「買い出しに、行くぞ〜!」
翌日の放課後。
俺は保育実習に使う物資の買い出しのため、昇降口で待ち合わせをしてたんだが……。
「なぁ糸ちゃん。なんでこいつがいるんだ?」
なんか、糸ちゃんにくっついて雪姫が来た。
「えへへ〜! なにやら糸ちゃんが隠し事してたから、着いてきてみたら大輔との密会だったのだよ!」
「み、密会とかじゃねーし!」
ほんと、なんで着いてきたし!
俺がむっとすると、雪姫が耳打ちしてくる。
「ふっふっふ。大輔、糸ちゃんとの仲を進展させたいんでしょ?」
「ああ。だからお前は邪魔だ帰れ」
「どうどう、酷いなぁ大輔は。ほっといたら結局大輔なにもしないじゃんか」
「うっ……」
俺の勇気と行動力の無さを完全に見抜かれてた!
……ま、まあ仲のいいことの証明だと思えばちょっと嬉しいからいいけど。
「だからさ、大輔」
雪姫が続ける。
「……私が、大輔の恋路をサポートしてあげるよ!」
雪姫……、ちゃんと、俺のことを考えてついて来てくれたのか……!
それに対して俺は感極まって……。
「ありがとうございます心強いです助かりますよろしくお願いします!」
「うぁ、どーしたの急に勢いがすごいよ近付いてこないで離れてどっかいって!」
おお、心の友に抱きつこうとしたらめちゃくちゃ嫌がられたぞ。
「やぁ心の友。酷いじゃないか親友の俺から逃げるなんてぺろぺろ」
「もうキャラ変わりすぎてなんて言ったらいいかわかんないよ! いっそのこと違うキャラになって欲しいレベルだよ!」
「はっはっは何を言ってるんだロリ。近う寄れ、近う寄れ」
「よ、寄ってくんじゃないよ! あとロリじゃないわ!」
と、俺たちがいつものようにじゃれ合っていると。
「た、楽しそう、だね……」
伏し目がちに、糸ちゃんがそう言った。
あ、まずい。
昨日は糸ちゃんと気まずそうにしてたのに、今日雪姫と楽しそうにしてるところを見られたら、糸ちゃんがよく思わないのは容易に想像できる。
こ、ここはなにか気を利かせたひとことを……。
「た、楽しくなんかないわぁっ!」
あ、考えてる間に雪姫が素で思いっきり否定した。
買い出しに行く先は、近くの百円ショップと文房具屋だ。
文房具屋でPペーパー、百円ショップでパネルの材料を揃える。
専用のパネルは専門の店でしか手に入らないため、自作しようという魂胆だ。
……でも、さすが児童福祉を専門に勉強してる糸ちゃんだ。
出し物の提案はもちろん、材料を自作する方法まで知ってるなんて、頼り甲斐がある。
それに、いつもはのんびりとしてる糸ちゃんが一生懸命こどものことを考えてると思うと、魅力的だ。
それに、子供好きな女の子ってなんかいいよな。
女の子らしいっていうか、いいお母さんになりそうっていうか。
そんなことを考えながら糸ちゃんをちらちら見ていた道中であった。
近所のモール内の百均につくと、糸ちゃんから指令が伝わる。
「じゃあね……私がフェルトを選んでくるから、蛍原くんがアクリルスタンド、雪姫ちゃんは大きい発泡スチロールを持ってきて」
なるほど、アクリルスタンドに発泡スチロールを立てかけて、フェルトを被せてパネルを作るのか。
それなら専用のものよりも安上がりで、簡単に手に入る。
「じゃあ、誰が一番か競走ねっ!」
そう言うが早いか、雪姫がダッシュで飛び出した。
……まったく、他のお客さんもいるってのに、子供みたいなやつめ……。
「い、行っちゃったね……」
「だな……」
うーん、なんだろう。
ゆっくり持って来ても雪姫には負ける気がしない。
「じゃあ、私たちも行こっか」
「おう、アクリルスタンドは二つ買えばいいんだよな」
「うん、お願いします」
確認を済ますと、俺は文具コーナーへ、糸ちゃんは工作コーナーへと別々に歩いていく。
そして、目当てのものを見つけるとレジの前で再集合したんだけど……。
「おい雪姫」
「んー……? なにさ大輔」
「……なにさじゃねーよ! なんでカゴにそんなにいっぱいお菓子詰めてんだ!」
「……い、いやぁ……これには深いわけが……」
「なんだ、言ってみろ」
どうせお腹が空いたとか、誘惑に負けたとか、そんなことだろうと思って聞いてみる。
すると、帰ってきた答えは予想だにしないものだった。
「あ、あのね……。今持ってくればこれ、日常部の部費で買ってくれるかと思って!」
「クズじゃねーか!」
予想以上におバカな考えの雪姫だった。
続く