、自分の力で空を飛んでいるのだった。

 

「どう! 凄いでしょう! スカイ・レイカーはその名の通り空の色、今まで誰も出来なかった自分の力での自由飛行を可能とする始めてのアバターなのよ!」

 

 唖然としているドラゴニュートの横でルルがまるで自分のことのように自慢している。しかし、その気持ちもよく解る。レイカーはこのリアルな世界で誰もが憧れた飛行能力を持っているのだ、それを体現したのが自分の《子》なのだから自慢のひとつやふたつしたくなるものだろう。

 

「さあ! レイカー、その調子でやっちゃいなさい! 大丈夫、私もレベル1のときにこのドラゴに勝った事あるから、レベル2のレイカーなら楽勝よ!」

 

 ちょっと、それはボクがレベル3の時の話しだし、ダメージの殆んどが建物からの落下ダメージ、そして勝敗はタイムアップによるダメージ判定でしょ!

 ドラゴニュートはルルに言いたいことが沢山あったがそんなこと言っている暇は無かった。ルルの言葉に触発されたかどうかは知らないが旋回を終えたレイカーが再びドラゴニュートに向かって真っ直ぐ突っ込んできたためだ。

 

 かわす事はできないけど、落ち着いて見れば対応できないほどの速さじゃない、こっちがどっしり構えていれば吹き飛ばされず受け止めることが出来るはずだ!

 飛んでくるレイカーを受け止めるためマサトはいつもより深く腰を落とし足元を踏み鳴らした。

 

 レイカーもドラゴニュートの作戦に気が付いたのだろう、そうは行くかと背中のブースターの出力を先程よりも上げていく、バーナーから飛び出る爆音もより高いものとなった。レイカーはぶつかった時の衝撃に備え腕を顔の前に持っていき交差させる。

 

 ――接触まで、あと3秒、2、1……

 

「いっけぇー! レイカーッ!」

 

 ――いま!

 

 万全の姿勢で構えていたドラゴニュートだったが想像以上の衝撃に体が後ろに流されてしまう。しかしレイカーの体を上から抱きしめるかのように覆いかぶさりギリギリのところで耐えていく。

 足はしっかり地面についている。このまま踏ん張ればレイカーの勢いも止まるはず。ドラゴニュートはどんどん伸びていく地面の2本線を見ながらそう確信した。

 

 しかしそうはさせまいとレイカーは自分の上体を起こし始める。このままドラゴニュートを持ち上げて空から落としてしまおうとする作戦だろう。

 

「さ、せるかぁぁーー!!」

「きゃあっ!」

 

 ドラゴニュートは最後の力を振り絞りレイカーの背中から腰に手を回し、そのままレイカーの体を持ち上げることに成功する。

 レイカーは急激な進路変更に対応できず、ブースターが付きっぱなしだった体はそのままの勢いで頭から地面に叩きつけられてしまった。変則型パイルドライバーを仕掛けられてしまった恰好だ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 ギリギリだった。ドラゴニュートは息が上がり追撃をかける余裕も無かった。

 ドラゴニュートが息を整えている間にレイカーも打ちつけられた頭を庇いながら立ち上がる。

 

 この時点で両者のHPはドラゴニュートのHPが残り8割、レイカーが残り6割といったところ。ドラゴニュートは2回の突進の衝撃で、レイカーはドラゴニュートとぶつかリ合った衝撃とパイルドライバーのダメージでここまでHPが減ってしまったのだ。

 両者とも同じ回数相手に攻撃を加えているわけだがHPの差は大きい。これはレベル差による基本HPと防御力の違いのせいでもある、レイカーのレベルがドラゴニュートと同じだったらHPの差は殆んどなかっただろう。

 

 

 立ち上がったレイカーは再びブースターで飛び上がるかと思いきやドラゴニュートと対峙したまま拳法のような構えをとった。どうやら近接戦闘を仕掛けるつもりらしい。

 しかし、レイカーのその構えが見よう見真似なんかの素人臭い構えではなく、何十回も繰り返してきたような自然な姿だったのでドラゴニュートは驚いた。

 

