今回もあたたかい目で見守って頂ければ幸いです。
三人は学校を終え、下校していた。
「ココアちゃんとシノンくんと同じクラスで良かった~」
「私も千夜ちゃんと一緒のクラスになれて嬉しいよ!」
「………………」コクッ
「あっ、何だかいい匂いがする」
「…………………………」トントン
シノンはココアの肩を軽く叩くとあるお店を指差した。
「パン屋さんみたいね」
「…………」じっ~
「……かわいい」
「………………」コクッ
「パンが?」
「実家がベーカリーでよく作ってたんだ、また作りたいなぁ~ね? シノン」
「………………………………」コクッコクッ
「お手製なの?すごい!」
「パンをみてると私の中のパン魂が高ぶってくるんだよ」
「わかるわ!私も和菓子を見てるとアイデアが溢れてくるの」
「千夜ちゃんは、和菓子が作るのが好きなんだよね」
「うん!でも何より好きなのは……出来た和菓子に名前をつけること!」
「すごーい!」
「……………………………………?」
シノンは何故和菓子に名前をつけるのかわからず。ただ首を傾げた。
ココアはラビットハウスに戻るとパン作りをするためにチノにオーブンがあるかどうかを聞き始めた。
「大きいオーブンならありますよ。おじいちゃんが昔調子に乗って買ったやつが」
「ほんと!」
「今度みんなで看板メニューの開発しない?焼きたてパンすっごく美味しいよー!」
「話ばっかしてないで仕事しろよー」
その時リゼのお腹から音がなる。
「……………………」プイ
視線をそらすシノン
「焼きたてってすっごく美味しいんだよー」
「そんなことわかってる!そして、シノン! 気を遣わないでくれそっちの方が恥ずかしい!」
顔を真っ赤にしなから叫ぶリゼ
…………次の日、5人はパン作りをするために厨房にいた。
「千夜ちゃんだよー」
「今日はよろくね」
「香風 チノです。チノで大丈夫です」
「天々座 リゼだ。リゼで構わない」
自己紹介も済み、千夜はチノの頭にいるティッピーに興味を持ち始めた。
「あらそちらのワンちゃん……」
「ワンちゃんじゃなくてティッピーです」
「この子はただの毛玉じゃないんだよ!」
「まぁ、毛玉ちゃん?」
「もふもふ具合いが格別なの!」
そう言いながらココアはティッピーの頭を撫でる
「癒しのアイドルもふもふちゃんね」
「ティッピーです」
「誰かアンゴラうさぎって品種だって説明してやれよ」
「………………………………アンゴラ……うさぎ」
「アンゴラうさぎ? ココアちゃんどういうこと?」
「えっとね、シノンが言うには"アンゴラウサギはカイウサギの品種のひとつで、全身を長い被毛で被われた長毛種だよ。また、被毛はアンゴラ兎毛と呼ばれて毛織物の素材としても利用されているうさぎだよ"だって!」
「あの一言にそこまでの意味があったのか……そして、説明してくれてありがとうな、シノン」
「シノンさん博識ですね」
「……………………………………」フルフル
「シノン君すごいわね」
「ふふふさすが! 私の弟!」
「なんで、ココアが自慢気なんだ……」
「それにしてもシノンはともかく、ココアがパン作れるって意外だったな」
「えへへ~」
「褒められてないと思います」
「…………………………………………」コクコク
少し呆れた顔になるチノとシノン
「みんな、パン作りをなめちゃいけないよ!少しのミスが完成度を左右する戦いなんだから!」
「ココアが珍しく燃えている!このオーラ歴戦の戦士のようだ」
「今日はお前に教官を任せた!よろしく頼む!」
「任された!」
「わ、私も仲間に~」
「暑苦しいです」
「………………………………」コクッコクッ
「それじゃあ各自パンに入れたい材料提出!」
「「おー!!」」
「はい」
「………………」コクッ
「私は新規開拓に焼きそばパンならぬ焼きうどんパンを作るよ!」
「私は自家製の小豆と梅と海苔を持ってきたわ」
「冷蔵庫にいくらと鮭と納豆とゴマ昆布がありました」
「私はイチゴジャムとマーマレードを…………これってパン作りだよな?」
「は! シ、シノン! お前はちゃんとしたやつだよな!?」
リゼはシノンの肩を掴み揺らしながら聞いてくる。
シノンは首を傾げ袋から材料を取り出す。
「………………?」
「………………………………これ」
「これは、メロンエッセンス? あとは、卵にグラニュー糖……シノンは何を作るつもりなんだ?」
「…………………………………………メロンパン」
「「「メロンパン!?」」」
「シノン甘いの好きだもんね~」
「………………」コクッコクッ!
