今回も暖かい眼でご覧ください。
ラビットハウスではお客様が一時の休憩を済ませてお会計をしてお店を出ようとしていた。
リゼがお会計をして、ココアがテーブルの上を片付ける。
「600円になります。1000円お預かりしたので400円のお返しです。」
「「ありがとうございました」」
お客様がドアの近くに来た時ドアが勢いよく開かれる。
そこには千夜に支えられて元気よく挨拶をするシャロがいた。
「イェーイたのもー!!」
「テンションが高い!?」
「……………………?」
何事かと奥からシノンが様子を見に来る。それを見たリゼとシノンは少し苦い顔をする。前回のことを思い出したからだ。
「お、おいシャロのこの感じ」
「貧乏がバレて恥ずかしさに耐えられないって言うからヤケコーヒー巡りを勧めたの」
「もっと違うものを勧めろ!」
「ここで3件目、でも見てあの晴れやかな笑顔」
「カフェインで可笑しくなってる顔だな」
「シャロさん……コーヒー好きになってくれて嬉しいです。」
「ちょっと違うと想う」
「……………………ん」なでなで
呆れてる2人を前にココアとアルプス一万尺をする。シャロがその様子を見て笑っているがコーヒーで可笑しくなっていることには変わらなかった。シノンは近くにいたチノの頭を撫でている。喜び方を間違えてるチノが愛らしいのだ。
「酔いつぶれるほど悩んでたんだな」
「みんな気にしないってシャロちゃん自身わかってるんだけどね」
「…………でも…………本人は…………そこまで…………悩んだね」
「あぁ、私なんかシャロのお嬢様らしさを見習いたいぐらいだ。その方があの学校では周りと馴染みそうだし……」
以下リゼの妄想である
「ご覧になってましてお父様、射撃は淑女の嗜みです。」
「お疲れ様です。お嬢様ご休憩に珈琲をどうぞ」
「えぇ、ありがとう」
メイドから貰った珈琲を飲んでシャロみたいに顔を赤くする妄想内のリゼ。
「わぁい!当たった当たったー!全弾ぶち抜いてやったよーハハハ!」
「はっ!戦場の悪魔が誕生した」
「そのフレーズ素敵ね~」
「……………………なぜに…………そうなるの?」
「ん~?」
「……………………」
ココアと遊んでいたシャロがふっとこちらを見始めた。
シノンは言葉こそ発しなかったがその顔は少し引きつっていた。前回お泊まりの日酔っ払ったシャロがシノンに抱きつきそのまま頬にキスをしたのだ。
仲の良い女の子に抱きつかれキスをされれば誰だって困惑するだろう。次もその機会に近いことが起きれば身構えるのも当たり前なのである。
「シノンー!!」
案の定というか予測通りというかシャロはシノンに向かって飛び込んできた。
「……!?」
シノンのもしかしてがやっぱりになった。しかし時既に遅し、シャロに抱きつかれたシノンはこの前と同等に後ろに倒れる。
「シノン~」
「………………ん!?」
シノンの胸に頭を擦り付けてから、少し顔を上げてロックオン。目線の先は頬でなく唇……シャロがゆっくりと顔を近づける…………そして
「………………ん」
「え?」
シノンはシャロの頭の後ろに手を持っていきそっと抱き締めたのだ。そしてそのまま頭を撫で始める。
「………大丈夫……………ずっと………一緒…………だから」なでなで
「ん」
その言葉本心であった。例え貧乏でも秘密がバレてもこれからも一緒にいる。だから安心してほしい、大丈夫だよとそんな気持ちで抱き締め頭を撫でていた。
「……」
「…………」
「…………」
「…………シャロ?」
「すぅ~すぅ~」
返事がなくそっと、横を見ると寝息を立てているシャロがいた。とりあえず一難去ったことに安堵するシノンしかし……
「………………ふぅ」
「いいなぁ~シャロちゃん」
「羨ましいです。」
「お、お前達なんてことしてる!?」
「あらあら~ふふっ♪」
一難去ってまた一難だと思うシノンだった。
次の日~
シノン達は日頃の疲れを癒すためにプールに来ていた。