「楓子さんは見た目お嬢様かと思ったけど格闘技なんて習ってるんだね」

「あら、お嬢様だから護身術が必要なのかもしれませんよ?」

「それは、御尤もっ!」

 

 軽口を叩きながらもドラゴニュートはレイカーにその豪腕を振るう。

 それに対しレイカーは受け止めることなくドラゴニュートの腕の側面を掌打で軌道を変え、受け流し、そのまま流れるようにもう片方の手のひらを隙だらけなドラゴニュートの脇へ叩き込んだ。

 

「ぐぅう……いい一撃だね、どこで習ったの?」

「VR通信講座です。初段なんですよわたし……」

 

 いまはそんなのあるんだ……。

 ドラゴニュートは再び拳を突き出した。今度は弾き飛ばされないよう速さよりも力強さを優先させた拳である。さすがのレイカーもこれは受け流せないと感じたようだった、しかしあろう事かレイカーはそのパンチをかわす為に右でも左でもなく上へと飛び上がるのだった!

 

 空中では身動きは取れるはずもない。ドラゴニュートはすかさず突き出した拳を引っ込め、今度は逆の腕でアッパーを捻り出す。

 しかし、レイカーは背中のブースターを一瞬だけ起動、ドラゴニュートのアッパーを華麗にかわしながら空中で宙返り。変則的な動きでドラゴニュートの頭に渾身の踵落としを見事に叩き込む。

 

「いっつ~……それも通信講座で習ったの?」

「いえ、これはカンナさんが組んだ数多くの対戦の中で思いつきました」

 

 ジェット噴射を使っての空中格闘。どうやらカンナのスパルタ特訓にも意味があったらしい。チラリとカンナに顔を向けると少し離れた場所でどや顔していた。いや、顔の表情はわからないのだが絶対にしていた。

 

 今のドラゴニュートのHPはもう半分まで減っている。レイカーが近接戦闘に強い青色アバターだということもあるし、プラチナの体が打撃攻撃に弱い、ということも加算されているだろう。

 ドラゴニュートは格闘戦ではレイカーに勝てないということがわかると別の手段をとることにした。

 

 ――今回はその体の特徴を利用させてもらおうか!

 

 ドラゴニュートの意気込みを感じ取ったレイカーはいつでもその攻撃に対応できるように体を緩やかに弛緩させる。こうすればガチガチに固まっているよりも(すみ)やかに体を動かすことが出来るのだ。

 

「《エクステンド》……」

 

 まるで野球のピッチャーのように右腕を上から振りかぶってくる攻撃にレイカーは先ほどのように上へ飛び上がるのではなく、距離を開けようと後ろに飛びずさることを選択。しかし今回その行動は間違えでしかなかった。

 

 

「《ファングッッ》!!」

 

 

 ドラゴニュートがその手を振り下ろすと同時、銀色の光を放っていたその手のひらの輝きがまるで閃光のように5本拡散し、その光がレイカーの体を切り裂いていく。

 

「いやぁぁぁーー!」

 

 かわしたと思っていた攻撃が急に自分の体を切り裂いた。レイカーの受けた衝撃はなす術も無く地面に膝をつけるに十分なものだった。

 半分以上残っていたレイカーのHPは見るも無残に削り取られ、今はもう一割も残っていない。

 一体なにが起きたのか、振り絞る最後の力でレイカーが見たのは巨大な刃物が伸縮し、ドラゴニュートの手のひらの形に戻っていくところだった。

 

「なん、だったんですか……あれは?」

「あれは、レベル4になった時に覚えた必殺技《エクステンド・ファング》だよ……」

 

 プラチナという金属はとても粘り強く、そして強度もある。たった1グラムのプラチナでも極々細い線に延ばしていけば2メートルまで延ばすことができ、30グラムもあれば42キロメートルなんて途方もない長さまで引き伸ばすことが出来るのだ。

 

 その特性を利用したのが《エクステンド・ファング》である。右の手のひらを薄く、そして鋭く延ばすことで変幻自在の刃物()を作り出せることが可能となる必殺技だった。

 