目を輝かせながら頷くシノン。
「い、意外だな」
「なんだか可愛いです」
「そうね」
「今日はドライイーストを使うよ!」
「ドライイーストってパンをふっくらさせるんでしたっけ?」
「そうだよ~乾燥した酵母菌なんだよ」
「攻歩菌……!?」
「そ、そんな危険なものをいれるくらいなら、パサパサパンで我慢します!」
「?」
「……………………大丈夫」
そう言いながらチノの頭を撫でるシノン
「ほ、本当ですか?」
「………………………………」コクッ
「ホッ」
安心し少し笑顔になる、チノだった。
「パンをこねるのってすごく時間がかかるんですね」
「う、腕が……もう動かない……」
「リゼさんは……平気ですよね」
「なぜ決めつけた?」
「千夜ちゃん大丈夫?手伝おうか?」
「!いいえ大丈夫よ!」
「頑張るなぁ」
「健気ってやつだね」
(ココアちゃんに手間を取らせるわけにはいかないもの、みんなについていけるってことを見せなきゃ!)
「ここで折れたら武士の恥だよ! 息絶えるわけにはいかんきん!」
「健気?」
「…………」
「シ、シノン君?」
シノンは千夜のそばに来ると唐突に頭を撫で始めた。
「…………………………」なでなで
「「「「!?」」」」
「ど、どうしてわ、私の頭をな、撫でるの!?」
「…………………………無理…………しないで」
「え、あ、ありがとう……」
少し頬を染め、下に俯く千夜それを見て少し微笑みながら頭を撫でるシノン
「むっ~」
「……いいなぁ」
「う~」
それを見た3人は……ココアは頬をぷくっと膨らませ、チノは羨ましいそうに見つめ、リゼは、顔を赤らめながら、顔に手をあて指の間がら見ていた。
「チノちゃんはどんな形にするの?」
「おじいちゃんです。小さな頃から遊んでもらっていたので……」
「おじいちゃん子だったのね」
「コーヒーを入れる姿はとても尊敬していました」
「みんなーそろそろオーブン入れるよー」
「では、これから、おじいちゃんを焼きます」
「ノオオオ!!」
「もう少し言い方があったろ……」
「………………」コクッコクッ
リゼはシノンがパンとは別の何かを作ってることに気づく
「シノンは何を作ってるんだ?パンなのか?」
「………………………………」フルフル
「じゃあ何を?」
「…………………………クッキーの…………生地」
「クッキー!?」
「どうしてクッキーの生地を作るんですか?」
不思議そうに聞いてくるチノにココアが答える
「メロンパンはパンにクッキーの生地をくるむからね」
「……………………」コクッ
「そ、そうだったのか」
「でも、それならシノン君はクッキーも作れるの?」
「………………」コクッ
「シノンはお菓子全般作れるよ?」
「…………」コクッ
「す、すごいな」
「さすが、シノンさんです」
「今度食べてみたいわ」
パンが発酵するまでの待ち時間にココアは千夜にラテアートをプレゼントしようとしていた。
「千夜ちゃんにおもてなしのラテアートだよ!」
「まぁ!すてき!」
「今日のは会心の出来なんだぁ~」
「味わっていただくわね」
「あっ!」
「……」
「あっ~」
「…………」
「あっ! 傑作が~」
(の、飲みにくい)
「…………………………ふぅ」
シノンは一つため息つくとココアの頭に軽くチョップする。
「いたっ!? な、なにするの! シノン」
「………………千夜が…………飲みづらい……でしょ?」
「あ、そっかごめんね千夜ちゃん」
「大丈夫よココアちゃん。ちゃんと味わって飲むわ」
「うん!」
「やっぱりシノンの方が兄ぽい気がする」
「私もそう思います」
「じっ~」
「チノちゃんさっきからオーブンに張り付きっぱなしだねー」
「パン見ててそんなに楽しいか?」
「はい。どんどん大きくなって行きます」
「あ、おじいちゃんがココアさんと千夜さんに抜かれました!」
「おじいちゃんもがんばれー」
「リゼさんだけ出遅れてます。もっと頑張ってください」
「私に言われても……」
「あ! シノンさんのが一番膨らんでます。さすが、シノンさんです!」
「…………………………」 なでなで
目を輝かせながらこっちを見てくるチノをみて微笑みながら頭を撫でるシノン
「ど、どうして私の頭を撫でるんですか?」
「うんとね、なんか知らないけど撫でたくなったんだって」
「………………」コクッ
「焼けたよー! さっそく食べよう!」
「! 美味しい」
「いけますね」
「さすが焼きたてだな」
「これなら看板メニューに出来るよ!」
「この焼きうどんパン」
「梅干しパン」
「焦げたおじいちゃん」
「シノン以外のは、どれも食欲そそらないぞ」
「じゃーん! ティッピーパンも作ってみたんだ」
「おお!」
「看板メニューはこれで決まりだな」
「食べてみましょう」
「もちもちしてる」
「えへへー美味しくできてるといいんだけど」
「中は真っ赤なイチゴジャムね!」
「なんか、エグいな」
「……………………」
「シノン? どうした?」
シノンが顎に手を添え少し考え込んでいた。
「…………………………試行……錯誤」
「「「?」」」
「えっとね"このままでも美味しいけど、リゼさんの言う通り少しエグいから少し小さくして揚げパンにしたり
フレンチのままだしたりとこれから、試行錯誤していこう"だって」
「そうですね、それがいいかもしれませんね」
「ふふっ頑張ってね」
「さすが、私の弟だね!」
「だから何でココアが自慢気なんだ!?」
これが無口な少年と四人の少女のパン作りだった。
読んで頂きありがとうございました。
次回も気長に待って頂ければ幸いです。