雪姫に持って来たお菓子を元の場所へ戻させ、材料を購入すると、隣町の文房具屋へと出発する。
雪姫が結局一個もお菓子を買わなかったことから察するに、やつは本当に部費でお菓子を買ってもらうつもりだったらしい。
図々しいというか、なんというか。
身長だけでなく、頭のほうも成長が止まっているらしい。
と、雪姫に視線を向けていると。
「あー! 大輔、いま私に失礼なこと考えたでしょ!」
「何言ってんだ。お前についてなんて、いつも失礼なことしか考えてないぞ」
「わ、うわっ! 大輔ってば最低! なに考えてたのか知らないけど、大輔のえっちー!」
「蛍原くん……、やっぱり、その……」
「糸ちゃん!? 違うからな! 断じてエッチなことは考えてないからな!」
……くそぅ。
雪姫のやつ、全然俺の恋路のサポートなんかしてくれないじゃんか。
どちらかといえばマイナスになることばっかりしてきやがって。
ここらで糸ちゃんに関しての雑談でもして、糸ちゃんに関心を持ってるってことをアピールしておきたいな。
そんな考えから、俺は糸ちゃんの方を向いて話し出す。
「そういえばさ、糸ちゃんってお姉ちゃんがいるんだろ?」
「うん、そうだよ」
「なんか意外だったな。……落ち着いてるから、弟とかがいるのかと思ってた」
「えー、そうかなぁ」
「うん。滲み出す母性っていうか、癒しのオーラっていうか……すごくお姉ちゃんみたいだ」
「なんか照れるね」
「糸ちゃんみたいなお姉ちゃんが欲しいなぁ……」
「大輔、ちょっとキモいよ」
え! 今の俺、気持ち悪かったのか!
反対側を向くと、雪姫がこっちにジト目を向けている。
自分では普通に喋ってたつもりだったのに……。
「え、えと。みんなは兄弟とかいるの?」
とか悩んでたら、糸ちゃんが話題を修正してくれた。
かわいい上に気配りができて、なんて完璧な子なんだ、かわいいな。
「俺は、妹にほたるがいるだけだな」
「今のなんか、しれっと奥さん大好きアピールする夫みたいでいいねー」
「うーん、ちょっと分かる気がするぞ」
確かに、しれっと家にいる女の子を紹介する機会なんて中々ないからな。
それこそ、結婚相手か妹くらいのものだろう。
「雪姫ちゃんは兄弟とかいるの?」
今度は、雪姫のことに話題が変わった。
聞かれた雪姫は人差し指を横に振って。
「ちっちっち、あれを兄弟なんて言ってもらっちゃ困るよ糸ちゃん」
「お前、確かお兄さんがいたよな?」
「あんなの兄貴なんかじゃないよ! あれはくそだよくそ!」
「な、何かあるのか……?」
「宿題やれってうるさいし、お菓子も食べ過ぎちゃだめだって没収するんだよ!」
「いいお兄さんじゃないか」
「全然よくないよっ! 宿題なんてやりたくないし、お菓子いっぱい食べたいよっ!」
「子供かぁぁぁ!」
「あんなのが兄貴なんだったら、大輔がお兄ちゃんなほうがよかったよ!」
「あー、それちょっとわかる! 大輔くんって、いいお兄ちゃんだよね〜」
「そ、そうか?」
「うん。いつもほたるちゃん、大輔くんの自慢ばっかりしてるよ〜」
なんか、嫌な予感しかしないんだけど、なんの話をしてらっしゃる妹君は。
「んーっとね、この間は……大輔くんの膝枕でゲームしてたら、大輔くんの大輔くんがかたく……」
ちょっと待てうちの妹、友達に何話してんの!?
「待って待って待って! なんでそんなので俺がいいお兄ちゃんだなんて思うんだよ?」
「そういうのって、ちょっと憧れるから」
「そういうのに憧れるの!? 今日から見る目変えるよ!?」
「あっ……ち、違うの! 憧れてるのは、一緒にゲームってとこだけで……」
「お二人さーん、文房具屋ついたよー」
なにはともあれ、雪姫に事態を収拾させるほどの活発なトークを糸ちゃんと出来ました。
続く