「でも手が止まってる時に延ばしても爪は薄くて柔らかいだけの弱い金属膜だし、延ばした後降りぬくのは難しい。

 それに広げた手を元に戻すのは結構時間がかかるんだ。絶対にかわされない状況で、思いっきり振り切らなきゃその攻撃力を発揮できない、使いどころの難しい必殺技だよ」

「では、あの状況でわたしが絶対後ろにかわすという自信があったのですか? なぜ?」

「いいや、そんなもの無かったよ」

「え?」

 

 レイカーの質問にあっさりと首を横に振るドラゴニュート、あまりの呆気なさにレイカーは二の次を出せなかった。

 

「別にアレをかわされても他の手段で勝つこともできた。

 でも一応横振りだとさっきみたいに上へ逃げられちゃうかもしれない、だから横薙ぎの次に攻撃範囲が広い、指を広げた振りかぶりの攻撃を使ったんだ」

 

 自信たっぷりに背中の尻尾を振るドラゴニュート、これでも歴戦練磨のトッププレイヤーなのだ格闘能力が劣るくらいで負けていては青色アバターに勝てるわけも無い。

 

「それにレイカーの強化外装、それずっと使えるわけじゃなくって必殺技ゲージみたいにどこかでチャージしなくちゃ再使用できないんでしょ?

 だから途中から空を飛ばずに格闘戦に切り替えた、違う?」

「ご明察です。しかしそこまでわかっていながら止めを刺さなかったのは致命的ですよ。ここまでHPが減ってしまたのですからわたしの《ゲイルスラスター》の燃料は満タンです。ここで貴方を抱え上げたまま空たかく舞い上がり空中で落っことせばそれだけで逆転することができます」

「……やってみる?」

 

「……」

「……」

 

 しばしの睨み合い、先に根をあげたのはレイカーのほうだった。

 

「止めておきます。このHPだと上ってる途中で攻撃されたらそれだけで負けてしまいますから。では降参させていただきますね? それとも最後も自分の手で止めを刺したいですか?」

「そ、そんなことしないよ!」

 

 無防備に手を広げ攻撃してくるか聞いてくるレイカーにドラゴニュートは思わずしどろもどろになってしまった。そこにはもう張り詰めた戦闘の空気は完全に霧散し、病室でやり取りしていたような気安い雰囲気に戻っているのだった。

 

 

 

 

 

 

「あー! もう、どうしてフーコに勝たせてあげなかったの!? マサトのオニ、アクマ!」

「いや、だってしょうがないでしょ。ボクと楓子さんはレベルが4も離れてるんだし、これで負けちゃったらボクが笑いものだよ……」

「何のために《ギャラリー》がいない直結対戦にしたと思ってるの。マサトなんてケチョンケチョンにやられればよかったんだ! そうすれば笑われるのは私からだけですんだでしょ」

「そんなぁ……」

 

 『加速世界』から病院に戻ってきたマサトはカンナに先ほどの戦いについて思いっきりダメ出しされている。

 このカンナとのやり取りに思わず笑ってしまったのは楓子だった。

 

「フーコ! 貴方も笑ってる場合じゃないでしょ、マサトなんかに負けるなんて特訓よ、特訓! この間とは比べ物にならないんだから!」

「カンナ、そんなに楓子さんに強く当たらないでよ。楓子さんの実力だったらレベル3のプレイヤーにだってやすやすと負けないでしょ?」

 

 カンナのあまりな傍若無人な態度にマサトは諌めようとするが、それにストップをかけたのはなんと楓子本人だった。

 

「大丈夫ですよマサトさん。マサトさんはカンナちゃんがわたしに休む暇もなく対戦を強いたように思われてるかもしれませんが実はそうじゃないんです。

 ちゃんと一戦一戦休憩時間を挟んでくれましたし、わたしが負けたときは反省会だ特訓だと称して対戦で手取り足取り教えてくれるんですけど、最後は絶対カンナちゃんが降参して終わるんです。レベルの差が大きければ大きいほど低いものが勝った時貰えるバーストポイントは大きくなる。お蔭でわたしはあっという間に……」