そのプールの外見は洋風でお城のようだった。
「うわぁ~お城みたいだねー」
「古い建物を改造した名残だな」
「私水着で温泉って初めて」
「泳ぐのと温泉が一緒に出来て一石二鳥ね」
「あ、浮き輪持ってくれば良かったです。」
「これなら持って来たんだけど」
「足ヒレ!?」
「…………………………あるよ」
「え?」
シノンはバックから浮き輪を取り出す。
「さすがは、シノンだな準備が良い」
「…………………………んっ」ブイッ
手でVサインをするシノン。心なしかその顔はどや顔のようだった。
皆が着替えてる間シノンはティッピーと一緒に待っていた。
ティッピーを抱え壁に寄りかかる。
「……………」
「………………」
「……………………」
(き、気まずい!しゃ、喋れないがこの無言の空気は気まずいのぉ)
「…………喋って…………もいいよ?」
「ぬっ!?」
ティッピーが1匹で気まずくなっているとシノンが話しかける。それは、ティッピーにとっては衝撃の発言だった。
「お、お主いつから?」
「…………?……最初……から?」
「な、なんじゃっと!?」
「……………………チノちゃん…………腹話術…………無理が…………ある」
「そ、それだけじゃ……」
ティッピーがそれだけで判断されたと思い言おうとするがその前にシノンが言う。
「…………………………ティッピーから…………人の……気配も……するから」
「何でお主は気配なんてわかるんじゃ!?」
「……………………勘?」
「わしは、勘で見抜かれたのか……」
シノンのすごい?勘により見抜かれたことに脱帽するティッピー
「これは、皆には……」
「…………ん…………言わない……でも……チノちゃん…………とタカヒロさん……には」
「2人にはわしから言っておこう。…………わしの秘密を知っていたと言うのは少し卑怯じゃかの?」
「…………………………?」
「お主の過去をわし達は知っているんじゃよ」
「‥…なんで?」
いつもの声より一段と低い声になったシノンに内心恐怖を覚えるティッピー。しかし、これは遅かれ早かれ言わなければならないことだった。正確にはタカヒロが言わなければならないことなのである。下宿する人の過去や詳細を知ることは基本的にないだろう。その人のプロフィールは書類で貰うだろう。しかし、シノンは無口である。それだけならタカヒロも過去を聞こうとは思わない。それだけならば………シノンは無口であり保登家の養子……そして、元親父
これは、シノンとココアが下宿してからしばらくたった日のことである。
タカヒロの元に一本の電話が来たのである。
「もしもし?」
「もしもし、タカヒロさんでしょうか?」
電話の相手は女性の様だった。その声は女性の少し高いが落ち着いた感じの声だった。どことなくココアの声に似ている気がした。
「そうですか?失礼ですか貴方は?」
「あら!失礼しました。私ココアの母です。」
「!!こちらこそご挨拶が遅れました。チノの父のタカヒロです。」
「いつも娘と息子がお世話になっています。」
「いえいえ、こちらもあの2人のお掛けで娘が明るくなりましたよ」
「あら、そうなんですか?」
「えぇ」
1通りの挨拶を済ませるとココアのお母さんが話題を出す。
「実はシノンのことで今回電話したんです。」
「シノン君のこと?」
「えぇ、というよりその元お父さんについてと言うべきでしょうか」
「元…お父さんですか」
「えぇ、ちなみにシノンから昔の話は?」
「いえ、一切聞いておりませんね」
「そうですか…………あの子が言ってないのに私から言うのは卑怯かもしれませんが緊急事態なので説明してよろしいですか?」
「えぇ、大丈夫ですよ」
声は普通だ。しかし、内心不安でいっぱいだった。自分の娘があんなに懐いていて本人も凄く良い子なのにその彼の過去、話し方からしてただ事ではないと察したタカヒロは自然と身構えた。
「シノンは、虐待を受けていたんです」
「!?」
