文房具屋をあとにして再び学校へ帰ると、部室にほたるがいた。
「あっ、兄さん! ……と、残り!」
残りて。
家に帰ったら少々説教が必要だな。
「みんな荷物置いてどこに行ってたのー?」
「保育実習に必要なものを買いに行ってたの。はい、領収書」
「やや、どもども。確かに受けとりました」
糸ちゃんが、ほたるに領収書を渡す。
すると、ほたるがこっちに話を振ってきた。
「ねえ兄さん、メッセージ送ったんだけど見てないの?」
「えっ……。あ、ほんとだ」
確認してみると、確かに新着メッセージが届いている。
「まったく兄さんは……そんなんじゃ、現代人に置いてかれちゃうよー?」
「……俺も現代人なんだが」
そんな感じで、いつも通り兄妹のトークを繰り広げていると……。
「よー妹!」
「げげっ、笹目さんだ」
雪姫に気づいたほたるが、怪訝そうな顔を浮かべる。
「妹ちゃんよぉ……ちょっと大輔を束縛し過ぎじゃないかな? え?」
「な、なにがですか。私のどこが重いっていうんですか」
「だってさー、今大輔のスマホ覗いたら、『今どこにいるのー?』とか『誰かといるのかなー?』とか。伸ばし棒つけてナチュラルな感じ出してるけど、めっちゃ重いよ! つけもの押さえられるレベルだよ!」
「おい、なに自然に人の携帯見てんだ」
「てへっ」
なにはともあれ、当事者の俺が気にしてないんだ。
ほたるが束縛なんてしてるわけ……。
「ぁ……ぁぁぁ……ぁぁ」
な、なんかほたるがワナワナしてる!
悪事がばれた子どもみたいになってるんですけど! 我が妹ながらかわいいんですけど!
「き、嫌いです……。笹目さんのこういうところ嫌いです!」
「へへーん、妹ちゃんに勝っちゃった!」
「妹ちゃんって呼ばないでください!」
……なんと。
こんな追い詰められたほたるを見るのは初めてだ。
ほたるが口調や雰囲気で常識っぽく振舞ってることも、感覚だけで生きてる雪姫には分かってしまう。
そういうところが、ほたるが雪姫を苦手な理由なんだろう。
雪姫はほたるになら勝てるから、ほたるのことめっちゃ好きそうだけど。
「じ、じゃあ笹目さん、決着をつけましょう。公正な判断として、第三者の糸ちゃんに決めてもらうんでいいかな?」
「ふふん、誰から見たって私の勝ちは目に見えてるよ! 望むところだ!」
と、二人は一斉に糸ちゃんの方を向く。
すると……。
「えーっと、この演目にしようかなぁ」
……糸ちゃんはこっちの話し合いなんてまったく気にせず、パネルシアターの演目を選んでいた。
そして視線を雪姫たちに戻すと、そこには糸ちゃんのマイペースさに目を丸くして固まったままの二人がいた。
この中の最強は、糸ちゃんだったのかもしれない。
続く