「わー! わー! そんなことは言わなくていいの!」

「それにレベル2に上がった時なんてわたしが喜ぶ暇なんてないくらい飛び上がっちゃって「私のおごりよ!」なんてお昼……ムー! ムー!」

 

 楓子の後ろへと回り込み口を塞いだカンナは顔を真っ赤に染めがらもいやらしい笑みを浮かべ……

 

「そこまで言うならこっちにも考えがあるわよ楓子……貴方の弱点はわかってるんだから!」

 

 楓子の口を塞いでいる手とは逆の手でワキワキと楓子の太ももの中央辺りをさすり始めたではないか。

 どうやら楓子はその辺りが特に敏感らしく口を塞いでいる手をどうにかするよりも太ももを触っている手のほうを優先的にどかそうとする。

 しかしカンナはうまいこと楓子の手をかわし太ももを撫で続け、楓子のほうも口を塞がれたまま暴れたためか、はたまた別の理由か段々と抵抗が弱まっていってしまう。

 

「ここがいいんでしょ! こことか! ここも! どうだ、もう変なこと言わないか! これでもか!」

「んんーー! んー! ……ンッ! うぅ、んっ! ……フーフー! んんん!?

 うぅ、んんんん! んん!んん! ンーーーーーッッ!!! うぅん……」

 

 この攻防をマサトは見守ることしか出来なかった。ただ女の子同士がくすぐりあっているだけなのになぜか動悸が激しくなり、なぜか最後まで見なくちゃいけないという突然の使命感に目覚めてしまったのだ。

 そのせいでマサトが彼女たちに静止の声をかけたのはカンナのくすぐりによって楓子が完全にグッタリしてしまってからであった。

 

 

 

 

「マサトさん、ひどいです。おにです。あくまです」

「ごめんなさい」

 

 乱れた洋服と呼吸を整えたあとの楓子に涙目で迫られてしまったらマサトは謝ることしかできない。

 カンナはというと病室の窓際で全てを悟ったかのような顔でゆっくりとお茶を啜っているだけだった。その姿はまるで仙人のようだ。

 

 楓子もひと通りマサトを責めたことで溜飲が下がったのか気分を変える為に少し気になっていた点をマサトに質問することにした。

 

「それにしても、マサトさんって病院にいるときと『加速世界』では少し性格が違いますね? それはワザとやっているのですか?」

 

 楓子の質問の意味がわからずマサトがキョトンとしてると今まで静かにお茶を啜っていたカンナが身を乗り出して楓子の意見に同意してきた。

 

「そう! そうなのよね! マサトってば『向こう』だと偉そうって言うか挑発的って言うか、なんか上からの発言してくるのよね?」

「ええー、そんなことないよ?」

「カンナちゃんの言うとおりです。それにわたし異性と初めての直結でドキドキしてなのにマサトさん全然動じないで……わたしには女性としての魅力がないのかと傷ついてしまいました」

 

 しくしくと明らかに口で言いながら楓子は両目を手で擦り始める。嘘泣きだ。

 カンナもあー、泣かした~なんて楓子のからかいに乗ってくるしまつ。

 女性2人にタッグを組まれてはマサトに太刀打ちする術はない。

 これからこんな機会も増えていくのだろうか。マサトは2人に飲み物を奢ることを犠牲にご機嫌を取りながらそう考えてしまうのだった。

 

 

 ――でも。でもこんな日常も嫌じゃない。いや、ボクはこんな日常が大好きなんだ……

 

 病院の窓から見える太陽はあの《草原》ステージのように優しくゆっくりと落ちていく。今日もマサトたちにとって平和な1日が終わるのだった。

 

 

 

 

 ……だが、この人間同士の闘争を是とした《ブレイン・バースト》の世界で恒久(こうきゅう)的な平和はありえないもの。悪夢の再来は確かにマサト達に向かって忍び寄ってきている……。

 

 

 

 

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