「警察と本人の話だと元お父さんが酷い人で暴力は日常茶飯事だったそうです。喋るな!という罵倒と暴力の日々によりシノンは喋る事をやめてしまったそうです。母親はシノンを捨て家出、そして、さらにエスカレートする暴力にシノンは必死に逃げ出した。そこで私達に拾われたんです」
「……ッ!!」
タカヒロは右手で受話器を持ち空いてるその左手はギュッと力強く握りしめられていた。それは、真っ赤になるまでにもっと力を入れればきっと爪が食い込んで血が流れるだろう。
「そして、元お父さんは警察に捕まりました」
「して、今回の電話の件にどう繋がるんですか?」
タカヒロは必死に冷静になろうと頭を回転させ言葉を発した。
「その元お父さんが脱獄したんです」
「!!!?」
ココアのお母さんから発されたのは衝撃の言葉だった。
シノンを虐待して言葉を無くさせた本人が脱獄。それだけで危険度は限りなく高いだろう。
「そ、そんな」
「私達もさっき、警察から電話があって……警察も捜索はしているそうです」
「そうですか」
「それで警察が言うには目的はシノンではないだろうかって」
「なっ!?」
考えてみれば当たり前のことである。自分が刑務所に入った原因を辿ればシノンなのだ。実際は自業自得だが、恐らくやつはシノンのせいだと思っているだろう。
「目的は復讐ですか」
「恐らく、私達もむやみに外出、出来なくて」
「わかりました。私も気にかけることにしましょう。それと知り合いに頼んで彼の護衛とこの街に彼がいるかどうかと詳細も調べましょう」
「そこまで!すみませんがお願いいたします。」
「いえ、私にとっても彼は息子も同然です。」
「!そう言ってくださると預けた身として嬉しいです。」
「その元親の詳細を教えて貰っても?」
「えぇ、FAXで警察から貰った詳細書を送りますね」
「よろしくお願いいたします。」
「では、これからも娘と息子をよろしくお願いいたします。」
「えぇ、こちらこそこれからもよろしくお願いいたします。」ガチャ
電話を切って一息つく。
「ふぅ、まさかシノンにそんな、過去があったなんて……これからは、私が……いや私達が彼等を守っていかなければ」
そして、この話はタカヒロからティッピーとリゼのお父さんへと伝わった。
「ってことらしいのじゃ」
「………………そっか」
声の低さは変わらないがどこか悲しく切ない声だった。
「タカヒロ曰くこれからも普段と変わらず外出はしてもいいらしい、街の警備をしているらしいからのぉ」
「……………………ん」
「お主はこらからどうするんじゃ?親のこととか」
「……………………何もしない」
「何も?」
「………………来るなら阻むし……来ないなら何もしない」
「シンプルじゃのぉ……」
「……イズ……ベスト」
「すまんのぉ、こんな時にこんな話をして」
「…………ん…………大丈夫…………話してくれて…………ありがとう」なでなで
「よ、よせ!わしは撫でられる年ではないぞ!」
「…………………………」
ティッピーに言った言葉。もし、自分だけに来るなら阻むことはしないかもしれないシノンはそう思っている。しかし、もし自分以外の、大切な家族を友人を大事な人を傷つけるならその時は………………一切容赦はしない
「!?」ゾクッ
ティッピーは毛が逆立つ気がした。人間で言う鳥肌に近かった。殺気……それを出しているのは紛れもなく今自分を抱っこしているシノンだった。もちろん自分に向けてではない。しかし、その殺気に恐怖を覚えないものはいないだろう。
「…………あ、……ごめん」
「い、いや」
「………………さっきの…………話…………頭に…………入れておくね」
「う、うむ」
「………………今日は…………プールを楽しもう」
「そうじゃな」
一言謝ったシノンから殺気が消える。いつもの優しいシノンはどこに?シノンの新たな一面に驚愕しながら安堵するティッピーだった。
今後あの親と会うのかわからない。しかし、それまでは今まで通りの日常を楽しむことにしたシノンだった。
そんな、2人の話をしている間更衣室では
ココアの水着はピンクのビキニチノちゃんは青いワンピースを着ていて千夜は緑のビキニを着ていた。そして、リゼは紫色のビキニを着ていた。
「ココアちゃん良く似合ってるわ」
「ありがと~実はビキニ初挑戦なんだぁ~」
「チノちゃんの水着も可愛いわね」
「でしょう!!」
「どうしてココアちゃんが自慢げなの?」
「千夜さんはいつもとイメージが違って素敵です。」
「普段なら落ち着いた色を選ぶんだけど若い人達と遊ぶんだから冒険しないとね。」
「千夜さんは何歳なんですか?」
「あれ?リゼちゃんは?」
「ん?」
「素材を活かした味付けって感じ」
「はぁ!?」
千夜の天然発言にココアのまるで料理の感想の様な発言に困るリゼとチノだった。
シャロは黄色いビキニを着ていた。
(千夜からの水着のお下がり少し緩いけど紐をキツく締めれば…行ける!)ギュッ
「シャロちゃん?紐が食い込んでるよー?」
「察してよ!」
ココアの天然発言にいつも通りツッコミをいれるシャロだった。
「シャロちゃんその水着とってもよく似合ってるわ」
「うんすごく似合ってるよ!」
「でも……その紐が」
「あのリゼさん良かったら私の髪を結んでくれませんか」
「あぁいいよ」
チノのお願いに快く引き受けたリゼはチノの髪を整え始める。
「こんな感じでどうかな」
「素敵です。ありがとうございます」
出来たのは両端にお団子で余った髪を三つ編みにしてその髪をお団子に巻いたなんとも可愛い髪型が完成した。
「チノちゃん可愛い!」
「先輩すごいです。」
「リゼちゃんは本当に器用ね」
「じ、自分の髪が長いから髪を結ぶ機会が多いだけで」
「ねぇ、私の髪も結ってくれない?」
「い、いいけど」
今度は千夜のお願いで髪を梳かし始める。
(私も髪が長ければ自然な流れで先輩に髪を結んでもらったのに)
「お~手慣れた手さばき」
「華麗です。」
「普通だ!」
「こんな上手な人見たことないよ」
「本当に普通だって私なんて」
出来たのは凄いタワーで出来た色んな花で飾られた髪型だった。一言で凄いいや、すんごっい!
「わぁー!これはすごすぎるよ!」
「あれ?満足してる?」
でもその完成も喜んでいる千夜だった。
ふっと気になったリゼが皆に問う。ちなみに千夜の髪型はリゼが直しました。
「そういえばシノンはどんな水着を着るんだ?」
「う~ん赤かなぁ」
「私は白だと思います。」
「私は、紫だと思うぞ?」
「私は緑だと嬉しいわね♪お揃いが出来るわね」
「わ、私は黒だと思うわ、一番シノンに合ってる気がする」
皆がシノンの水着の色を予想する。ちなみに上からココア、チノ、リゼ、千夜、シャロである。
「そうだ!じゃあ、さっきの予想が当たった人がシノンのなでなでしてもらうってのはどう?」
唐突にココアがそんな提案をしだした。そして、皆の眼の色が変わった
「シノンさんの、なでなで」
「あ、あの噂の!?」
「それは、負けられないわね~」
「わ、私もしてほしい」
「よーし!じゃ、すぐに準備して行こう!」
「「「「おー!!」」」」
その5人の後ろはやる気で業火となっていた。それほど気合いが入っていたのだ。ただ自分達が予想した事が当たってるか確認するだけなのだが
「遅いのぉ」
「………………女の子は………準備に………時間…………かかるよ」
「お主は理解があるのぉ」
ティッピーをなでなでしながら、ゆったりと待つシノンだった。このあと少し大変な事になるとも知らずに
これが無口な少年とプールに入る前での出来事だった。
読んで頂きありがとうございました。
前回のアンケートでたくさんのご回答ありがとうございました!
また、アンケートをします。内容は関羽で誰の話を書くかです。全員書こうとは思ったのですが皆さんが読みたいキャラ達から行こうかなと思いまして。ご協力よろしくお願いいたします。